ライスシャワーを救うためにできること。   作:さんさか

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血統公表回
……ウマ娘の二次なのにウマ娘とはあんまり関係ない血統です



閑話:ファンレター

 

 時は少し巻き戻って、キザノハヤテが初勝利を上げた頃。まだセミの鳴き声が聞こえる時期。

 

 

 キザノハヤテの主戦騎手である澤山が仕事場である羽田厩舎に出勤してくると、入口付近で羽田調教師と、キザノハヤテの担当厩務員である宮尾が何やら話していた。

 

「テキ、宮尾さん、おはようございます」

「おはようっす」

「おぉ澤山君、おはよう。ちょうどいいところに来たな。宮尾君と一緒にちょっと事務室のほうに来てくれ」

 

 羽田はなにやら機嫌が良さそうだ。宮尾も嬉しそうな表情。

 何か良いことでもあったのだろうか。澤山は一先ずそれを尋ねず、ご機嫌な二人に続いて厩舎の事務室へと入った。

 事務室はあまり整理がされておらず、机の上には書類が山となって無造作に置かれている。が、その書類の上に、この場には似つかわしくない可愛らしいパステルカラーの封筒が1枚だけ置かれていた。

 羽田はその封筒の中身を手に取り、澤山たちに差し出した。

 

「昨日、キザノハヤテにファンレターが来たんだよ。君たちも見た方が良いと思ってね」

 

 ファンレター。

 澤山は何故二人の機嫌が良さそうだったのかを理解した。

 

「それは嬉しいですね」

「やー、まだ1勝上げたばっかりだっていうのに、ありがたいことっすよね。あ、澤山さん、読んでくださいよ」

 

 差し出されたファンレターを受け取った澤山は、宮尾から促され、内容を読み上げていく。

 

「えーと、なになに? 

 キザノハヤテへ

 馬主の滝澤様から連絡を頂き、あなたが中央競馬で勝利を上げたことを知りました。

 いてもたってもいられず、こうして手紙を書いた次第です。

 生まれたばかりの時はとても臆病で、初乳が遅かったせいかあまり肉付きが良くならなかったあなたを、夫は病床にいながらも「良い目つきだ、コイツは走るぞ」「すずめさんの馬の子が重賞を走るんだ」だなんて童心に返ったかのように騒いでいたことが懐かしく感じます。

 私は正直なところそこまで思えなかったものですから、あなたが勝ったと聞いて嬉しいやら申し訳ないやら。

 最期まであなたを心配していた夫も天国で喜んでいることでしょう。ふんぞり返って「それ見たことか」と言っている姿が目に浮かびます。

 牧場最後の世代の馬があなたしか生まれなかったのは何か意味があるのかもしれませんね。

 どうかいつまでもお元気で。

 バラバラになってしまいましたが、牧場に関わっていた私達は影ながらあなたを応援しています。

 そして願わくば、その血を後世に残せるような偉業を成し遂げて、夫の願いを叶えてください。

 すずめ牧場代表の妻より

 ……だそうです」

 

 生産牧場の人から送られてきたようだ。

 それならば1勝馬にファンレターが来るのも納得である。

 

「すずめ牧場っていうのがハヤテの生まれ故郷なんすね?」

「そうだ。ただ、もう閉鎖してしまったらしい。牧場の代表が数年前から病気だったらしくてな。ハヤテを売ってしばらくした後に亡くなって、そのまま牧場も閉鎖だ」

「そうなんすか……」

 

 しかも手紙の内容によれば牧場から送り出された最後の仔馬。牧場はその後閉鎖されているから、下手すれば文字通り牧場最後の一頭かもしれない。

 生産牧場関係者にとって、思い入れは相当なものだろう。

 

「それと、私は昨日調べて気付いたんだが、ハヤテの血統にいる馬の一頭がな、ちょっと特別な馬だったんだよ。君たちは知っていたか?」

 

 そう言われ、澤山と宮尾は顔を見合わせる。お互いの顔には疑問符が浮かんでいた。

 騎乗する、または世話をする馬の血統は、二人も確認している。

 キザノハヤテは父がダービー馬のサクラショウリ……の全弟であるサクラシンボリで、母父がテスコボーイだったはずだ。

 珍しい父を持つと言えばそうなのだが、特別な馬と言うほどではない。

 とすれば牝系に何かあるのだろうか。

 

「いえ、知らないです。確か見慣れないファミリーラインだったとは思いますけど」

「それが何とハヤテの母母は、あの昭和の歌姫、青空すずめが馬主だった馬なんだよ」

「「え!?」」

 

 澤山と宮尾の驚く声がハモる。

 続く言葉が先に出たのは宮尾だった。

 

「青空さんって馬主やってたんすか」

「宮尾君はまだ厩務員になる前の話だから知らなかったか。澤山君は知ってるよな?」

「はい。ちょっと話題になってたのを覚えてます。『お嬢の馬が来た!』って。そうか、それですずめ牧場なんですね」

「そうそう。亡くなってしまった代表が青空さんの大ファンだったらしい。馬を引き取って、血を残そうとしたみたいだな」

 

 言われてみれば先程の手紙にもそんなことが書かれていた。

 競走馬は経済動物である。

 レースで勝って賞金を持って帰ってきてくれる馬、つまり速く走れる馬の血は広く普及し後世に残っていくが、そうでなければ淘汰されていくのが普通だ。

 ただ、中には経済性を度外視して、思い入れのある馬の血を残そうとする人がいる。

 キザノハヤテはそういう背景をもって、生まれた馬だったのだ。

 

「これは下手な騎乗なんてできませんね」

「そうっすね」

「あぁ。私たちでハヤテをいっぱい活躍させて、いっぱい子供を残させてやらないとな」

 

 3人は笑いあいながらも、それぞれ心の奥で夢を描いた。

 





青空すずめ……いったい美〇ひば〇なんだ……
というわけでキザノハヤテの血統です。

キザノハヤテ(架空馬)
1989年6月10日生

父サクラシンボリ
母ヒバリコチ(架空馬)
母父トウショウボーイ
母母タケシコオー

クロス:ナスルーラ5×5、ハイペリオン5×5

活動報告の方に決めた理由の詳細をつらつらと書いておきましたが、たいした理由はありません。競馬にわかの筆者に理屈は存在しない。
あと、この血統だからこういう走りとか、そういった反映はできないと思います。ストーリーにもほとんど影響しません。
要はフレーバーテキストみたいなもんです。


お話の切りも良いし、ちょっとリアルが尋常ではない状態なので年明けまで連載を一時停止します。
年明け前にウマ娘編を一度投稿する予定。週末か、来週かな……
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