私たちはカラオケに来ていた。
まずはこの会を提案した私が音頭を取る。
「では3人とも無事トレーナーと契約出来ておめでとうの会を始めまーす。今後の僕たちの活躍を願って、かんぱーいっ!」
「かんぱーい」
「乾杯ッ!」
メンバーは同世代美浦寮組で僕ことキザノハヤテ、ライスさんことライスシャワー、バクさんことサクラバクシンオーの計3人。
出会い頭に目の前で気絶する/されるという劇的な出会いを果たした僕とライスさんであるが、そのことがきっかけになって友好関係が出来た。
前世では確かデビュー戦以降ジュニア級では一切交流なかったはずだから、こんなにも早く友好を結ぶことが出来るとは思わなかった。三女神様のお陰だろうか?
そして入学からしばらく経った今となっては遊びに行く仲にまでなった。
……とはいえ、流石に二人っきりだと僕の心臓が持ちそうにないので大体バクさんか、もしくは栗東寮組の同世代も一緒に誘うことが多いけど。
ゆくゆくは、その、二人っきりでデっ、デート!とか!?出来たら……いいなぁって。
まぁ、二人きりの用事に誘う時点で無理なんですけどね(ヘタレ)。今日のカラオケだってバクさんに僕が提案こそすれ、ライスさんを誘うのはバクさんにやってもらってるし(ヘタレ)。
「じゃ、早速歌っていこうか?」
「ハイッ、まずはこの学級委員長たる私が歌いますよ!」
言うや否や機械を操作して予約を入れるバクさん。
ん? 『バクシンバクシンバクシンシン』? えぇ……あの曲、この世界のカラオケに収録済みの楽曲なんだ……
早速電波ソングのイントロが流れ始める。
「バクさんったらやる気満々だなぁ……ささ、ライスさんもとりあえず予約入れちゃってどうぞ」
「えぇっと……ごめんなさい、ライス、こういうところに来たの初めてで」
「あ。えーと、この機械で歌の予約を入れていくんだよ。そうそう、そこで曲を選択して──」
操作方法を教えるためにライスさんに身体を寄せる。アッ、良い香りが……
こ、これは不可抗力だから。だからセーフ(?)。
そんなこんなで時々ドギマギしつつ、ライスさんやバクさんの歌に合いの手を挟んだり、自分も得意な歌謡曲を歌ったり、喉を一休みさせている間に注文した軽食を食べたり、また歌ったり。途中からは採点機能を使ってみたりもした。
何曲目かわからないくらい歌を歌った後、ライスさんが歓声を上げる。
「すごい、また90点台……!」
「ぐぬぬ、実に模範的な点数ですね。私も負けられませゴホッゴホッ」
「今日はなんか調子がいいっぽいね。あとバクさんはちゃんと喉を休めてください」
私がそう言うとバクさんははちみつ入りのレモネードをちびちび飲み始めた。
入れてた予約も途切れたことだし、ちょっと僕も休もうかな。
「ライスもハヤテさんくらいお歌が上手だったら、皆を幸せにできるのに……」
「いやいや、僕はカラオケ用に点数が取れる歌い方をしてるから、上手下手とはまたちょっと違うような……ライブの曲とかはライスさんの方がよっぽど上手だよ。学園のレッスンでも、聞くたびに癒されるというか浄化されるというか、そんな気持ちにさせられる歌声だから」
赤面しつつも「そ、そうかな」と嬉しそうにするライスさん。可愛い。
バクさんも私の言葉を肯定するように深く頷いている。
「でもライス、もっと上手になりたいな。ハヤテさんはお歌の練習でどんなことしてるの?」
「ううむ、レッスン以外で言うと……一人カラオケに来るのが練習といえば練習なのかな。winning the soulとかライブ曲を歌ったりもしてるし」
カッコいいよねwinning the soul。クラシック三冠のいずれかを勝利した時のライブ楽曲。個人的にウマ娘の中ではトップクラスに好きな曲だ。
アニメでの演出がね、あれ鳥肌もんだった。アニメ二期からウマ娘に入った勢だったからなおの事印象的なんだよねぇ。あの1話エンディングで続きが気にならないわけがないと思うんだ。
そんなふうに過去を振り返っている間、ライスさんが口を開いていないことにふと気づく。
なにやら考え込んでいるご様子。
「そういえば、ハヤテさんは……」
「はいはい何でございましょう?」
「クラシック路線を走る、んだよね」
「……うん、そうだよ。やっぱりウマ娘たるもの、ダービーを走りたいからねー」
クラシック路線(皐月賞・ダービー・菊花賞)とティアラ路線(桜花賞・オークス・秋華賞)。
前世では生まれた時の性別でどちらに進むのかがほとんど決まってしまうものだったが、今世ではウマ娘自身の自由意志によってどちらに進むのかが決められる。
トレセン学園に無事入学出来て、無事トレーナーとも契約出来て、いざ路線の相談をトレーナーとしたとき、僕はちょっと迷った。
前世をなぞるようにクラシックに出るのか、前々世の史実の邪魔をしない様にティアラ路線に出るのか。
まぁ前世で散々史実改変しといていまさら何言ってるんだって話ではあるんだけど。だからこそちょっと思うところもあったんだ。
少し悩みはしたけど、しかし結局僕は前世と同じくクラシック路線を目指すことにした。
前世の結末には満足してるけど、その道中は色々ともっと上手く出来たはずってことも多かったからね。
「ま、そもそもダービーに出場できるかはまだわからないんだけど。ライスさんも、あと一応バクさんもクラシック路線でしょ?」
「うん」
「はいっ、GⅠ全制覇が私の目標ですから!」
うーん、バクさんは本当にバクシンオーしてるなぁ。
ちょっと心がほっこりして自分の顔が緩みそうになるが、自身に活を入れてこらえる。宣戦布告はちゃんとやらないと。
「僕たちがレースでぶつかることもあるだろうけど、その時は友人だろうとなんだろうと勝ちに行くから。よろしくね」
「うんっ、ライスも負けないよ!」
「望むところです! 学級委員長の実力、見せてあげますよ!!」
3人で勝負を誓う。その目はみんな真剣そのものだ。
ライバルたちとたった一つの栄光目指して競り合う舞台がやってくる。
ウマ娘編は本編とはあんまり関係なしに思いついたもので書いていく