ライスシャワーを救うためにできること。   作:さんさか

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12.ライスと併せ馬で勝負!

 

 どうもこんにちは。ライスと併せ馬をすることになったらしいキザノハヤテです。

 数か月間ずっと会えなかったからトレセン内で次会えるのは当分先だろうな―なんて思ってたら、ものの数日で再会が決まっていた。やっほーい。

 というか考えてみれば、確か史実のライスはジュニア時代に骨折をしてしばらく休養していたはずだ。

 それだから練習コースやその道中で見かけなかったのかもしれない。

 つまり、これからは併せ馬の相手としてよく会う関係性になる可能性が……? 

 ウキウキが止まらない。ウキウキが止まらなさ過ぎてそのうちウキーッ! って猿になるかも。

 

 そのことを聞いたのは併せ馬前日の昨日で、遠足前の小学生みたいによく眠れない……なんてことはなく、ぐっすり寝て体調も万全だ。

 というか翌日が楽しみで寝れないなんてこと、僕は前世でも一度もなかったんだよね。

 だからバスでの移動中も眠くならず、寝ぼけ眼の友人にしりとりにずっと付き合ってもらってた覚えが……アイツ元気してるかな。高校で別れたからその後はよく知らないんだよね。

 おっといかん。前世を思い出してしんみりとしてしまった。

 これからライスに会うのだから印象が良くなるよう元気に行かないと。

 

 そんなこんなで羽田さんにつられてライスと再会。

 僕を見た途端、ライスが警戒の雰囲気を漂わせ始めたのは気のせいだと思いたい。

 

「休養明けのオープン馬に、4連勝中の重賞馬を併せてくれるとは。重ね重ね、ありがとうございます」

「いえいえ。こちらとしても新馬戦でのあの奇行の訳を探りたい意図があってのことですから。馬のストレスにもなるかもしれないお願いを聞いてくださり、ありがとうございます」

 

 羽田さんと、ライスの調教師である飯山調教師とがお互いぺこぺこと挨拶合戦を交わしている。

 ついでに僕もライスに向けてペコリと頭を下げて挨拶。しかしライスは僕を警戒したまま、微動だにしない。

 

「……しかし、ホントに何と言いますか、ずっとうちのライスシャワーの方を気にしてますね」

「そうなんですよ。普段、ハヤテはあまり周りの馬を気にしないんですがね。あんなに尻尾を振って……ご機嫌みたいですね」

 

 ライスとお話ししたい……いやウマ娘のライスと競走馬のライスが別物なのは重々承知しているよ? 

 それでも、なんというか、お話してみたいじゃん? 

 別物と言ってもライスはライスなんだし? 

 

「それでは走らせてみますか」

「はい」

 

 何とか警戒を解いてもらえないものだろうか……

 漢は拳で語るというし、競走馬なら走りで語る、ってもんかな? 

 それならば併せ馬でライスにちょっとカッコいいところを見せねば! 

 

 

 僕はちょっと遅れてやって来た澤山さんを背に、ライスもどこかしらの騎手さんを背に乗せ、調教コースへ向かう。

 併せ馬の内容は芝コースを一周ぐるっと回る感じっぽい。外側が僕、内側にライスで並んで走り出す。

 

 始めは馬なり、つまり馬の、僕らの好きなように走らせてもらえる。

 序盤は並んで走っていたのだが、最初のコーナーを回っていく途中でライスがスッと前へ上がる。縦並びに。まぁそりゃ僕がちらちら視線を飛ばしていたから嫌がるか。

 しかしこれはこれで僕はずっとライスを視界に収めながら走れるので眼福なのだけど。

 とか思ってたらライスがぐんぐん速度を上げていく件。

 僕の気持ち悪い思考が伝わってしまったか? 

 おいて行かれない様に僕も併せて速度を上げていく。その差は1馬身と少しくらい。

 

「結構飛ばすな……足を残せるか?」

 

 澤山さんも呟いてるけど確かにそうね。最初は馬なりだったとはいえ、向こう正面に入ってからはほとんどレース本番並みじゃないか? 

 ライスは休養明けだというのに、こんなに飛ばして大丈夫なのだろうか。あっさりと限界を超えて走れてしまうことは昨年末に僕が実体験している。

 ちょっと不安だけど……レースでこんなこと考えながら走るのも失礼か。僕に出来ることは走ることだけだ。

 

 第3コーナー、第4コーナーと回っていき、最後の直線に入る少し手前で僕とライスにほぼ同時に鞭が入る。

 ぃよっし、いっちょ僕の走りってのを見せたるぜ! 

 ダンッ!と脚を地面に蹴飛ばし、トップスピードに乗る。

 最終直線で僕はライスに並び、そして抜き去る。

 ライスの方はスパートがかかっても速度の上乗せがあまりできていない。やはりハイペースで飛ばした疲れが出てきたのだろう。

 とはいえ必死に食いついてくるので、僕も限界を超えないように気を付けつつも、油断することなく最後まで走り抜けた。

 スタート地点を通り過ぎ、澤山さんが手綱を引いたところで減速。

 

「ふぅー……ハヤテ、お前はすごい馬だよ」

 

 速度を緩めて歩くくらいになったところで澤山さんから絶賛のお言葉。

 お、おう? 何かよくわからんがありがとう? 

 走り終えたら羽田さんや飯山調教師がいるところまで歩いていく。

 そして今回の併せ馬の品評会だ。

 

「澤山、良い走りだったぞ。今回はどうだった」

「興奮はしてましたし、相変わらず視線はお相手を見ていたように感じましたけど、新馬戦と違って特に暴走もしませんでしたね」

「うーむ、そうか……」

「それより、ハヤテの距離適性についてなんですが、意外と長い距離まで持つかも──」

 

 澤山さんが僕から降り、羽田さんと話し込む。

 そこで僕は手持無沙汰になったのでライスの方を見ると、そちらも何か騎手さんと調教師さんが話し込んでいる様子。

 

「どうですか──依頼は──」

「──良い馬ですが、やはり先約が──ので」

 

 その横でライスは息を整えながら凛々しく佇んでいる。パッと見、どこも怪我とかはしてなさそうで一安心。

 すると僕が見ているのに気づいたのか、ライスが僕の方を向いた。それもじーっと見つめてくる。

 あう、そ、そんなに見られると少し恥ずかしさが。

 走り終えた今のライスには、走る前のような警戒した様子は見られない。

 しかも(調教師の人に引かれて)さらに近づいてくるではないか! 

 

「羽田さん、今日はありがとうございました」

「あ、飯山さん、こちらこそありがとうございました」

 

 調教師たちがぺこぺこと挨拶合戦を再びしている中、ライスに見つめられている僕はテレテレしっぱなしだ。

 大丈夫かな、走って身だしなみが崩れたりしてないだろうか。

 

「ひーん」

 

 ほわっ、僕に話しかけてきてくれた!? 

「お前速い」って言われたような気がする。

 ライスに褒められた……! でへへ。

 めちゃ嬉しいんだが。

 

「ぶひひん」

 

 ひえ。

 殺気混じりに「次は勝つ」って宣言されたんですが。目付きがコワイ! 

 お馬さんのライスシャワーってば割とヤンキー系? 

 でもそんなライスもかっこいい! 

 しかも次を想定してくれているということは、

 

『はいっ、また一緒に走りたいです!』

「……ひひん」

 

 え、やっぱり嫌? なぜぇ!? 

 

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