| 枠番 | 馬番 | 馬名 | 人気 | オッズ |
| 1 | 1 | スタントマン | 6 | 26.4 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | ホクセツギンガ | 10 | 64.1 |
| 2 | 3 | リワードガルソン | 14 | 134.3 |
| 2 | 4 | ミホノブルボン | 1 | 1.5 |
| 3 | 5 | ナリタタイセイ | 5 | 22.3 |
| 3 | 6 | アサカリジェント | 2 | 6.4 |
| 4 | 7 | マヤノペトリュース | 7 | 28.5 |
| 4 | 8 | マーメイドタバン | 取消 | - |
| 5 | 9 | ライスシャワー | 11 | 68.5 |
| 5 | 10 | マイネルコート | 15 | 168.4 |
| 6 | 11 | キザノハヤテ | 3 | 6.8 |
| 6 | 12 | セキテイリュウオー | 4 | 17.4 |
| 7 | 13 | カミノエルフ | 8 | 36.2 |
| 7 | 14 | クリトライ | 12 | 118.3 |
| 7 | 15 | マチカネタンホイザ | 9 | 36.6 |
| 8 | 16 | サウスオー | 13 | 121.9 |
| 8 | 17 | マイネルトゥルース | 16 | 200.2 |
| 8 | 18 | セイショウマインド | 17 | 379.3 |
スプリングステークスから皐月賞まではあっという間だった。
そのわずかな間にも、僕は出来る限りのことを尽くしてきたと思う。
今日、その成果が問われる。
「ぶるるっ(今度こそ、勝つ)」
宮尾君に手綱を引っ張られつつ、ふんすと鼻息荒く、パドックを回る。
パドックの周りには人、人、人。数えきれないほどの人々が集まってきている。G1、しかもクラシック競争だけあって、観客の数が凄い。
回りながらミホノブルボンを含む今回の出走馬を見ていると、改めて立ち向かう敵(ミホノブルボン)の強さがわかる。
僕らが走ったスプリングステークスの他、弥生賞とか若葉ステークスとかで好成績を残した馬もこの皐月賞に挑戦してきているはずなんだけど、それらと比べても、今の時点ではミホノブルボンがとびぬけて強く見える。
ライスもマチタンも、その他の出走馬も、今のブルボンには追い付けないだろう。
僕はと言えば……まだ『差』を感じる。
3週間の付け焼刃では限界があるということだ。
だけど、勝つための対策は十分講じてきた。
僕の日々のトレーニングもそうだし、騎手の澤山さんや調教師の羽田さんも位置取りとかスパート位置とか、色々作戦を考えてくれている。
澤山さんたちが話していた内容を盗み聞きした限りだと、今回はミホノブルボンにぴったり張り付いて、ブルボンにプレッシャーをかける作戦をとるそうだ。
図らずもライスが行ったような、「ついてく、ついてく」作戦に似た戦法を取ることになる。これは期待が高いんじゃないか?
そうやってブルボンのスタミナを削り、その上でブルボンのスパートがかかったタイミングかそれより前に僕のスパートをかけるとのこと。
澤山さんは「末脚の速さならハヤテは負けない」と太鼓判を押してくれている。
振り返ってみれば、前走のスプリングステークスでだって、最終直線で僕はジリジリ差を詰めていたのだ。直線入口で3馬身差くらいあったのを、最終的には1.5馬身差まで縮めていたのだから。
澤山さんは仕掛けどころを最終コーナー半ばくらいで考えているそうだけど、レース中の走りを見つつ柔軟に対処することになるそうな。
競馬にわかの僕はタイミングよくわからんから任せるぞ。信じてるからな、澤山さん!
止まれの合図がかかり、その澤山さんがやってくる。
「少し汗が出てるな……入れ込んでる感じでもないし、お前も緊張してたりすんのか?」
そういう澤山さんも緊張してらっしゃるようで。
前回にも増して表情が強張って見えるんですが大丈夫なんですかね? やっぱり澤山さんを信じない方がええんか……?
まぁ緊張する気持ちはよくわかる。こんなに人が多いもんなぁ。
……
やべぇ。改めて意識したら僕もなおのこと緊張してきた。
人馬共に緊張感を抱きつつ、パドックからレース場へ向かう。
地下通路を抜けてレース場に出ればこれまでにないほどの歓声、いやもうこれ地響きでしょ。
観客席も人で埋め尽くされている。なんかホント、言葉に出来ないほどに圧倒される。前世含めてもこんなに人の目を集めたことがあっただろうか?
返し馬で今日の馬場状態を確認しながら軽く走る。
ポツポツと雨模様ではあるけど、芝はぐちゃぐちゃにはなってなさげ。うん、これならむしろ思い切り踏み込める。だから落ち着け、落ち着け自分……!
ゲートに入る前にはファンファーレなんかも生演奏され、GⅠの舞台が特別なんだと再確認させられる。
ゲートの中に入り、皆がゲートの中に入るのを待つ。
喧しいくらいにドキドキと自分の心臓が鳴っているのがわかる。
すると僕に跨った澤山さんが大きく深呼吸をし始めた。
「すー、ふぅー……勝つぞ、ハヤテ」
……あぁ、勝とう。
ただ声を掛けられただけなのだけれども、不思議とその瞬間、ぱったり緊張感がなくなった。
いつの間にか周囲から音が消えた。
ゲートに大外枠の馬が入る。
目の前には青々とした芝生が広がる。
空は一面の曇天。
少し冷たさを感じる風が吹く中、
スターターがやけにゆっくり旗を振った。
ゲートが開ききるよりも先に、僕はゲートの隙間を縫って飛び出した。
「よしっ! いいスタートだ!」
ゲートを飛び出た瞬間ドドドドドッと足音が、観客席からは「ワー!!」と言葉にならない歓声が溢れる。
真っ先に飛び出した僕だったが、ミホノブルボンが先頭は譲らないとばかりに中山の坂を上っていく。それを素直に見送り、そしてブルボンの後ろに着くように2番手争いに興じる。
ブルボンの真後ろに陣取り、プレッシャーをかけられる位置に陣取る。
しっかし、スプリングステークスの時も思ったけど、よく最初からこれだけの速度で飛ばすもんだな。
これがブルボンの強さなんだろう。
何が強いって絶妙なハイペースで逃げ続けているのだ。
普通なら序盤中盤は少し遅く走ってスタミナを残すものなのだが、ブルボンは最初からそれなりのスピードを出して走る。
そのスピードについていくと、少しずつスタミナがすり減っていくような速度。そして周りがヘトヘトに疲れてしまう中、ブルボンはペースを落とさずに最後まで走り抜ける。
そこに後続の馬は関係ない。
つまり、偏った見方をすれば、ブルボンは僕らとはレースをしていないわけだ。
自分自身との勝負が第一、唯我独尊な走り。
だからこそ、そのブルボンとブルボン自身の勝負に割って入ることが僅かな勝機をもたらす。
最初のコーナー、次のコーナー、そして向こう正面へとレースはよどみなく進んでいく。僕は2番手を維持し続ける。
ブルボンはほとんど馬なりで走っており、気楽そうだ。
そんな中、向こう正面の半ばで澤山さんが少し位置取りを上げるように指示を出してきた。
さぁミホノブルボン。僕とレースをしようぜ。
お前の好きなようには走らせないぞ。