ライスシャワーを救うためにできること。   作:さんさか

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2.レースに全く集中できないキザノハヤテ君

 説明しよう! 

 ライスシャワーとは、『レコードブレイカー』、『黒い刺客』等の異名を持つ競走馬である! 由来はともかく、カッコいい二つ名だよね! 

 レースで最高位の格付けであるGⅠで3度1着になった有名な馬で、僕が前世でプレイしていたウマ娘のゲームにも実装されている。

 ウマ娘におけるライスは僕の最推しキャラであった。

 そもそもウマ娘を始めたのはSNSでフォローしてた絵師さんがライスの絵を描いたのを見て興味を持ったのがきっかけで、そしてライスの史実を調べているうちに実際の競馬にも興味を持った。

 

 今日同じレースで競い合うこととなったライスシャワー号。これは恐らく本人(本馬?)だと思われる。

 黒鹿毛で少し小柄という特徴が一致しているし、見れば見るほどライスシャワー号とウマ娘のライスがダブって見えてくる。いや、馬のライスシャワーはオスだから性別からして違うんだけど、それはそれとしてね? 

 前世の史実におけるライスシャワーの初戦は8月の新潟芝1000mだったはず。ウマ娘をプレイし始めてしばらくした後、ライスの距離適性が短距離Eなのは何でだろうと思って調べたことがあるから覚えてる。

 その初戦でライスシャワーは新馬戦を勝ち上がるのである。

 

 あれ、んじゃこの勝負勝っちゃダメじゃね? 

 だってこれは史実でライスが勝った新馬戦だよね? 

 馬になったせいか、なんとなーく、この馬は自分より強そう、速そう、ってのが見てわかる。この感覚に従えば、今のライスシャワーは僕と互角、いや、少し僕の方が勝っている、と思う。

 つまり、お互い本気で走れば、多分勝ててしまう。

 史実でライスシャワーが初戦で勝利していたはずなのに。

 

「ハヤテ、大丈夫か? 宮尾さん、随分と発汗してますけど、どうしたんですコイツ?」

「わからないっす。ただ、8番を見てるんすよ」

「……みたいですね」

 

 騎手の澤山さんがやって来て厩務員の宮尾君と話してるけど、僕が考えるのはライスのことばかり。

 滝澤さんのために勝ちたいのはやまやまだが、そのために本来勝つライスを負かすのはちょっとなぁ。

 ライスはただでさえこの後、色々と辛い出来事が待っている。

 初戦くらいライスが勝って素直に祝福されるべきでは? 

 でも、あくまで勝てそうというだけで、走ってみれば僕が普通に負ける可能性もあるからこれはただの杞憂か? 

 それなら本気で僕も走るべきだろうか? だがしかし万が一ライスが負けるようなことがあっては……! 

 

「返し馬いくぞ、ハヤテ」

 

 いつの間にか騎乗していた澤山さんから合図出されたのでちょっと走る。

 というかそうか、僕はライスと同世代なのか。

 つまりウマ娘アニメ二期の後半の年代だから、ミホノブルボンやマチカネタンホイザ、それとサクラバクシンオーとニシノフラワーも同世代だっけ? ウマ娘に実装されてる馬がいっぱいだな。

 上の世代にはアニメ二期で主役を張ったトウカイテイオーとメジロマックイーンなんかもいるわけで。

 うーむ、ちょっと会ってみたい。

 いや、このまま走り続けていれば巡り合う機会はありそう? 今日戦うライスのように、彼らと闘うこともあるかもしれない。

 

「大外だから、入ってすぐにスタートだぞ……わかってるのか?」

 

 ん? 

 あ。

 考え事をしていたらいつの間にかレース直前になっていた。もうゲート入りが始まっている。

 えーっと。

 とりあえずこのレースはライスに勝ってほしい。

 勝者にはブーイングではなく、歓声が似合う。新馬戦のころのライスなら変なイメージも付いていない。

 ライスの笑顔のために、滝澤さんには我慢してもらおう。

 ゲートに入る。

 

 ガチャン! 

 

「……おいっ!?」

 

 てなわけですまんな。

 走りはするけど、本気は出さん。ゆったり走らせてもらう。

 後ろからライスの走る姿を観戦するぜ。うーん、ライスの走る後姿カッコいいよぉ! 

 イテッ、パシンと一発鞭が入った。でも走らないよ。

 

「あー、ダメだこりゃ。久々に暴走してら。よりによってレース初戦で暴走するのかよ」

 

 澤山さんは僕の気持ちを感じ取ってくれた様子。それ以上鞭を入れることはしなかった。

 あ、でもせめて賞金がもらえるところまでは頑張った方がいいかな? 出走手当的なものもあったと思うけど、順位でもらえる賞金と比べると大した額じゃなかったような気がする。

 賞金上乗せできるのなら、そっちの方が滝澤さんのためになるよね。5着までは貰えるんだっけ? ちょっとは頑張ろうか。こんだけ遅れて最後尾を走ってれば、もうライスに勝ってしまうこともないだろう。

 息を大きく吸い込み、強く踏み込んで速度を上げる。

 

「おおっと、やっと走る気になったか? でももう、うん、間に合わないな」

 

 最後方から1頭2頭3頭と抜いたところで手綱が引っ張られた。減速の合図だ。

 前にいたウマたちも減速している。

 ……あ、これでもうレース終わりか。いつの間にかゴール板を通り過ぎていた。1000m、1kmって馬にとっちゃホントあっという間だな。

 えーと、11頭立てで3頭抜いて後ろから4番目、だから……8着? oh…ちょっと手を抜きすぎたかも……

 あちゃーと思いつつ、掲示板を見る。上から8,9,5,10,4と点灯している。ライスは8番だったから、うん、無事ライスが勝ったらしい。

 まぁライスが勝ってくれたのなら僕は満足かな。

 しかし改めてライスと同世代かぁとの考えが頭の中を埋め尽くす。何とかライスが正当に評価されるようになってほしい限りなのだけど。

 

「ぶるるっ(どうにかできませんかね?)」

 

 僕に跨る澤山さんに視線を送ってみる。

 まぁ、人間には馬の言葉は伝わらないんだけど。

 

「もう終わり? とでも言いたげだな、コイツ……あぁー、これ降ろされるかも。コイツならGⅠも夢じゃないと思うんだがなぁ」

 

 ん? 澤山さん、今なんて? 

 僕、GⅠ勝てそうなの? つまり、皐月賞と日本ダービーを勝って、ミホノブルボンの無敗二冠を阻止できるかもしれないと? 

 

 なるほど。

 つまりこれはライスをヒールに、悪者にしない方法があるというわけじゃないか……! 

 




1991年8月10日3R 3歳新馬 新潟芝右1000m 晴、良馬場 11頭立て 
1着 ライスシャワー 0:58.6



8着 キザノハヤテ 1:01.0
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