──キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、今日の最後の授業が終わる。途端に騒がしくなる教室。
先生が留守で自習の時間になっていたのに、チャイムが鳴るまでは皆ちゃんと真面目に自習してるんだから偉いよなぁ。
「ハイッ! ノートは学級委員長である私が集めますよ! さぁさ皆さん、ノートを提出してください!」
いつもの如く張り切っているバクシンオーさんの元へノートを出し、自分の帰り支度を始める。
今日はトレーニングが休みの日なので、あとは帰寮してまったりと過ごすのみ。明日、明後日の土日もトレーニングの予定がないので久々にゆっくり休めそうだ。
んーなにしよっかな、積んでるゲームがいくつかあるし徹夜でゲーム三昧しようかなー。そういや明日の午後からは相部屋のグラチアさんもお休みだったはずだし、協力プレイできるゲームするのもいいか。
もしくはライスさんのストーkじゃない、見守りで一日過ごすのもいいな。ライスさんも明日はトレーニングの予定がないから、どこか遊びに出掛けたりするかも。
「ハヤテさん、少しよろしいですか」
そんなこんなで明日の予定を考えていると僕に話しかける声が。
「む? ブルボンさんですか。どうかされたので?」
顔を見上げればカバン片手にミホノブルボンが僕の机の前に立っていた。
前世のお馬さん時代では美浦と栗東という地理的条件からクラシックを走り終わるまで全くと言って良いほど親交のなかったミホノブルボンと僕だが、ウマ娘になった今世では当然のことながら普通にお友達付き合いをしている。クラスも一緒だしね。
とはいえブルボンさんが僕に話しかけてくることはちょっと珍しい。何の要件だろうか。
「明日のお昼はお暇ですか」
「今のところ特に予定はありませんけど……食事のお誘いですか?」
「はい。共同ミッション:BBQパーティのお誘いです。ハヤテさん以外にもあと数人お呼びする計画をしておりまして──」
BBQですとな。うーん、僕はそこまでお肉好きってわけじゃないんだよなぁ。むしろ野菜大好き。
まぁ折角誘ってくれてるんだし別に断ろうとは思ってないけどさ。
「──他にはライスシャワーさん、」
「行きます!!!」
ぃやっふう、BBQサイコー!!
──・──・──
ということでその翌日、ブルボンさんのトレーナーが運転するマイクロバスでトレセン学園にほど近いキャンプ場にやって来た。今はトレーナーたちがセッティング中である。
メンバーはブルボンさん、ライスさん、マチタン、三人の引率としてそれぞれのトレーナーたち、そして僕の計7人である。
え、僕のトレーナーさん?
あぁ、アイツはトレセン学園から出て行ってしまった。
……いやただ単に昨日から休暇取って帰省してるだけなんだけどね。
僕のトレーナーさんは、僕が初めての担当ウマ娘だという若い男性の新人トレーナーである。
担当ウマ娘である僕のレースが一段落したから、正月とかに帰れなかった分、季節外れの帰省をしているのだ。僕のトレーニングがお休みなのもその関係。
僕はトレーナーガチ恋勢でも何でもない上に、そもそもトレーナーさんのご両親とはレース場に来ていた時に僕の両親と一緒に挨拶は済ませているため、帰省に付いていく道理はない。
なお、昨夜電話で「明日はBBQパーティに行ってきますね」って話題を出したら「羨ましい。こっちは親の『孫の顔が早く見たい』アピールがやばい」って愚痴が返ってきた。
わかるぅー、あれ鬱陶しいよねー。
今世は女性になったせいか既に僕の両親からもその雰囲気が感じられるんだよね。ホントに視線がうざったいのなんの。
だから大変なのはわかるけど、でも「君からも何とか言ってくれ」って他力本願なのはどうかと思いますよトレーナーさん。大体トレーナーさんとそのおうちの問題で僕は関係ないでしょうに。まったく困ったもんだ。
「わぁ、お肉がたくさん……!」
「うっはぁ、おいしそー!」
準備が進む中、ライスさんとマチタンが美味しそうな大量の食材に目を輝かせている。
「ぅわお、ホントにいっぱい当てたんですね……」
「はい。マスターもこれほど当たることは想定外だったようです。しかし、そのおかげでこうして皆さんをお誘いできました」
思わずあっけにとられてしまう食材をデジカメでパシャリ。僕は今回、記録係としていっぱい写真を撮ることにしている。
今回のことの発端は、ブルボンさんのトレーナーが懸賞でお肉を当てたかららしい。お肉に特段こだわりのない僕でさえ一目するだけで高級だとわかる霜降り肉だ。
しかも、その懸賞には何通も応募していて、それらがことごとくお肉になって返ってきた。それこそブルボンさんとそのトレーナーの二人では食べきるのに何日か要するほどの量だ。
冷凍で保存がきくとはいえ、食べるのなら悪くなる前に美味しく食べておきたいもの。そこで今回のBBQが開催されることとなったのだった。
「フラワーさんとバクシンオーさんも来られれば良かったのですが」
「まーあの二人はちょうど今、次のレースに向けて忙しいところですからね。仕方ないでしょう」
レースで忙しい時期がずれてしまうから、どうしても都合が合わないことはある。特に路線が違うとそれは顕著だ。
というかその二人が来れてたらこの世代でウマ娘になってたキャラが勢ぞろいしてたわけか。なんという僕の場違い感。
いや既に現時点でもそうかもだけど。
話しているうちに準備が整い、早速お肉と野菜が鉄板の上に敷かれていく。
ジューという音とともに空腹感を誘う匂いがあたりに漂い始めた。それからはもう宴である。
「ふっふっふ、肉奉行はこのおマチちゃんにお任せあれ! ライスさん、お肉は軟らかめと固めどっちがお好み?」
「えっと、ライスは柔らかめがいいかな」
「ホイホイっと了解。皆も好みを教えてくださいな、今こそ食堂の娘の実力を見せる時! あ、トレーナーさん、火力の調整お願いしていいですか?」
「まぁ最初に食べるのはブルボンさんのトレーナーがいいんじゃないんです?」
「むん、そうだよね。はい、ではではどうぞ」
「……マスター? それは私の取り皿ですが?」
「おぉーどんな時でも担当ウマ娘を立てるその姿勢。僕のトレーナーさんとは大違いです」
「わかりました。ではミホノブルボン、いきます」
「……どうどう?」
「……とても、とても『美味』です。追加補給を要求します」
「おぉう、ブルボンさんの目つきがレースと同じくらい
「うわなんですかこのお肉めちゃくちゃおいしい……みんな黙っちゃったし。はっ、これはシャッターチャーンス!」
「はいチーズ。うん、いい笑顔ですね、もう一枚いきましょうか」
「その、折角だからライス、ハヤテさんと一緒に映りたいな」
「同意。ハヤテさんも映るべきです。カメラをお貸しいただけますか」
「僕はいいですよー撮る専門で……あ、そんな悲しそうな顔しないでくださいわかりました一緒に撮りましょう。それじゃあブルボンさんお願いします」
「承りました。……急に画面が消えてしまいました」
「あっ」
「うわぁっ!?」
「おうっ!?」
「ご、ごごごめんなさい! ライスのオレンジジュースがハヤテさんの取り皿に……!」
「……これを飲めば実質間せt、うん、これはアリです」
「ふぇ?」
「あ、いえ、お気になさらず……」
「お兄さまは脂身が好きなの? そ、それじゃあ、ライスのこれ、あげるね。あ、あーん……」
「何あれくそ羨ましいんだが?」
「え、ハヤテちゃん脂身欲しいの? それじゃホーイっと、取り皿に入れとくね!」
「あいや、そういうわけでは……まぁいいか。末永く爆発しろぉっ!」
和やかに食事は進んでいく。
友達のいなかった前々世や、馬同士で対抗心をバチバチに燃やされていた前世では考えられなかった光景だ。
「おいしいね、ハヤテさん!」
「そうですね!」
ホント人生(馬生)は何が起こるかわからないね。だから楽しいんだけど。
お食事シーンがあからさまな手抜きなのだ。
前回「閑話を投稿する」と書いておきながら閑話の書き溜めがありませんでした。うーんこの計画性のなさ。