| 枠番 | 馬番 | 馬名 | 人気 | オッズ |
| 1 | 1 | オースミロッチ | 11 | 71.2 |
|---|---|---|---|---|
| 2 | 2 | イクノディクタス | 9 | 42.1 |
| 3 | 3 | メジロパーマー | 2 | 3.7 |
| 4 | 4 | アイルトンシンボリ | 6 | 37.6 |
| 5 | 5 | キザノハヤテ | 3 | 7.3 |
| 5 | 6 | ロンシャンボーイ | 8 | 41.5 |
| 6 | 7 | メジロマックイーン | 1 | 1.7 |
| 6 | 8 | ニシノフラワー | 4 | 15.3 |
| 7 | 9 | ホワイトアロー | 12 | 109.5 |
| 7 | 10 | セキテイリュウオー | 10 | 43.6 |
| 8 | 11 | アラシ | 7 | 40.1 |
| 8 | 12 | シャコーグレイド | 5 | 31.0 |
宝塚記念を走りますキザノハヤテです。よろしくお願いします。
本日はポツポツと雨模様ですが、一応発表では良馬場とのことなので走りやすそうです。
なお、走りやすかったとしても僕は全然走れない模様。
なんせ僕の不調は未だに直っていないからね。
最近は「あぁー、これで僕はもう鳴かず飛ばずになっちゃう感じなのかなー」と諦めモードだ。
走りたいという気持ちはあるんだよ?
でも走っているうちにダメになってしまう。
前回のレースではスタートすら上手く出られなかった。いくら去年より重い斤量を背負っていたとはいえ、あれはひどすぎる。
なのでもうどーにでもなぁれって感じ。僕の全盛期は菊花賞までで、今はただの絞りっカス。きっと今回のレースでぼろ負けしたら、僕は人知れずお肉に加工されるのだろう。こんな調子じゃいつそうなったっておかしくないし、もうしょうがない。
唯一の未練はライスともう一度走れなかったことだけだ。
ま、そんな勝負を捨ててしまった僕のことはさておき、このパドックをご覧下さいよ!
メジロマックイーン!
メジロパーマー!
ニシノフラワー!
イクノディクタス!
ウマ娘になっている馬が4頭いる。こんなに多いのはスプリングステークス以来だ。
その上パーマー以外の3頭とは初顔合わせでもある。
ニシノフラワーと一緒に走ることで、これで僕はブルボン世代のウマ娘とは全員一度は同じレースを走ったことになるわけだな。
うぇーい、前世のオタクどもに自慢してやるぜ。「僕、この子たちのモチーフ馬と一緒に走ったことあるんだぜ」ってな! ハッハッハ!
しっかしメジロマックイーンやべぇな!
今まで見たことのある競走馬の中で、ぶっちぎりで強く見える。史実でもこのレースは確かマックイーンが優勝したんだよな? それも納得の強さと気迫だ。
菊花賞時のライスやマチタンよりも、一回りも二回りも実力は上だろう。
勝負を諦めたからこそ気楽だけど、この馬に勝てと言われたら無理だと言わざるを得ない。
こんな化け物相手に、ライスは勝ったってこれマジ?
ライスってホントにすごいなぁ!
それに対して僕は……
「とまーれー」
おっと、騎手乗り込みの時間だ。
そうそう、僕が今回の勝負を捨てたのは何も自分の実力が低いことだけが理由じゃない。
騎手の問題でもあるんだ。
というかこんなダメダメの騎手を背にGⅠを勝てる馬がいたら拝んでみたいレベルだね!
だから僕にはもう敗北を受け入れるしかないってわけ。
だって、
「お、おぉーし、キザノハヤテ、がんばるで!」
今回の騎手、澤山さんじゃないし。
──・──・──
宝塚記念に出走する3日前の夜だったかな? なんか羽田さんたちがやけに慌ただしくしてたんだよね。
どうしたんだろうなぁと思いながら翌日を迎えた僕の前に、羽田さんとともに一人の人物がやって来たんだ。
見たことはある人だった。
羽田厩舎で他の馬の、昨年まで僕の隣の馬房にいたカタフラクト先輩とかの、その騎手をしていた人だってことは知っていたから。
「ちゃんと挨拶するのは初めましてやな。ウチは守田や。宝塚記念では澤山さんに代わって、ウチがお前さんに乗ることになった。よろしゅうな」
は?
え、澤山さんはどうしたの?
そんな疑問を込めて羽田さんを見ると、珍しく羽田さんと意思疎通ができた。
「澤山なんだが、交通事故にあってな」
え。
「命に別状はない! ただ、少なくとも一月程度は入院することになって、今週末の宝塚には間に合わない。だからハヤテ、ひよっこだが、コイツを乗せてやってくれ!」
そう言って羽田さんが頭を下げる。続けて守田さんも頭を下げた。
……なんていう一幕があったのである。
これまで僕がレースに出る時は全て主戦騎手の澤山さんが乗ってきた。
調教中であっても、澤山さんと調教師の羽田さんと調教助手の人くらいしか乗せたことがなく、守田さんを乗せたことは……あったかな? ないような気がする。あったとしても記憶に残らない程度しか乗っていない。
つまり、僕には乗り替わりの経験が乏しいのだ。
乗り替わりと言えば、大きなハンデになる……らしい。うろ覚えの前世の記憶だけど。
人間同士でも相性によって合う合わないがあるように、馬と人間の間にも相性がある。人間は相性の良否を理性で我慢できる場合もあるが、馬はなかなかそう上手くいかないらしい。
でも僕は人間がインストールされたUMAですし? そこは割り切れるしそんな問題にならんやろ……と思っていたのだけど、これが全く違った。
端的に言おう。
守田さんは騎乗が下手くそだった。
騎乗に上手い下手なんてあるのかと思っていたけど、あったのだ。
なんていうかな、澤山さんに比べるとぐらぐらしてるんだよね。だからめっちゃ走りにくい。
そのくせ、あぁせいこうせいと指示が五月蠅いというか。
カタフラクト先輩、よくこの人を乗せてレースで勝てたな……ホントはオープン馬じゃなくて重賞クラスの馬だったのでは? そのくらいのハンデだと思う。
聞けば守田さんの騎手人生は、今年で5年目。加えて勝利数はやっとこさ50勝したところ。20年近く騎手をやってる澤山さんとは比べるべくもない。
守田さんはまだ初心者マーク付きの見習騎手(斤量軽減1kgがつく)なのだ。
そんなぺーぺーのアンチャンに声がかかった経緯はこうだ。
羽田さん的には一応僕はまだ『期待の馬』にカテゴライズされているようなので、どこの馬の骨とも知らない奴を乗せるのは憚れるらしく、まず、羽田厩舎がよく声をかけている他のベテラン騎手に声をかけたそうな。
が、全員に断られてしまった。
皆して他の競馬場で騎乗予定があり、羽田厩舎に出入りする際に復調の兆しもないと聞いていた彼らは、自分の持ち馬を蹴ってまで僕に乗りたいと思わなかったようだ。
競馬はロマンで出来ている面もあるが、それと同じかそれ以上に、日銭を得るための『仕事』なのである。仕事のためには、騎乗予定をドタキャンして顧客の信頼を損ねるわけにはいかないのだ。
さぁこれは困ったぞ……となったところで、羽田さんが思いついたのが羽田厩舎所属の守田さん。勝率は微妙だが、厩舎所属ということもあって羽田さんが一定量の信頼を置いている騎手だ。彼に今週末の騎乗予定はなかった。
ちなみに、守田さんは今回がGⅠ初騎乗だそうで。
羽田さん的には、重賞級の馬に乗る経験を糧に成長してほしい意図もあるようだった。
乗り変わりが決まってから宝塚記念が行われる阪神競馬場に移動するまでに、守田さんは頑張って僕を乗りこなそうとしていたが、僕からすれば全くお話にならなかった。
ただでさえ調子が悪いというのに。それに加えて守田さんを乗せていたら、まともに走れないだろう。
これが僕が今回の勝負をあきらめている理由である。
次回宝塚記念後編、「出口:宝塚記念2」