| 枠番 | 馬番 | 馬名 | 人気 | オッズ |
| 1 | 1 | ドラールオウカン | 12 | 101.1 |
|---|---|---|---|---|
| 2 | 2 | ハシノケンシロウ | 10 | 40.4 |
| 3 | 3 | ゴールデンアイ | 7 | 18.7 |
| 4 | 4 | ホワイトシルバー | 13 | 246.8 |
| 4 | 5 | ムービースター | 4 | 10.6 |
| 5 | 6 | ヒガシマジョルカ | 11 | 43.9 |
| 5 | 7 | イクノディクタス | 6 | 13.2 |
| 6 | 8 | シスタートウショウ | 2 | 5.8 |
| 6 | 9 | ハシルショウグン | 8 | 19 |
| 7 | 10 | ツインターボ | 3 | 6.1 |
| 7 | 11 | ホワイトストーン | 5 | 12.2 |
| 8 | 12 | モガミキッカ | 9 | 37.5 |
| 8 | 13 | キザノハヤテ | 1 | 2.1 |
トレーニングに精を出していれば時がたつのはあっという間で。
今日は待ちに待ったオールカマー当日である。
皐月賞以来の中山競馬場に若干の懐かしさを感じつつ、いつも通りパドックで一緒に走るメンバーを確認する。
うん、ツインターボにイクノディクタスもいるね。アニメと、つまりは前世の史実と同じだ。ライスがいないことを除けば。
あとの方々は初対面……あ、あの馬は新潟大賞典で一緒だったような。何着だったのかは(あの時は自分のことで手いっぱいだったこともあって)わからないけど。
皆それなりの強さがあるように見えるが、言ってしまえば皆『それなり』なのだ。去年の春ここで戦った時のブルボンや、つい最近放牧先で見たライスほどではない。
秋の天皇賞から始まる秋競馬GⅠ戦線を戦い抜くためにも、ここは勝ちたいところだ。
ふんすと鼻息荒くパドックを周回する。やがていつもの号令がかかって澤山さんがやってくる。
「ハヤテの調子はどうです?」
「今日は良い感じっす。あとは澤山さんの腕次第っすかね」
「ふふ、宮尾さんも言ってくれますね」
「そんだけ期待してるってことっすよ!」
澤山さんは宮尾君と少しだけ言葉を交わした後、僕に騎乗する。
程なくしてパドックからターフへと出ていき、芝の感触を確かめつつゲートの裏へ。輪乗りをしつつ発走時間を待つ。
「やっぱりアイツが気になるのか? ハヤテが警戒するに値する馬か……」
おっと、ターボをチラチラ見ていたのが澤山さんにバレてしまったらしい。
小声で僕に話しかけてきた。
「でも俺はお前を信じてるからな」
おう、僕も澤山さんは信じてまっせ!
今回は羽田さんからこれまでとはちょっと違う作戦の指示がなされている。その作戦をとる場合、澤山さんの見極めが大事になる、とのこと。
僕のいつもの作戦は『番手追走の先行策』だった。
羽田さんは、僕はスタートが良いのでその有利を確保しつつ、最後の末脚を活かし切るためにも先行策が一番僕に合っている……と思っていたらしいのだが、何がきっかけか「いっそハヤテの気の向くまま逃げさせるのもありなのでは?」と考え直したらしい。
ただし、それで最後バテてしまっては元も子もない。適度に速度を緩め、最後の足を残さないといけない。その判断をレース中に下さねばならないため、澤山さんの判断がいつも以上に重要になるというわけだ。
そんなこんなで今回の作戦は『可能ならハナを獲って逃げる』だ。
いや、そこは『絶対先頭を取る!』じゃないのかよってところだが、今回はツインターボという逃げ馬がいるため、まともに競り合うのは危険ということで若干トーンダウンした形だ。
僕も破滅逃げと言われたターボについていくのは危険だと思うので、まぁそこは無理に行かなくていいと思う。
ただそれでターボに先頭を譲る形になったら、結局いつもの作戦と同じ位置取りになるのでは? って思ってしまうのだけど……まぁ積極的に前に行こうっていう心構えは大事だと思う。
そうこうしてるうちにゲート入りが始まった。
今日は大外枠なのでゲート入りは最後だ。
続々とゲートに入っていく皆を眺めつつ気合いを高めていく。春の不調からの、いや、菊花賞からの復帰戦くらいの気持ちでいくぞ。
いざ尋常に──
ガチャン!
──勝負!
勢いよくゲートから飛び出る。内から速度をぐんぐんあげてくるツインターボと並んで先頭を進む。
澤山さんはまだ抑える指示を出さないので、一先ず先頭を取りに行くつもりで走っていいんだよな? ただ、中々ターボが先頭を譲ろうとしない。というかホントにどんどん速度上げていって僕の方もほぼ全速力だぞ、これ!?
「……流石にここまでだ」
うん、僕もちょっと一息入れたい。
全力でゴール前の坂を駆けのぼり終えたところで澤山さんが少し速度を落とさせる。これからコーナーに入るから内側をしっかりとっていく方を重視したようだ。
前を行くターボとの差はコーナーに入ってから広がる一方で、最初のコーナーを曲がる間に3馬身から4馬身くらい差がついてしまった。よく走るなターボ……
中山競馬場の外コースへと入っていく。
ターボとの距離を一定に保ちつつ単独2番手を駆けて行く。チラリと後ろを見やればすぐ後ろ2馬身差くらいに一頭、さらに馬群もそれに続いてあんまり差がついていない。それもジリジリ詰まってきている感じがする。
むむ、これだと後続勢の射程圏内に入っているのでは? 僕が知る史実ではターボが勝っているけど、ライスがいないという史実改変の影響で後ろから差しきられる可能性もあるか? いや、でもターボの逃げに途中まで付き合った僕に追いついてくるくらいだから後続もかなり無茶をしてきているのでは?
うぅむ、分からん!
「……遅い?」
ふと澤山さんが呟いた。
今ちょうどおにぎり型のコースの2つ目のコーナーを曲がるところ。もうすぐレースを半分走り終えるくらいだけど……え、スローペースってこと?
いやいや、爆逃げのターボがスローになるのなんて最終直線になってからじゃないの?
先頭との差は第一コーナーを曲がり終えてからほとんど変わっていない。つまりはターボの破滅逃げと同じ速度で走っているわけなんだから当然疲れて……あれ?
そうでもないな。むしろ結構息を入れられたというか……
え、マジか!?
「それなら!」
澤山さんから鞭が一発。
了解、ここから一気に行こう!
ウマ娘のターボからは想像だにしなかったまさかの幻惑逃げには驚かされたけど、だからって僕も負けられない。
外コースと内コースの合流点付近でグイっと速度を押し上げ、ターボとの差は詰まり、後続との差は開いて……って後続も動き出した!
カーブのキツイ最終コーナーで先頭を外から抜かしにかかるがターボもスパートに入った。
そうして僕とターボをほぼ並んで中山競馬場の短い最終直線に入った。
(負けてたまるかってんだよぉ!)
ここを勝って、堂々と天皇賞へ行くんだ!
一息にターボを抜き去って先頭に立つ。
しかしまだだ、内には『栗毛の馬』がいるし、後ろからいくつもの足音が迫ってきている。
隣を行く栗毛の馬を見やれば余裕だと言わんばかりに速度を上げた。
なんだコイツ、僕は眼中にないってか!? 悠々と僕を差し返していきやがる。
でも、僕にだって意地がある! 澤山さんが手綱をしごいて「もっと飛ばせ、もっと飛ばせ」と訴えてくるのに合わせて力を振り絞り、栗毛の馬より前に出る。
残り200mの標識を通過する。ゴール前の上り坂でまた栗毛の馬が差を詰めてくる。このままでは……
いいや、絶対に抜かせはしない!
大体なぁ、僕はここ最近負けすぎなんだよ! 最近ってか1年以上か!?
何度も何度も惜しいところまで行って、その度に悲しんできた。もう悲しい思いをするのは、悲しい思いをさせるのは、ごめんなんだよ!
澤山さんや、羽田さんに宮尾君、滝澤さん……皆のためにも、絶対に勝つ!
だからこの勝負は譲らない。僕が、一番だ!
走り抜けたゴール板前。
栗毛の馬はいつの間にか消えていた。
1993年9月19日11R オールカマー 芝右外2200m、曇、良馬場 13頭立て
1着 キザノハヤテ R 2:12.0
2着 ハシルショウグン 2:13.3
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5着 ツインターボ 2:13.6
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7着 イクノディクタス 2:14.0
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オールカマー レース後コメント
1着 キザノハヤテ(澤山騎手・美穂・羽田厩舎)
久々に優勝することができ、感無量です。かなりタフなレースでしたが、ハヤテが全力を尽くしてくれた結果だと思います。GⅠも、この調子でいきたいですね。