プロローグ
Side?
「ふう…今日の所はここら辺で終わっておくか」
「アレ?今日は随分とお早い御退場なのですね御主人様」
「ああ、実は兄貴にこのゲームを薦めようと思っててな。
それも兼ねて久し振りに実家に行くんだよ」
「そうなんですね!いってらっしゃいませ!」
俺の名は佐倉 緋璃耶。 至って普通の健全な男子高校生…とは言い難い。
何故なら俺には前世の記憶があるからだ。
前世の俺はガンプラビルドファイターの一人だった。
どうして死んだのかは全く身に覚えがついておらず物心付いた時にそれを思い出した。
だが俺は絶望した…何故なら俺が今生を受けている世界にはガンプラはおろかガンダムのガの字や他のロボット作品のほとんどが存在しないからだった。
存在するプラモはマイナー作品ロボットと戦車とかのミリタリー系、そして前世でもほとんどの人が手を出さないであろう美少女プラモだけだった。
ガッデム!…だがある日友人に勧められたゲームによって物凄く退屈だった日々が変化した。
それがついさっきまでプレイしていたVRMMORPG「DollsOrder」だ。
このゲームは自作した人形と共に戦うというジャンルの正にガンプラバトルをやっていた身として、それと美少女プラモに少なからず興味を持っていた俺からしたら最高峰のゲームだった。
え?ガンプラと人形は違うんじゃないかって?いやいやそんな事はないさ!基本的にはちょっと工程手法が人形制作の方が複雑なだけで慣れれば何ら変わらない物さ。
それでも人形制作なんてそう簡単に出来るものではないだろうってか?実はな…俺の生まれ育った佐倉家は代々人形師を生業としている家系であったからだ。
俺は自由に制作したかった事もあって真の実力を隠しながら制作技術を学んでいた。
それもあってか当主は双子の兄である佐倉 いろはが継ぐ事になっていた筈だったのだがある日兄貴の才能と当主の座を継げる事に嫉妬した兄弟子達が結託して兄貴を襲撃し彼の利き腕を重点的に大怪我を負わせるという事件が起きてしまった。
幸いにも普段から兄貴の陰口を言っていた兄弟子達の事を知っていた俺が暴言を録音したデータを提出した事もあって彼等は即刻逮捕されこの件に当然キレた現当主である父さんがしっかりと制裁を加えてくれた事で元兄弟子達は人形師所か人としての権利を剥奪された。
だが酷く重傷を負わされた兄貴の腕は現代の医療技術では完治出来ずまともに動かす事も出来なくなってしまいそのせいで兄貴は人形師の道を諦めざるを得なくなって塞ぎ込んでしまっていた。
だからこそこのゲームを薦めて兄貴にはかつての心を取り戻してほしいと思ったのだ。
「あ…」
「お?」
実家に着くと其処には妹である佐倉 ゆめと鉢合わせた。
彼女の手にはゲーム機器であるDギアが抱えられている。
「ひょっとしてゆめも?」
「わ、私は友達に紹介されて…もしかして緋璃耶兄さんも!」
「ああ!」
俺達は顔を見合わせて苦笑した。
どうやらゆめは友人経由で兄貴にドルオダを薦めようとしていたみたいだったようだ。
余ったDギアどうしようかというのはおいといて俺達は兄貴の部屋を訪れる。
「兄貴久し振り!」
「ゆめ…それに緋璃夜もか。何しに来たんだ?」
「まあそう言うなってよ…兄貴にとっても良い話を持ってきたんだからよ」
「話?」
「コレ」
「これは…?」
生気が抜けたかのような兄貴を心配しつつも俺達は話を進めた。
「これなら兄さんの動かせなくなった手も動かせるようになれるわ」
「そんな事が!…でもたかが仮想空間なんだろ?…」
「そんなチンケな物だったら薦めないさ。俺はプレイしているから分かるがあの自由度のゲームは中々な物だと保証出来るぜ!きっと兄貴もハマると思うぜ」
「そこまでお前達が言うなら…」
ひとしきりの説明を終えてDギアを受け取ってくれた兄貴に俺達は一安心し別れたのだった。