井川葵の友達やってます   作:嘘ドタキャン束縛カニカマ犬こんにゃく

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 葵が可愛いので初投稿です。
 (見切り発車を)ゆるして。



第一話 プロローグ

 

 

 

「ありがとうございました! LizNoirでした!」

 

 わああっ、と歓声が会場を埋め尽くす。

 

 怒涛の勢いでパフォーマンスを披露したLizNoir。そのリーダーである神崎莉央は、額に玉のような汗を滲ませながらファンへ感謝の言葉と共にライブを締めた。

 ライブが終わったにも関わらず、会場の熱気は止まるところを知らない。空気を割らんばかりの歓喜、興奮、熱狂。同じように汗を滲ませるファンたちは、それぞれの胸に燃えた想いを叫んでいた。

 

「莉央ーッ! かっこいいーッ!」

「葵ーッ! また来てくれーッ!」

「愛ちゃーんッ! 最高だったぞーッ!」

「こころーッ! 今日も可愛いーッ!」

 

 そんな熱烈なコールを背に、彼女たちはステージを後にする。

 神崎莉央は満足げに目を瞑り、それを見て井川葵も静かに笑みを湛たたえる。小美山愛はライブの余韻を胸に染み渡らせ、そんな愛を赤崎こころは指で突いて遊ぶ。その形はどうであれ、全員が今回のライブに満足していることが見てとれた。

 舞台袖を抜けるとやがて控室に辿り着く。中に入り一息つくと、最初に口を開いたのは愛だった。

 

「今日のライブ、最っっっ高でしたね! 私、ここ最近で一番うまくやれた気がします!」

「ええ、そうね。私も今日は現時点での最高のLizNoirを魅せられたと思っているわ。愛、すごくいいダンスのキレだったわよ」

「わ〜! ありがとうございます! これからも精進します!」

「私も今日はとてつもない手応えを感じました〜! まあ私の場合はいつでもどこでもですけど。この調子なら莉央さんを蹴落として明日にでもリズノワのセンターに──」

「こころ、貴方も今日は良かったわよ。お疲れ様」

 

 勢いのまま普段のように軽口を叩こうとしたこころだったが、内心では尊敬して止まない莉央からの素直な賞賛に歯切れが悪くなり口を閉ざした。

 既に満面の笑みだった愛も、そんな彼女を見て嬉しそうに破顔する。

 

 実際、今日のLizNoirのパフォーマンスは凄まじかった。

 アイドルというよりもそのスタンスがパフォーマーに寄っている彼女たちは、普段から高いクオリティの歌とダンスでファンを魅了している。

 愛とこころが加入し新体制になってからもそれは遺憾なく発揮されており、より成長した姿で今回のツアーに臨んでいた。今日のツアーファイナルライブはまさにその集大成と言えただろう。

 出来栄えは◎。自他共に妥協を許さない莉央が最高だったと評していることからもそれは伺えた。

 

「そ、そういえば葵さんも今日は珍しく気合い入ってましたよね〜」

「あ、私もそう思いました!」

「そうかな? そうかも」

 

 話題が葵へと向けられる。

 彼女も今日のライブに思うところがあったのか、僅かな逡巡の後、柔らかい表情で答えた。

 

「貴方にしては珍しいわね。あからさまに熱が入っていたわ。何かあったの?」

「友達が来てたんだ。だからかも」

「へぇ〜、葵さんのお友達か〜。私も今日学校の友達が来てくれてるんです。やる気上がりますよね!」

「愛ちゃん。やる気が上がるのはいいけど、上がりすぎるとまた怖〜い莉央さんに怒鳴られちゃうよ〜? コホン──貴方はLizNoir失格よっ!」

「ヒィッ!? すみませんすみません……ってこころ! びっくりするからやめてよ!」

「ちっとも似てないでしょう……まったく」

「僕は結構上手いと思うけどな」

「ちょっと葵! どういうこと!?」

 

 騒がしいやり取りが控室に響く。昔のLizNoirからは考えられないような賑やかさだ。こころと愛が加入してからすっかり変わったこの雰囲気を、葵は内心気に入っていた。

 

 ふと、何気なくメンバーを見渡した。

 眩しいものを見るような、そんな目だった。

 

 井川葵にとって、本当に心から大切だと思っている存在はそれほど多くない。

 まず一人、神崎莉央は芸能界に入ってから最も付き合いの長いパートナーで、酸いも甘いも共に味わってきた相棒だ。

 過去に色々あったが、莉央がいるから葵はこの業界に残っていると言っていい。色々な意味で葵にとって莉央は特別な存在だ。

 

 続いて小美山愛と赤崎こころは彼女にとって可愛い後輩で、LizNoirで共に活動する大切な仲間だ。

 愛は素直すぎるところがたまに不安になるが努力家のいい子で、技術力も確かだ。

 こころは莉央をからかったり愛を騙したりとお調子者ではあるが、それがLizNoirに新しい風を吹き込んでいるのは間違いない。手は掛かるがそこも含めて大切に思っている。

 

 そしてそこに両親や兄弟などを足せば、大切な人の数など両手で足りる。

 

 葵は友人が少ないわけじゃない。

 クールでさっぱりとした性格の彼女は一定数に好ましく思われているし、交友関係はある方だ。

 

 しかし彼女の本質は"楽しく踊る"ことにある。

 今でこそ星見プロでLizNoirとして活動を続けてはいるが、友人の有無や事務所での活動、芸能界のことなんて、彼女にとっては本当は最悪()()()()()()。誰になんと思われようが、ただ自由に踊っていたい。いつだって根底にあるのはそんなシンプルな思いだった。

 

「はいっチーズ、カシャっと。おお〜、対応できてない莉央さんだけ見事に真顔ないい写真が撮れましたよ〜! 早速SNSに投稿投稿、っと」

「こころ! 貴方また勝手に撮ったわね! 待ちなさい!」

「いいえ、時間とこころは待ちません……! これもリズノワの活動の一環なんです! ライブ終わりのオフショットなんてファンが一番望んでるネタですよ〜? これは爆伸びすること間違いなしです」

「だからって貴方ね!」

「あわわ……控室で走らないでください〜!」

「大体、莉央さんは表情が硬いんですよぉ。ファンが求めてるのは笑顔です、え・が・お♡ あの葵さんでさえうっすら微笑んでるんですよ? そんな調子じゃファンに見放されちゃいます〜……って、この前愛ちゃんが」

「言ってないよ! 莉央さんはそういうところも含めて魅力的なんだから!」

「……こころ、貴方次のレッスンで覚えてなさい」

「ひっ、忘れちゃうかもです〜……」

 

 ピコンッ

 

 未だ賑やかなメンバーたちの会話を聞いていると、デスクの上のスマホが通知を告げた。

 点灯する画面に映し出されるのは、数件のメッセージ。

 

『ライブおつ』

『めっちゃ良かった』

 

 葵はスマホを手に取りそれを確認すると、ふふんと満足げに笑った。とても柔らかい、年相応の笑顔だ。

 先程まで観客として自分達を見ていたであろう友人からのメッセージ。飾りっ気のないシンプルなそれが、さらに表情を緩ませる。

 

 葵にとってたった一人の特別な友人、或いは腐れ縁、或いは昔馴染み──或いは、"()()"。

 そう呼べる人物に対し、葵もいつものように簡潔に返信した。

 

『ありがとう』

『あとで電話するよ』

 

 

 

 ● ○ ● ○

 

 

 

 

 未だ熱気が漂う会場を出ると、夜の涼しい風が体を撫でた。

 

 ちらり、と周囲を見渡せば、ライブの余韻を噛み締めるように語り合う人たちの姿が見える。その表情が満足一色に染まっているのは語るまでもないだろう。

 斯く言う俺もものの見事にその一人で、胸をライブの余韻で、両手を大量の物販でいっぱいにしながらうんうんと頷くことを繰り返していた。

 

「最っっっ高のライブだった……」

 

 世間で膨大な人気を誇る実力派アイドル、LizNoir。

 

 俺がこのグループのライブに参戦したのは今回が初じゃなく、メンバーが二人だった頃から機会があって何度か会場に足を運んでいた。

 メンバーが四人に増えてからの参戦は今回が初めてだったが、出てくるのはまさに圧巻の一言。もはや多くは語るまい。リズノワ最高、Q.E.D.

 

 っと、そうだ。忘れていた。

 

 回想で頭をいっぱいにしつつ帰路に就いたところで、俺はふとスマホを取り出した。

 そのまま慣れた動作でメッセージアプリを立ち上げ、トーク欄の一番上にいる相手──先程ステージ上で最高のパフォーマンスを披露していた友人に、万感の想いを込めてメッセージを送った。

 

「ライブおつ、めっちゃよかった……っと」

 

 うん、これでいいだろ。

 本当は溢れんばかりのここ好きポイントを100行程の長文で送りつけてやりたいところだが、流石にドン引きされそうだからやめておく。画面を開いた瞬間に嫌そうな顔をするか苦笑いを浮かべるあいつの顔が浮かんで頬が緩んだ。

 それに、どうせそのうち会うだろうからその時にでも直接伝えよう。あっさりしたやつだからそれくらいでちょうどいいのだ。

 

 それだけ伝えてスマホを再び仕舞おうとすると、返信は思っていたより早くきた。ぶぶっ、と端末が震える。

 

『あとで電話するよ』

 

 まじか。

 

 多分今頃控室とか楽屋とか、そんな感じの場所にいるであろうあいつの姿を見て苦笑いが浮かぶ。

 疲れとか時間とか色々大丈夫か? なんて思わなくもないが、まあ本人が電話すると言っているんだから大丈夫なんだろう。

 よくよく考えれば以前からダンス馬鹿だったあいつのことだ。ライブの一つや二つで特別大きな疲労は感じないのかもしれない。恐ろしや。

 

 とりあえず「おけ」、とだけ返して道を進んでいく。

 先程まであれほど喧騒に包まれていたというのに、会場から少し離れて路地に入ってしまえばこの静かさだ。

 それでも依然胸の内は熱いままで、それがどことなく不思議な気持ちを誘った。足音だけがこつこつと響いていた。

 そんなこんなで暫く足を進めていると、不意にスマホが着信を告げる。画面に映る見慣れた名前を確認し、俺は応答をタップした。

 

「もしもし? やあやあ僕だよ。今大丈夫?」

「かけてきてから聞くなよ。ライブお疲れ、()()

「どうも」

 

 ぶっきらぼうな返しのようで、その声色は柔らかい。

 通話の相手、井川葵が上機嫌の時のそれだった。

 

「ライブどうだった? 今回はみんな手応えを感じてたみたいなんだけど」

「厳正な審査の結果、300点かな」

「それ何点満点?」

「10点満点」

「採点めちゃくちゃだな。けど、それだけ満足してくれたってことだよね。なによりだよ」

「あれだけのステージ観せられて満足しないファンはそういないと思うぞ。流石リズノワ、流石井川」

「おだててもなにも出ないよ。大体、僕はいつも通りただ踊っていただけだ」

 

 今日は少しだけ気合が入ってたけどね、なんて、やっぱり柔らかい声音であいつは笑った。

 

 ただ好きにやっただけ。

 ただ自由に踊っただけ。

 いつも通りにやっただけ。

 

 昔からそうだ。そう言って堂々としている井川はどこまでも井川葵らしい。そういうところがファンに愛されているし、俺も好感を持っているのだ。

 が、それは別としてこいつ本当にアイドルなんだろうか、なんて思うのも事実だった。アイドルってもっとこう、ファンへの想いとかを大事にしたりするんじゃないのか。いくらLizNoirがパフォーマー気質だとは言え、相棒の神崎さんでさえMCやインタビューで頻繁にファンへの感謝を伝えているというのに。

 

 昔、井川のファンへの塩対応が話題になったことがあった。

 ファンはそんな井川を推していたのだが、愛想について神崎さんから小言を貰ったという話を聞かされた回数は数え切れないほどある。当時を思い出してまた苦笑いが一つ浮かんだ。

 

 ……けど、まあ。

 

「その方がお前らしいか」

「……ねえ、今なにか失礼なこと考えなかった?」

「気のせいだろ、失礼な」

「いいや違うね。僕にはわかるんだ。君は昔からわかりやすいんだよ。変わってないね、()()

「わはは、お互い様ってやつだ」

「くすっ、それもそうか」

 

 そう、変わっていない。俺と井川の関係は昔からずっとこんな感じだ。

 その場の気分で話したいことを話し、軽口を叩き、何かあれば愚痴を言い合い、どうしようもないことで笑い合う。

 遠くもなく、かと言って近すぎもしないような、気安くて、適当で、心地よい、決して手放したくないと思ってしまうような関係性。

 これが"友達"というやつなんだろう。

 

「そういえば今どこ?」

「会場から帰ってる途中。物販買いすぎたせいで歩きながら通話するの結構大変なんだぞ」

「それは君が悪いだろ。で、そんなに誰のグッズを買ったのさ。莉央? それとも愛? 意外とこころ、なんてのもあり得そうだな」

「そうだな、誰だと思う?」

「そうきたか。そうだな……年上がタイプな君のことだ、莉央だろ。どう?」

 

 興味津々な井川の問いかけに対し、俺はスッと口を閉ざした。そして両手に持つ包装を見て空を仰ぐ。

 

 言えない。この流れで半分以上は井川関連のグッズだなんて口が裂けても言えない。

 

 というかなんてことを言ってんだこいつは。そもそも俺が年上好きってどこ情報だよ。ちげぇよ。本人なのに初めて聞いたよ。

 相棒なんだろ、神崎さん。友人がそんな超不純な動機でグッズ買い集めたと思ったのかこいつは。それでいいのか。

 

 とはいえ、買ったグッズに神崎さんのものも含まれているのは事実だ。

 

 リズノワ全体のものとして出ているタオルやラバーバンド、ペンライト、ウエストポーチなどは当然押さえたし、各メンバーのステッカーなどもガチャの確率が味方してなんとか手に入れることができた。

 しかしそこはLizNoir。超人気アイドルである。全部のグッズを買うなんて色々な事情で不可能だし、むしろ一人でこれだけ回れたことが奇跡だと言えるだろう。

 

 それ以上を望むとなれば当然優先順位が発生する。

 そこで俺が優先したのが井川だったという話だ。

 

 いや、だってかれこれ数年の付き合いになる友人だし、なんだかんだずっとアイドルとして頑張ってるから応援したい気持ちはあるし。所謂隠れファンというやつだった。

 でも、それを本人に知られることには抵抗があって。恥ずかしいのだ、なんとなく。

 そういう事情で俺はただの一友人として応援するポジションに立っていた。

 

 故に、ここは適当に誤魔化すことにした。

 

「あー、色々買いすぎて詳しく覚えてないかも。帰ったら確認しようかな、うん。そうしようと思う」

「なんか誤魔化してない? さては図星だったでしょ。それとも僕のを買ってくれたのかな?」

 

 だとしたらお目が高いね、なんて井川は続ける。なんとなく、通話越しに得意げな表情をしているのが伝わってきた。

 適当にそうだな、と返して荷物を握り直す。さらなる追求が飛んでくる前に話題を変えてしまおうと、俺は思い出したように続けた。

 

「そういばお前明日学校あるの? ライブ翌日だけど」

「え? うん、普通にあるよ。どうして?」

「いや、月出ってその辺配慮されないのかなって思って。休みでもいいじゃん」

「休んでもいいんだけどね。特に休む理由もないし行くよ。それに、テストも近いんだ」

「そういうとこ意外と真面目だよな。俺なら絶対休むのに」

「僕は真面目だろ。少なくとも君よりは」

「わはは、そこで俺を引き合いに出す時点で大差ないんだよバーカ」

「お互い様だよ、ばか」

 

 小気味いい会話に笑い合う。

 

 井川が通っている私立月出高等学校は芸能コースがあるから別として、俺が通う高校にそんなものはない。明日は平日だから普通に登校する必要があった。

 芸能界に憧れがあるわけじゃないが、理由をつけて学校を休めるのはちょっと羨ましく思う。きっとそれ以上に苦労の絶えない世界なんだろうけど。俺には想像もつかない場所だ。

 

 そんなこんな考えていると、井川がそうだ、と切り出した。

 

「ねえ、次の休日は暇? 最近僕がツアーで忙しかったからさ、久しぶりに遊ぼうよ。またゲーセンに行こう」

「お、いいね。ちょうど俺も誘おうと思ってたんだ」

「よかった。なら決まりだね。さて……本当はもっと色々語り合いたいところだけど、僕はこの後打ち上げがあるからもう切るよ。そろそろ莉央に怒られそうだ」

「そか。ならまた今度な」

「時間とか諸々は君に任せたよ。楽しみにしてる。ばいばい」

 

 うおい、丸投げかい──と言おうとした頃には通話は切れていた。

 あの野郎、朝6時集合とかにしてやろうかな。いや、絶対来ないし俺が損をするだけになるか。やめておこう。

 

 そう内心で文句を垂れつつも、遊ぶ予定は純粋に楽しみなのでテンションが上がっていた。

 

 うん。なんだか少し気分がいい。

 そのせいだろうか。ひどく静かな路地を歩きながら、俺はこの付き合いの長い友人との出会いことを思い出してみることにした。

 今でも鮮明に思い出せる。

 

 

 そう、あれは小学生の頃──

 

 

 





 アイプラ小説増えろ〜増えろ〜(圧)

 ※少し内容を修正しました。物語には影響しません。

推しグループは

  • 月スト!
  • サニピー! サニピー!
  • トリトリトリエル
  • LizNoir
  • ⅢX
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