オラリオに褪せ人さんがくるそうです   作:タロ芋

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1年近く放置してた阿呆がいるってまじ?

はい、ちょっと別で書いてる小説の展開に詰まってるのとDLCが来て意欲が湧いてきたので描きました。

不定期ですが今後ともヨロシク


12 貴方、貸す

 なにやら耳長の混種が叫んでたような気がするが、貴方は気にした様子もなく夜と炎の剣を振るいながら、もう片方の手に握られた杖で魔術を行使。空中に出現した輝石が触手たちを迎撃する。

 

 そのすぐ後に背後で魔力の高まりが感じられ、触手を炎で焼き払いながら軽く背後を見やると耳長の混種が何かの巨大な魔術を行使しようとしているのが見えた。

 

 明らかに高威力広範囲の攻撃のそれを見て貴方は僅かに目を細め、触手を切り上げる。

 切り離されたソレは宙を回転しながら飛んでいくと露店の屋根にぶつかり、粉砕した。

 

「キャッ……!」

 

 そして、小さな悲鳴を貴方が捉えた。

 

 慌てて声の方向へ視線を向けると、そこにはあの少女が居たではないか。

 

 どうやら今の今まで露店の影に身を隠して被害に遭わないようにしていたらしいが、先程の貴方が切り落とした触手が運悪くちょうどあの少女の隠れていた露店に激突してしまったらしい。

 

 貴方は自身の不注意に怒りながらも直ぐに少女の元へ行こうとするが、この蚯蚓擬きはそんな貴方の思考を読んだのか攻撃の手を高め、少女へと向かわせないようにした。

 

「ッ! なんであんなところに女の子が!?」

 

「まさか逃げ遅れちゃったの!?」

 

「不味いっ……!」

 

「ッ!」

 

 遅れて気がついたらしき女たちは顔を強ばらせ、長耳の混種は魔術の行使を中断させようとするが、金髪の女が叫ぶ。

 

「レフィーヤはそのまま続けて! あの子は私が助ける!!」

 

 そう言い、刀身が半ばからへし折れた剣で触手を叩き切り、少女の元へと駆けた。

 

 貴方も続くように進もうとするが、貴方自身の機動力は魔術や戦技を使用しなければそれほど高くないのに加えて、触手による妨害で遅々としか進めず苛立ちが募る。

 

 触手が少女に叩きつけられる寸前で金髪の女が少女の盾になるよう滑り込み、その背中に触手が落とされた。

 けれど、何かの魔術か貴方には分からなかったが、隔てるように風が膜のようにして攻撃を受け止める。

 

 だが、そんなことも長く続かないことは貴方は理解している。どんな防御手段も何かを対価として行使するのが当たり前だ。(尚、どこぞの延々と追いかけてきて発狂させて殺してくるクソ目玉は除く)

 

 貴方は攻撃の手が一瞬だけ緩んだ瞬間にルーンに還元していた武器を取り出し、刻まれた記憶の業を呼び起こす。

 

 雷が生じ、全身に纏わせると凄まじい速度で突撃。

 

 体全体のバネを行使させ、回転を行い両手に握られた斧が無数の触手を切り刻み、2人の前に立つと貴方は"死の騎士の双斧"を投げ捨て、今度は体全体を覆う指紋のような紋様の大盾"指紋石の盾"を取り出して構え、戦技"鉄壁の盾"を発動。

 

 戦技の発動と同時に閃光と凄まじい衝撃が盾を支える腕に伝わるが、貴方は石畳を踏みしめて受け止める。

 この程度の攻撃などあの約束の王ラダーン(とんでもボス)に比べたらちっともビクともしない貴方は難なく耐え切ると、衝撃が消えたのを確認した後にゆっくりと盾を下ろす。

 

 貴方の視界には凍りついた広場の中心に不細工な氷像と化した騒ぎの原因を見据え、夜と炎の剣の戦技による彗星を放ち完全に破壊した。

 

 粉々に砕かれたソレを一瞥し、貴方は背後の2人へ向き直る。

 

「えっと……」

 

 少女を抱きしめる女は困惑したように貴方を見つめていたが貴方はそれを無視し、膝を突くと少女に怪我はないかと語りかけた。

 

「この人とオウサマのお陰で大丈夫よ。びっくりしたけど間近で冒険者の人達の戦ってる姿を見れて寧ろ楽しかったわ」

 

 肝の座った少女の発言に貴方は苦笑し、その頭を撫でた後に少女を庇った女へ向き直ると助けてくれたことに感謝を述べる。何故か余計に困惑されてしまった解せぬ。

 

「アイズ!! 無事!?」

 

「いきなり飛び出すんじゃないわよほんとに!」

 

「アイズさん!! 大丈夫ですか!?」

 

「う、うん……この人が遮ってくれたから何ともないよ」

 

 仲間たちらしき女たちが集まり騒ぐが、貴方はふと耳長の混種も腹部に怪我をしているのが見えた。どうやらあのクソ蚯蚓にやられたらしい。貴方は別に無視してもいいが、こうして借りができた以上返すのが筋だ。貴方は礼儀正しく義理堅い褪せ人なのだ。

 

 聖印を握りしめ、聖句を唱えると貴方を中心に広範囲の治癒祈祷″王たる回復″が発動し傷を癒す。

 

「うわ、なにこれ!?」

 

「いきなりなにすんのよアンタ!」

 

 痴女二人が貴方に詰め寄りギャーギャー騒ぐが貴方は鬱陶しそうにしてると。

 

「……あれ? 痛みが……傷が消えてる……?」

 

「本当だわ……お膝の傷が消えてる。オウサマなにしたの?」

 

 耳長の混種が体の状態を確認し、少女が尋ねると貴方は祈祷を行使して傷を癒したことを伝える。

 

「まあ、オウサマって魔法も使えるのね。色んな武器も出し入れしてたけど多才なのね」

 

 お褒めにあずかり光栄である、貴方は少女からの賞賛に返しながらも自分をぶん殴ったアンチクショウのことを思い出し、追跡する前に懐から二つの道具を取り出した。

 

 貴方の手には精緻な彫刻の施された鈴と灰の納められた小箱が握られ、その二つを掲げると小箱の上で鈴を鳴らす。

 

 

リィ──────ン…………

 

 そこまで大きくない音のはずだが、不思議と周囲に澄んだ鈴の音が響き渡ると貴方の前の空間が揺らぐと白い煙のような物体が形を作ると顔を絹の布で隠した二人の人物が立っていた。

 その体はわずかに透き通っており、明らかに常世の存在ではないことがわかるがその二人はゆっくりと身じろぎをしたかと思うとどちらも膝をつき、貴方へ頭を垂れる。

 

 命令を待つ貴方の所有する遺灰の一つ″夜巫女と剣士の傀儡″に貴方は簡潔に指示を与えた。

 

 一つ、少女を蝶よりも花よりも丁重に扱うこと。

 

 二つ、少女を身命を賭して守ること。

 

 三つ、少女に害を与える存在を必ず排除すること。

 

 本来傀儡は意志などはないはずだが、この姉妹は貴方の命令に力強く頷くと立ち上がり少女のそばへ移動する。

 その突然のことに目を白黒させながら少女は貴方に尋ねた。

 

「オウサマ……この人たちはだぁれ?」

 

 彼女たちは貴方の友人で、少女を守ってくれることを伝えると優しく頭を撫でる。

 貴方の言葉に少女は頷くと傀儡に近づき、語りかけた。

 

「えっと宜しくね、オウサマのオトモダチさん」

 

 傀儡たちは少女の言葉に小さく頷くのを貴方は確認すると、次は金髪の女へ向き直る。

 

「えっと……その───」

 

 女が何かを言いおえぬうちに貴方は鞘に納めた夜と炎の剣を投げ渡した。

 放物線を描いて投げられた剣を女は反射的に受け止めると、怪訝な顔を浮かべるが貴方は簡潔に答える。

 

 あの少女を助けてくれた礼と破損した武器の代わりにソレを預けることを伝え、返事を待たずに貴方は踵を返して指笛を鳴らした。

 

 虚空から相棒のトレントが現れ、貴方は鞍に跨り勢いよく駆け出すのだった。

 

 

 




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