オラリオに褪せ人さんがくるそうです   作:タロ芋

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エルデンの外伝作品が出るみたいで書き上げました。


16 貴方、発狂する

──ラニ様に会いてぇなぁァァあっ!!! 

 

 貴方は発狂した。

 それはもう見事にキチゲを解放した。つねに狂ってるだろって? それはそうだが、今回の狂い方は薬物摂取してないタイプの狂い方なので別カウントである。つまりは禁断症状。それだとラニが薬物扱いで不敬だろって? 推しはそんなんもんだからモーマンタイじゃんね。

 寧ろこれを見たら彼女は『ふふっ、我が王は私がいないとダメだな*1』って言ってくれる。

 

 ともかく、貴方がオラリオに流れ着いて早数ヶ月。愛する伴侶であり、敬愛する主君でもあるラニから摂取できるラニウム*2が不足。

 

 どーにかこーにか彼女の彫像を掘ったり、彼女の絵を描いたり、祈ったり、脳内のイマジナリーラニとキャッキャウフフ*3して騙し騙ししてたがあえなくプッツン。

 

 ベルの鍛錬(という名の虐殺)中、哀れな子うさぎを3枚に下ろしながら貴方は発狂するのであった。

 

 これじゃあ身が入らないと思い、貴方は復活して地べたにこびり付いた汚れのように這いつくばってるベルに向けて今日の鍛錬は終了と告げる。

 

 ピクピクと痙攣しながらもベルは貴方に向けて「お、押忍…………」と答えると、貴方は弟子を抱えて闘技場を後にした。

 

 

 

「おかえり〜、うっわ、ベル君ボロ雑巾じゃないか……」

 

 ファミリアの本拠の廃教会地下室へ戻ると、ソファに座っていた炉の女神ヘスティアが貴方たちに気がつくと、ソファから降りて迎える。

 彼女は貴方に担がれているベルに気がつくと、その顔を引き攣らせて呟いた。

 

 自分も頼んだ手前、言いたくは無いが流石にやり過ぎじゃないか? と思いもしたが、ベルのステイタスを更新する度にえげつない伸びを見せるために口を噤まざるをえない。

 

 貴方は一人で百面相(愉快な変顔)をしてるヘスティアを横目にベルを奥の部屋のベッドへ放り投げ、手早く朝食の準備を済ます。

 程なくして机の上には貴方とヘスティアの分の朝食が置かれ、貴方とヘスティアは椅子へと座って食べ始めた。

 

「それで、君は今日はどうするんだい?」

 

 パンをちぎり、スープに浸して食べながらヘスティアは問いかけ、それに貴方はスパイスの効いた腸詰を咀嚼してきちんと飲み込んでから答える。

 

 祭壇を作りますねぇ!! (食い気味)

 

「へー、祭壇ねぇ……祭壇?」

 

 ヘスティアはスープのおかわりをして飲みながら貴方の発言を呟き、首を傾げてもう一度反芻した。

 

 祭壇ってあの崇めるアレ? いや、祭壇っていったら奉るあれしかないし、祭壇だよな。

 

「……ナンデ!?」

 

 祭壇isワイ!? 

 

 ヘスティアは思わずスープの器と匙を放り投げて叫ぶ。

 

 ぶん投げられたそれらが飛び散って床を汚す寸前に虚空から現れた夜巫女の姉妹の傀儡が見事な連携でスープと器、匙をキャッチ。

 

「誰ェ!?」

 

 これには貴方も賞賛を送ると傀儡は恭しく頭を垂れ、ヘスティアの前に器を置いて実体を解くのだった。

 

「え、誰ぇ!? ねぇ、誰なの!? 怖いよぉ!」

 

 貴方はヘスティアに向けて僅かにジトッとした目を向ける。ヘスティアは申し訳なさそうな顔をして謝罪する。

 

「ご、ごめん」

 

 確かに驚いてスープをぶちまけるのは行儀が悪かったもしれない、改めてヘスティアはスープを飲みながら貴方へ尋ねた。

 

「えっと、それで、なんで祭壇なんてものを作ろうと思ったんだい? ついにとち狂った?」

 

 なんかこいつ結構失礼だな? 貴方は目の前の女神に軽くイラッとしつつ、必要だから作るのだという説明にもなってない有無も言わせない気迫で言い放つ。

 その余りのマジっぷりにヘスティアは軽く引きながらも、個人の自由だしまぁいいかと引き下がるのだった。

 

 貴方とヘスティアは食事を終え、ヘスティアはバイトのために廃教会を発つ。貴方は地下室から外へ出ると祭壇を置くための場所の選定を始めた。

 

 やはり祭壇というのはどれだけラニが偉大かを知らしめるために立派なものにしなければならない。けれど、彼女の性格的に派手なものは好まない。つまりは主張しつつ且つしすぎない丁度いいものにしなければ。

 

 俄然、興奮してきたな。

 

 貴方はテンション高めに完成予想図を脳内で描き上げてるところで気がつく。祭壇を作るのはいいが、肝心の彼女への贈り物を用意できてないではないか……と。

 

 これには流石の貴方も此処でとどまってる場合じゃねぇ! とトレントを呼び出して駆け出した。

 

 目指せラニへと贈る素晴らしい贈り物の場所へ! 

 つまりは武器屋だ!! 

 

「ヒン*4

 

 一応忠告はしておくのは旅を共にした相棒としての親切心だが、既にラニに対する熱いパトスで脳みそがじゅくじゅくになってる貴方には届かないのだった。

 

 

 

 

 

 ───ナマクラしかねぇや

 

 とりあえずオラリオで評判の高いヘファイストスとかいう鍛治を司る神のファミリアへとやって来て店員に1番いい武器(ヤツ)を頼むと言って、持ってくるよう言ったまではいい。

 

 持ってこさせた武器はどれもこれも貴方の所有している武器たちに比べて1つ2つどころかそれ以下の性能と格の低さというガラクタしかないのだ。

 

 これには貴方も落胆を隠せず舌打ちをしてヘファイストスファミリアの評価を落とす。

 

 そんな貴方の思いを感じ取ったのか店員が掴みかかってきたが、貴方はビンタで黙らせて最低でも使者たちの扇笛(レアドロップ)のヤツを持ってこいと吐き捨てた。

 

 やっぱり迷宮(アナグラ)なんぞの篭ってる連中が使う武器なんぞこんなものか、と貴方は店を出ようとしたところで壁に掛けられていた一振の剣を見て立ち止まる。

 

『エルフ死ね死ねブレード』 『製作者:エニス・クロッゾ』

 

 武器の銘は糞の極みだが、貴方から見てこの剣は見事なものだった。

 流石に貴方の愛剣には及ばないが、貴方はその剣を手に取り何度か振るうと不意に気が付く。どうやらこれはとある能力(ギミック)があるようだ、と。銘はクソだが。

 

 貴方は気に入り、床に伸びてる店員を蹴りつけて起こすと剣の代金を支払う。

 

 エニス・クロッゾ、その鍛冶師の名を貴方は記憶の片隅へと刻む。この剣からは強烈な執念が感じられた。それはそうと銘はクソだが。円卓で貴方の武器を鍛えた混種のヒューグも同様に強い執念を持っていた。銘はクソだが。

 

 貴方の持論だが、歴史に名を刻むような武具を鍛えるのは強い執念を持ってなければならない。

 

 貴方は思わぬ拾い物に鼻歌を歌いそうなほど軽やかに歩みを進める。

 

 武器はダメだった為、迷宮(アナグラ)へと。

 

 

 

 〇

 

 

 迷宮内18階層、そこは森林と地中から生えてきた水晶が大量にある穏やかな光景と空気のある安全階層という場所だ。

 

「Graaaaa!!」

 

 飛びかかってきた巨大なネコ科の怪物を貴方は早速手に入れた長剣のエルフ死ね死ねブレードを振るい切り裂く。

 

 空気を引き裂いて軽やかに振るわれた刀身は容易く怪物の顔面を左右に切り裂き、内部を外気へ露出させた。

 

 凄まじい速度で振るわれた刃には血糊は付かず、貴方の足元に怪物が沈み息絶える。

 

 体内の魔石を摘出するとその体躯が灰へと還り、風へと攫われるのを貴方は見送ることなく歩み出す。

 

 ここに来た理由は敬愛するラニの贈り物を見つけるためだ。武器は貴方のお眼鏡にかなうものが無かった為に、仕方なく別のものを探しに来たのだ。ついでにクソみたいな銘の武器の試し斬りも兼ねてだが。

 

 取り敢えずは良さそうな宝石を見つけるのだ。幸いにもここは見た目だけならばいい。今向かっている目的地にならば宝石の鉱脈を知っている人物ならばいるかもしれない。

 

 今貴方が向かっているのはリヴェラという迷宮内で築かれた街だ。何故こんな所に街があるかは貴方にとって理由などどうでもいいため割愛する。

 

 襲いかかってくる怪物共を一撃のもと仕留め、魔石やドロップアイテムを回収。道中に生えている使えそうな植物や鉱石を採取しつつ長い道のりを歩み上がって下がって戦って、人工物の橋を渡り、そして334という文字を刻まれた粗末な作りのアーチ門を潜ってようやく貴方はリヴェラの街へと到着した。

 

──リヴェラの街──

 

 何処からともなく音ともにそんな文字が貴方の頭の中に浮かんだ……ような気がしつつも貴方は歩く。

 

 住人たちは皆冒険者らしく、粗野な雰囲気があるが活気づき各々が好きに商売をしたり酒を飲みかわしており事前に貴方が入手していた情報でこの街を『世界で最も美しいならず者達の街』と評していたのもあるが、確かに納得だ。それと、貴方がくぐったアーチ門に刻まれた数字はこの街が今まで破壊されてきた数だと言う。

 

 貴方は手頃な露店を見つけ、店主らしき浅黒い肌の女へと声をかける。

 

「おん? なんか用かい? 買い物なら適当に店の中のもんもってきてくんな。買取なら相場はこんくらいさ」

 

 貴方は店主にこの辺で宝石の採れる場所は何処か、と尋ねると怪訝な表情を浮かべた。

 

「宝石ぃ……? なんでまたンなもんを? 別に教えるのは構いやしないけど、流石にタダじゃあ教えらんないよ。せめて魔石かドロップアイテムを持ってくるか商品を買うんだね」

 

 店主の言葉に貴方はそれもそうかと頷く。

 ルーンに還元していた道中で得た魔石や怪物の素材を取りだし、机いっぱいに乱雑に置いた。

 

「うっわ、どこから出したんだいアンタ……?」

 

 どこからって、ここからですが? 

 なんか過去にも似たようなことをしたな、貴方はそんなことを思いつつ店主に早く話せと催促する。

 

 机の上の物品を検品しながらも店主は地図に幾つか印を刻んだ。

 

「取り敢えずこの場所なら宝石だったり、それを餌にする怪物の縄張りさ」

 

 地上に比べて桁が幾つか足りない買取金額を提示され、貴方は安すぎやしないかと思いながらもこんなもんかと飲み込んで軽い麻袋をルーンへ還して店を後にするのだった。

*1
とても嬉しそう

*2
んなもんはない

*3
賢者タイム中不敬すぎと思い至ってその場で自害

*4
絶対武器なんて渡されてもあの人喜ばんよ? 




感想評価待ってまーす

ラニ様を出す?

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