オラリオに褪せ人さんがくるそうです   作:タロ芋

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お待たせ☆


19 貴方、ダイナミックエントリー

 ───ブッコロ

 

 貴方のシンプルな殺意にエオヒドの宝剣が呼応し、赤いオーラが絡みつくと独りでに鞘から抜きはなたれ瓦礫を吹き飛ばして宙を舞う。

 

「■■■■■■■■───!!!」

 

 そして耳障りな鳴き声を上げるいつかの蚯蚓モドキをバラバラに解体し、核たる魔石を砕いた。

 貴方は瓦礫から這い出して鎧に着いた埃を払い、先程まで貴方が座っていた席に向かうと食べようとしていたステーキは地面に落ちているではないか。

 

 貴方はそのステーキを持ち上げるが、その表面には砂や砂利などが大量に付着しており殆ど食べれそうな部位など残ってないゴミも同然だが、貴方はそれを一息で頬張り咀嚼する。

 

 ガリゴリと砂や土、石を噛み砕いて肉の味ははっきり言ってしないしゲロマズの最悪の極みだが、貴方はお残しを許さない褪せ人だ。きっちり噛んで飲み込んで手を合わせてご馳走様でしたとマナーを守れる紳士なのだ。

 

 てわけで貴方はエルフ死ね死ねブレードを鞘から引き抜き、空いた方の手でその刀身根元から切っ先へ続く溝部分なぞると剣の真の力(ギミック)を解放する。

 

 エルフ死ね死ねブレードは臙脂色の刀身の全長が凡そ貴方が両の手をまっすぐ広げた長さをもつ剣で装飾は殆ど無く、外観は殆ど普通の長剣だ。

 

 けれど、その真価は魔力を流し込むことで発揮する。

 

 エルフ死ね死ねブレードは貴方の魔力を遠慮なく吸い取ると刀身部分が一定間隔でバラケて外れ、重力に沿って地面へと落ちるが、地面に触れる寸前に貴方は刀身の無くなった柄の部分を回す。

 

 すると、バラけていた刀身たちは意志を持った蛇のように蠢き貴方の周りを滞空すると貴方はとりあえず目に付いた蚯蚓モドキにむけて柄を振り下ろした。

 

 貴方の操作に従い、分離した刃たちは意思をもつかのように複雑な軌道を描いて殺到していき緑色のてらついた外皮へ牙を突き立てる。

 

「■■■■■■────!!?」

 

「な、なんだぁ!?」

 

「うぉ!?」

 

 既に戦っていた冒険者たちは蚯蚓モドキの突然の悲鳴と狂乱に驚き、慌てて距離をとり貴方は柄をぐるりと回した。

 刃たちは食い込んだまま肉を切り裂き、内部で方向転換し蚯蚓モドキの内部の蹂躙を始める。

 

 体内を引き裂かれる激痛に蚯蚓モドキはのたうち回りながら己の身体を傷付ける下手人の貴方をみつけ、潰そうと頭を開いて巨体で突撃してきた。

 

 けれど、貴方は一際大きく柄を動かすと刃たちは更に激しく体内を蹂躙し、貴方が蚯蚓モドキに潰される寸前に蚯蚓モドキの体内が弾け肉片が周囲に散らばり、頭部と胴体が別れて貴方のすぐ横を通過し地面を転がる。

 

 蚯蚓モドキは頭だけになってもしぶとく、貴方に噛み付こうとするがどこからともなく飛んできたエオヒドの宝剣が地面へと縫い付け、臭い口内の魔石を刺し貫き砕く

 

 ──お、おもしれぇぇえ……! 

 

 あっという間に始末を終えた貴方の気分は有頂天。何だこの武器めちゃくちゃ使ってて楽しいでは無いか。こりゃあお気に入り決定である。

 

 柄を回して分離した刃たちを回収し、剣の形に戻して貴方はルンルン気分で次の獲物を探すために走り出した。

 

 ひゃっほい、玩具はどこだ今の貴方はルンルン貴方。食事の邪魔をされてムカつくが、いい感じの発散道具たちもいるし貴方は許してやることにしよう。まぁ、下手人はぶち殺すが。

 

 そうして手当り次第に貴方はエルフ死ね死ねブレードで蚯蚓モドキをバラバラの挽肉へと変えていってると不意に森の一角が盛大にキャンプファイヤーされたのが見えた。

 

 貴方はその炎を見て相変わらずキレるとよく燃えんなあの剣、と呑気に思いながら蚯蚓モドキをもう一体バラバラにする。

 どうやら相当ご立腹らしく時々貴方も燃やされるが流石にあそこまではいったことがない。

 

 余程気に入らないことが起きたらしいと貴方はこのまま森全てを焼かれてはたまったものじゃないと思い、愛剣の夜と炎の剣のもとへ向かうことにした。

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 息を切らしているが、アイズは目の前の存在に対して1度たりとも目を離さず睨みつける。

 片方の手には血肉で作ったような赤黒い生々しい大剣を握る存在を。

 

 怯えた獣人の少女を追い掛け、持っていた気色の悪い胎児のような存在を閉じ込めた宝珠を見た途端に全身に走る怖気。

 吐き気に襲われながらも仲間たちと話をするため広場に戻ると示し合わしたかのようなタイミングでリヴェラの街を襲ういつかの食人花たちの群れとアイズを襲撃してきた正体不明の鎧の男。

 

「はぁ……面倒なのは嫌いなんだ。手足を1、2本落とせば大人しくなるか……

 なぁ、アリア?」

 

 男が口にした名をアイズは聞き逃すことは出来なかった。

 なぜならその名は愛する……今はもう聞くことの出来ない己の愛する母の名だからだ。

 

「ッ! 貴方は……なに……!?」

 

「フン……知りたいなら、私をその気にさせてみろ。

 言葉を飾るよりよっぽど楽だ」

 

 心底気だるげに男は言い放つや否や地面が陥没するほどの勢いで踏み抜き、アイズへと肉薄し大剣を振りかぶる。

 

「……ほう、避けるか」

 

「っ……!」

 

 高レベルの冒険者として自負のあるアイズですら初速を見失いかけたその一撃を避けれたのは腰から下げた宝剣からの思念のお陰だ。

 けれど、完璧には避けきれずハラリと地に落ちる数本の金糸にアイズは戦慄とともに宝剣へと感謝の念を送る。

 

 ───死にたくなれけばさっさと動け間抜け

 

 宝剣はそのような思念を飛ばし、アイズは鞘から借り受けた夜と炎の剣を抜き放って切っ先を向けた。

 

「……ほう」

 

 それを見て何処か感心したように息を漏らす。

 アイズの気迫に……ではない。その手に握られた宝剣に、だ。

 

 鞘から抜かれた刀身は周囲の空気が揺らぎ、相見えるだけで背筋を貫くような圧がその剣から感じられるのだ。

 

 何故そのような業物がアイズの手にあるかなどはどうでもいい、が。それはそれとして思わぬモノを見れたからか男は少しは楽しめるかと思い口角を薄く釣り上げて突撃する。

 

 そして始まるは無数の剣戟。

 常人が一を見る間に両者は十、二十と剣を交わす度に空気は引き裂かれ、刃どうしがぶつかる火花が明るく照らす。

 

 刃が地面へ深い裂傷を刻み、気がつけば100を超えたところで両者は思う。

 

「(……こいつ)」

 

「(……この人)」

 

「「(強い(未熟だな)!)」」

 

 戦況はアイズが若干押しているが、両者の考えは真反対だ。

 男は単純な身体スペックだけでアイズと切り結ぶことに対してアイズは魔法(母からの贈り物)というブーストに加えて夜と炎の剣(宝剣)という反則(チート)を使ってなお若干なのだ。

 

 つまり、同条件ならばアイズは敗北しているという事実に彼女は歯噛みする。

 

 男こと鎧で体格を隠し、顔を人皮で覆ったレヴィスは自分を殺せる可能性があるかと思ったが過大評価だったかと思い、刀身がボロボロの大剣の柄を更に握り締めて強く振るう。

 

「ッ!?」

 

 先ほど以上の威力を持ってぶつけられた一撃にアイズは弾き飛ばされ、たたらを踏みながらも体勢を整えようとするがレヴィスはそれ見逃すほど優しくはない。

 

 肉薄し、一気に攻勢へと踏み出したのだ。

 

 拳打を含んだ連撃はその軌跡が黒い影となり、アイズの()を抉りその下の肌に幾つもの裂傷を刻む。

 段々と捌き着れなくなった攻撃が着実にアイズの平静を奪い、焦りとなって剣筋へと現れる。

 

「フッ!」

 

「クッ……ァッ!?」

 

 咄嗟に鞘に収めたままだった愛剣を引き抜き、二刀流となって手数を強引に増やすことで対応する。

 

「付け焼き刃の動きなど意味が無いぞアリア!」

 

「うる、さいっ!」

 

 そんなのは自分自身が理解しているからこそアイズは思い描く。この宝剣の持ち主の動きを、戦い方を、攻め方を。

 けれど、やはりレヴィスの言う通り付け焼き刃でしかない。

 

「ハァッ!!」

 

 レヴィスが一際強い声とともに大剣が振り上げられ、宝剣を絡め取られるように弾かれ、空を舞う。

 

「あうっ……!?」

 

 腹部にめり込む足裏。内側から響く異音とともにアイズの身体は吹き飛んで行った。

 何度も地面をバウンドし、三半規管がミキサーによってかき混ぜられるほど転がったところで結晶にぶつかり停止するとレヴィスとアイズの間に夜と炎の剣が落下し、刀身が半ばまで地面へと突き刺さる。

 

「こんなものか」

 

 つまらなそうに吐き捨て、レヴィスはアイズへと近づいていくが不意に立ち止まると視点を下へ……地面へと突き刺さっている夜と炎の剣へと向けた。

 

 現在レヴィスの使用している大剣は全体にキズと罅が走り、刃こぼれもしており数度うち合えばへし折れるのを確信できるくらいには消耗している。

 武器など幾らでも調達出来るため、問題は無いが目の前に丁度いいものがあると思いレヴィスは宝剣へとなんの躊躇いもなく手を伸ばし、柄を握────

 

 ───身の程を弁えろ、下賎な輩が……!!! 

 

 瞬間、視界全てが紅蓮に染まる。

 

「!!!!?」

 

 灼熱の炎がレヴィスの身体を包み、鎧ごとその身体を炙る。

 普通の炎などが傷つけることなど叶わないはずの皮膚を容易く燃やし、肉を焦がし、魂すら焼き尽くすと錯覚する程の激痛がレヴィスを襲った。

 

「───────ッッッ!!」

 

 時間にして数秒程度だろうが、炙られた本人からは永遠に感じられるほどの時間が唐突に終了する。

 理由はレヴィスが剣を手放したからだ。投げ飛ばされた宝剣は何処かへと飛んでいき、その場には地面へ蹲る鎧に隠れていた本来のレヴィスの姿がそこにはあった。

 

 あの炎により鎧は焼け落ち、肌には酷い火傷とあちこちには炭化しており例え高位冒険者だろうと致命傷だと判断できるほどのダメージをレヴィスは負っている。

 

 だが、次の瞬間にアイズは目を見張った。

 

 傷口がボコボコと脈打つと、炭化していた部分が剥がれたかと思えばその下には真新しい傷一つない皮膚があったのだ。

 

「ハァ……はぁ……ぐっ、うぅ…………」

 

 呻き、もがきながら再生による苦痛を耐えレヴィスは立ち上がると忌々しい様子で夜と炎の剣を睨みつける。

 

「少しだけ驚かされたぞ……アリアッ……」

 

 下着すら燃え尽きたのか何一つみにつけてない姿でレヴィスはアイズへと近づいていく。

 アイズ何とか立ち上がろうとするが、体は言うことを聞かずもがくことしかできない。

 

 そして、その手が彼女へと触れようとした瞬間───

 

 

 ダイナミックエントリー! 

 

 どこからともなく現れた赤金の全身鎧がヤクザキックと呼ばれる技で彼女を蹴り抜き、勢いよく森の奥へと吹っ飛んでしまったのだった。

 

「……えぇ」

 

 アイズは困惑するしかできず、どこか気の抜ける声をあげるのだった。




じゃあ、失踪するから・・・・

ラニ様を出す?

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  • イマジナリーラニ様なら居るだろバカ
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