オラリオに褪せ人さんがくるそうです   作:タロ芋

2 / 23
ひゃあ!2話目じゃあ!!


2 貴方、オラリオに立つ

 見渡す限りの人、人、人。中には耳が尖っていたり、獣の耳や尾のある混種や背が子供くらいしかない者、ずんぐりとした者など様々な人種がそこには沢山いた。

 狭間の地にいたころでは想像ができないほどの活気と人々の目にある理性の光の有り様に貴方は思わず足を止め、少しの間だけ圧倒される。

 

 目が合えば即、殺し合いに発展して正に殺★伐といった有様だった狭間の地とはえらい違いだ。思わず貴方はそこらに居る冒険者に殴りかかったらどうなるかやりたくなったが、貴方は自制した。

 そんな貴方を横目にしつつ、貴方が助けた(ことになっている)少年ベル・クラネルはとある人物を見て手を振りながらかけて行く。

 

「エイナさぁぁぁん!!」

 

 貴方はベルの駆けていく姿を目で追い、その先にいる人物を見つける。眼鏡を掛けた茶髪の女だ。その女は呼ばれたことにより、肩を僅かに震わせ、顔をベルに向けた瞬間に思いっきり引き攣らせた。

 

「ベルくん!? 何その格好!!?」

 

 そういえば、と貴方は思い出す。ベルの格好が返り血まみれの赤茄子状態であったことに。

 返り血まみれだったのが日常茶飯事であった貴方からしたら別に気にすることでもなかったが、どうやらダメだったらしく女ことエイナはベルの首根っこを掴むとどこかへ引きずっていくのであった。

 

 貴方はそれを見送り、自分の役目は終わったと考え立ち去ることにしたのであった。

 

 

 

「ベル君、キミねぇ、返り血を浴びたならシャワーくらい浴びてきなさいよ……」

 

「すいません……」

 

 赤茄子改めベル・クラネルは担当アドバイザーのエイナ・チュールの言葉にうなだれる。

 ギルド内にある個室、テーブルを挟んで向かい合う両者。シャワーを浴びてさっぱりしたベルの前でエイナはこれみよがしにため息をついた。

 

「まったく。反省してるならいいけど、これからは気をつけるように」

 

「はい……。以後気をつけます」

 

「ん、それでアイズ・ヴァレンシュタイン氏の情報だったっけ? どうしてまた?」

 

「えっと、その……」

 

 ベルは頬を僅かに朱に染めながらも、一部始終をエイナに一連のことを説明を始める。

 思い切ってダンジョンを二層から五層へと下がった瞬間にミノタウロスと遭遇し、殺されかけたこと。

 追い詰められ、あわや壁の染みになりそうなところを"剣姫"アイズ・ヴァレンシュタインに助けられたこと。

 礼を言おうとしたが、そこから逃げ出してしまい走っていた所を赤金の見たことない全身鎧の人物の戦闘に巻き込まれ気絶してしまったが介抱されて、無事に送り届けてくれたこと。

 

 説明を聞いていき、耳を傾けていたエイナは話が進んでいく毎に表情が険しくなっていった。

 案の定、彼女の雷が落ちベルはペコペコと頭を下げて謝り倒す。ベルは彼女から言われた事を肝に銘じるのである。

 

「はぁ、それでベル君。君を介抱してくれたっていう冒険者の人かぁ……」

 

「あ、そういえばそうだった。エイナさん、あの人ってどんな人なんです? 明らかに深層に潜っていそうな装備をしてましたけど」

 

「ん〜……ソコなんだよねぇ。おまけに有角の馬型怪物(モンスター)調教(テイム)していて魔道具? から召喚できる冒険者なんて私の知る限り一人もいないのよね」

 

 近いところと言えば、ガネーシャファミリアの団長だが、彼女の性別は女。ベルの言っていた冒険者は男らしいとの事で、選択肢からは除外する。

 

 ベルは自分を助けてくれた怪物を従えたもう1人の冒険者のことを思う。

 迷宮内で自分のせいとはいえ、メリットもないのに介抱を行い無事に送り届けてくれ、気がつけばどこかへ消えていた恩人の1人。

 

「ちゃんと、お礼したいんだけどなぁ」

 

 駆け出しとはいえ冒険者の端くれ。命の恩人に何かを返すことも出来ないなんて名折れになってしまう。尚、アイズ・ヴァレンシュタインから逃げてしまったことを突っ込まれたら何も言えないのだが……。

 

 

 

 貴方は迷宮都市ことオラリオの街中、ベンチに座り手には揚げ物を持ちながらある人物と話していた。

 

「へー、色んなところを旅していて気がつけばココに居たんだね〜」

 

 背丈は貴方の腰ほど。伸ばされた黒い髪は鐘の髪留めでツインテールにし、変わった衣服を纏い、何がとは言わないが立派に育った美少女。名をヘスティア。

 彼女となぜこうなったかは少し前に遡る。

 貴方はベルの元から離れ、オラリオを散策していところ(こう)ばしい匂いを追っていた所にとある食べ物を販売している屋台と出会った。

 その食べ物の名はじゃが丸くんといい、蒸かした芋をすり潰したものをパン粉で包んで油で揚げるというシンプルな惣菜だ。

 

 狭間の地にいた頃でも良く食道楽のようなことをしていた貴方は目の前の食べ物に惹かれるのは必然。

 しかし、問題がひとつ。たった一つのシンプルな問題。それは────

 

 金がねぇ! 

 

 それは仕方ないだろう。狭間の地では文明が途絶えて久しく、貨幣制度なんてものはとうの昔に廃れ、品物の取引ができるくらいには正気を保っている者たちでの方法は専ら物々交換かルーンでの取引である。

 金目のものなんてあって欲しがるのは何処ぞのフーテンのパッチ(ハゲ野郎)だけである。おぉ、この先にゴミクズがあるぞ……

 

 ということで、後一歩のところという距離にあるというのに手に入らないもどかしさ。

 別に強奪しようと思えばできるのだが、貴方は紳士な褪せ人である。だが、それはそうと食べたいのだ。

 貴方はケースの中に入れられたじゃが丸くん(プレーン味)をじっと見つめること数分、見るに見兼ねたのか店員の少女ことヘスティアは貴方に声をかける。

 

「ねぇ、君。どうかしたのかい? そんなに睨まれてちゃ他のお客さんに迷惑なんだけど……」

 

 全身鎧の身長が2m近くある大男が屋台の前でじっと居たらそれは怖いだろう。ヘスティアの台詞に貴方は頷き、仕方なくそこから離れようとしたのだが。

 

「んー……、どこかに人手が空いてる人はいないかなー? いたら、じゃが丸くんサービスするんだけどなぁ……チラ、チラチラ」

 

 あなたが女神か? 

 

「女神だよ!?」

 

 ということで、貴方はヘスティアの提案にのり彼女がおばちゃんに了承を取り屋台の手伝いをすることになる。

 貴方はヘスティアからじゃが丸くんの作り方を教わり、それを実践。

 最初はいくつか失敗したが元々がシンプルな作り方なのと手先が器用な貴方は直ぐにマスターし、綺麗なきつね色な揚げたてのじゃが丸くんを提供することが出来た。

 味の方は心配だったがおばちゃん曰く『ヘスティアちゃんよりも上手だね!! 良ければ、明日から働かない?』らしい。

 屋台に来た客たちは貴方の揚げたじゃが丸くんを絶賛し、クチコミで広がり客足は何時もよりも多くおばちゃんは嬉しい悲鳴をあげヘスティアは汚い悲鳴をあげる。

 そして、在庫を全て放出した頃には空は夕暮れ時になっており、おばちゃんからはたいそう褒められたのである。

 

 今日は店仕舞いとなり、貴方はおばちゃんから報酬の紙袋いっぱいのじゃが丸くん+‪αでヴァリスというこの世界の通貨を貰った。

 貴方は兜に隠れてはいるが、ほくほく顔でその場をあとにしようとしたら。

 

「ね、君が良ければだけど少し話さないかい?」

 

 と、ヘスティアに言われ今に至るというわけだ。

 貴方はベンチに座り、色々とぼかしながら身の上を話しヘスティアは相槌を打ちながら共にじゃが丸くんを食べる。

 ついでにトレントも自分も食べたいという思念を飛ばしてきたので呼び出し、適当なじゃが丸くんを提供する。その過程でヘスティアがぎょっとしたが、そういう魔道具とでっち上げて事なきを得た。

 

「なるほどねぇ。行くあてがないのかぁ……」

 

 そもそも、この世界の住人ですらない。貴方はじゃが丸くんをもそもそ─兜の隙間にねじ込んで─食べながらどうするか、と思う。

 別に野宿は抵抗はないし例え雨に打たれようが溶岩の中を突っ切ろうがさほどダメージのない貴方にとって夜風は大した障害にはならない。(朱い腐敗はノーセンキュー)

 そんなことを考える貴方を横に、ヘスティアはウンウンと唸る。

 天界にいた頃は神格者として知られ、下界におりたばかりの時は神友の元に転がり込んで自堕落の極みを尽くしていたが、根っこは変わっておらず目の前で根無し草の子供─故郷では神やらなんならをぶっ殺しまくってるヤベー奴─を前にして放ってはおけない。

 思ったが吉日。ヘスティアはウン!と大きく頷き、隣で兜の角飾りを馬のような怪物に齧られ、じゃが丸くんのおかわりを要求されてる存在に手を差し出した。

 

「ねぇ、良ければだけど僕の眷属(子供)にならないかい?」

 

 なにか特典は? 

 

「え、と、特典!!?」

 

 貴方の問いかけにヘスティアは狼狽える。まさか、こんな答えが返ってくるとは想像など出来ようはずもなく暫く考え込んだ後、ヘスティアは渋々と言った様子でふたつある髪留めのうち片方を外すと、それを貴方に手渡すのであった。

 

「くぅ……、僕のお気に入りなのにぃ!!」

 

 そんなこんなで、貴方はヘスティアの世話になることになる。

 住処までの道筋、貴方はヘスティアをトレントの背に乗せて歩く中で話をする。

 

「一応、僕のファミリアには君の先輩にあたる子がいてね。挨拶は忘れちゃいけないよ?」

 

 挨拶は大事である。例え侵入してきた血の指(イカレポンチ)にもドーモ、血の指=サン。褪せ人です。オジギをして0.2秒でぶっ殺そうとするが、挨拶はするのだ。しないやつには壺大砲をぶち込むだけだが。

 

「それにしても、トレントくんはいい子だね〜。揺れが全く感じないからおしりが痛くないや!」

 

 ツインテールだった髪をポニーテールにしたヘスティアは自分を乗せて運ぶトレントの首筋を撫でる。

 美少女─実年齢は非公開─に褒められ撫でられたトレントはご満悦なのか軽快な足取りだ。

 貴方はそんな相棒に現金なヤツめと呆れる。他愛のない会話を続け、目的地に到着したのかヘスティアはその指を向ける。

 

「あそこが僕らの家だよ!」

 

 貴方はヘスティアの指した先を見つめ、それが目に映る。

 

 ───朽ち果てた教会が……

 

 貴方はヘスティアを見て、これっすか? と視線で訴えかける。

 ヘスティアはそれに対してこれっす、とアイコンタクト。

 

「ま、待つんだ君!! 確かに見た目はオンボロだけど地下室があるから!! そこで寝泊まりをするんだよ! 

 とうっ! 逃がさんからなー! 僕の髪留めをあげたんだからね! クーリングオフはきかないぜ!?」

 

 ヘスティアはトレントの背から貴方に飛び移り、肩車のような体勢となって視界を塞いで喚く。

 別にそう言われても貴方は逃げないことを伝え、喚くヘスティアを乗せたまま教会へとむかっていく。

 玄関の真上にある顔が上半分が崩れ、口元しか見えない女神像を見上げつつ、扉のない玄関口をくぐる。

 屋内な外観と負けず劣らずの半壊模様。屋根はあちこちに穴が開き、割れた床のタイルの隙間からは雑草の生え放題。

 空から振る日差しが辛うじてわかる程度の原型をとどめた祭壇を照らしていた。

 

「いつかはリフォームしたいんだけど、お金がなくてねぇ〜」

 

 たはは、苦笑いを浮かべて貴方から下りたヘスティアは先導し慣れた足取りで屋内を進み、祭壇の後ろに回ればそこにあるのは小部屋だった。

 薄暗い部屋には書物の納まっていない埃の被った本棚が連なり、1番奥の棚の裏には地下へと伸びる階段が見える。

 

 ここから先はトレントでは狭いために、貴方は相棒を霊体に戻せばゆっくりと階段を降りていく。

 深さはそれほどなく降りきった貴方は先に着いていたヘスティアが小窓から光が漏れる目の前の扉を開け放った、

 

「ベル君帰ったよー! ただまー!」

 

 身長的に僅かに屈んで貴方は扉をくぐって足を踏み入れれば、広がるのは地下室と言うには生活臭溢れる小部屋であった。人が暮らす分には、程々といった広さだろうか? 

 

「おかえりなさい神様! 今日は随分と遅かったです、ね…………って?」

 

 ヘスティアの呼び掛けに答えるのは部屋に入ってすぐ、紫色のソファーに座り、こちらに背中を向け本を読んでいた白い髪色が目立つ小柄な人物だ。貴方はその声におや? と反応する。随分最近、聞いたような声だ。

 そして、その人物は立ち上がりこちらへと体を向けた。色の抜け落ちた真っ白な髪、紅玉のような真っ赤な瞳、あどけなさの目立つ幼い顔立ちと全体的に華奢な体格。

 どこか兎のような雰囲気の少年を見て貴方はその名を思い出した。それと同時、貴方を見た少年は真っ赤な瞳を見開き固まる。

 

「いやー、ベル君! 聞いておくれよ!! ん? どうしたんだいベル君、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして?」

 

 固まる少年、ベル・クラネルに貴方は片手を上げて声をかける。

 

 ──HEY! 

 

 まさかの再会。世界は狭いと言うべきか、貴方は感慨深く思う。貴方の声にようやく動きだしたベルはヘスティアに尋ねた。

 

「か、神様! こ、ここ、この人って!!?」

 

「ふっふっふー、聞いて喜ぶんだベル君! 新しい家族がふえるぞぅ!」

 

「えぇ!? 本当なんですか!?」

 

 本当である。家族になるという意味はよく分からないが、貰うものは貰ったので貴方は暫く世話になる旨を伝える。

 事情が呑めたのか、ベルは喜色満悦といった様子で貴方に挨拶をした。

 

「は、初めまして? じゃないかな。えっと、改めて僕はベル・クラネルっていいます。あの時は助けてくれてありがとうございます!! それと、ようこそファミリアへ!」

 

「あれ? ベル君、彼と面識あったの?」

 

「い、いやー。ちょっと今日迷宮でですね───」

 

 詳しいことは端折るが、そこからベルが今日のおきた出来事を話しヘスティアに怒られたり、貴方に恩恵というものを刻もうとしたが出来なくて1悶着あったが瑣末な事だ。

 

「お、おいひいよぉ……。久しぶりのタンパク質だぁ!!」

 

「はふっ! もぐっ!! これ、とっても美味しいです!!」

 

 ベルとヘスティアと2人が勢いよくがっつくのは貴方が作った料理だ。

 料理、といっても貴方が持っていた食材を適当に鍋にぶち込み味付けを軽く整えた程度の寄せ鍋のようなものだが。

 しかし、2人からしたらつい最近まで3食芋、芋、芋のじゃが丸くん三連単である。味の違いはあるがさすがに連チャンでは飽きるし、何よりも成長期真っ只中のベルからしたら栄養の偏りが酷い。

 貴方がそれを聞いた時、さすがにないわー、と思ったので堪らずこうして料理を提供するに至ったのである。

 人間性やらなんやらがみそっかすレベルにまでイカれてる貴方ではあるが、ご飯に対する関心は並々ならぬこだわりである。

 というか、狭間の地にいた頃は食事とラニとの会話とトレントとの戯れだけが唯一の癒しである。メリナ? アレは空気みたいなものだから……(許さんメリ。メリメリしてきたメリ)

 

「うま! うまっ!!」

 

「朝昼晩、じゃが丸くんでウンザリしてたけど、神様が持って帰ってきてくれたものだから食べてたけど、普通のご飯がこんなに染みるなんて!!」

 

「ベル君! 君なんか失礼なこと言ってない? でも、目の前のご馳走を前にしたらどうでもいっか!!」

 

「「うまーい!!」」

 

 なにやらおかしくなってる2人を貴方は無視して今後の予定を立てる。恩恵というものを刻めなかったが、一応はヘスティア・ファミリアの一員ということとなった。

 明日にはギルドで冒険者として登録をし、迷宮に潜って金策を行い稼いだそれらを使ってこの建物の修繕を行うのが目下の目標だ。

 そこらの落ちてるもので弓矢の矢や投げナイフ、石鹸に解毒剤を作れる貴方からしたら建物の修繕くらい御茶の子さいさいだ。

 どうせなら貴方の愛するラニを祀る祭壇も作ろう。そうしよう。これはテンション上がる。

ラニ様を出す?

  • 出す
  • 出さない
  • イマジナリーラニ様なら居るだろバカ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。