ということで失踪するから・・・
貴方は全裸の痴女を蹴り飛ばし、森の中へと消えるのを確認せずに上げていた足を下ろして地べたに這いつくばってるアイズへと視線を向ける。
あちこちに裂傷を作り、元は美しかっただろう金髪も今は薄汚れて見る影もない。その瞳には困惑の色が滲んでおり、貴方が何故ここにという感情がありありと伝わってきた。
「あ、あの……ありがとう、ございます……」
それでも貴方に助けられたからかきちんと礼をするのは保護者たちの教育の賜物か。まぁ、貴方からしたら律儀なやつだな程度にしか思わんのだが。
取り敢えず貴方は地面に突き刺さってる愛剣の文句がそろそろ喧しいのでアイズにぬくもり石を投げつけた後に柄へ手を添えた瞬間、視界が炎に包まれる。
「!!?」
何やら小娘が目を見開いて叫んでるがこうなったのもお前のせいなんだが? 貴方は愛剣がとりあえずこれで許したるという思念と共に消火され、全身からプスプスと煙が空へと上がっていく、
流石に容赦なさすぎである。もし今の体力を可視化出来るなら半分ほど消し飛んだのではなかろうか?
「あ、あの、大丈夫、ですか?」
うん、おいしい!
味なんかしないのだが、なんかこう喉越しがヤミツキになる聖杯瓶をルーンへと還す。
それと同時に森の中から飛び出してきて、貴方へと斬りかかってきた痴女。
貴方は回収した夜と炎の剣で難なく痴女の攻撃を受け止めた。
耳障りな音を立てて互いの刃が接触し、火花が飛び散るが痴女の剣は込められた力から小刻みに揺れるのに対して、貴方は揺れることなく両の足も動くことは無い。
「ぐっ……貴様、何者だ……?」
通りすがりの一般暗月の王兼エルデの王です、貴方は夜と炎の剣を痴女の大剣の刃に滑らすよう動かし、手首を曲げることで貴方のすぐ側を通り抜けるよう誘導させる。
そのま痴女の剣を腕ごと切り飛ばして再びキックで今度は腹ごとぶち抜いて森の奥へと蹴飛ばした。
「ごっ……がっ……!?」
臓物と血液が軌跡に沿って汚い彩りを飾るが、貴方は大した感慨もなく、夜と炎の剣の戦技を発動させる。
愛剣を水平に構え、魔力を流し込む。すると、剣身から炎が吹き出し周囲を煌々と照らして空気を焼き焦がし、莫大な熱量を持ったソレを前方へと薙ぎ払う。
木々を燃やし、水晶を溶かし、地面を蒸発させる炎。
カーリア秘蔵の宝剣は真の力を以て下手人を貴方は森ごと焼き払う。
そして、炎が消え去る頃には綺麗さっぱり何も無くなった森だった跡地だけが広がり、中にいただろう怪物もその魔石やドロップアイテムすらも見えない。
だが、貴方は先の痴女を取り逃したと察する。貴方の内へ吸収されるルーンの中に痴女のものがないからだ。
代わりにあの大量の蚯蚓もどきのものが入ってきたことから、恐らくはあの痴女が身代わりとしたと貴方は予測して舌を打つ。
貴方は夜と炎の剣を鞘へと納め、用は一先ず済んだとしてこんな地下から出るため踵を返して貴方は歩き出そうとするが、すぐに貴方は足を止めることになる。
何故なら、貴方の行く手を阻むかのように金髪の少年を先頭にして露出の多い服装の平坦なのと贅肉のついたやつ、耳長と痴女にボコボコにされてた愛剣を貸した少女がいたからだ。
貴方は面倒だという感情を隠すことなく傍を通り過ぎようとするが、少年が横に逸れて貴方を邪魔する。
「すまないが、時間を貰ってもいいかな?」
生憎、貴方にそんな趣味はないのである。衆人環視の前で何言ってんだこいつイカれてんのか?
貴方はとち狂ったことを抜かしたガキなんて相手にしてらんねーのである。一刻も早くラニへと贈り物と祭壇を作らねばならんのだ。
貴方はガキを押しのけて進もうと───
「おいてめぇ! 団長が────」
「ッ! ティオネ!!」
短髪の褐色肌の女が咄嗟に長髪の髪を掴んで引き寄せる。そして走る一閃と宙に舞う黒髪……倒れる長髪、ティオネと短髪、ティオナ。
ティオネは震える手で首筋を撫で、自身の首がまだ繋がっていることを自覚して冷や汗を垂らして見上げる。
その目にはなんの感情も見せない瞳が己を睥睨し、アイズが振るっていた筈の宝剣がその手には握られており、先程まで自分の首があった箇所をなぞるように振られていた。
───コイツ、殺そうとした……?
確実に絶対に明確に明朗に。この赤金の鎧を纏う存在は路肩の石を蹴飛ばすように、虫を払うように、そんな気軽さで剣を抜き放ったと。
ロキ・ファミリアの面々は各々が武器や杖を構え、貴方に向ける。貴方は心底面倒なのは嫌いだと言った様子で吐き捨てた。
殺すか、と。
迷宮都市オラリオにおいて現在最強と呼ばれる己たちを前にして言いのけたことを虚勢だと判断するものはここにはいない。何故なら先の剣筋を誰一人として見切れなかったからだ。
加えて、まだ記憶に新しい仲間の1人が貴方に手も足も出ずに蹂躙されていることを。
アイズを簡単にあしらった怪人を容易く撃退したことを。
「…………っ」
こうして対面して改めて理解する。目の前の存在は過去オラリオにいた英傑たちよりも強いことに。
まるで、初めて孤高の王を前にしたかのような重圧がのしかかった。喉が干上がり、手にした武器が棒切れのような頼りなさを思い出す。
そして、誰かが踏みしめた結晶の砕ける音が開戦の狼煙となって────
「おい! やりすぎだぞテメェ!!」
る、ことはなかった。空気の読まない声とともに貴方の背後からやってくる存在が現れると、貴方の頭を引っぱたいたのだ。
貴方は振り返ると、所々焦げた様子の
「あん? そりゃお前、巻き込まれねぇように隠れてたんだよ。そしたら、テメェのぶっぱなした戦技が俺の隠れてた場所まで巻き込まれかけたってわけだ!」
危うく死にかけたんだぞ! とパッチが言ってきたが、んなこと貴方にゃ関係ねぇのである。貴方はハゲをビンタして黙らせ、宙を5回転ぐらいして地面へ墜落するハゲを無視し、指笛を吹いて
今度こそ、邪魔もなく貴方はその場を後にする。
「……行ったか?」
ハゲことパッチが体を起こし、
「ふぅ、危なかったなお前ら。ったく、歴戦って言う割にゃ見えてる地雷になんで突っ込むかねぇ……
ったく、自殺するんなら勝手だがせめてどっか遠くでやってくれや。そうしたら安全に追い剥ぎできるからな」
「き、君は……」
「俺のこたぁ、どうでもいいんだよ。いいか、これは忠告だぞ? アイツの邪魔をしようとだなんて思うなよ。ありゃハリケーンとか山火事のような災害だ。じっとしてやり過ごせ。それが長生きする秘訣さ」
言いたいことだけ告げ、パッチは槍と盾を持ち直すと歩いていってしまう。
今度こそ、誰もいなくなりその場にはロキ・ファミリアのもの達だけが残る。
不意に、この中で一番未熟なレフィーヤが地面へと座り込んでしまった。
「し、死ぬかと……思いました……助かった……」
顔を真っ青に染め、杖を抱きしめて呟いた言葉に一同は出すことは無かったが心では同意してしまう。
「……まさか、あそこまで意識の切り替えが軽いとは思わなかったよ」
「あんなのと一緒にいられる奴がいたら、そいつの気が知れないな……」
「一応、アイズに剣を貸してあげてたのに全然躊躇う様子がなかったよね」
「ティオナが引っ張らなかったら今頃死んでたわね私……」
「ほんと、マジで誰にでも噛み付くのやめなよー?」
姉のやらかしに流石にティオナも怒り心頭といった様子で注意すると、今回ばかりは自分の失態だと思ったティオネは謝罪した。
「すみません、団長。私が逸ったばかりに……」
「いいや、流石に僕もアレは予測できないさ。だが、今回のは失態でもある。きちんと反省してくれたらいいさ」
「……はい」
貴方は迷宮から帰り、廃教会へ入ると邂逅一番に弟子たるベル少年がジャンピング土下座を繰り出して叫ぶ。
「師匠! 僕に魔法を教えてください!」
かまへんよ、貴方は了承するのだった。
ラニ様を出す?
-
出す
-
出さない
-
イマジナリーラニ様なら居るだろバカ