オラリオに褪せ人さんがくるそうです   作:タロ芋

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セルブスってセブルスと見間違えてる人いると思うですよ。ソースは私。


21 貴方が教えるパーフェクト魔術教室

 薄暗く、埃っぽい空間。その中央には椅子と机、教卓と黒板。

 周囲には雑多な巻物や青い輝きを放つ水晶が乱雑に箱に詰められ、並べられていた。

 

 椅子にはふわふわとした質感の白髪と真っ赤なルベライトの瞳を持つ少年ベルクラネルが座り、何処かワクワクした面持ちで扉を見つめており、どうやら誰かを待っているようにも見える。

 

 程なくしてコツコツという足音がベルの鼓膜を震わせ、期待でドキがムネムネだ。

 

 魔法、嗚呼魔法。なんて素晴らしい響きなのだろう。

 

 カッチョイイ詠唱とともにカッチョイイ杖からカッチョイイド派手な炎や雷を迸らせて敵を蹂躙する夢いっぱい(ドリーミー)素晴らしい(マジェスティック)な全世界の少年少女が熱望するまさに憧れ(ローニング)!! 

 

 伝説の武器とかもいいけど、やっぱり魔法も使えなきゃ英雄といえんのだ! 

 

 やがて、足音は止まると扉が開かれる。

 

「ッ!!」

 

 おめめキラキラ、ハッピーハッピー。ベル少年の背後には猫たちがお手手を広げてジャンプする。

 

 扉の奥から最初にでてきたのは革製のブーツとローブらしき裾。そして全体が現れた。

 星の運行が描かれた鮮やかな青の装束を纏い、顔を仮面で隠し鍔の内には同じように星の運行が描かれた大帽子というまさに魔法使いといった有様の己の師がそこにはいた。

 

 ひゃっほい、夢にまで見た魔法まで後一歩。頑張れ少年。全ては君の頭脳にかかっているぞ。

 

 

 貴方は目ん玉をキラキラしてる弟子に向け、尊大な口調で告げた。

 

 

 此度の授業は星の魔術についての暗黒と美しさを学ぶ。ここでは愚かな魔術の撃ち合いなどということはやらん。これでも星の魔術かと思う諸君が多いかもしれん。ふつふつと湧く星の源流への恐怖、ゆらゆらと立ち昇る星の命、繊細な星の運行、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……

 

「????」

 

 諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。我輩が教えるのは、暗月の夜を永遠にし、狭間の地をマラソンし、アステールの目ん玉にファックをする方法である。──ただし、マルギット道場で挫折するウスノロどもより諸君らがまだましであればの話だが。

 

「????」

 

 ポッター! 

 

「誰!? 僕!?」

 

 グリフィンドールにマイナス5点! 

 

「グリフィンドールってなに!? マイナス!?」

 

 まぁ、おふざけはこれくらいにしておくとしよう。貴方はセルブス(クソ野郎)の装備からいつもの如く坩堝の騎士の姿へ戻し、どっこいせと引っ張り出した椅子の背もたれを前にして、その背もたれの上に腕を乗っけて座る。

 

 混乱してる様子のベルはどうやら揶揄われたことを察して頬をふくらませるが、貴方からしたら怖くもなんともないため、その額を指で弾いた。

 

「いったぁい!?」

 

 上体を仰け反らせて倒れるベルを見下ろして貴方は、どうして魔術を習いたいのかと思ったのかを尋ねると赤くなった額を擦りながらベルは貴方へと話し出した。

 

 貴方が不在の間、ベルは犬人の少女、名を"リリルカ・アーデ"という者をサポーターとして雇った。サポーターというのは冒険者になれない非力なものがなる職種で、冒険者に同行して迷宮のアイテムを回収したり冒険者のサポートをしてお零れに与る……所謂雑用というやつだ。

 ともかく、そのサポーターの少女のお陰かベルはここ数日いつも以上に深い階層へ潜ることが出来、今まで以上に稼ぐ事ができた。

 

 そこまで聞いて貴方はベルに話がなげぇから3行でまとめろとせっつく。ベルは言われ通りに掻い摘んで話す。

 

 要約すると、サポーターの少女がなにか訳ありで助けになりたいけど、まだまだ力が足りないので手っ取り早く貴方に魔術を教わりたい……らしい。

 

 ほーん、こう言ったらなんだがお人好し過ぎないかコイツ? あって数日程度のガキ相手によくそこまで親身になれるものであると逆に貴方は感心してしまう。

 

 まぁ、別に魔術を教えるのに異論は無いし了承してるため貴方は適当にベルでも使えそうな杖と魔術を記された魔導書を取り出して投げ渡した。

 

「わわっ……! 師匠、これは?」

 

 貴方はベルに後を付いてくるよう告げると歩き出し、その後ろで慌てた様子で追いかけるベル。

 現在貴方たちは祝福の転移で円卓に来ており、今から向かうのは修練場ともいえる広場だ。

 

 いつの間にこんなのが出来ていたのかと思いもしたが、そもそも円卓自体異なる次元にあるという、なんでもありなのだから勝手にアプデ(姿を変える)という無法もあるだろう。

 

 適当な人形を貴方は修練場の中央に立たせると、貴方は杖を内から取り出し何度か手の中で回しながらベルへと問いかけた。

 

 ベルの中で魔術とはどんなイメージなのか、と。

 

「えーと、魔力用いて杖を握って詠唱をして、こうやってぶわーっとして放つ……っていう感じです」

 

 なるほど凄くふんわりしてる認識だが、原理は概ねあってるだろう。

 

 貴方は杖を振るい、魔術を行使した。勿論、詠唱などという無駄なことはしない。

 

 輝石が杖の先から発生し、それなりの速さで案山子へと着弾し大きく抉る。

 

 この世界の魔術は貴方からして変だと思った。何故魔術の行使に詠唱が必要なのだ? と。それに加えて、誰一人として同じような魔術を使わない。いや、使えない……

 

 魔術は大雑把にいえば、学べば誰だろうと使える規格化された技術だ。だというのに、この世界の魔術……いや、魔法はどれもバラバラで統一性がない。

 

 貴方の推測だが、恐らくは恩恵とやらが影響してるのだろう。

 この世界神々(クソども)が降臨するよりも前の時代の古い英雄譚では似たり寄ったりの魔法を行使している場面がいくつもあったがその数は恐ろしく少ない。それが変わったのは神々が降臨した前後だ。明らかに魔法を使う場面が増え、多種多様となっていた。

 

 つまりは神々が降臨する前と後で魔術、魔法と行使するシステムが変化したのだろう。

 そのせいで体系化されかけていたものが、全く別物となった魔法のせいで魔術が長い時間をかけて消失していった。

 

 恐らくは恩恵は魔術を使用する過程での術式を恩恵がメモリストーンの代わりとなり、行使するためのスイッチを詠唱で代用してるのだろう。人類にとって恩恵は解析不能のブラックボックス……故に魔法は未だに謎が多い。

 

 ないのとあるのとではやはり開拓する速度が違うのだろう。狭間の地では恩恵などという便利なものは無い。だからこそ、探究し解き明かし極限まで無駄を省いて今の魔術が出来た。

 

 かの鈍石は才能がなくとも、長い時とたゆまぬ努力で神の奇跡すら跳ね除ける魔術を編み出してみせた。やはり人は素晴らしい。神なんぞクソ喰らえ。

 

 お師匠(セレン)譲りのスパルタ指導が幕を開け、ベル少年は久しぶりの悪寒に背筋を震わせしまうのだった。

 

 一先ずベルのスタイル的にゃ足を止めて魔術を行使なんてやってられんので、基本的には足を止めず速度重視のものをピックアップ。

 動きを阻害しない杖……はないため仕方ないので何本もストックのある星見の杖を半ばからへし折って形を整え、尖端に付けられた輝石も削る。……どうせならデザインも変えちまうか。

 

 貴方はベルがひいこら言いながら魔導書を読むのを横目にベルの杖を作り上げ───

 

「……師匠」

 

 なんや、貴方は作業の手を止めてベルの顔を見やると、いつもの人畜無害フェイスが眉間に皺を寄せ、なんとも言えない顔をしていた。そして、徐に口を開くと。

 

「……この本読めません」

 

 ………………そういや狭間の地の文字とこの世界の文字は違うんだった、と貴方にしてはくだらない凡ミスをするのだった。

 

 貴方は手早く魔導書を翻訳した紙の束をベルへと渡し、ベルが分からず聞いてきたところを適宜教えていく。

 貴方は基本的分からないところは分かるまで教えて貰ったり、教えることの出来る褪せ人だ。聞くはいっときの恥と言うやつである。

 

 座学も程々にしつつ、実践へと移る。

 

「えーと、こう動かして……こう!」

 

 ベルが杖を振るうと体の内側から何かが抜けるような感覚とともに杖の先端に何かの紋章が浮かんだ。数瞬後、そこから青みがかった翠色の礫が構築され、それなりの速度で案山子へと飛来する。

 案山子の胴体へ礫が着弾し砕け、顕となった着弾箇所をよく見てみると胴鎧を僅かに凹ませているのがわかった。

 貴方からすれば失笑ものだが、本人からすれば初めて魔法を使えたという事実に感動して両手を万歳三唱。やったねベル。君も魔術師の仲間入りだ。

 

「わ、わぁぁぁぁっ!! やった! 見ました師匠!? 魔法! 僕も魔法使えましたよ!!」

 

 余りの喜びように貴方も思わず昔のことを思い出す。お師匠の指導の許、初めて魔術を行使した時はここまではいかなかったが、当時の貴方もそれは大層喜んだものだ。

 貴方は懐かしい記憶を思い出し、胸が暖かくなる。お師匠もこんな気持ちだったのだろうか? ……まぁ、彼女の最期があんなのになってしまったのを初めて目撃した貴方はあまりのショックに暫く寝込んだのだが。

 

 閑話休題、とりあえず貴方はベルの内包魔力がどれだけあるか知りたいので、そのまま貴方は輝石の礫を出し続けるように指示を出す。

 ベルは言われた通りに杖を振り続け、魔力の続く限りに輝石の礫を放ち続けると。

 

「あ、あれ……?」

 

 ふらりとベルの体が揺らぎ、堪らず膝を突いて荒い呼吸を繰り返す。

 ベルが礫を放った回数は11回。12回目を放とうとしたが、出来なかったことから、ベルの精神力は11くらいだろうと当たりをつけた。それにしても魔力をカラッケツにしたくらいで立つことができないとは軟弱である。これは体力も付けさせなければならないな……と、ついでにベルの訓練のメニューも修正することにした。

 

 取り敢えずは知りたいことは知れたと貴方はタリスマンをいくつか見繕うとベルへ投げ渡す。時間をかければ魔力を回復させるそれらを身につけておくようにベルに告げて、貴方はベルとともに円卓を後にする。

 

 

 

「あぁ! 忘れてた!!」

 

 唐突にそんなことを叫ぶベル。その手にはバスケットが握られ、恐らくは誰かからの借り物なのだと貴方は判断した。

 貴方はベルに遅くならないうちにさっさと渡してくるよう告げると、相変わらずの健脚でベルは何処かへと走っていくのを見送る。

 

 地下室には貴方の作業の音だけが響く。こうして作業をするのもなんだか久しく感じる貴方は何処と無く楽しげだ。

 その理由も初めて出来た弟子へと贈るものというのも含まれているからか、存外悪い気はしない。

 フハハ、幸運なヤツめこれで喜ばなかったらまじビンタである。……喜ぶよな? うーむ、心配になってきた。心配になった貴方はとりあえず詰め込めるだけ機能を詰め込むことにする。なぁにあって困るものでは無いのだ詰め込め詰め込め。

 

 そして気がつけば空も暗くなり、いつの間にか帰ってきてたベルはソファで寝息を立てており何時手に入れたのか分からない分厚い本を枕にしてるでは無いか。

 貴方はそんな様子に呆れながらルーンから毛布を取りだして掛けてあげるのだった。

 

 薄暗い空間にベルは立っていた。すぐ目の前に仮面が浮かび、問答を繰り返す

 

 仮面は言う、ベルにとって魔法とは? 

 

 ベルは答える。魔法とは炎。暖かく絶えることのない不滅の炎と。

 

 仮面は問う、魔法に何を求める? と。

 

 ベルは答える。想い人に追いつくために。隣に立つために。あの、瞳の中へと。

 

 仮面は問う、それだけか? と。

 

 ベルは答える。何度も叶うのならと、英雄のようにと。御伽噺の彼らのように。不相応だとしても、不格好でも。

 だって、既に己は英雄を目にしているのだから。暗く冷たい月のような瞳を宿した不思議な英雄を。

 ベルの思い描いたような英雄とは違うが、確かにあの人は英雄だ。そして、あの人は想い人に追いつけた人だと理解している。

 

 仮面は子供だと、呆れたように言う。

 

 ベルはバツが悪そうにするが、それでもと前を向いて言うのだ。あの日、あの時、恐怖しながらも英雄(師匠)の手を取ったことは後悔していないと。

 

 仮面は笑う。それでこそ、僕だ……と。それを最後にベルの意識が暗転し────

 

『ふむ……何か王の残滓を感じたと思えば興味深い魂だな。小さいが、この輝きはいいものだ』

 

 不意に声が聞こえた。

 

『うん? ほう、気がついたか……私以外に視られていた過去があったということか? 

 まぁ、いい……恐らくお前は王の関係者で相違ないな?』

 

 王? 王って誰だろう? やることがめちゃくちゃな人は知ってるけど……

 

『ふっ、ここでも我が王は好き勝手やっているようだな。……王のことを懇切丁寧に説明してやってもいいが、私は急いでいてな。それはまた別の機会にしておくとしよう』

 

 暗くて、冷たくて、けれど優しい声。貴方は誰? 

 

『ふむ、私の名か……本来なら無礼だと断ずるところだが、お前の目は我が王に似ているな。何かに焦がれ、追いつこうとする者の目だ。……やはり、いつ見てもこの輝きを持つのは良い目だ』

 

 小さな手が頬に触れる。冷たい手が段々と輪郭をなぞり、顎を持ち上げられ見えない誰かが目を覗いた。

 

『気が変わった。お前にはこの名を教えておくとしよう……』

 

 その人の姿が顕となった。御伽噺に出てくる魔女のような格好で、普通とは違う真っ青な肌に四本の腕。潰れた右目に重なるようにもう一つの霊体の顔が寄り添っている綺麗な顔。

 

『レナ……雪の魔女レナ。では、さらばだ英雄に憧れる小さな人の子よ』

 

 それだけを言い残して魔女は消え、ベルも意識を今度こそ落としてしまうのだった。




じゃあ、失踪するから・・・・

ラニ様を出す?

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  • イマジナリーラニ様なら居るだろバカ
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