あと評価や感想多くてビックリですね。それだけ楽しみにしてくれる人がいるので嬉しいやら怖いやら。
貴方は軽快な足取りでギルドの外へと出ていく。その手にはズシリと詰まった麻袋が握られていた。
インベントリを無駄に圧迫していたゴミの処理で金が貰えるなどボロい商売ではなかろうか? といっても、全部が全部換金を終えたわけではない。
あの騒いでいた豚もといロイマンをビンタで黙らせつつ、貴方が持ってきた素材は未知の素材に加えて高額なものが多かったことにより査定に時間がかかること。
貴方1人だけのために換金をさせてはほかの冒険者の換金するための金が金庫からなくなってしまう等とロイマンとは別の桃色の髪が目立つ職員に半泣きで言われてしまい、取り敢えずは可能な範囲で最大限貰える分だけ貰ったというわけだ。
そして、後日に査定が終わり次第、定期的な形で一定額が貴方に渡されることになった。
なお、インベントリにはまだまだ残ってることを言ったら面白いことになりそうではあったのだが、貴方は心優しい褪せ人だ。それを伝えるのは後日にすることにした。(伝えられたギルド職員の胃は破壊される模様)
貴方は目的のひとつである冒険者登録を終え、次はどうするかと考える。
迷宮にもぐるのも悪くは無いが、まだまだ未知のものが多いオラリオを見て回るのもいいだろう。善は急げとばかりに貴方は歩き出す。
そして、
「俺が! ガネーシャだ!!」
貴方は半裸の変態とポージング勝負をしていた。
「いよっ! 肩にちっちゃなウダイオスが乗ってんかい!?」
「ナイスバルク!」
「土台が違うね!!」
貴方は頭の装備はそのままに鍛えられた肉体を惜しげも無く晒し、観衆(主にマダムたち)たちはポーズが決まる度に黄色い声を上げる。
貴方と対峙する者はガネーシャという浅黒い肌に顔を半分象をもした仮面で隠した神だ。
何故、貴方がこうして街中で突発ボディビル大会を行っているかは数刻ほど遡る。
貴方はオラリオの街中を屋台で買った沢山の食べ物を片手に散策していた時。
「俺が! ガネーシャだ!」
そんな大声に続けて歓声が聞こえてきたのだ。
その男はまさに芸術だった。
褐色の肌には玉のような汗が浮かび、引き締まり余分な脂肪のない鍛えられた筋肉が躍動する。
胸筋はプルプルと弾み、6つに割れた腹筋は実に硬そうではないか。
なによりも、その顔に着けた仮面。何故に象? というかなんで衆人環視の前でポージングしてんの?
というかなんで周りの人達は通報するまでもなく、逆にもっとやれーとかかっこいいと言ってるのだ?
と、普通の人なら思うことなのだが貴方はワナワナと身体を震わせ胸の内で叫んだ。
───コイツ、出来るッ!?
貴方は戦慄した。いつ後ろから掘られるか狙撃されるか分からないというのにコイツは鎧をつけず、おまけに自分の位置をさらけ出すようなことをしている。つまりこいつは
ならばこちらも脱がねば無作法というもの……。
貴方は鎧をその場で脱ぎ捨て、確りとした足取りでその男の前へと進んでいく。
「む? このガネーシャに何か用か?」
ガネーシャはポージングを維持したまま全裸になった貴方に問いかける。
それに対し胸の厚みを横から見せ、体の太さや背中、脚、肩など各部位の厚みを強調するポーズ……貴方はサイドチェストで応えた。
「何っ!?」
ガネーシャは
「俺が、ガネーシャだ!」
上体を逸らし、胸を張るように両腕を上げて大きく力こぶを作るダブルバイセップスを行った。
貴方も負けじとポーズを変え、背中をガネーシャへと向ければ腰に手を当て背中の広さを全面にアピールするラットスプレッドを。
「なかなかやるな!! ならば、これだ!!」
・
・
・
時間は戻り貴方VSガネーシャの突発ボディビル大会が勃発したのだ。
戦いは熾烈を極め、一進一退の攻防が繰り広げられる。
貴方たちの周りには気がつけば採点をつける者たちもおり、ポーズが決まれば得点の書かれた札を掲げ、貴方とガネーシャにポイントされていく。
そして、
「合計得点を比べ、僅差で挑戦者の勝ちです!」
「フッ、実に見事だった! 君もまさにガネーシャだ!!」
貴方はガネーシャと熱い握手をかわし、健闘を讃え合う。
貴方は基本、神なんて肥溜め以下のドグサレクソボケ死に腐れの─以下数十行にも及ぶ罵詈雑言─という存在と思っているが、目の前の神は例外とみてもいいだろうと貴方は思う。
「では、勝者には『これでいつでも君もガネーシャだ! 仮面』を贈呈します」
貴方はガネーシャが付けている仮面とほぼ同じデザインのものを受けとった。
「うむ、次は俺が勝たせてもらおう!」
さらばだ! ガネーシャが言えば、恐らく配下らしき数人を引連れて去っていく。
貴方は彼らを見送れば、突発ボディビル大会は終了したのだった。
貴方はマブが出来たことに加えて中々イカすものが手に入って御満悦だ。ギルドで金を貰った時よりも機嫌が良さそうにも見える。
空は夕暮れ時、貴方は思ったよりも夢中になっていたのか今日はもう廃教会へと帰るためにゆっくりと歩み始めた。
程なくして、
「あ、おーい!」
そんな声が聞こえてくる。貴方は足を止め、振り返れば元気よく手を振って貴方のもとへと走ってくるベルがいたでは無いか。
貴方は彼に向けて軽く手を挙げて返せば、少年の顔を輝かせる様を見て、人懐っこい愛玩動物のようだと思う。
「奇遇ですね! 貴方もこれから本拠に帰るところですか?」
ベルに尋ねられ貴方が首肯すると、丁度いいからとベルと共に帰ることになった。
道中、ベルは今日あったことを事細かく貴方に言い、貴方は適度に相槌を打つ中でベルの動きに僅かな違和感を覚えて。
その事を指摘すれば、ベルは恥ずかしそうに頬を掻きながら言う。
「実はゴブリンに不意打ちでやられちゃって……。
大した怪我じゃないのでポーションを使うのが勿体ないから自然に治るまで放置ってところです」
回復アイテムの節約は大事だ。貴方がまだまだ狭間の地を巡っていた序盤の頃は聖杯瓶の使用回数が少なく、肝心な時に無くなっていて死んだのは懐かしい思い出だ。
別に今も使い切らないわけではないが。
貴方は過去の思い出を懐かしみながら左手に聖印を装備し、ベルに回復祈祷を放った。
黄金の光がベルの体を包み、貴方の突然の行動に両手を上げてガードの体勢をとっていたが何も無いことに気がつき恐る恐る目を開ける。
「い、今のって……アレ?」
ベルは言い終わらぬうちに気がついた。体の痛みが無くなっていることに。
その場で体の調子を確かめ、ベルは事情が呑み込めたらしい。
「……ひょっとして、魔法で怪我を治してくれた感じですか?」
魔法ではなく祈祷なのだが、貴方は訂正するのも面倒なので否定せずに肯定すればベルは頭を下げる。
「ありがとうございます!」
これくらい安いものだ。貴方はそう考えながら、ベルと共に帰路を進んでいく。
余談だが、本拠で貴方が換金した金銭をヘスティアに渡したらベルと揃って面白いくらい悲鳴をあげていた。
多分次くらいでダンジョン潜る・・・かも?
ラニ様を出す?
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出す
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出さない
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イマジナリーラニ様なら居るだろバカ