オラリオに褪せ人さんがくるそうです   作:タロ芋

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おまた


8 貴方、驚く

「うう……ん…………」

 

 少年、ベル・クラネルは目を覚ます。

 ぼんやりとした視界は明瞭となっていき、見知った天井が映れば鈍い思考のまま体を起こした。

 

「……」

 

 ぼさぼさの髪に口の端から涎が零れ、まさに寝起きといった有様のベルは少しづつ昨日のことを思い出す。

 酒場で憧れの人であるアイズ・ヴァレンシュタインを見つけ、狼人の冒険者に嘲られ、悔しさに酒場を飛び出せば、迷宮に着の身着のまま突っ込み、ペース配分もクソもない無茶な進軍を行い、袋小路で怪物に囲まれ、殺されかけた時につい最近ファミリアにやってきた貴方に助けられたことあたりからモヤがかかってしまう。

 怪物に殺されかけた辺りからほとんど記憶が曖昧なベルは何を思ったか、突如ベッドの上でのたうち回りだしたではないか。

 

「ボワァァァァッ……!」

 

 別に怪我からくる痛みからではなく、自分自身の自己嫌悪と羞恥心から来る外にぶつけようのない馬鹿みたいな感情の発露だ。

 

 そのまま数分くらい呻き声を上げ続け、荒ぶり続けたが段々と冷静になってきたのか音量が小さくなっていけばベルは呟く。

 

「シルさんに謝らなきゃな…………」

 

 彼女には色々と迷惑をかけてしまったことに対する謝罪をすると決め、彼女にいるであろう酒場へ向かうためによしとベッドから立ち上がると同時に寝室の扉が開く。

 

「あ、おはようご、ざ……い…………ま?」

 

 ぬるぬるてかてかと粘液が滴り、吸盤のついた触手が蠢く。

 耳障りな音を立て、ソレはベルの出した音に反応を示しゆっくりと動き尖った嘴のついた顔らしき部分を向け視線が合う。

 首から下は人型だというのに、その上は明らかに異形のものだった。

 背筋が震え、呼吸が荒くなり目の焦点がぶれ震えが止まらない。

 なんだ? 一体何なのだこれは? 

 疑問が湧いては消えていく。

 明らかに普通の生物ではないそれと遭遇したことからくる恐怖に探索者(ベル)正気度(SAN値)チェックを。

 成功で1。失敗で1d5のSAN値減少を行います。

 

 1d100=96(フ ァ ン ブ ル)

 

 致命的失敗(ファンブル)をしたため、さらに追加で1d3のSAN値減少を。

 

 1d5+1d3=8

 

 一定時間内にSAN値が5以上減ったので一時的発狂状態になります。

 

「アァァァァアッッッ!!!?」

 

 

 

 弟子の奇行がそろそろ終わった頃合いかと貴方は判断し、せっかく作った朝食が冷めないうちに部屋を覗くと、何故かベルは貴方の格好を見て発狂したでは無いか。

 貴方はなんだこいつ失礼なやつだなと思いながら喧しいベルに対して精神分析(ビンタ)を3回ほどかまし、黙らせる。

 

「ハ!? ぼ、僕は一体何を……げぇ!?」

 

 両の頬を真っ赤にして正気に戻ったベルはキョロキョロと見渡し、貴方の顔を見てまた叫ぶ。

 貴方は現在、頭の装備を蛸頭に変えておりベルはそれに対して恐怖をしているのだ。

 しかし、当の貴方はそんなことに気が付かないし、むしろイカスだろこれ? 活きがいいんだ。イカすといえ(脅迫)というセンスの持ち主なので恐らく一生相容れないだろう。

 

 とりあえずベルにもう1発ビンタを行いつつ「なんでぇ!?」貴方はベルの首根っこを掴んで椅子に座らせた。

 

 机の上にはバスケットに盛られた程よい焼け具合のパン。

 皿には半熟の目玉焼きに腸詰のソーセージ。

 ボールには新鮮な野菜のサラダというオーソドックスな朝食が置かれている。

 

 ベルは目を輝かせ、貴方が席に座ると同時に手を付け始めるのだった。

 

 

 

 貴方は腸詰を食べながら、ベルに今日はどうするかを尋ねる。特に予定がなければ豊穣の女主人へ行きたい旨を伝えた。

 すると、パンに貴方の作ったロアの実のジャムを塗ったのを齧り、不思議そうな顔をしていたベルは貴方からの問い掛けに答えようとして慌てて口の中のものを飲み込もうとするが。

 

「あ、は……ングッ! ───ゲホッ、ゴホッ!? 

 み……水……!!」

 

 それがいけなかったか、案の定咽てしまい苦しそうにしているベルに貴方は呆れながらグラスに水を注いだのを渡してやり、受け取ったベルは勢いよく中身を呷る。

 

「す、すみません……」

 

 恥ずかしそうにしながらも気を取り直し、ベルは貴方の問いかけに答えた。

 

「とりあえずは師匠のいった通り、シルさんのところに行こうと思います。昨日のことを謝りたくって…………」

 

 ならば話は早い。朝食を終えたら酒場に行くことになり貴方とベルは手早く食べ進め、食器を洗えば見苦しくない程度に身だしなみを整えて廃教会を発つのだった。

 

 

 

 時刻は正午。空には燦々と輝く太陽が照らし、人通りの多いストリートをベルたちは歩いていたのだが。

 

「(……なんだか妙に視線を感じるなぁ)」

 

 通行人たちがベルと貴方のそばを通り過ぎれば二度見を繰り返すのだ。といっても、その視線の先は主にベルの隣を歩く人物に向けられていた。

 確かに冒険者では全身鎧はあまり見かけないが、いないというわけではない。

 物珍しさというよりも、どちらかといえば…………

 

「(……畏怖?)」

 

 己の師となった人物がなぜそのようにみられているのか不思議なベルは首をかしげつつも、目的地に到着し立ち止まれば声を上げる。

 

「なんだこれ……」

 

 店の前の石畳は陥没して放射状にひび割れており、幾つか血痕が見える。

 続けて、本来なら店内と外を仕切っているはずの扉も可動部が強引に引きちぎられたかのようにひしゃげており、中の様子が覗ける有様だった。扉の板は近くの壁に立てかけられているのも見えた。

 

 少しの間だけベルは逡巡していたが、埒が明かないと思い入口の前に置かれた"closed"の文字のスタンドを避けて店内へ入る。

 貴方はどうやら店の外で待つようで、ベルを見送り店の壁に背を預け腕を組んだ。

 

「す、すいませ〜ん……」

 

 薄暗い店内に入り、ベルが声をあげれば。

 

「申し訳ありません、お客様。当店はまだ準備中なので、時間を改めて起こしになっていただけますでしょうか?」

 

「端的に言えばミャーたちのお店はまだやっていニャいから、おとといきやがれだニャー!」

 

 店内でテーブルを拭いていたエルフとキャットピープルの店員かベルに気づき、すぐに対応をしてきた。(その過程でキャットピープルの店員はエルフの店員から肘打ちをくらっていたが)

 初心なベル少年はココ最近性癖にエルフスキーが追加したためか、ドギマギしつつもエルフの店員に事情を話す。

 

「えっと、すいません。僕はお客じゃなくて……その、シルさん…………シル・フローヴァさんはいらっしゃいますか? それと、女将さんも……」

 

 

 

 

 貴方はベルが店内に入っていくのを見送り、特にやることも無くインベントリから干し肉を取りだして齧ろうとすれば。

 

「ワン!」

 

 ──!!! 

 

 貴方は即場に警戒度をMAX。装備をガチ(頭を白面、残りは山羊)に切り替えれば手には屍山血河(ちいかわ)を持って鳴き声のした方を睨みつける。

 

「ワフゥ?」

 

 つぶらな瞳。小さな体躯。全身を覆うふわふわの毛皮。ふりふりと揺れる尻尾。

 貴方の足元には見たことの無いとても可愛らしいマスコットがいたでは無いか。

 

 貴方はその可愛らしい存在を見て電撃が走ったかのような衝撃を受ける。

 

 何だこの愛らしい存在は? にっくき犬野郎(あんちくしょう)と似ているが、こんなにも愛らしい小動物が犬の訳では無い。

 皮膚はズルムケでその下の筋肉が露出してなければ、完璧にイッちゃってる目ん玉剥き出しのべろ丸出しでとんでもない速さでこちらの(タマ)を狙ってくることもない。

 

 つまりこいつは犬ではない。貴方は一挙三反にして博覧強記な脅威の頭脳(知力99)で推理を行い結論づけた。

 

 貴方は装備をいつもの坩堝(なお頭は蛸頭のまま)に戻せばふわふわの不思議生物に目線を合わせるように膝を折り、干し肉を石畳においてに手招きをする。

 

「ワン!」

 

 すると真意が伝わったのかこの不思議生物はピコピコと尻尾を揺らして貴方に近寄り、干し肉の匂いを数度嗅げば勢いよくかぶりつく。

 

 貴方は目の前のご馳走に夢中の不思議生物に対価とばかりに存分にモフることにした。

 

 

 

 

『冒険者ってのは生きてなんぼさね。お前の連れは高位冒険者もぶちのめせるようなやつだから存分に技術を盗ませてもらうといいさ』

 

 ついでにどんどん金を落としていきな! 頼れる女将こと我らがミア母さんに激励され、ベルは元気よく返事を返して外に待ってるであろう師の元へベルは外に出る。

 

「師匠、お待たせしました! さぁ、迷宮にいきま……しょ、う?」

 

「ワフ、ワフッ〜……♪」

 

 ここか? ここがぇぇんか? お主も好き者よのう……

 言葉にすればそんな感じでベルの目には好き放題に撫で回されてるふわふわな毛並みの子犬と師匠でもある貴方が映っていた。

 

「その犬どこにいたんですか師匠?」

 

 ───!!? 

 

 ベルが聞けば、貴方はグルンと振り向き驚いた様子で目をかっぴらく。

 すわ、何かやらかしたのか!? とベルは戦々恐々としてしまう。

 

 ──ディスイズイッヌ? (これは犬ですか?)

 

 すると、徐に貴方がそんなふうに視線で問いかけてくる。

 

 ──イヌっす

 

 ベルは頷く。

 マジか、マジなのか……貴方の知る犬とこの世界の犬はどうやら別物らしい。

 そんなことを思いながらも犬を撫でる手は止まらなかったりするのだった。

ラニ様を出す?

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  • イマジナリーラニ様なら居るだろバカ
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