何してたって?TRPGだよ。
昨日の信仰カルトによる地下鉄毒ガス事件は日本中を震え上がらせた。日本全体でカルト宗教への対策運動などが起こり、政府もこれに動員された。
そして、その波は公安にも届くのであった…
「カルト教の本部への一斉捜索か…」
誰もいない事務室で、クァンシは書類を落ち着いた目で確認していた。しかし、真意を見るならばクァンシが落ち着いているとは言えず、もはやその逆と言えるだろう。
クァンシが本部から直接手渡された書類は、毒ガス事件を起こしたカルト教への一斉捜索を警察全体で行うこと。そして、その中心組織として公安対魔課を使用する事が書いてあった。
窓の外では鳥が忙しなく鳴き、クァンシの苛つきを増させていく。仕方ないと思いながら椅子から腰を上げ皆を呼び出す準備をする。
ーこれからが本番なのだから。
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「カルト教の突入すかぁ?!」
「そうだ。お前たちにはその一斉捜索の中心組織としての働きが求められてる。」
「…前の事件のせいか」
「お前は現場にいたからな」
あの事件からたった1週間でこの一斉捜索が決まったのは異例の状態だった。しかし、この急な決定を下せるのは単にカルト教団が"危険な悪魔との契約により事件を起こした実績を持つ"からであろう。
そして、それはデビルハンターによって構成された公安対魔課にこのような大役を担わせる原因となっているのは自明の理であった。
「私…人間相手の戦闘なんて初めてですよ?」
「井伊乃の言い分も分かるが、上からの命令だ。それに、人間が襲ってくるかは分からないしな。」
「でもクァンシ、流石に人間相手の戦闘に慣れてない奴を
「分かってる、だから特訓をするぞ。」
「訓練…?ワシはもう丸山と三島を見とるぞ?」
「砲代はそのまま二人を見てもらうが、その前に一斉捜索に来てもらう人員を発表する。」
全体に緊張が走る、なんせ一斉捜索に参加する人間はつまり人殺しをするかもしれないからだ。公安対魔課は現在の時点では、対人訓練を視野に入れた訓練を受けていなかった。めっきりその名の通り、対悪魔を想定した訓練を受けた人間や民間デビルハンターからやってきた人間で構成されていたからだ。
そして、クァンシは一人づつ名前を読み上げていく。面子としては砲代、三島、丸山、井伊乃、花御、佐々木、クァンシ、岸辺の8人であった。
この面々は一課の中でも負傷率や撃滅率が高く、まさに少数精鋭の部類に入る者達であった。
「俺もっすか…?」
「俺がやれるとは思えないです…」
三島や丸山は下を向き、クァンシに申し出る。しかしクァンシは"私は死なないと思った人間しか選んで無い"と言って、二人を激励した後7人以外を職務に戻らせる。
「一斉捜索の日は今から2週間後…本当に時間がない。お前たちは、今から訓練だけに専念しろ。」
緊張感が溢れる。
新人も先輩も等しくである。
「じゃ、訓練の面子を発表する。」
クァンシは砲代の肩を引っ張り、自らの元まで引っ張り出す。どうやら、教師役はこの二人らしい。砲代は三島、丸山、岸辺をクァンシは花御、井伊乃、佐々木を担当すると言ったのだ。理由としては単純な実力と、対人戦闘への慣れ具合と言うらしい。
話は終わりとクァンシが言うと、砲代は気だるげにいる岸辺のスーツの襟を掴んで引きずる。もちろん、行き先は屋上である。
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やけに鳥がうるさい日、屋上では今日も訓練をしていた。岸辺の容赦のない木刀使いは砲代の二の腕や足の腿に傷を負わせるが、その実、致命傷になるような部位には攻撃できずにいる。
岸辺がまたその木刀で頭を攻撃しようとするその寸前、頭を目掛けて拳が飛んでくる。
執念深いほどの拳…いやメリケンサック使いは三島のアイデンティティである。寸前でかがみ、岸辺の鳩尾に拳を喰らわせたかと思えば、右フックを準備していた三島に悶える岸辺を盾にする。
三島はそのまま岸辺を殴り飛ばしてしまうが、砲代はまだ力を抜かない。砲代は背面からくる攻撃を、さらりと避け左腕をそのまま後ろにいる丸山に喰らわせる。無事鼻に拳は当たり、丸山の鼻からは鼻血が出てしまった。
「…これで、またワシの勝ちじゃな。」
「チッ……」
「またかぁ…」
「負けっすね…あ、ティッシュあります?」
丸山にティッシュを渡した後、砲代は屋上の端にある小さな出っ張りに腰を下ろす。
「丸山何度も言わせるな、お前サンは大振りすぎる。その斧を振り下ろすのに何故0.5秒も掛かるんじゃ?」
「…うっす。」
「次に三島お前サンは今日は良かったぞ、岸辺と挟み撃ちにしてしまおうとするのはいい作戦じゃった。じゃが、攻撃が単調じゃ。威力を考え拳でやるのも結構じゃが、足技も使わなきゃならんぞ。」
「スー、はい!」
「最後に岸辺じゃが…」
「なんだよ?」
「お前サンはやはり一番強い、今回もよかった…じゃがせめて言うなら、戦闘中に余計なことを考えるな。」
「…」
砲代はひとしきり助言を下した後、腰を上げ部屋の中に戻ろうと足を運ぶ、もう訓練開始から五日が経とうとしている。
砲代としては焦りなどは一切感じていなかった。岸辺の圧倒的センス、丸山の武器の扱いのうまさ、そして三島のその計り知れないパンチ力は公安屈指であることは間違いないし、岸辺は例外ではあるが新人二人に関しては、訓練開始前から特別訓練を起こっているため明らかにセンスは磨かれている。
砲代は今晩の晩御飯を考えながら、ドアに手をかける。その瞬間、後頭部に向かって一本のナイフが飛んでくる。砲代は寸前の所で自分の軍刀を盾にナイフを弾き、ナイフが飛んできた方向に目を向ける。
そこには臨戦体制の岸辺が一人立っていた。
「まだやれるだろ?」
「…あと一戦だけじゃぞ。」
その後、夕暮れまで屋上では男達の声が聞こえたのだと言う…
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「教祖様、ご機嫌はいかがですか?」
その部屋にはいくつものお香が焚かれ、鼻をつんざく様な匂いと共に、その全体が薄暗くオレンジの淡い色で照らされている。
教室ほどの大きさの座敷の奥には、一際大きな髭の生えた男が座禅を組んでいる。教祖と呼ばれた男は自分を呼びかけた男に目を向けた。
「よい。それより、ロシアからの武器輸入は進んでいるか?」
「もちろんでございます。悪魔部隊も順調に増兵中です。」
そうかと大男が呟けば、質問を投げかけた男は会釈をして部屋から退出する。部屋にはネズミが入り込み、汚れているがその大男は気にしていないのか、それとも気づいていないのか、焦点の合わない目で遠くを見つめていた。
「カルトの悪魔よ。私と契約せよ。」
部屋には薄気味悪い笑い声と、不気味なお香が部屋を満たしていたのであった。
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さて、そろそろ第三章も大詰め…楽しんでいきましょう。
原作突入まで見守りたい人
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いえす!
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いやじゃ!