それと、少しグロ注意。
日常の崩壊というのは、案外突然のものである。
それをマキマは今、自覚した。
目の前に広がる、爆風と飛び散る建物の破片を、マキマとアキは呆然とみていた。先程まで、あったはずの温かな団欒の象徴であった、家はその原型を消す程に崩壊し、吹き飛ばされてしまったのだから。
「嘘……」
そこに残ったのは、荒れた木々と、剥き出しになった地表、そしてどこかの子供の鳴き声だった。
「タイヨウ!何処だ!」
ふと正気になったアキは声がする方に歩を進める。吹き飛ばされ、荒地が少し剥き出した、木々の裏。
「おにぃ〜…お兄ちゃぁ〜〜ん!!」
ここにあったのは……
………下半身の無い人間に抱かれた、タイヨウの姿であった。
その死体の切れた上半身の切れ目からは、内臓が露出し、ぐちゃりと白い雪を真っ赤に濡らしている。目は虚で、しかし、まだ生に縋り付かんと、こひゅー、こひゅーと微かな息遣いだけが聞こえる。
「大丈夫です……か…ぁ……ぁあ!!」
アキは気づく……気づいてしまった。
この人間、見窄らしく、生にしがみつき、下半身を吹き飛ばされた哀れな人間。
アキには、その顔に覚えがあった。
出会ったばかりとはいえ、タイヨウやアキを宥め、マキマの父であった、男。
紛れもない。
石原砲代、その人であったのだ。
「誰じゃ……」
出血で、もう脳に血も上らず、目も見えなくなっているのだろう。砲代は右手を何度も、頭の方へ動かそうとする。
「オレです!アキです!」
「……アキ…か……」
まるで、希望を見た様な、オアシスを見つけた様な声。
すると、砲代はその死に体の表情を、おかしくニヤリとさせ、アキの方向に顔を向ける。
「アキ…ワシの……頭の…ひも……を抜け…!」
目はもう見えていないのにも関わらず、ギラギラと闘志を見せ、口を凶悪にニヤリとさせる。白く濁った目は、強く、鋭い眼光を見せている。
アキは何が何だか、分からなかった。
これが夢なのか現実なのか、自分の知り合いが真っ赤になって、死にかけの状態で、頭にある紐を引っ張れというこの状況が、酷い悪夢の様に感じたのだ。
ひどい悪夢だ。幼いアキはそんなことを思う。
「あ…?…え?……うん。」
戸惑いながら、アキは砲代のこめかみにある拉縄を引っ張る。
一帯にはタイヨウの泣き声と、ゴォーと言う風の流れる音と共に……
爆音が広がった。
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
荒野を見つめて、一人の少女が泣いていた。
冷たい雪に膝をつけて、その目から大粒の涙をなん度もこぼした。頭はぐわんぐわんと、まるでジェットコースターに揺られる様な感覚になり、胸はまるで誰かに心臓を強く、強く握りしめられている様に痛かった。
「ぁ…ぁあ!!うわぁあああ!!」
閉め出した喉から出てくる声は、異様に震える。咽び泣く声があたりに響く。
「嫌だぁあ!なんで!なんでぇ〜!」
涙をこぼして何度も地面を殴る。自らの打ち付け用のない不甲斐なさを吐き出す様に、一心不乱に何度も、何度も。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
ー痛い。痛い。痛い。痛い!!
なんで!なんでこんなに、なんであんなに。
胸が苦しい…!胸が痛い…!
マキマには見えていた、いつもの日常が。
夕食を一緒に食べる記憶が、水を溢して怒られる記憶が、裸を見られて砲代をビンタする記憶が。
いつもの日常。変わらない平穏。
マキマが本当に求めていたもの。
それを。
たった一瞬で。
風と共に吹き飛ばされたのだ。
監視用の小鳥が吹き飛ばされた、その瞬間。声を上げ、逃げろと言った瞬間。爆風と共に消えた愛すべき人。私の父親。私の唯一。私の…
きっと、死んでしまった。
きっと、生きてない。
きっと、戻らない。
私の。私だけの。私のための日常。
マキマの脳内は一種の精神崩壊を起こした。
そして…
「………もう。いいや。」
たまる。溜まる。心の闇。
いつしか涙は止まり、ぐるぐる目は黒く濁る。
表情は死に、そこには……
一人の悪魔が立っていた。
ヒュゴーとなる荒地中、それには爆発音など聞こえていなかった。
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ps.なんと、ついに三十話を迎えました!
本当にありがたい限りです!!これからもどうぞ「進め歩兵よ!大砲片手に!」にご期待下さい!
原作突入まで見守りたい人
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いえす!
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いやじゃ!