私も驚いてる。
ー急げ、急げ、このままではもっと被害が出てしまう。
海上を大砲ほどのスピードで加速しながら、砲代は敵の後を追う。自分が倒れていた時の誤差は、明らかに致命的で、もしかしたらもう既に大陸に到着しているかもしれない。日本海を南下し、台湾海峡を通過する。着水と同時に、また大砲を海面に撃って加速する。
南シナ海を通過し、マラッカ海峡を通過する。行く先の海面には、大きな波紋が残っており、幾つもの転覆した船や、炎上している船がある。
ー急げ、急げ、大陸に上陸してしまう!!
腕の大砲を、足に移しては、より加速させる。
しかし、悲しいかな。
見えてきた大陸では、もう既に煙が上がっている。インド南部にできた一直線の、荒廃した通過後を通る。耳にするのは、多くの人の叫び、怒号、号泣。
目を向ければ、炎や煙に混じって、褐色肌の人々が、泣きながら瓦礫を退けている。唖然としながら荒廃した地を見ている。叫びながら家族の名を呼んでいる。
「クッッ…ソォォォォォォォ!!!!!」
ー飛べ!飛べ!なお早く!!
山を越え、谷を越え、国境を越える。
屍と瓦礫の山を越え、平野部が見え始める。
いつか見た地、満洲の地を越える。ここまで来ると、どんどん気温も下がっていく。ロシアの極東の寒さはその日マイナスを優に越え、砲身には氷が少しずつ付着してきている。
氷結する砲身、近づく火薬の匂い、そして……!
「……見えぞ!」
足の火砲をぶちかます。
浮上する体を大きく開き、腕を曲げ背中におくる。そして、頭の火砲に全てを移す。
あの時の再戦。
そして、因縁の消滅。
「死に去らせぇぇ〜!!この阿呆ンダラァ!!」
……爆音が走る。
その巨大な銃口で出来た頭に火花が走り、地面に落下していく。
だが、まだ足りぬ。
両腕の火砲を肥大化させる。
それは もはや大砲と言うには
あまりにも大きすぎた
大きく 長く 強く
そして 大雑把すぎた
それはまさに 艦砲だった。
右手には全長を25mを超える砲と左手に30mを超える砲を構える。そして、発砲。
その衝撃はまるで、世界を揺るがした様に錯覚するほど。砲弾は地面に落ち、頭を最後の気力で砲代に向ける銃の悪魔に直撃する。
爆発と同時に飛び散る肉片と、銃弾。
砲代が、地面に着地した頃には、
……絶命した銃の悪魔と、血だらけの砲代が君臨していた。
「……今度こそ仇は取ったぞ…ドン太郎。そして…」
砲代は後ろを振り返る。
銃の悪魔が通り過ぎた、惨たらしい程の荒野。そして、そのずっと向こうで死んだであろうヒルコと早川家の存在を、砲代はただ感傷に浸りながら思い出していた。
もう一度、体を戻し、銃の悪魔の死体を見る。砲代は感じていた。違和感を、何か重要なものを見落としている、つっかえを。
明らかに弱っていた
…その時であった。
「…?なんじゃ?」
音が聞こえる。
ヴヴヴヴヴと言う機械音が。何故か、心に響く音が、何処か待ち望んでいた音が。
咄嗟に、砲代は振り返る。まるで、親に呼ばれた子供のように。
「……!お前サン…」
銃の悪魔の死体を切り上げ、這い出てきたのは、一匹の悪魔。臓物のマフラーを首に巻き、黒い体をし、そして。
「身体中の電鋸…!」
四本の腕についた電鋸。
そう。
ここに存在したのは。
風穴だらけのチェンソーマンであった。
「お前サン…大丈夫か?」
「……ヴァ?」
こちらに顔を向け、目と目を合わせる。
チェンソーマンはまるで品定めをする様に、砲代を直視する。
その瞬間。
「…ヴァァア!!!」
チェンソーを回し、臨戦体制を取り始める。
「……ここで、お前サンに会うとはのぉ…」
砲代も、もう一度、頭の拉縄を引き抜くのであった。
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
ー私は駆けつけられた公安デビルハンターに保護された。その時には、涙は枯れて、もう"石原マキマ"はいなかった。
私は戻ったんだ。
ただの"マキマ"に。
次に記憶があったのは、公安上層部の前だった。
閑静な部屋の中、男達と椅子に座った私。
「砲代君は死んだのかね。」
とても酷い匂い。
これは、きっと
「はい。」
「…なんだぁ〜、そんなに落ち込んでいないな。」
「……悪魔ですので。」
「そうかい。まぁ、飼い主の手を噛む狂犬が消えた事は喜ばしいな。」
その醜悪な顔をくしゃりと変え、笑顔を見せる。
その後、つられて上層部の面々が笑い始める。
何も感じない。
何も。
何も。
「これから、君の管轄は内閣になる。」
「分かりました。」
「内閣直属のデビルハンターになるんだ。嬉しいだろぉ?」
「……学校は、どうなるんですか。」
そう言うと、眉間に皺を寄せる。
マキマの目の前に座った男が、まるでつまらぬ冗談を聞いたように、鼻で笑う。
「なんだ。行きたいのか?」
睨みつけられる。
私はそれを、表情のない顔で返す。
「はい。」
「何故?」
「人間社会に溶け込む為に、必要だからです。」
感情の起伏のない声で、返答する。
その男は、またフと鼻で笑うと、醜悪な顔で笑う。
「まぁ、いいだろう。では、これからもよろしく頼むぞ、支配の悪魔。」
「はい。」
手が痛い。
血が少し滲む手のひらを見て、言い聞かせる。
私は戻ったんだ。
私は、戻ったんだ。
これが、普通だったんだ。
これが……
「助けてよ…お父さん……」
虚無の中、私はそう呟いた。
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さぁ、ついに対面した、因縁の二人。
次回もお楽しみに!
ps.章の名前を変更しました。
原作突入まで見守りたい人
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いえす!
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いやじゃ!