さて、何転もする最終章。
砲代の帰還は何を生み出すのか?!
…額に水滴が落ちる。
砲代が目を覚ますと、そこは霧に囲まれ、雨が降り頻るとある山の中であった。山内では雨が降りザァザァとした山の声の様なものが、森全体に響き渡っている。
起き上がれば、二月の冷たい風が木の葉を揺らし、自分が山の中にいる事を、再認識させる。
砲代は、顔に降ってきている雨水を拭き取り、木陰に隠れる。
「……腹が減ったのぉ〜」
あれから何時間…いや何日、眠っていたのだろうか。日付もわからぬ。
爆風に巻き込まれ下半身が吹っ飛んだ後、直ぐに拉縄を引っ張ってもらった為か、今は全裸である。空腹、焦り、寒さ、そんなものがどっと砲代に襲いかかる。
おもむろに拉縄を引き上げるが、血が足りていないのだろう。眉間から少し砲身が出た程度で、完全に悪魔にはなれない。
「…カァ〜……歩くかぁ…」
そう言って、砲代はふらふらと足元もおぼつかないまま歩き始めた。
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木陰を移りながら移動し、山を降りていく。
5日も遭難したが、やっとの思いで人里に降り、服を貸してもらい、ヒッチハイクと徒歩で東京へと向かう。
そんなこんなで、東京に戻るのに一週間の時間を費やしたのだ。
「お疲れ様、砲代君。ここまでで大丈夫かな?」
「いやぁ!本当にありがとうございやす!!」
深々と九十度のお辞儀をする。
そうすると、車に乗った女性は少し笑みを浮かべる。
「よかった。強く生きてね!」
そう言うと、フロントドアを閉めて車はいってしまう。それをひとしきり見送った後、砲代は後ろを振り返る。
「……ようやくついたノォ…!」
目の前には公安特異課の本部。最初、一度服を取りに戻った方がいいとも思ったが、それよりも早く自分の帰還を連絡するべきであると、事を急いだのだ。
晴天を表すほどの、青空の中、大きなリュックをもう一度、肩に直して扉の中へ入る。が、この男、肝心な事を知らないのである。
そう……
「ほーだい様が、も〜どったぞォ〜〜!ガハハハハハ!!!」
そう、"知らない"のである。
「……あれ?なんじゃ、面白くなかったか?」
扉を開けた先の人間は、懐疑的な目、不審者を見る様な目、そして……死人を見たかの様な目をしていた。
全体がシーーーんとなる。誰も喋らない、静寂の時。しかし、静寂は一人の女によって解かれる。
「ほ……砲代さんンンンン???!?」
「おー井伊乃かぁ、9日ぶりじゃのぉ〜!」
ヘラヘラと笑う砲代をまるで、何も知らないカカシの様だった。しかし、そんな砲代に反して、他の者は誰も笑っていない。いや、笑えない。
「……本当に砲代さんなんですか。」
すると、何処からか三島が現れる。両手にはメリケンサックを携えて、その目は懐疑的で、信用をしていないと、はっきり訴えてくるものだった。
"そんなにつまらなかったのか"と、一瞬勘繰るが、よく見ればそうではない。証拠に周りにいた同僚のデビルハンターも皆、同じ様な目を見張りいつのまにか、裏にも回り込まれている。
「砲代か。」
人混みをかき分けて、砲代にそう言ったのはクァンシであった。呆れた様に、哀れそうにそう呟くと、刀を引き抜き砲代の目の前に立つ。
何事かと、砲代は勘繰るがその前に手を上げ、抵抗の意思がないことを伝える。
「…余計なことはしゃべるな。私達の質問にだけ答えろ。」
「……ほうか。」
「お前の名前は?」
「石原砲代」
「お前のバディの名前は?」
「井伊乃三咲」
「石原のいつも頼むラーメンは?」
「……?濃厚岩盤割れラーメン」
「佐々木が飲んだ時にする行動は?」
「笑う。すごく笑う」
「最近公安を抜けた佐々木のかの
「いい加減…どういう事か説明せぇい!」
「……まぁ、いいだろう。」
その瞬間。
「ほぉぉだぃさぁぁああんん!!!!」
井伊乃はまるで、栓が外れたように泣き出し抱きついてくる。それを慌てながらも、しっかりと支え、砲代は頭を撫でる。
しかし、やはりその顔には状況が飲み干せない、困惑の表情がくっきりと現れていた。
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「わしが死んだ事になっとるじゃとぉぉお!?!」
白い部屋に対面に置かれたパイプ椅子と机が一つ。まるで、取調室の様な部屋で砲代は絶叫する。
机を叩き、思い切り立ち上がる。椅子は、その衝撃により地面に倒れ伏し、衝突音が部屋全体に広がる。が、砲代はそんな事を気にしない。
頭を抱え、なんじゃ!なんじゃ!と狼狽している。
「……最後まで聞け砲代」
すると、クァンシは一枚の紙を砲代に渡す。んあ?と声を上げ、紙を受け取り、椅子を下の位置に戻し座っては、読み始める。
そこに書かれていたのは、公安に所属するものとして、いや砲代として最悪なものであった。
「…わしが…敵対魔人じゃと……?!」
それは、死亡後の砲代への処理であった。
砲代と言う人間は死亡したのであるから、もしこれが万が一にでも蘇ったならば、魔人になったと言う他ないと言うものである。
だが、これはおかしいと言わざるおえない。
たしかに、自分は一度死んでも蘇る力があると言うことは、同僚には公言していないし、クァンシにも伝えていない。
しかしながら、カルト教団との戦闘で一度死亡した後、よみがったと言うことを、砲代は公安上層部に伝えているのだ。
「…これはまだ、全体に伝えてない情報だ。まぁ、これ自体は今日の朝に、上から来たもんだけど。」
「……わしは、"切られた"わけじゃな…?」
「そうだ。」
残酷に、その冷淡な目でクァンシは砲代に伝える。死刑執行を伝える言葉の様に、いや実際そう言っても過言ではないであろう。公安に悪魔であると言われたならば、日本中のデビルハンターに狙われると同義なのだから。
「マキマはどうなっとる…?」
「お前の娘とか言う女の子か?」
「ほうじゃ。井伊乃や佐々木から教えてもらっとるじゃろ。」
顔を下に向けて、砲代はただ呟く。
表情は見えず、クァンシにとって次の言葉を発することは少々、いやあまりにも恐ろしさを感じるものであった。
「………引き取られた。」
「誰に。」
「公安…いや政府に。」
「ほうか。」
そう呟くと、砲代は立ち上がりドアノブに手をかける。たが、寸前、その肩をクァンシに掴まれる。
「…逃げろ。」
「なんのことじゃ。」
「今日、ここに戻ってきたことは喋らない。だから、どこか遠くに
「何を言っとる?」
砲代が振り返る。
そこには、今まで以上に目つきを凶悪にさせた人間がいた。"鬼"を思わせるその凶悪な覇気は、クァンシに緊張を走らせる。
「……クァンシ、お前さんはの、自分の職務を全うすればいいんじゃ。」
そう言うと、扉を開き砲代は姿を消す。
部屋には、ひっそりとした静寂と、先の事件を思わせる凶悪な空気だけが残ったのであった。
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いえす!
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いやじゃ!