進め歩兵よ!大砲片手に!   作:チチメカ

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第三十一発目・決別、そして激突

 

「戻った。」

 

ドアを開け、部屋の中に入る。

部屋の中は静寂が支配し、一歩を踏み出せば背後からは扉が閉まる音のみが一瞬、その場に広がる。部屋は少々埃くさく、どこか広々としていた。

 

沈黙内、砲代は靴を脱ぎ廊下に足を置く。もとよりこじんまりとして居て小さかった部屋を、やはり何処か広くなったと錯覚してしまう。

リビングに自身の存在を見出した時、その理由をはっきりと理解させられる。カーテンにかかってあった中学校の制服。部屋の隅の本棚にあった教科書、久しぶりの外出時に買ったカバンや服の数々。

 

そこには、ぽっかりと人一人分の穴が大きく存在して居た。

 

「……ハァ…」

 

小さくため息をして、押入れの戸を開ける。

そこには二人分の毛布があり、砲代はおもむろにその毛布を外に出すと、その奥にあった長物を引っ張り出す。

 

陛下からの賜り物とされた、小銃であった。歩兵銃を取り出しては、それを手にリビングのちゃぶ台の前で胡座をかきそれを眺める。

 

薬室付近のその上面、そこには陛下の紋章でもあられる、菊の御紋が一つそれが歩兵の象徴である事を明らかにさせる。

 

砲代にとって、これは決別の儀であった。

 

キッチンから1枚分のやすりを取り出し、その菊の御紋をあろう事か、削り始めたのだ。

自分としての歩兵という生き方を、放り投げるかの様に。

 

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ーー

 

この男の生活は、家族を中心に回って居た。

家族を守り、愛すべき物を守る為だけにこの男は生を受けたのであると言うのが、この男の持論であった。

 

故に、戦争には自ら志願した。1937年の支那事変(日中戦争)が、始まった際、以前からの夢であった教員を投げ出し、自らこの戦争に志願したのだ。

口では「皇国を守る英霊になるため。」などと言いながら、その芯には「戦争から家族を遠ざける」と言う確かな大義がそこにあった。

 

銃声、怒号、叫び。

阿鼻叫喚の地獄を経て、戦友を失い、親友を失い、遂には自らの正義を象徴する物すら砕け散った。砲代は今思う。そう言えば、わしにとっての歩兵はあの時(上官を殴った時)には、もう死んでいたのかも知れぬと。

 

砲代にとってのこの大義の対象は、ずばりこの世界に来てからドン太郎とマキマに置き換わって居た。地獄に来てから、もう既に家族に会えると言うことは諦めて居た矢先の親友、そして娘。

砲代にとって、これほど喜ばしく、内心を震え立たせたものはなかった。

しかし、これが劇薬であったのだ。

 

この男はもう既に壊れている。

 

戦争で疲弊し、地獄で親友を失い、家族をも失った。いくらなんでも、常人には耐えられない物である。知らず知らずのうちに、一つ、また一つのこの男を構成する心の部品は、外れ、緩み、そして壊れて居た。

 

 

「……これでいい。」

 

磨き終わった菊の御紋の跡を見る。そこには綺麗さっぱり、やすりによって削られた筒があった。

それをなんの感情もなく見て居た時。

 

「失望したぞ。砲代。」

 

窓の方に目を向ける。睨みつける様に。そこには一匹のカラスが鎮座して居た。いつの間にか、外ではカァカァとカラスの鳴き声が蔓延しており、耳をつんざく様なその鳴き声で奴らは歌う。

 

「契約違反だとはな。」

 

「じゃかぁしい。わしはやると言ったらやる男じゃ。」

 

「だから、国を、公安を裏切るのか?」

 

「裏切ったのは奴さんじゃ。」

 

「ハハ、そうか。」

 

「……武士に有るまじき話方じゃな。」

 

やかましい程のカラスの歌は、二人の間に異質な空間を産ませる。方や悪魔、方やデビルハンター。

 

「契約に則れば、お前は私がこれまでやった力を失う。」

 

「……わかっとる。」

 

「ハハ。ならいい。」

 

そう言って、カラスは飛び立つ。

見切りをつけた様に。

 

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ーー

 

「支配の悪魔」

 

呼ばれ、起き上がる。

簡素な白い部屋。有るのはベッドと机と、カバンとクローゼットだけ。

 

「なんですか?」

 

「移動だ。」

 

そうとだけ言われると、扉から二人ほど黒い服の男とお偉いさんの一人が入ってくる。少々ピリついた空気に、マキマは違和感を感じる。

 

「何かあったんですか?」

 

「君には関係ない。」

 

扉を超えて廊下を渡り歩く。公安も辿れば結局は警察庁に上層部が鎮座する。

ビルになっているこの警察庁は何時もは、堅苦しい空気はあっても、ここまでギスギスしたピリついた空気をしたことはない。

マキマはビルの高層階から、外を横目で見る。見渡す限りの人、人、人。

まるで何かを待ち構える様に。

デビルハンター達が警察庁の前に陣取って居たのだ。

 

「…何があったんですか?」

 

「静かにしろ支配の悪魔。外を見るな。」

 

「いやです。」

 

足が止まる。

両脇で歩いていた男達と、前を歩いて居た男も立ち止まる。

 

「話が理解できないのか?」

 

「いや、私がしたくないだけです。」

 

「……ッチ…これもあの死に損ないのせいか。」

 

「……?!それってどう言うー

 

瞬間、痛みの後マキマの視界が暗転する。

だが、マキマ目を閉じる瞬間、一つの音が聞こえたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼方から、一発の砲弾が飛ぶ音が。




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