「くそ…やられた」
ー爆音と、砂埃が晴れた瞬間クァンシとオレは建物の階段へと踵を向けた
砲代はあの瞬間、右足から爆発を起こして数回上の警察庁の窓ガラスから侵入したのだ。してやられてたと、そう岸辺は思いながらも、階段を全速力で駆け上がる。
「おいクァンシ、お前奥の手使わないのかよ」
「無理だ、ここで使うと面倒事になる」
扉を開け、腰の抜けている職員の肩を掴む
「おい、お前さっき悪魔が来ただろ」
「そ、そうだ!助けてくれ!」
「黙れ、どこに行ったかだけ答えろ」
割れたガラスが散らばった廊下の真ん中で、クァンシが尋問する中、岸辺はふと空から降る埃に目を向け天井を凝視する。
「おい…クァンシ…砲代の居場所がわかったぞ」
「何…ッ?!」
顔向けた先の天井には、4階を堂々と貫く穴が存在した。詰まるところ、この4階上に砲代がいるのだろう。
心の中で舌打ちをして、また階段を駆け上がる。4階に上がり、長い廊下の先に目を向けた時、またもや大きな爆音と破壊音が全体に鳴り響いた。
そして、その爆音と目線の先には、一人の少女を担いだ砲代の姿があった。
「おう、遅かったのクァンシィ!」
今から走っても、刀を投げても間に合わないだろう。クァンシはそう考える。
また…損な立ち回りを取らされたわけだ。
「おい、砲代。お前これからどうするつもりだ」
砲代にそう声をかける。これは時間稼ぎにもならない。意味もない。
だが…最後の挨拶くらいはしても良いだろう。彼女はそう思った。
「どうするも何もここから逃げ
「逃げてどうする」
冷徹に、だが芯を持った声でクァンシは言い放つ
「ここから逃げても、日本中のデビルハンターはお前を血眼になって探すだろ」
「だから…だからどうしたんじゃ…」
「お前、本当に死ぬぞ」
睨みを利かせて、いつもの変わらぬ様な表情で言い放つ。しかし、真顔で、死んだ魚の様な目の彼女の精一杯の慈悲と元同僚への抑止であったことは砲代自身にも伝わった。
だが。
「もう、戻れんのだよ」
いつもと声色を変えて、砲台は呟く
精一杯の優しさを込めた丁寧な声で、先生が生徒に言い聞かせる様に。友人に諦めを付かせるために。
「じゃぁな、クァンシそれに岸辺!次はわしの首をしっかり切ってみせろ!ガハハハ!」
いつもの様に、あの時の様に、岸辺とふざけ、酒を飲んで、談笑したあの様子のまま砲代は歯茎を見せてクァンシに笑顔を見せる。そうして、担いだ少女に一声をかけたかと思うと…
爆発音と共に砂埃が廊下と暗い部屋を埋め尽くした。少し経って、クァンシと岸辺が部屋に入ると、そこにあったのは埃だらけの一室。
そして、壁に開けられた巨大な穴から見える青々とした空が映った。
「クァンシ…」
「岸辺、今すぐに上層部に連絡しろ。悪魔を逃した。日本中に通達して、すぐに捜索を開始させろってな。」
変わらぬ顔で、また穴から空を見上げる。
あの砲代と初めて会った日の様に、その日は冬には珍しい快晴であったのだった。
鳥が鳴き、葉が風に揺られ、木々がそれに同調する。
樹海の中、二人は森の中でたまたま見つけた洞窟で体を休めていた。
「ねぇ、これからどうするの?」
マキマがそう言った。あれから、砲代は空を飛び回った末、静岡あたりで体力と血が尽きてしまっていた。
「これから…そうじゃな。国外に出るのもいいかもしれん。日本を出ればまた話も変わる、きっと平和に過ごせるじゃろ!」
「……」
マキマが言いづらそうに口籠る。
彼女は分かっていた。きっとそれが不可能であると言うことが。支配の悪魔の力がどれほど強力であるか、どれほど人間がそれを欲しているか…彼女はそれを理解していた。
そして、彼女はその真実を…自身が悪魔である真実を語る時が来たのであると、そう察していた。
「どうした、マキマ?」
彼女は、恐れていた。
この家族の関係が崩れると言う事を。悪魔と自白するとこで、砲代の愛を受けられなくなると言う事を。
しかし、現実は非情だ。このまま真実をひた隠しのうのうと過ごせる事は無理であるし、そうではないからこそ、こうなってしまったのだろう。
もういっそ、このまま愛を受けられないのなら、砲代自身の手で殺されてしまっても良いとマキマは感じていた。悪魔として殺されるなら、家族として見られるうちに、殺して欲しい。
ー私も…私の父である砲代もきっと何かを隠してる。でも、それを聞いてこの関係が崩れてしまいそうで…
「うん…そうだね」
結局、彼女はその日。
真実を打ち明けることはできなかった。
評価とコメントよろしくお願いします!
やってくれると、マキマさんが完全に育ちます。
原作突入まで見守りたい人
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いえす!
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いやじゃ!