壁は空間を遮るもの。
『扉』
それは空間と空間を繋ぐもの。
遮られた空間を繋ぐ役割をしているのが扉。
扉、とびら、トビラ、ドア、door、、、
その先にあるのは同じ世界なのだろうか…
「またあした~~!」
教室の扉を開ける。
その先には廊下が左右に続いている。
同じ制服を着た生徒たち。
「じゃあね~!」
部活に向かう者、補習に向かう者、帰宅の途につく者。
三者三様。
それぞれの目的に向かう。
校門に鎮座する鉄製の門扉。
これも扉の一つと言える。
学校と外をつなぐ扉。
下校時間のために開け放しにしている校門からは多くの生徒たちを吐き出す。
夏の日差しが半袖の夏服でも否応なしに容赦なく襲い掛かる。
一枚の自動扉の前に立つ。
「いらっしゃいませ~」
その掛け声にあわせて、自動扉が開き別の空間へと冷風が誘う。
ファストフード店にはいると冷たいドリンクを買って、駅までの距離を耐え凌ぐ魂胆なのだ。
店内を見渡すと、同じ制服を着た生徒も何人か同じ考えで、この店にやってきている様子だ。
店内で飲食している人たちは少しでも暑さがマシになるまで店内でやり過ごそうという魂胆なんであろう。
ずっと涼しいカウンターで注文を受ける店員の女性が少し憎たらしい。
早々に買うものを決めて、それを受け取ると私は店を出て駅へと進む。
5分も経たないうちに駅へとたどり着く。
いつも乗る電車はさっき行ったばかりだ。
飲み物を買った代償だが、別に家に着くのが15分遅くなるだけなので、それなら飲み物を買うということの軍配に上がる。
でも15分もすれば次のが来る。
飲み物を飲みつつ、定期券を改札機タッチする。
フラップドアが開き、駅のホームへと降り立つ。
暑さもありホームはまばらに閑散としている。
乗車口で電車を立って待つのは数人。
空調が効いているであろい個室型の待合室にも数人がいるが、そちらの方が人数が多い様に見える。
もう間も無く電車がやってくる。
待合室の人たちもゾロゾロと出てくる。
と、私のスマホが鳴る。
学校で補習を受けている友だちからだった。
もう終わったのかな?
待っといてという連絡だろうか?
それならばあの待合室で待とう。
そう考えながら通話ボタンを押す。
「もしもし〜?」
「ザザ…ザザザ…」
「え、ちょっと?」
「ぇて…はぁはぁ、た…ぇ」
「ちょっと何言ってんの?全然聞き取れなーい」
「たすけて!」
はっきり助けてと聞こえた。
走っているのだろうか、息づかいが荒い。
「助けてってどうしたの?不審者?どこにいるの?」
「がっこう!学校にいるの!」
「え、学校って、先生たちはどうしたの?」
「バケモノ!バケモノよ!」
「え?意味わかんないんだけど、イタズラなら切るよ〜」
「待って、茉夏!切らないで!」
「もー電車来るから〜」
「いやあああ!こないでええぇぇぇ…」
そこで電話はプツッと切れた。
そしてそのタイミングで電車がやってきた。
プシュー
ドアが開く。
ドサッ。
え?
何の音?
開いたドアからは灰にまみれた服が降りてきた。
降りてきたという表現は正しいのだろうかわからないが、一歩歩みを進めて倒れ込んできた形だ。
いやああ
ホームからは金切り声が響きわたる。
大きな怪物だった。
二足歩行の灰色でまるで筋骨隆々の鎧を着た兵士がそこに立っていた。
開かれたドアから飛び出してきた金切り声の持ち主、あっという間であった。
金切り声の持ち主は怪物に捕まると、軽々と持ち上げられ、その怪物によって胸を怪物の体色と同じ灰色の剣で貫かれいてぐったりとしている。
恐らく、もう生きてはいないだろう。
その瞬間蜘蛛の子散らすようにホームの人たちは逃げ出す。
しかし、怪物は人間ではないような速さで、逃げ惑う人たちの何人かを捉える。
我先にと駅から飛び出す。
クルッと振り返る。
助かった何人かの人たちも同じ様子だ。
そこには入る前と同じ佇まいの駅舎がそびえ立っている。
そして、あの灰色の怪物が出てくる…
後ろからはまるでゾンビのようにダランと腕を垂らして正気のない人たちが出てくる。
グニャッと空間がまるで捻れるかのようにその人たちが、あの筋骨隆々の兵士のような怪物と同じ姿に変化する。
同じというのは少し語弊があるが、それぞれの意匠は多彩なものである。
神官を連想させる者、ビキニアーマーのような意匠の者、剣士のような姿の者、それが多少の濃淡はあれど、それは灰色一色で統一されている。
全速力で逃げる。
もうそれしかできない。
でも、私の体力じゃあ学校まで持たない。
ウィーン
「いらっしゃいませ〜」
先ほどと同じように迎え入られる。
「あの、助けて下さい!」
「はい?」
女性の店員は少し困り顔になる。
「あの、バケモノがいるんです!」
焦っているのか、伝えたいことがうまく伝えられない。
店員さんからはふざけているように写るかもしれないが、事実を伝えているだけだ。
でも、モタモタしている暇はない。
あの怪物がもうそこまできているだろう。
もしかすれば、ガラス張りで外から丸見えのこのファストフード店にいる私たちを見つけて入ってくるかもしれない。
「えぇ…」
あ、
私は気づいてしまった。
さっきまで少ないながらもいた人たちの気配がない。
一歩後退りし、店内を見渡す。
そこには灰に塗れた、同じ制服や、人の形を保って倒れている者…
「あらぁ?」
女性店員の方を見る。
あくまでもさっきまでの笑顔だ。
「どうされましたぁ?」
「なんで…」
なんで、店の中がこうなって…
ハッとした時にはもう遅かった。
女性店員はグニャりと空間を歪めると灰色の怪物へと変貌を遂げていた。
「きゃああああああああ、ぁ…?」
違和感を覚えた時には空調が、灰色の細い剣が私の胸を貫いていた。
そして、胸が物凄く熱い。
体内が焼かれるようだ。
私、死ぬのかな…?
意識が途切れそうになった時、私の中で何か扉が開かれるような気がした…
ーFinー
短編集としてまとめることにしました。
いつか、本格的な話を書ける時が来れば、リメイクもありですねぇ〜