失楽園   作:若奈

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以前投稿した 〜夏の日の想い出〜の加筆修正版です。
最後に加筆したおまけもあるよ。


失落園 〜夏の日の想い出 ver2〜

その年の夏は酷暑も酷暑で、約840ヶ所ある全国の観測地点のうち実に90%にあたる約760ヶ所で最高気温の記録を更新した。

すっかり夏本番を迎え、ワイドショーのテレビ中継でも無人のカメラで街の様子を映すだけで、全国的に出歩く人は本当に少ないようだ。

大学生の私は進学と同時に地方から上京をして、東京都区から少し離れた街の団地の1LDKの一室を借りていた。

東京ということもあり、元々家賃はそこそこ良い値段がするが、団地を管理するようになった大企業のおかげでかなり安く抑えられている。

築20年ということもあり、一世代前と若干の古さはあるものの、一人で暮らすのには充分な広さと設備だ。

一人暮らしということもあり、光熱費やら食費やらで家賃が安いと言っても、お金に関しては考えながら生活をしている。

去年は大学1年目で試行錯誤しながら生活をしていたが、それをもとに2年目を謳歌しようとしていた矢先にこの暑さだ。

ひどい暑さだというのにクーラーの調子が悪く、冷えなくはないが、この暑さに耐えれる温度まで下がってくれない。

毎晩汗だくになって朝を迎える生活に耐えれなかった。

せめてもということで、実家から扇風機を送ってもらうことにした。

自分で買うのは金銭的な面でもある。

つい最近までアルバイトをしていたのだが、この暑さのせいで外出が億劫になってしまい辞めてしまった。

 

ピンポン。

 

少し音の外れたインターフォンが鳴る。

扇風機がようやく届いたのだろうか?

 

うちわを仰ぎながら、玄関を開けるとそこには期待通りの配達員がいた。

押印し、荷物を受け取ると、配達員は苦笑いをしやや視線を外しながら去っていった。

そして、隣家のインターフォンを押していた。

このクソ暑い中、配達に回っていると考えると、やはり働くということは大変なんだなと思うが、どこか他人事のように思っていた。

 

冷凍庫から棒アイスを取り出し、口に含みながらイスに座る。

受け取った荷物は細長く長方形の白い箱だった。

到底、扇風機が入っているわけでもなく、組み立てろというほどパーツが入っているほどの大きさでもなく、がっかりする。

そういえば、大学のレポート作成のためにネット通販でUSBを頼んでいたことを思い出した。

近くのコンビニに買いに行けば良いのだが、暑さとコンビニよりネットの方が安く買えるからである。

テレビを付けるとワイドショーがやっていた。

いつもならレポーターが中継先で何やかんやレポートしているのだが、人影がほぼない映像を流しながら、涼しいスタジオで地球温暖化がどうだ、人口が爆破的に増えたせいだの討論が交わされている。

 

アイスも食べ終わり、テレビの電源を切る。

そこには相対する自分の姿が写るのだが、自分のしでかした失態に気付いた。

上半身が下着のみだったことを。

だから配達員は妙に視線を避けていたのか。

確かにドアから上半身がブラジャーだけの女子大生が出てきたら、視線をそらすのは当たり前か。

合点がいくと同時に恥ずかしさが込み上げてきた。

これからはせめてタンクトップで生活しよう。そう胸に刻み込む。

大学のレポートを作成するために白い箱に手を伸ばす。

 

そして、気がつくと陽が傾き、室内には夕陽が差し込んでいた。

いつの間にかリビングの机に突っ伏して寝ていたようだ。

少し寝ていたお陰だろうか、妙に身体が軽い。

うーんと両手を上げて伸びをすると、右手に違和感があった。

右手には宅配されてきたモノが握られていた。

USBですら無かったことに苛立ちを覚え、机に投げ捨てる。

あ、そろそろ夕飯をどうするか考えないと。

 

汗を流すために軽くシャワーを浴びて、財布を手に取り、今度はしっかりタンクトップに着替えたのを確認し玄関へ向かう。

少し重いドアを開けると、空はキレイな茜色に染まった夕焼けだ。

お昼より暑さはマシだが、それでも30℃は超えているだろう。

実際にコンビニまでに道のりで出会った人は片手で数えられるほどではなかっただろうか?

それくらいまばらだった。

 

いざ、コンビニに着いても人は少なかった。

駅近の立地で普段、この時間帯にはレジに多少人が並ぶほどの盛況があったのだが、私と買い物に来ていた親子だけだった。

お客どころか店員まで少ない。

いつもこの時間になればレジには必ず2人は居たはずだし、品出しをしている店員さんももう一人いた気がするが、今は高校生くらいの女の子が一人で捌いている。

頑張っている姿に思わず、レジで暑いからお客さん来ないでしょと声をかけた。

 

「お客さんがほとんど来ないので、今は私一人なんですよ〜。私はここにいると涼しいから、続けているんですけど、最近は連絡も無しに辞めていく人が多いんですよね〜。こっちから電話をかけても連絡取れないし…高校生の私が頑張ってるのにね〜。あ、お姉さんもよかったらここで働きませんか!」

 

人手不足ということもあっただろうけど、高校生の女の子がワンオペできるくらいの暇さなのだ。

それに加えて、勧誘までされてしまった。

大学の課題が忙しいからと適当に答えて、労いの言葉をかけて、そそくさと退店する。

 

帰路につき、団地の階段を上り、踊り場に差し掛かった時、団地前の公園に人影があるのに気がついた。

こんなに暑いのに子どもは元気だなと思ってよく見てみると、隣の部屋に住む女の子だった。

最近よく一人で公園にいる気がするが、友だちは暑さのせいで誘っても来ないのかなとか、結構アグレッシブに動ける子だなとかを考えながら、しばらく見つめていた。

やがて、階段を降りてくる音が聞こえ、女の子の母親が姿を現した。

いつもにこやかにして愛想も良く、優しさが滲み出た雰囲気を持つお母さんだ。

 

ペコっと会釈をして、少し世間話をしてから立ち去る。

後ろから女の子の名前を呼ぶ声がする。

さすがに暗くなるだろうから、呼びに来たのだろう。

 

 

それから数日。

その母親が階段の踊り場辺りで娘を呼ぶ声で目が覚めた。

どうやら隣はハンバーグだそうだ。

軽く両手を上げて伸びをする。

またリビングのテーブルに突っ伏していたようだ。

さすがにこの時間になれば涼しいだろう。

汗拭きシートでベタつく身体を拭きながら、今日の晩ごはんを考える。

結論としては何も思い浮かばないので、コンビニでパンとコーヒーでも買おう。

 

コンビニに着くと相変わらず人は全くいない。

あのアルバイトの高校生の女の子がニコッと笑いかけてくれる。

適当にパンとコーヒーやらをカゴに放り込んでレジへと向かう。

この前話しかけたおかげで、多少会話する程度の仲になっていた。

 

「もー他のアルバイトがほとんど飛んじゃって、今5人くらいでシフト回してるんですよ〜。それでもお客さんがあまり来ないので、充分なんですけどね(笑)」

 

労働基準法は大丈夫なのかとか、話しながら色々と考えていたが、最後にまたアルバイトの勧誘をされた。

 

そして、団地に着く頃にはすっかり暗くなっていた。

パチっとリビングの灯りをつける。

 

ふぅっと、イスに座りテーブルに買ってきたものを広げる。

ボーッとパンを食べながら妙な違和感を覚える。

自室に見慣れない、衣服が散らばっている。

一瞬部屋を間違えたかと思うが、部屋にあるモノは私のモノだし、何より持っている鍵でドアを開けたのだ。

 

見慣れないTシャツとスカートに下着。

恐る恐る近づこうとした瞬間だった。

 

隣室から騒がしい声と音が聞こえてきた。

隣はあの親子だ。

暑さで倒れた?いや、まさか強盗!?

 

一大事だ。

一目散に自室を飛び出して、隣室へと駆けつける。

 

ドアが開いている。

間取りは同じだ。

後からそんなことを考えたことを思い出した。

 

「隣のおねえさんッ!」

 

部屋へ飛び込むと、女の子が私の腰に縋り付いてきた。

 

「マミちゃん!いったい何があったの?……それにあの人たちはいったいなんなの?」

 

私は思わず震えてしまっていた。

声もだろうし、差した指も震えていただろう。

 

私が差した指の先にあったモノ。

 

一輪挿しが置かれたテーブルを挟んだ向かい側には、奇怪なベルトにアーマーのようなモノを身に纏っている者とこれまた誰だか分からない灰色の大きな怪人。

もしかして、コイツらが強盗なのだろうか?

それにマミちゃんのお母さんはどこへ行ってしまったのだろうか?

 

「早くその娘を連れて逃げるんだ!」

 

アーマーのようなモノを身に纏った奴に指示される。

どういうこと?様々な思考が脳内に駆け巡らせるが、答えは一向に出ない。

そんなことを考えていると、さっきから私の腰に縋り付いていたマミちゃんはさっきの私の問いに答えた。

 

「お、お母さんが怪物に変わっちゃったの。おねえさん、私どうすればいいの?」

 

ヒックヒックと泣きながらそう話すマミちゃんに私は答える。

 

 

 

 

 

 

「あら?それってこんな風に」

 

 

 

 

 

 

 

 

私は結っていたポニーテールを軽く振り回すように首を動かすと、瞳が怪しく灰色っぽく光る。

身体の内側から沸々と湧き上がるようなエネルギッシュな熱さを感じる。

まるで相手をこちら側へ誘うかのように、サッと両腕を前に差し出し手のひらを上に向け、妖しく私はニィっと口元だけで笑う。

これは私が変身する時のお決まりのポーズだ。

私自身の身体が変わってゆく姿を目の当たりにすることができ、感情を昂らせるためだ。

準備は整った。

身体中の細胞が作り変わっていくのを感じる。

それが私が差し出した腕に現れた。

奇怪な模様が白い肌の下から浮かび上がってくる。

私の着ている鮮やかなブルーのタンクトップから覗かせた肩口ぁら指先にかけて、胸元や顔にまでもその奇怪な模様は浮かび上がっていた。

まるで何かのコードをずっと全身に巻き付けられていたかのように。

そして、それは私を包み込むように皮膚の下から突き破るようにして這い上がってくる。

その模様がそのまま硬質化していく。

 

 

 

私は自らの身体をオルフェノクの姿へと変貌させた。

 

 

 

ブルーのタンクトップを着たポニーテールの女子大生はもうどこにもいなかった。

銃弾をも弾く、灰色の硬い表皮に全身を覆われたその姿は、まるでゴツゴツとした鎧を着ているようだ。

どことなく冷たく、暖かみなど一切ない灰色のモノトーンに統一された肌。

その意匠は頭部にまるで象のような長い鼻が伸びているが、何だか象とは少し違う。

そう。ポニーテールの女子大生・夏川 愛香(なつかわ あいか)はゾウムシの特性を持つウィーブルオルフェノクに変化した。

長い鼻をブラブラと揺らすウィーブルオルフェノク。

意匠は違うが、一目でテーブルを挟んで向かい側にいるマミちゃんと私は凡そ同じモノだと分かる。

マミちゃんのお母さんはもしかして初めてオルフェノクに変身したのだろうか、少し落ち着きがなく理性もないように思える。

私は覚醒してから数日、何度かオルフェノク姿へ変身していた。

最初はなんだか身体の調子が妙に軽く、違和感があったのに気付いたと同時にオルフェノクの姿へ変貌していた。

明らかに視点が高くなり、自らの腕が異形の(なり)をしていた。

慌てて洗面台へと駆け込むと、鏡に映った自身は今まで見慣れた姿どころか、異形の怪物のような姿にはびっくりしたが、不思議と畏怖はなかったし、まるでそれが当たり前であったかのように身体も脳もなぜか受け入れられた。

そして、自分がすべきことまでも理解していた。

 

そうだ。ついさっきも、部屋に大学の同級生が訪ねて来ていた。

周りの人間がオルフェノクに変化して逃げてきたらしかったが、私もオルフェノクだ。

私はオルフェノクである以上、人間をオルフェノクにしなければならない。

誰かにそう言われたわけではないが、思考が勝手にそうなっていた。

あぁ、そうか。部屋にあった見知らぬ衣服は同級生のモノだったんだ。

そっかあ、オルフェノクになれなかったんだ。

でもまあ。どうでも良いや。

 

「きゃあッ!!」

 

自らの母親と同じように変貌した私を見て大声で悲鳴をあげるマミ。

縋っていた私から逃げるように離れる。

 

「まさか、この団地の住人が……全てオルフェノクに…!?」

 

マミちゃんのお母さんと対峙していた奴は苦悶の声をあげて、マミちゃんを抱きかかえると、まるでロボットのようなモノを使って、追いかけようとする私たちの足止めに使った。

 

多分そうなのだろう。

マミちゃんの家にも私の家にも青いバラの一輪挿しが届いていた。

この青いバラの一輪挿しは触れた者を素質をもつモノをオルフェノクに変える力を持っている。

恐らく、この団地にはもう人間は住んでいないだろう。

それにもうこの街…いや、世界全体がきったそうなのだ。

 

人が疎らなのは暑さのせいもあるだろう。

でも、少し涼しい夜まで人が疎らなのはなぜ?

実家から送られてくるはずの扇風機や通販で頼んだUSBがいつまでも届かないのはなぜ?

いつも行く駅近のコンビニもそうだ。

アルバイトたちは飛んだのではなく、オルフェノクになれる資質がなく死んでしまってのだろうし、アルバイトの女子高生だってほぼ間違いなくオルフェノクだろう。

別に青いバラの一輪挿しに触れてオルフェノクになったからと言って、別にお互いを詮索するわけでもないし、それが当たり前であって、今まで通りと変わらず生活をするだけだし、相手が人間であればオルフェノクの姿に変身して襲って、仲間にするということだけだ。

後から聞いた話だと、コンビニの女子高生は青いバラの一輪挿しでオルフェノクに覚醒したわけでもなく、先に青いバラの一輪挿しが届いていた同級生に襲われたそうだ。

 

実際に届いてなかったり、運良く触らなかったとしても、すでに私たちのようにあのバラを触ってオルフェノク化した人間は数え切れないほどいる。

私もあの日、箱から取り出したあのバラを触ると同時に命を落とした。

夏川 愛香という人間は19年と267日の人生に幕を下ろしたのだ。

だが、夏川 愛香という女性の身体にはオルフェノクに進化する条件が揃っていたのである。

あの日以来、夏川 愛香はオルフェノクとなり、この数日のうちに人間を手にかけていた。

 

しかし、結果としてマミちゃんは誘拐されてしまったのだ。

 

人間の姿に戻ったマミちゃんのお母さんはペタンと床に座り込み首を垂れてしまった。

その傍らには、先ほどの戦闘で床に落ちてしまった花瓶からこぼれ落ちた、青いバラの一輪挿しが横たわっている。

 

 

ーーーそう、これは私の部屋にもある青いバラだ…

 

 

いったい、なぜ青いバラだったのか?

 

青いバラの花言葉は不可能や奇跡、あとは…神の祝福だそうだ。

 

私の身体から熱が冷めていくのが分かる。

ウィーブルオルフェノクが立っていた場所にはブルーのタンクトップのポニーテールの姿をした夏川 愛香が立っていた。

そして、私はマミちゃんのお母さんにどう声をかけようか悩んでいたことを昨日のように覚えている。

 

今でも私の部屋には、あの青いバラの一輪挿しが花瓶に挿されて飾られている。

不思議と私たちを変えてくれた青いバラの一輪挿しは一年経った今でも枯れずにいる。

机に顔をくっつけて来て色々と思い出しながら、青いバラの一輪挿しを突っつく。

初めて触った時のように不思議な感覚は当然なかった。

 

この一年で世界は支配するものが人間からオルフェノクへと変わったのだった。

世界のほとんどの資質を持った人間はオルフェノクと化し、ごく少数の僅かに生き残った人間たちは、ひっそりと隠れながら潜伏するように廃墟のような場所に住んでいるらしい。

かく言う私は、以前と変わらずに大学の課題やレポートに追われて、息をつく暇もない。

 

そんな中、久しぶりにうたた寝をしてしまっていたおかげで、一年前の出来事を思い出した。

花瓶から青いバラの一輪挿しを取り出し、指先でクルッと回して、憂いを帯びた瞳が怪しく灰色に光る。

 

「マミちゃん……」

 

そうポツリとつぶやいた。

マミちゃんは今も見つかっていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー

おまけ

 

ある日の昼下がり。

パソコンに向き合い、大学の夏休みのレポートを頬杖をつきながら進めていた。

 

 

ドンドンドンドン!

 

 

「!?」

 

玄関のドアが大きく叩かれて、思わずビクッと身体を震え上がらせる。

 

「あ、愛香!いる?ねえ!!」

 

大学の同級生の声だ。

 

切羽詰まっている様子に急いでドアを開ける。

そこには同じゼミの加衣(かえ)が立っていた。

ボブの栗色の髪色がとっても似合う彼女だが、両目には涙を溜めて私に掴みかかるようにして、縋って来た。

 

「え、加衣!?どうしたの??」

「助けて!愛香!」

「とにかく落ち着いて?部屋に上がって」

「う、うん」

 

どこか落ち着きのなくキョロキョロとしている加衣を部屋へ招き入れる。

 

バタンと重くドアが閉まる。

クルッと加衣が不安そうに振り返る。

そんな加衣を後ろから両肩を叩き、リビングへと招き入れる。

 

「はい。どうぞ」

 

コトンとお茶の入ったコップを加衣の前に置く。

両手で持ち、恐る恐る飲み始める。

 

「で、いったいどうしたわけ?」

「あ、あのね!おかしいの!」

「おかしい?」

「大学に用事があって行ってたんだけど、そこで、みんなが!」

「みんなが?」

「突然化け物になって襲ってきたの!」

 

一瞬キョトンとしてアハハと笑う。

 

「ちょっと、冗談じゃないんだってば!」

「わ、分かったって!アハハ!」

「もう!わかってな…!?」

 

何かに気づいた加衣がガタンとイスから立ち上がる。

 

「ねぇえ?どうしたの?」

「あ…あ…愛香、それ…」

 

震えながら声を出す加衣が指差す方には、花瓶に添えられた青いバラの一輪挿しが。

 

「アハハ!加衣の話はちゃんと信じているよ?だって…私も同じなのにそれを話す加衣が面白かっただけだって」

 

イスから立ち上がる私を見て、加衣はドンと尻もちをつく。

 

「加衣、大丈夫??」

「さ、触らないで!!」

 

スッと私の顔から笑みが消える。

ポニーテールを軽く振り回すように首を動かすと、瞳が灰色に光る。

加衣をこちら側に誘うように、両手を差し出して手のひらを上に向ける。

身体中の細胞が愛香の姿をオルフェノクの姿へと変えようとする。

愛香の白い肌から、奇怪な模様が浮かび上がり、それが皮膚を突き破って奇怪な模様が硬質化し、完了だ。

夏川 愛香はゾウムシの特性を持つ、ウィーブルオルフェノクに変貌を遂げた。

 

「いやああああああああ」

 

加衣の悲鳴が響く。

腰が抜けてしまった加衣が少しずつ後ずさる。

 

しかし、ウィーブルオルフェノクはゆっくりと加衣に近づく。

 

『ねえ。加衣?怪物ってこんな感じに〜?』

 

青ウィーブルオルフェノクの影が愛香の裸身を青白く映す。

 

「あぁ………そんな、愛香もなの?」

 

ポロポロと目から涙が止まらない加衣。

 

ウィーブルオルフェノクは加衣を一気に掴み上げると、ゾウムシの口吻を模した、頭部から生えている口を触手のように伸ばして、加衣の口から挿入させる。

 

ゴボゴボと苦しそうな声にならない音を出す加衣をよそにウィーブルオルフェノクの触手は、加衣の体内を一目散に突き進む。

そして、心臓に到達すると一気の貫き、オルフェノクエネルギーを注入させ、加衣の心臓は灰化し、消滅すると同時にスルスルと触手を引っこ抜くと、加衣の身体は力無く床に倒れ込んだ。

 

使徒再生と呼ばれる、オルフェノクが人間を襲い、仲間を増やす行為だ。

青いバラはこれを応用した、ローズオルフェノクの特殊能力でもある。

そのオルフェノクによって様々だが、多くのオルフェノクはウィーブルオルフェノクのように触手を人間に挿入してオルフェノクエネルギーを注入するが、武器を突き刺したり、体液をぶっかけたりするパターンもあるらしい。

結果は、その対象の人間が資質を持っていれば、オルフェノクとして蘇るし、資質がなければ身体が灰になって死ぬだけである。

 

身体を上下に揺らし、興奮状態なのだろうか、息が荒い様子が見てとれる。

そして、ウィーブルオルフェノクは愛香の姿に戻っても肩を上下に揺らし荒く息をする。

少し落ち着くと、テーブルに置いたお茶を一気に飲み干し、一仕事を終えたようにうーんと伸びをして、イスに座り何事もなかったかのようにレポート作成に戻ったのであった。

 

〜fin〜




ご覧いただきありがとうございました。
ストーリーを少し修正した産物でおまけも書いてみました。
ポニーテールの女の子にも名前とどういったオルフェノクなのかを付け足してみました。

元ネタはS.I.C HEROSAGA -ロスト・ワールド-の一場面です。

また次回は少し間が開きそうです。
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