失楽園   作:若奈

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失楽園 〜はじまり〜

「ねっ?どう?」

 

他の2人に髪をアピールする。

 

「あーもっと明るい色の方が良かったんじゃない?」

「髪も長い方がいいと思います」

「えー結構この色気に入ってるんだけど、それにホントはもっとミディアムじゃなくて、普通にボブにしようとしてたんんだけどなー」

 

思いの外評判がイマイチだった。

 

「それにまたぽっちゃりしてきてませんか?」

 

そう問われ、二の腕や腹回りを確認する。

確かにプニっとはするけど…

 

パッと言ってきた少女を見つめる。

すらっとした長い白い脚、しっかりとあるくびれ、整った顔、長く艶やかな黒髪。

モデルと見間違えるような眩しさを覚える。

これでまだ高校生ときたもんだ。

対する私は…

まあ、まだ人様に見せられるだけマシか。

ダイエットしようか、でも女はこんなものと、毎回断念するのが常であった。

 

「しっかし、暑いなぁ」

「暑いですね〜」

 

足元のペットボトルを一気に飲み干す。

 

「おーい。太るぞー」

「汗の方が多いから太るわけないないでしょ!」

 

茶化され、すぐに言い返す。

実際にこの暑さだと、日に焼けてしまう。

別に私はいいが、肌が白い彼女は大丈夫なのかと心配してしまうが、気にする様子はない、強いて言えば、太陽が眩しそうということだけだ。

こうやって目を細めるのも絵になる。

 

周りの人々は暑すぎるのだろう、足早にそそくさと影を求めて、ゾンビのようにダラダラと歩いている。

 

その間にも私の身体からは水分が失われていく。

 

「ちょっとタンマ。飲み物買ってくる」

「おいおーい。これ以上太ってどうすんだ」

「なにをー!」

 

亜麻色の彼女の髪を鷲掴み、腹回りを掴む。

 

「あんただって、最近太ってきたじゃーん。良いものばっかり食べやがって」

「いてて。やめろぉ。お金あるんだからいいじゃん〜」

 

そんな戯れを黒髪の彼女がふふっと微笑ましそうに笑う。

 

「お二人は仲が良いんですね」

「「良かねえよ!」」

 

一瞬の沈黙が流れる。

 

「はぁー。立ち仕事は疲れる」

「そうですね〜」

 

私たちの仕事は街頭に立って、企業の販促物を配る。

それだけだ。

キャンペーンガールと言われる仕事だ。

私と友達は大学生で、黒髪の彼女は高校生だ。

3人とただのバイトをしている。

全て配り終えれば、拠点へ帰り、私服に着替えて帰宅する。

 

青のチューブトップに白のミニスカート。

これが私たちの衣装だ。

最初は、肌の露出が多すぎて、恥ずかしさはもちろんあった。

そして、仕事に出てみると視線が刺さる、刺さる。

でも、お金がよかった。

それに尽きる。

苦学生とも言える、私と友達で募集広告を見た瞬間に応募していた。

大学生の私たちはとにかくとして、高校生にコレを着させるのはどうなんだろうか。

 

「よっし。配り終わったーーー」

 

そうこうしている間に今日の分の販促物は配り終えた。

 

友達が伸びをする。

フッとそよ風が私たちの髪を揺らす。

 

「今日は残業かぁ」

 

誰かが呟いた。

 

グッと身体に力を入れる。

高揚感が身体を包み込み、沸騰するような熱さが駆け巡る。

 

カッと見開いた瞳がくすんだ銀色に発光する。

くすんだ銀色は身体全体へと拡がっていき、身体には奇妙な模様が浮かび上がった。

瞬く間に私たちの身体を灰色の鎧が包み込むようにして、人間という生物を想わせない、異形の姿へと変化を完了させる。

 

私がドスンと脚を鳴らす。

周りの人間たちは悲鳴をあげ蜘蛛の子散らすように逃げていった。

 

そんなのはお構いなしに、異形の能力で人間を捕まえるのだ。

これは愛なのだ。

私たちは愛を配っている。

 

そう考えながら、自らの顔にある牙を人間の体内へと挿入させた。

 

〜fin〜

 

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