失楽園   作:若奈

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失楽園 〜はじまり-0〜

「うっ…」

 

目を覚ますと、どこかの会議室で身体を横たえていた。

え、なんでと思い、私は辺りの様子を窺う。

 

「愛依…」

 

倒れている友人に床を這い、肩を揺する。

 

なんでこんなことに…?

 

ーーー

「ねぇ!このバイトよくない!」

「えー?」

昨日の私の家での会話だ。

 

友人の愛依とバイトを探していたんだった。

 

「ダメだってぇ」

「えーそうかなー?」

 

私が指差した箇所にはページの半分ほどに掲載されていた。

週3〜 時給3500円 女性限定

とデカデカ記載されている。

 

「怪しすぎるでしょ!」

「えー時給3500円だよ!」

「絶対いかがわしいことか海外に売り飛ばされるよ」

「大丈夫だって!ほらここ」

「えー何なに…?試供品やティッシュ配り?」

「そ!絶対楽だって!」

「それだけで3500円も…?」

「いいじゃ〜ん。じゃあ明日行こーう。おやすみー」

「え、ちょ…」

 

ーーー

 

「うわーおっき〜」

「もー絶対ヤバいと思うんだけどー」

「そう言う愛依だって付いてきてんじゃーん」

 

眼前にある超高層ビルを見上げながら、愛依をからかう。

 

「あのーバイトの面接に来たんですけど」

「はい。あちらになります」

 

指された方には面接会場と書かれた一枚の紙が貼り付けてある。

お礼を言いつつ、そちらへと向かう。

 

「うわー結構いっぱいいるー…」

「ホントだ…」

 

案内された部屋は割と大きめの部屋なのだが、そこには100人に迫ろうかと言うほどの女性たちがいた。

制服を着た女子高生やら私たちと同年代くらいの女子大生たちなどが集まっていた。

 

「みんなお金に釣られすぎでしょ〜」

「あんたが言うな!」

 

しばらくすると、案内役の女性が現れる。

 

「お集まりいただきありがとうございます。これより選考試験を始めさせていただきます」

 

そして、ざっくりと8人ずつへとグループ分けをされた。

愛依と私は同じグループだった。

 

「ね、緊張するね」

「しないよ。私は冷やかしに来ただけだから」

 

そして、私たちのグループは一番最初だった。

再び案内された部屋は10F。

エレベーターは案内役の女性と私たちでちょうどくらいだった。

 

「色々と広いですね〜」

「ええ。一応大企業ですから」

 

案内役の女性に話しかけるが、素気なく返さられる。

 

「こちらへどうぞ」

 

開かれた扉の先には広い空間が広がっていた。

しかし、椅子やテーブルはおろか何もないコンクリート剥き出しの殺風景な空間が広がっている。

 

「え〜、ここで私たちに殺し合いでもさせる気ですか〜?」

「えぇ。似たようなものです」

 

おどけた口調で言ってみたが、案内役の女性は冗談を言うようなキャラなのか?

いやでも…

そんなことを考えているうちにカチャリと扉が閉められる。

 

「さぁ、それでは選考試験を開始しましょう…」

 

案内役の女性の瞳が白っぽく発光する。

それが肌へと伝わり、奇怪な模様が浮かび上がったと同時にこれまた奇怪な音とともに身体が膨張した。

そこには、灰色に塗れた鎧とでも言うのか、博物館に飾っているような鎧がそこには立っていた。

 

「ひっ…きゃあああ」

 

誰かが悲鳴をあげる。

 

『ここは防音完備の部屋です。好きなだけ叫んで下さい』

 

怪物の影に案内役の女性の裸身が浮かび上がりそう言う。

 

『では始めます』

 

一瞬の出来事だった。

怪物の近くにいた2人がドサッと倒れたのだ。

倒れた身体からは砂煙のようなものが舞っている。

 

「きゃあああ」

 

この叫びを合図に残りの6人は散り散りに走り出す。

広い空間、出口は1つ。

入ってきた扉しかない。

近づこうにも、どんどんと反対側へ追いやられる。

そうしているうちにも1人、また1人と怪物に殺されていく。

私は何番目だっただろうか。

愛依よりも先に殺された気がする。

後ろから怪物に髪を掴まれ、長い触手を身体に入れられた。

 

ーーー

 

「愛依!愛依ってば!」

 

「うぅ…?」

 

今の声で気がついたのだろうか。

少し離れていたところで倒れていた女の子が上体を起こした。

 

「大丈夫?」

「ここは…?」

「覚えてないの?」

 

起きあがろうとする少女の肩を抱く。

目覚めた少女は艶やかな黒い髪の綺麗なロングヘアで思わず見惚れてしまう。

ゆっくりと立ち上がった少女は身長は170cm以上あるだろうか、すらっとしていて大人びた雰囲気を醸し出しているが、セーラー服を着ていたところをみるとまだ高校生のようだった。

 

「芹奈…」

「愛依!」

 

私の名前を呼ぶ愛依がゆっくりと上体を起こしながら、こちらを見る。

 

「一体何があったのでしょうか」

 

少女は私たちに問いかけるが、色々混乱して何を言えば良いのか分からなかった。

 

その時。

扉が開いた。

 

「ハァ〜イ!貴女たちはオルフェノクに覚醒しました!」

「オ…ルフェノク…?」

「そ〜で〜す。オルフェノクというのは人間が進化した存在で〜す!田舎のご両親も大喜びで〜す!」

「意味が分かりません!ちゃんと教えてください!」

 

目の前に現れた奇抜なファッションの女性は唐突に訳の分からない言葉を羅列する。

理解してはいけない気がする。

 

「合格ということですよ」

 

後ろから案内役の女性…あの怪物に変身した女性が現れる。

 

「さあ、着いてきてください。早速仕事です」

 

着いていけば何か分かるかと思い、言われるがまま3人は着いていく。

 

「ここです」

 

案内された先は女子更衣室と書かれたプレートがブラウンの木目調の高級感がある扉に貼り付けてある。

 

「サイズは一通り揃えてあります。早く着替えてください。私は次のグループを案内しないといけないので失礼します」

「ちょ、あ、あの!」

 

聞きたいことは山ほどあるが、淡々と喋る女性はそそくさと元来た道を戻って行った。

 

「どうする?」

「どうするって…」

「あの、とりあえず入ってみませんか?」

 

少女に促され、更衣室と書かれたドアを開ける。

ロッカーが30台ほど並べてあり、ここも大きく広々とした部屋だった。

一部は使っている様子だったが、ほとんどが使われていない新品のロッカーだ。

細長いシールとネームペンが用意されている。

自分の名前を書いてロッカーに貼れということだろうか。

 

【蔵橋 芹奈】

 

自分の名前を貼り付けて、ロッカーを開ける。

そこには当然2〜3本のハンガー以外は何も入っていなかった。

 

バタンとロッカーを閉める。

隣を見ると、

 

【九条院 千景】

 

と書かれていた。

すごい、少女の雰囲気にあった名前だ。

 

「九条院さんって言うんだ!よろしくね!」

「はい。えーっと」

「私は蔵橋 芹奈。こっちは六本 愛依」

「よろしくー」

「はい。よろしくお願いします」

 

千景がニコッと返す。

 

「着替えてくださいって言ってたけど、どれに着替えたらいいのか?」

「アレじゃない?」

 

更衣室の隅に幾つかの段ボールが積まれている。

愛依が段ボールに手を伸ばし中身を出す。

 

「え、コレだけ?」

 

愛依の手には透明のビニール袋に衣服が入っていた。

白のミニスカート。

それに企業ロゴがプリントされてある青いチューブトップ。

どちらも1着ずつ梱包されている。

 

「スマートブレイン?」

「結構有名企業じゃん」

「なるほど。だからこんなに大っきいビルなわけだ」

 

3人で妙に納得をする。

そして突然、愛依が

掛け声を出す。

 

「じゃーんけーん」

「え?」

「じゃんけんで負けた奴がまず着替える」

 

3人に重い沈黙が流れる。

 

「で、でもさ…」

 

「じゃんけーん、ポイ」

 

思わずグーを出した。

他の2人はパー。

 

「じゃ、芹奈着替えろ」

「え、ちょっと待ってよ。他にないの?」

「ない」

 

そう言われ、芹奈はいくつかある段ボールから自分のサイズに合ったチューブトップとミニスカートを取り出す。

上着に手をかけたところで2人の視線に気づいた。

 

「うぅ…ちょっと後ろ向いててよ」

「別に減るもんじゃねーし、女同士だしいいだろー」

「減るもーん」

 

さっさと着替えてしまえばいい。

そそくさと着替え終わる。

 

「ねぇこれ、ちょっと面積少なくない?お腹はいいけど、胸から上はほとんど丸出しじゃん…」

「見てる方も恥ずかしいなコレ」

「芹奈さん、谷間すごいですねー」

「あいつ、Eカップあんだよ。そこしか取り柄がない」

「そ、そんなことないもん!」

 

腕を組みながらジトッとした目で見つめてくる愛依に赤面しながら反論する。

やはり、チューブトップとミニスカートだけでは、年頃の女性は羞恥心を覚えるだろう。

 

「わ、私も着替えます!」

 

赤面する芹奈をよそに千景も段ボールに手を伸ばす。

恥ずかしさというよりも、少し好奇心を見せながら、着替えていく。

 

「せ、芹奈さんみたいに胸は大きくないですけど、どうでしょう…?」

 

頬を赤らめながら、2人に聞いた。

一方の2人はと言うと、息を呑むように見惚れている。

スラっとした細くて長い足に170cmはある高身長、整った顔や長い艶やかな黒髪。

まるでモデルを見ているようだった。

 

「きれい…」

「本当ですか!良かったです!私、あまり露出の多い格好をしたことがなくって」

「ちょっとポーズ取ってみてよ」

「ポーズですか?」

「うーん? 腕を上げて後ろで組んでみて」

「こうですか?」

「キメ顔してみて」

「?」

 

グラビアアイドルみたいなポーズを取る千景。

モデル体型な千景に色々と注文をつける芹奈と愛依。

 

「なんか、カッコいいし、エロいななんか」

「このカッコだとみんなエロくならない?」

「まあそうだな」

「なんか芸術作品みたい」

「すごく恥ずかしいです…」

 

腕を下ろし、両肩に手を当てる千景。

 

「やっぱ肌色が多すぎるんだよ」

「腋フェチとかには堪らないよね。でも、高校生にこんな格好させちゃっていいのかな…?」

「色々犯罪の予感がします」

「これはアリ…でだ」

「ん?」

「愛依も着替えなよ」

「愛依さんのみたいです!」

 

千景からキラキラとした目線を送られる。

 

「わ、わかったよ!」

 

渋々着替える愛依。

 

「着替えたぞ!」

 

ヤケクソに言い放つ愛依。

やはり、見えるところが多すぎる。

これで何の仕事をしなければいけないのか。

 

「んー。なんか普通」

「て、てめぇ…」

「でも、愛依さんも谷間ができていて羨ましいです!」

「私あんまり大きくないんだけどなー。コレがギリギリを攻めてるんだよ」

 

グイッとチューブトップを上に引き上げる愛依。

しかし、チューブトップは谷間を見せるように設計されているのだろう、すぐに元の位置へとずり下がる。

 

「この格好で何をするんでしょうね?」

 

「私に付いて来ればわかります」

 

気がつけば、案内役のあの女性が後ろに立っていた。

女性はクルッと踵を返し、更衣室を出て行く。

3人はこの格好で出て行くことをためらいながらも、後に続いて女性を追いかける。

 

そして、再びあの無機質なコンクリートの打ちっぱなしの空間の扉に立つ。

 

「では、皆さん。私と一緒に入室をしてください。そしてその後は解りますよね」

 

恐らく、この中には試験を受けにきた別のグループがいるのだろう。

そして、私たちがされたのと同じことをしろと言っているのだ。

 

「待ってください!意味がわかりません!」

「オルフェノクに変身して、人間を襲うだけです」

「私たちも人間だし…」

「いいえ。違います。貴女たちは私に殺されて、一度死んだんです。そして、貴女たちはオルフェノクに進化することができた。ここで人間を襲えなかったら、貴女たちには完全な死を迎えてもらうことになります」

 

そう言い終えると、女性は扉を開けた。

 

参加者たちはキョトンとした顔をしている。

案内役の女性の他に青のチューブトップに白のミニスカートの格好をした女性が3人入ってきたのだ。

彼女たちは補佐役なのだろうか?

 

「では今から選考試験を開始します」

 

女性の雰囲気が一変する。

奇妙な音と共に身体が、灰色一色の怪人へと変わったのだ。

 

まるで見本を見せるかのように参加者の胸を突き刺してしまう。

フワッと身体の力が抜け、身体が灰色の粒子状になりながら、地面へと勢いよく倒れる。

 

ファサッと砂埃のように舞い上がると参加者たちは阿鼻叫喚の悲鳴をあげて、散り散りに走って逃げ惑う。

数十分前に自らも受けた衝撃を、彼女たちは今経験している。

 

「愛依…?」

 

ふと右隣にいる友人の異変に気づく。

フッと軽くあしらうのように笑う。

 

「なぁ、芹奈も身体が熱くなって来ねえか?」

「え…?」

 

不敵な笑みという言葉がピッタリだろう。

愛依にそう問われ、今目撃した事象に対しての感情がよく分からない。

先ほどまでは恐怖の一択だったが、今は…?

今はどうなんだ?分からない…?

 

「芹奈さん。私もです。それに、芹奈さんも笑っていますよ?」

「え?」

 

左隣にいる千景もニコッと笑う。

笑っている。そう千景に指摘されてもまだ気づけない。

手を頬に当ててようやく気づく。

口角が上がっている。

なんで?なんで私は笑っているの?

 

ふと身体が熱くなるのを感じた。

両側の2人はもう変化を終えている。

ああ、私も早く変身しなきゃ。

 

そう思った瞬間、芹奈の身体は熱さを増す。

妖しく瞳が白っぽく、くすんだ銀色に光る。

その銀色が身体全体へと広がると同時に身体に怪しい模様が浮かび上がった。

光に包まれた身体からはあの聞いたことのないような音が発せられる。

今ならこれが何か分かる。

そう。私の身体が作り替えられる音。細胞がオルフェノクのものへと変化する時の音だ。

 

光が消え失せると、そこにはあの露出の多いキャンペーンガールたちの姿はなかった。

このコンクリートの部屋と同じ、灰色で無機質な甲冑のような鎧のような姿をした、異形の能力を持つ怪人たちだ。

3人とも色は統一されてはいるが、意匠もそれぞれ違い、何か動物を思わせるような姿をしていた。

 

変身を終えた芹奈たちは、不思議とどうすればいいか分かった。

人間を襲えばいい。

 

そう、思った瞬間に3人…いや、3体の怪人は逃げ回る人間たちを捕まえて回った。

 

1人目の女の子は目がクリクリしてた。

あれ、どうだっけ?涙目だからそう見えたのかも?

2人目は…

覚えてないや。

 

私は自らの顔から伸びた長い鼻を伸ばして、人間の足を引っ掛ける。

そして、逃げられないように上へのしかかり、側頭部から生えた大きな牙を人間たちの口から挿入し、心臓へエネルギーを流し込む。

こうやって人間を狩るのだ。

 

私は自らの顎でバッグを盾にしている人間を襲う。

何の問題もなく、バッグを顎の力で引きちぎると、頭に生えた触覚を襲った人間の鼻から心臓へと挿入させて、エネルギーを注入するのだ。

私はこうして人間を狩る。

 

私はこれほどまでに速く走ったことはあるだろうか?

ここにいる誰にも負けない脚の速さで人間をタックルする。

倒れた人間を掴み上げると、鋭く伸びた爪を人間の心臓に突き刺してエネルギーを送り込む。

私はそうやって人間を狩るのだ。

 

「さあ、貴女たちはもう人間ではなくなりました。スマートブレインに仕える者として、スマートガールズの一員として働くのです」

 

案内役の女性は人間の姿に戻ると、部屋を出ていった。

この日は同じことの繰り返しだった。

1Fから参加者を引き連れて、襲う。

そして覚醒した者がいれば、私たちが導く。

それの繰り返しだ。

 

この日、選考試験に参加したのは137人いたそうだ。

そのうち、私たちのようになったのは17人だけ。

いなくなった人たちはスマートブレインが完璧に証拠を隠蔽した。

ある者は友人同士で出かけた際に事故に巻き込まれ、ある者は自宅で病死し、ある者は自ら命を絶った。

スマートブレインが手を尽くし、そのように偽装をして、世間に不審に思われることなく、ことを運ばせたのである。

 

私たちはこれから愛を配りに活躍するのだ。

そして、スマートブレインに全てを捧げるのである。

 

〜fin〜




なんとなく、即興で4時間くらいかけて書きました。
いつか、本編を連載したら加筆して差し込みたい。
ひっそり修正加筆してそうだけど…
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