ダンジョンに「くっ、殺せ!」を求めるのは間違っているだろうか。 作:最強オーク
「あの~、アイズさん?」
「?」
「そろそろ降ろしてくれませんか···?」
「駄目」
「ええ···」
私は皆が各々の仕事を頑張っている中、一人美少女におぶられて悠々自適に過ごしていた。
最初は楽でいいやと思っていたんですがね、周りの視線が痛いんスわ。見られながらのくっ殺は有りですが、これは違う。断じて私の求める快楽ではない。
だからアイズに頼んだのですが、駄目の一点張り。アイズは頑固な所がありますからね、こうなったらテコでも動きません。
ちなみに私が目覚めたのはさっきです。さっきと言っても分からないと思うので、具体的に言えば50階層を経って現在25階層。ずぅーーーと寝ていた事になりますね。
いつの間にか火傷などが治されており、服装も予備に変えられています。もう戦闘出来る程に回復したので、アイズに頼んだわけです。
「ははは。君はもうしばらく休んだ方がいいよ」
近くに居たフィンが、一連のやり取りを見て軽快に笑いながら言う。
「その気遣いに感謝しますが、このまま何もしない訳には······それに、アイズにも無理をさせていますし」
「平気だよ」
「第一級冒険者だからね。持ち前の"力"で何とかなるさ」
「それは私が重た」
「ティオネやベート達のお陰で戦闘面は何とかなってるよ。指揮は後学としてラウルに任せてる。こうしてアイズが君を背負っているのがその証拠だ」
休んで大丈夫なのは、充分分かりましたが······。
「それでもサポーターの護衛くらいはさせてください。この階層のモンスターなら、今の私でも戦えますから」
「却下だ」
え――――――···?
「あの、理由を聞いても······」
「ん」
「え?――――なるほど休ませていただきます」
フィンが顎で示す場所に居たのは、表情では分かりづらいが般若の如く怒気を放つ我らがオカン、リヴェリア・リヨス・アールヴ。
聞けば単独でカドモスと戦った事に怒っているようです。18階層で説教ですね。経験からして長引きます。だから今の内に休めとフィンは言ってたのか。
ヤベェ、震えが止まらねぇ。
「大丈夫?震えてるよ?」
「アイズが隣に居れば」
「ごめんなさい」
振られました。私が頼みごとをすれば嫌な顔せず了承してくれる良い子ちゃんなのですが、リヴェリアの説教だけは別。彼女も常習犯なので、身を持って恐ろしさを知っているのですね。
気付けば18階層でいつものキャンプ地に。え?なんでそのテントだけを優先に?あ、リヴェリアがここに入れって言ってます。周りを見れば、表情から御愁傷様と言ってますね。これは。
「······で、私が言いたい事は分かるな?」
「う、まあ、はい···」
「そうかそうか」
にこやかに微笑まないで。釣られて微笑むくらいに怖いッス。
すぅーーーと表情が変わり、
「何をやっているんだお前はぁぁぁぁぁぁ!!」
「ご、ごめんなさいぃぃぃぃぃ!!」
後に団員は語る。
物語に登場する騎士みたいでカッコいいクロナさんは、副団長の前では子供みたいになりますよね(笑)
リヴェリアの怒号は、私の必死の謝罪とともに18階層を突き抜けた。
「はぁ、はぁ······」
走る、走る、走る。
息切れが激しい。足腰が悲鳴を上げる。それでも走らなきゃいけない。
何故なら······
「ヴゥモォォォォォ!!」
「うわぁぁぁぁぁっ!?」
だから走る。力の限り走って生にしがみつく。
義母の鬼特訓で鍛えられた
じゃあ何故逃げるのか?
答えは単純。
「武器が脆すぎ···!!」
ギルドから支給されたナイフは、ミノタウロスに一太刀喰らわせた瞬間にポキッと逝った。
当然だ。支給品は上層の中でも比較的浅い階層用に設定された武器。中層の中でも硬い部類に入るミノタウロスには通じなかった。
でも諦めたわけじゃない。
もうすぐで小部屋に到着する。そこで義母譲りの魔法を使えば勝機はあるはずだ。
大好きな義姉ならば立ち向かう。ならば僕だって。
誓いと覚悟を固めた時、
「あっ―――――ぐえっ!?」
小石に躓いた。受け身が取れず顔面から着地する。立ち上がろうとするが、
「な、なんで···」
足に力が入らない。ぶっ通しで逃げ回っていた事に加え、格上から貰うプレッシャー。予想以上に無意識下で疲弊していたみたいだ。
「あ、あは、あはははは」
笑いが止まらない。
目の前のミノタウロスは拳を振り上げ―――――
「は?」
ビシャァ!!
真っ赤な液体が飛んできた。咄嗟の事で避けられなかった冒険者は諸に赤色のシャワーを浴びた。
「大丈夫、ですか?」
「だ」
「だ?」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ミノタウロスを斬った目の前の金髪美少女を直視出来ず、たまらず逃げ出した。
恩人はポカーンとし、一部始終を見ていた狼人は腹を抱える。
帰るぞと言う狼人の後を歩く。
「あれはベル?そうですか。あの子も冒険者に······いえ、まずは謝罪をしなくては」
遠目で見ていた女騎士は独り言を呟いた。