ダンジョンに「くっ、殺せ!」を求めるのは間違っているだろうか。 作:最強オーク
「装備は···」
「うん。剣はもう大丈夫。でも防具は···」
それは案に防具を直せないと言っている様なもの。それはそのはず。強化カドモスによってズタボロにされたのだから。
リナは直すと誓ったのだが···うん。これは無理だ。かの団長殿でも不可能の芸当だ。
「だから新しく造る。その分費用は掛かるけど」
「はい。貴方の仕事に間違いなどありませんから」
クロナは納得して···否、現実を受け入れて立ち直った。
「修理費は6000万···ええと、貯金は3300万だから···」
「残り2700万。貴方ならおよそ半年あれば返せる」
「はい!では、いつもの貸金庫に振り込んでおきますね」
「ん」
手渡しが主流の世の中で、クロナが始めた画期的な支払い方。現代における銀行ATMを参考にしたもので、今ではこのやり方を真似する冒険者も少なくない。あのギルドも取り入れようか決めかねているぐらいだ。
やり取りは終了したから、帰ろうかと扉に手を掛けようとして――――
「クロナ」
「? わぷっ···!」
リナが投げた布?が頭に被さった。剣を壁に立て掛けて確認すると、
「これは···戦闘衣ですか?」
「ん。私からの餞別だから、代金はいらない」
「いいんですか?見るからに高そうですけど···いや、深層の素材ですよねこれ?明らかに高いですよね?」
「ヘファイストス様から素材を貰った。『クロナ・コロンによろしくね』だって」
「神ヘファイストスが···!ええ。今度礼を言わねばなりませんね」
着てみて、と言うリナに促されブラウスの上から羽織る。あれ?
「ちょっとこれ、胸元が···」
まるでコルセット。上着のような物を想像していたのだが、ボタンは下から2つまでしかない。胸部の防御力がないのですが。いや、耐久高めなので大丈夫ですが。
「胸部には新たに造る防具を付けるから。2つで1つ。それがその戦闘衣の本質」
つまり、
「未完成の装備ですか?」
「そうなる。でも、よく似合う···!」
良い顔で親指を立てられたらしょうがない。クロナは観念して身に付ける事にした。
その日、男共が前屈みになる事件が勃発した!
クロナ
「······これはこれで有りですね」
日付けは変わって。
喧騒で溢れ活気あるオラリオは、いつも以上の賑わいを見せていた。
【怪物祭】
年に一回行われる祭りの事で、読んで字の如くモンスターに関する催しが開かれる。
主催者は【ガネーシャ・ファミリア】で、彼らによって地上から連れて来られたモンスターを、客の前で手懐ける技術【調教】を披露するのだ。
ギルドが反対しそうではあるが、意外にも賛同している。謎ではあるが、楽しければ関係ないね!というのが神々の総意。
まあ、どうでもいいんですけどね!
どもども、皆のアイドルこと、クロナ・コロンです!
現在はベルを連れて【怪物祭】を楽しんでいます。デートですね、分かります。
Q.クロナちゃんは一文無しになったのでは?
A.あの後ダンジョンに潜り、一週間生活出来るまで稼いだので平気です。
Lv.6の身体って便利ですよねホント。本気で走れば中層18階層まで1時間も掛かりませんもん。強くなって良かったぁ。
それでも借金は無くならないのが現実です。そう言えば、ティオナはどうしてるんでしょうか。彼女の武器は億に届いてましたよね。溶かされたみたいですから、きっと私と同じ借金人生ですね。
まあ、そんな辛気臭い事は放っておいて。
「さあベル。次はあの屋台に行きましょう!」
「ちょっ、義姉さん!?僕は財布を届けないと···」
そう言えば、猫人であるアーニャから頼まれてましたね。同じ職場で働くシルに届けろと。
「ベル」
「?」
「シルは見つからなかった。いいですね?」
「よくないよ!?最初から諦めたら駄目でしょ!?」
ええ、彼の言う通りです。言う通りですがね?正直に言えばシルが苦手なのです。同性である私にアプローチをする、色におボケになった美の女神みたいな気がして。
フレイヤ味がするんですよね、彼女から。
ただ、魅力されてのくっ殺は中々美味しそうですが、最初から理性が消え去るようですから遠慮します。残したいんですよ、理性。
取り敢えずフレイヤと、その気配を感じるシルには近付かないという結論に至りました。
まあ、ベルが探すって言うなら協力を惜しみませんがね。
「おーい、ベルくぅ~ん!!」
「あ、神様!」
色んな事を考えていたら、ヘスティア様が現れました。数日間留守にしていましたから、二人とも嬉しそうです。
「お久しぶりです」
「あ、クロナ君!ごめんね留守を任せちゃって」
「お気になさらず。義弟を守るのは、義姉の役目ですから」
そんな会話をしつつ。
「では二手に分かれましょうか。私はあっち、ベルとヘスティア様は向こうを」
シル探しです。別に二手に分かれなくても良いのですが、主神と眷属の久し振りの再会です。だから、一家団欒の機会を創りました。
私と離れて大丈夫なのか?問題ありません。大勢の人が行き交う中で好んで問題を起こす人はいませんし、アストレアとガネーシャの両派閥がパトロールをしています。なので恐らく平気ですわ。
私は私で楽しもうと思います。
「モンスターだぁぁぁぁ!!」
はい、楽しめませんでした。
はぁ~、どこかの美の女神(決定)が檻から逃がしたのでしょうね。
お祭りの日にやるなんて全くの野暮だ。だから邪魔してやる!
私は四角く加工された木の棒を掴み、現れるモンスターを殴った。
普通なら折れますが、スキルによって折れません。マジ便利です。このスキル。
「落ち着いて行動を!モンスターは我々冒険者が請け負います!だから、【ガネーシャ・ファミリア】の指示に従ってください!」
「「「おおぉぉぉぉ!!」」」
歓声が響き渡ると同時に、避難が速やかに開始される。これで民間人に被害は行きません。
ランクアップによって強化された聴力を生かし、モンスター退治···ではなく、下手人を探しだします。討伐はあちこちで行われてるので大丈夫です。
私は私で動きます。
「見つけました」
「クロナか」
目の前には筋骨隆々の猪人。放たれる威圧感は強者の証。何より間違えるはずがない。
「お久しぶりです、オッタル。最後に会ったのは、バロールの件ですね」
「ああ。それよりクロナ。俺と同じステージに立ったのか?」
彼が言う同じステージというのは、Lv.7を示す。そういう噂は流れていますけど。
「いえ、残念ながら」
「そうか」
「ですが、ランクアップは可能です」
「そうか···!」
彼の目が光る。やはり同じ土俵に立つライバルが欲しかったようだ。気持ちは分かりますがね。
「だが、今の貴様とは戦わない」
「それはなぜ?」
私の目的は女神の思惑を阻止する事であって、彼と戦う事ではない。ここにオッタルが居るので、十中八九フレイヤが関わっている。目的は私だと推測したが、恐らくベルだ。耳からベルとヘスティアの声が聴こえてくる。
だから今戦えば、ベル達のもとへは辿り着けない。
「それで戦うつもりか?」
「あ」
それ以前の問題でした。私の装備は私服で、木の棒一本。万全の彼とは戦えないッス。
······なんか呆れてね?
「安心しろ」
「?」
「あの子供が死ぬ事はない」
「···言い切るのですね」
「ああ。あの方が見初めた冒険者で、お前が認めた冒険者だからだ」
説得力があった。美の女神が認めるほどの器がベルにはあるし、不思議と賭けてみたくなるのだ。負けるはずがない。
「···分かりました。それでは「待て」何ですか?」
「アレンからの伝言だ。『お前がランクアップしてようが関係無い。殺すのは俺だ』確かに伝えたぞ」
そう言って去っていった。
アレンの伝言を直訳すると、『ランクアップしてもしてなくても俺はお前に勝つ。殺すのは俺だから、それまで誰にも負けるんじゃねえ』なるほど。
「······これは、負けられませんね」
負ける気はありませんけどね。
クロナがさっきまでいた場所に戻ってみると、沢山の人が集まっていた。視線を辿って見れば【ロキ・ファミリア】のヒリュテ姉妹とレフィーヤが居た。その正面には見たこと無い新種のモンスターが。
レフィーヤは魔法を発動するため詠唱を紡ぐ。それを守るようにティオネとティオナが立ちはだかる。
Lv.5二人の鉄壁の守り。誰もが勝利を確信した···一人を除いて。
「! 不味い!!」
勢いよく屋根を蹴り、レフィーヤの前に立つ。
「!!」
「「クロナ!?」」
驚いたのつかの間。
地面から触手が迫る。勢いよく伸びる触手は、そのままクロナの腹を···貫かず弾かれた。
「「「······」」」
『クロナさんのお腹って硬いの?』『まあ腹筋割れてそうだもんね』『胸は柔らかそうなのにね』『全体的に筋肉付いてそう』『ある意味騎士っぽい(笑)』
そんな声がちらほら聞こえる。小声で言ったつもりなのだろうが、強化された聴力は全て本人の耳に入っていた。
「~~~~~~~~っ!!」
顔が真っ赤になる英雄。大衆の前で凌辱されるくっ殺は確かに好きだ。好きだがこれは違う!解釈違いだ!!
「さ、さあ!戦おうか!」
「え、ええ!そうね!」
「は、はい!詠唱始めます!」
気遣いが痛い。物理的な痛みではなく、精神的な。
おまけ。
「!不味い!!」
触手で犯されるのは私だ!エルフだろうと、その役は渡しません!!
→勢いよく前に出るが、触手が自分の腹で弾かれた。→腹筋割れてそう(ヒソヒソ)→ド赤面。
腹筋割れてる女性は割りと好みです。by.作者