ダンジョンに「くっ、殺せ!」を求めるのは間違っているだろうか。   作:最強オーク

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くっころ要素Zero

少ないです。


くっころ8 悪夢の先に

 

 「···」

 

 「···え~と、アイズさん?」

 

 「···」

 

 重い空気が部屋に漂う。

 

 目の前に居るのは妹分のアイズ・ヴァレンシュタインで、とある事情により離れた派閥の幹部である。

 

 新種討伐後、アイズは魔法を使用して私を連れ去りどこかの宿に連れ込んだのだ。

 

 代金はまるで風のように速く支払っていた。店主は一瞬目を見開いた後すぐに対応した。プロ過ぎじゃないッスか?

 

 私はベッドに寝かされ(倒され)、アイズはその上に被さる形で(俗に言う床ドン)私の目を見据える。···顔が近いな。鼻が当たりますよ?

 

 「······んで」

 

 「え?」

 

 「なんで、置いていったの?」

 

 「それは···」

 

 言葉に詰まる。どう答えてもアイズを納得させられる答えを私はもっていない。尚も傷付いてしまっている彼女をさらに傷付けてしまう。

 

 「私は、クロナが好き。大好き。クロナになら全て差し上げてもいい。でも···。それでもクロナに捨てられるのは嫌だ···!」

 

 そう言って少女は、泣きながら私を抱き締めた。

 

 私は自分の浅はかな行動に後悔した。相手の気持ちを理解しているつもりだった。アイズはもう自立して心身共に強いと勝手に思い込んでいた。その結果がこれだ。

 

 「······すみません、アイズ」

 

 それでも

 

 「私は私の選んだ道を往きます。例え誰かを傷つけても」

 

 それでも私は、私が定めた愚行(くっ殺)を貫き通す。

 

 『お前に自由は無い。ただひたすらに才能を示せ』

 

 『貴方に期待してるの。だからね?私達に恥をかかせないで』

 

 今でも夢に見る。

 

 父親には家のために自由を奪われ習い事に拘束される日々。時には叩かれ、狭くて暗い部屋に閉じ込められる時もあった。

 

 『一位だからどうした。当たり前の事を嬉々として報告するな』

 

 母親は周りに自慢するために見栄を張り、私に過度な期待をよせ無理難題を突き付ける。失敗すれば父と同じように叩き、理不尽に叱る。

 

 『○○ちゃんに負けた?何をやってるの!?私は貴方に大金を注ぎ込んでまで習い事をやらせてるの!たかが下級市民の子供に負けてどうするのよ!?···ああもう、私の立場が危うくなったらどうしてくれるのよ···!』

 

 生涯一度たりとも褒めてくれる事はなかった。親らしい事も一度もしてくれなかった。私にとって親とは恐怖の対象である。

 

 この世界にあの人達はいない。なのに、目を閉じればいつだって鮮明に映り出す。

 

 私は忘れたい。

 

 この悪夢(トラウマ)を。

 

 それが出来るのは。

 

 「······くっ殺だけ、なんですよ···」

 

 「え···?」

 

 純粋な愛では満たされなかった。今世の両親も、派閥の皆からも、よくしてくれた友達も、仲良しの義弟からも、そしてアイズからも。

 

 だからこそ歪でそこに愛はなくとも、この体を無茶苦茶にされ求められて、この生涯を終えたい。

 

 「アイズ」

 

 「?」

 

 「()()()()()()

 

 コクリと頷いた。アイズからの問いに答えられなかった私からのせめての償い。それが彼女の傍に居る事だ。

 

 目を閉じればいつもの悪夢だろう。

 

 「派閥を抜け出したのは、私のわがままです。アイズはこんな私を許してくれますか?」

 

 「駄目。許さない」

 

 「そうですか···」

 

 「でもね」

 

 「?」

 

 「クロナはいつもと同じように、私を助けてくれる?」

 

 「約束します。一人の騎士として貴方を守ります」

 

 「なら、許す。たまにね、たまにでいいから、私と一緒に···私の傍に居て欲しい、な···」

 

 うつらうつらと、私を抱き締めながらアイズは言った。半ば夢の中だったのだろう。セリフが途切れていた。

 

 「ええ。それが貴方の望みなら」

 

 頭を撫でると、気持ちよさそうに眠りについた。腕の中で眠るアイズはとても幸せそうだった。

 

 私もつられて眠る。

 

 どうか。

 

 今回だけは耐えられる悪夢でありますように。

 




一応アイズから許しを得ました。オリ主の頭がおかしいのは、前世の出来事からでした。

次回は外伝。ハシャーナさんの運命は如何に···!
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