ゾンビと言えばチェンソーっしょ   作:キラトマト

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第1話 廃墟とゾンビ

 目が覚めると、廃墟にいた。今まで……長ぇ夢見てたような……。3年半くらいよぉ。確かヨルとかアサみてぇな名前の女とか……。

 

「んあ? あれ……なんだあ、ここ……」

 

 さっきまでいい夢見てたのによぉ……あぁくそ……。ふと顔を上げると、体がグズグズになったバケモンが向かってきていた。

 

「ゾンビ? まぁいいや、殺せばよぉ!」

 

 胸にあるスターターロープを引き抜き、チェンソーマンに……。

 

「あれ……ない! ない! どこいったんだよ! おいポチタ!」

 

 体ん中に話しかけてもうんともすんとも言わない。え、ポチタは……? え、夢じゃなかったのかよ……?

 

「あぁくそぉ……でもんなとこで死んでらんねぇよなぁ!!」

 

 その辺にあった鉄の棒を持ってゾンビの頭を滅多打ちにしていく。

 

「ゾンビならよお、頭潰しゃ死ぬんだろぉ?」

 

 なんでかわかんねぇけど、いつもならこのくらいすぐに殺せてたはずなのに全然頭が潰れてくれねぇ。いつもならチェンソーマンになんなくてもこんなのトマトみてぇに潰れるのによぉ。

 

「さっさとっ、死ねやぁ!」

 

 心なしか、鉄の棒も重たく感じた。

 

「あぁもうっ! んでチェンソーマンに変身出来ねぇんだよ……クソがっ! クソがっ!」

 

 憂さ晴らしにゾンビの体を意味もなく蹴ってみせた。

 

 ……ってかよぉ、こいつ、頭以外じゃ死なねぇんだったらよぉ、一生サンドバックに出来んじゃね? 

 

 そんなこと考えてっと、後ろから別のゾンビが来たことに気がつくのが遅れちまった。

 

「うらッ!」

 

 なんかすんごい速さで俺の横を通り抜けた奴がいた。

 

「え……」

 

 すると、俺に近づいてきていたゾンビが首を落として、そして呆気にとられているうちに俺がサンドバックにしてたゾンビも殺されちまった。

 

「ちょっち! だいじょぶかい! あたしらが来たからには、もう自殺なんてさせねぇぜぃ!」

 

 

 

 

 ###

 それは、デンジが目覚める十数分前……彼女ら二人は生存組合『メルター』との会談を終え、帰路に就いていた。

 

「ま、どこだってそうじゃないの? 私らのポートラルが変わってるだけで」

 

「でも一応収穫はあったよ? ほら」

 

 アドは拳銃をメルターの武器庫からこっそりと持ち出していたのだ。そんな中、ゾンビに襲われそうになっていたデンジを助けたのだが……。

 

 

 

 ###

「あぁ、そういうことなんすね」

 

「いや、てかあんた……男!?!?!?」

 

 黒髪ロングの女(ひさぎって言うらしい)は俺を見て叫んだ。なんで男ってだけでこんなに言われなきゃなんねぇんだ? とも思ったけど、それよりも……。

 

「やりてぇなぁ……」

 

 性欲のが勝ってた。

 

「……って!! その汚いの隠しなさいよ!」

 

 俺の下半身を見て言った。

 

「あれ……」

 

 どうやら俺は衣服のひとつも来てなかったらしい。それに今の今まで気づかなかったとは……。俺はオレンジ色の髪をした女が着ていた上着を借りた。

 

「……これが女の服」

 

 でもそんな呟きは聞こえてなかったのか、アドが自分たちに着いてこいなんて言ってきた。こんな可愛い人に誘われたら……。

 

「行く……行きます!」

 

 断る理由なんてなかった。

 

 

 

 ###

 道中、話を聞いた。

 

「今から3ヶ月のこと……世界は唐突に、終わりを迎えたのさ」

 

「えー、なんでですかぁ〜?」

 

 話半分で聞いていた。正直そんなことはどうでもよかった。どうでもよかったんだけどなぁ……。

 

「あー……終わったってのはちょっち言い過ぎだったかもしれやむ。この渚輪区全域でウイルスによるパンデミックが起きちゃったのさ……」

 

「ウイルスっすか? どんな?」

 

 アドはそのウイルスとやらがどれほど危険か話してきた。

 

「感染経路は空気、飛沫、接触、経口、果てにはベクターまで、しかも、潜伏期間はほぼなしで、感染後の死亡率は100%の──超毒性ウイルス」

 

 ベクターってなんだ? つかよくわかんねんだけど、そんなこと言われても。

 

「やばいっすね〜。てか、そんなんがいんのになんで外、出歩いてんすか?」

 

「若い女性は大丈夫みたいなの。────あ、でも血液だけは別。ゾンビに噛まれたら感染しちゃうから……」

 

「へぇ〜……って」

 

 それってまさか……。え、もしかして女ばっか? この人らの拠点って。

 

「ん? どしたの?」

 

「い、いやぁ、なんでもないっす」

 

 思わず口角が気持ち悪いくらい上がっちまった。

 

「つか、それじゃあなんで俺、生きてんすか?」

 

 悪魔だから? とも思ったけどポチタがいないんじゃそれが理由でもないだろう。なんて少ない脳みそで考えたところでわかりっこない。

 

「う〜ん……なんでだろうねぇ……。まぁ、それはまたおいおい考えればいいや! ……っと、着いたよ! ここが私たちポートラルの拠点!!」

 

 たどり着いたのはデパート。まぁボロボロになってっけど、ゾンビが徘徊してんじゃこんなんでも豪邸と同じか。

 

 

 

###

「へぇ〜、筋トレするとことかもあるんすねぇ」

 

 各部屋を案内されながら、俺はそんな声を漏らした。

 

「ここがトイレっすね。ちょっと借りていいっすか?」

 

「早めにね! 遅かったら……そりゃ……ムフフ」

 

 アドは思ったより変態みたいだな。

 

 トイレに行って鏡を見た俺は仰天した。

 

「おいおいおい……どうなってんだよ俺の顔……」

 

 いつもの金髪の天パじゃなかった。それはもう見事なくらいストレートの黒髪だった。しかも歯もギザギザじゃなくなっていたし、目だって青色になってた。

 

「誰だよその顔はよぉ……」

 

 自分の顔に愛着があったとまではいかねぇけど、でもそれでも顔が変わったって事実は心底気持ち悪かった。でも……。

 

「ま、いっか」

 

 それと、女ばっかのチームにいさせてもらうことを天秤にかけたらそんな些細なことはどうでも良くなった。俺はトイレを出て、アドさんとひさぎさんに合流する。

 

「で、ここが会議室!」

 

 そんなこんなで着いたのが会議室、普通のデパートの託児施設をちょっと改造したような感じだった。アドは部屋に入るやいなや、頭上で手を叩いてそこにいた皆の視線を集めた。中にいたのはたったの4人だったけど、全員すんごく可愛かった。

 

「やぁやぁ皆のしゅー! 注もぉーく!!」 

 

「敬愛するポートラルの諸君、今日集まってもらったのは他でもない。本日は大収穫があるんですぜぃ! 聞いて驚くなかれの3、2、1──ババン!」

 

 アドは凄くテンションを上げて俺を指さした。

 

「男だッ!!」 

 

「ななななななんだってッ!?!??!」

 

 その場にいた全員がびっくり仰天みたいな態度をとった。

 

 つか……露出たけぇな全員……。最初に会ったアドさんやひさぎさんとは比べもんにならねぇくらい肌がでてた。

 

「ほ、本物の……男かよ」

 

 うっすいTシャツにノースリーブのジャケットを羽織った赤い髪の女がそう言った。それに左二の腕にタトゥーまで掘ってあった。

 

「正真正銘の男子ですぜリッちゃん。生存組合『メルター』との会談帰りにさ、日々宮通りで捨てられてたから拾ったの」

 

「俺戦ってましたよ?」

 

 てかこの人ら、俺がゾンビ滅多打ちにしたとこも見ていたのかぁ? まぁどっちでもいいけど。

 

「……しゃべった」

 

 裸に一張羅だけ着ただけの両目の色が違う小さい女の子もいた。

 

 少女たちは、久しぶりの男声に感動したのか、或いは驚いたのか、それだけで「おお」とどよめいた。

 

「また樽神名の笑えねぇ冗談かこりゃ……? 男にゃ免疫がねぇはずだろ?」

 

「仮説であり定説ではなかったということですね……。これまで男性生存者を発見し得なかった結果、そう結論づけてしまっていただけで、こうして反証があった以上、男性が生き残れる可能性もゼロじゃないということでしょうね」

 

 眼鏡をかけたいかにもという雰囲気の女が口を挟んだ。……てか胸デケェなぁ……。

 

「はぁ……男見るだけでここまで感動する日が来ようとはなぁ……」

 

「それで、少年さん」

 

「ん? 俺の事っすか?」

 

「ええ、申し遅れましたが私の名前は百喰恵です。初対面で失礼ですが、いくつか質問しても構いませんか?」

 

「まぁいいっすけど」

 

「ではまず最初に、感染せずにいられた心当たりなどはありますか?」

 

「え〜? そんなのわかるわけないっすよ」

 

「わからない? ではどこにいたのですか?」

 

「目が覚めたらこんな廃墟に放り出されてました」

 

「ではご職業は?」

 

「……デビルハンター……いや高校生っす」

 

 別の世界の人に言っても分かんねぇだろうし、つか辞めたし。まぁ高校にも通ってるし。だから高校生と言っておいた。

 

「ご趣味は?」

 

「ん〜……寝ることと食うこと」

 

「出身地は?」

 

「日本以外に見えるんすか?」

 

「……では名前は?」

 

「デンジっす」

 

 すると百喰は持っていたペンをへし折った。あまりにも舐めた態度とりすぎちまったか? 素がこれなんだから仕方ねぇけど

 

「百喰君よせ。彼も……デンジ君も悪意があって言ってるわけじゃないんだろう」

 

 と、怒る百喰を諌めたのは髪がブロンドでオマケに胸もでけぇ……なんなら肌面積もすげぇ美人さんだった。その人は俺の方に近づいてきて頭を下げてきた

 

「すまない。見苦しいところをお見せしてしまったな……」

 

「いや別にそんなとこ見た覚えないっすけど」

 

「ふふ。優しいのだな。まずは私に自己紹介をさせてもらってもいいかな?」

 

「え、まじっすか? 聞きたいです」

 

 まさかこんな美人が自分から名乗ってくれるなんてよぉ。

 

「ありがとう。私は三静寂礼音。『戦闘班』で狙撃手をやらせてもらっている」

 

「戦闘班っすか?」

 

 デビルハンターみたいなもんか? ……つかそんなんに入って活躍なんてしたら俺、モテんじゃね? しかも今んとこ唯一の男だろ? そりゃもう……色んなことしまくりじゃねぇか! 

 

「あぁ、ここの中央会議室にいるメンバーの通称さ。戦える人間を集めて、デパート外活動要因として気張らせてもらっている」

 

「それって俺入ってもいいんすか?」

 

「およ? 気になったかな? 3日後に外行く作戦あるから1回行ってみる?」

 

「もちろんっす!」

 

 即答だ。もちろん死ぬかもしれねぇが、ここでいいとこ見せりゃこん中の誰かと……。そう想像しただけで思わず笑みがこぼれてしまう。

 

「何笑ってんのよ、気持ち悪い」

 

それをひさぎにひでぇ言葉で罵られて、今日は終わった。

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