俺たちはペトラ橋っつーとこを目指して、すげぇ数のゾンビがいる街を歩いてた。
「ぶーぶー。ぶーぶー」
「なんすかぁ、その鳴き声」
「よく見てみろよデンジ、そいつは我がリーダーだぜ」
なんて、昨日ボコッてきたやつが肩を持って話しかけてきた。
「ホント、豚みたいなやつじゃな」
「むかぁ! 酷すぎだぜヒッピーだぜ全くもー! ぷくぷくぴーだ!」
「何故樽神名さんはこんなにも気持ち悪いですの?」
「さぁ……知らないっすよ」
「それはだな甘噛くん、蜂ノ巣くんが『遠征はどんなに長くても24時間、片道12時間まで』と約束させたからなんだ。それからこの有り様さ」
へぇ……12時間……まぁ余裕っしょ。
「あらやだわ。デパートの皆様を心配させないためなのでしょう? そんな蜂ノ巣さんの優しさをあの子豚さんはわからないのですね」
「言われておるぞアド、豚じゃと。面白い例えをするものだな」
すると、遠くからゾンビ野郎の唸り声が聞こえてきた。
「そ、それより皆さん……。ゾンビがコンビニ前に屯していますけど……どうします?」
オドオドとあのコベニっつーチビみてぇに喋るやちるが指を差した。
「そりゃあ、ぶっ殺すしかねぇでしょ」
「デンジくんとパワーくんは戦わなくていい。橋での戦いまでに消耗するわけにはいかないからな」
「そうっすかぁ」
「ワシは戦うぞ。なぜなら、血の匂いがするからじゃぁぁああ!!!」
あいつ、血の刀持って飛び出していきやがった。マキマさんいねぇとこんなにも命令違反すんのかよぉ〜。
「パワーくん!?」
「なんだあの女ぁ!?」
「あ〜、いつもの事なんで、大丈夫っすよ」
「あれで……?」
「とっ、とにかくパワーちゃんに続くよ! ……って、もう終わっちゃった……?」
「ガハハハハハ! ワシが最強じゃぁ!」
大口かっぴろげて叫ぶパワ子。
「おいパワ子、なぁに命令違反してんだよ」
「ん? なんのことじゃ? 命令違反とは。というかデンジ! ウヌこそ命令に背いていたであろう! 戦えと言われたのに戦わなかったでは無いか!」
「えぇ……怖ぁ……」
「本当にこんな方を仲間に入れて良かったんですかアド? あんなの、いつ裏切られるかわかったものではありませんよ」
「そーだそーだ、あいつはぜってー裏切るぜー」
実際あいつが探偵気取ってたときとかふつーに売られたしな。
「貴方もそう思うんですか……?」
「あぁー思うぜ」
そんなこと言いながら俺はコンビニん中入っていく。
「食料はもう残っていないぞ? 調味料の1粒すら既に……」
「そうっすかぁ……よし、エッチ確認」
本をパラパラと捲ってお目当てのシーンを確認した後、俺たちはコンビニ前を後にした。
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「おいパワ子、いい加減血ぃ飲むのやめろよ」
「デンジの血は美味いからのぉ、それにあの時はデンジの血で生き返ったようなものじゃからのぉ」
「あんな奇跡もう1回起きるわきゃねぇだろ普通に考えてよぉ。つかてめぇ一瞬マキマさんに俺売ったじゃねぇか」
「あっ、あれはマキマを騙すための嘘じゃ! 嘘! 初めての嘘じゃったが、上手くいったようでよかったじゃろ?」
「はいそれも嘘ー。なんですぐバレる嘘つくんだよ!」
「何を言っているのかさっぱりわからんぞ?」
「はぁ〜……」
1回死んでるっつーのになんも変わんねぇのなこいつ。そんな俺たちの喧騒をよそに、アドと百喰が感慨に浸ってた。
「しかしニュータウン南部まで来るのは久しぶりですね」
「だね、モグッチ。ポートラル結成当時は、毎日ペトラ橋まで足繁く通ったもんだよ」
「ええ。あの頃、私が静止を促してなければ、何度ゾンビ化していたことか」
「面目ナッシングッ!」
「あの〜聞いてもいいっすかぁ? ゾンビって、なんかゾンビにさせた黒幕とかいるもんなんすかぁ?」
映画とかじゃあそんな奴ら……つーか会社がいるもんだけど。
「さぁ……? 発祥元など考えたこともありませんでした。考えても無駄かと」
「へぇ〜そうなんすね〜」
「デンジさん、こちらからも質問があります。貴方とパワーさんの関係性は一体どのようなものなのでしょうか」
「ん〜」
そーいえば考えたこと無かったな……まぁ強いて言うなら……。
「家族っすかね?」
「そうじゃ! ワシがデンジの姉じゃ!」
と、頭をひょいと出して答えた。
「あぁ? どう考えても俺のが兄だろうが! 姉はトイレ流さなかったり風呂入らなかったり野菜食わなかったりしません〜」
「トイレも2回に1回は流すし、風呂も2日に1回は入る!」
「汚ぇんだよ! つか野菜も食えよ! 美味ぇんだぞ野菜はよぉ!」
ベキぃ、と。会話が脱線してしまい、つい拍子でペンがへし折ってしまった音はゾンビのうめき声に掻き消された。
「チェンソーにならなくても戦えるっすよ俺ぁ」
調理場からくすねてきたナタでゾンビの首切り落としていく。栗子はデッケェ鎌持って、やちるは跳び回ってゾンビを殺していった。
「ふぅ、ったく。あたしの血がそんなに飲みてぇのかねぇ、この腐れ共は」
「太ももが……重点的に疲れたです」
「んだ? やちる、電磁力ブーツの電源切ってやがるのか」
「節電、だから」
「でんじりょく? ってなんすかぁ? すげーってことだけはわかるっす」
「磁力の力で……浮いてますゆえ」
「へはっ、素敵な魔法にでも見えたか?」
「浮くってすごいっすね、悪魔の力も借りてねぇのに」
「悪魔ぁ? なんだそりゃ」
「こっちの話っす。ってか、受けるんなら俺も使ってみていいっすか?」
「けどけど、その靴、ヤチルンに以外に扱える代物じゃないぜ? だってヤチルンは女子フィギュアスケートの最年少日本代表なんだよ?」
「へぇ〜、なんか大会とか出てたんすか?」
「出てたよ? 第54回シベリアゴリンピックっていう、世界中から集まってくる大会でね。まぁ、運悪くそれよりも前にゾンビは現れちゃったんだけどね……」
「そうかそうか! フィギュアスケートじゃな! それならワシにもできる! なんせ大会ではプロ相手に
「……パワーくん、スケートに完全試合というものは無いのだぞ?」
「そーだそーだ!」
正直俺もふぃぎゅあすけーと? っつーのはよくわかんなかったけど、一応礼音さんに賛同しといた。
「意地の悪いことをするなデンジ! ────!? なにか悪魔の匂いがするぞ……?」
「あぁ? 俺ん中のポチタの匂いじゃねぇのか?」
「違う! デンジの匂いは嗅ぎ分けられる! 別の悪魔じゃ!」
「あぁ? そんなの一体どこに────?!」
「こんなところに人間が沢山……最近は食い足りんかったからのぉ」
突然、なんか柔らけぇもんに絡め取られ、真っ暗な中に放り込まれちまった。
「クソ……これじゃあチェンソーになれねぇじゃねぇかよ……」
「カエルの悪魔じゃ! ワシが地獄で殺したからのぉ! 蘇っておったか!」
「あぁ? カエル?」
よくわかんねぇけどカエルって跳ねんじゃなかったっけ……?
「────?!」
急にジェットコースターみてぇに上から下へ、下から上に勢いよく口ん中でシェイクされる。
「じゃが、ワシの敵ではなぁい!!」
外からそんな声が聞こえてきた。
「は? おいおいおいちょっと待てちょっと待てパワ子ぉ!?」
口の隙間から見えた、刀を持って俺ごと悪魔をぶっ殺そうとするパワ子。
「デンジくん!?」
「仲間ごと、斬り殺しやがったのかこの女……?」
────気でも狂ってしまったのかパワー!?
パワーが気狂いすぎてデンジがまともに見えてくる