血が、悪魔から勢いよく噴き出した。
「はーっはっっはっは!! ワシの勝ちじゃぁ!!」
「いやちょっと……デンジちゃんが……」
「ん? なんの事じゃ?」
「だからデンジちゃんごと一緒に……」
「あぁー! デンジが真っ二つになっておる! カエルの悪魔じゃな!? やったのは!」
「いや君が……」
「じゃがデンジは不死身じゃ! 胸元にあるスターターロープを引けば復活するんじゃ! はーっはっは! 悪魔め! 殺しても無駄じゃったな!」
「いや殺したのは君じゃ……」
そんな小さな声、パワーには聞こえていなかったようで、彼女はデンジのスターターを引いた。
ブォォン、という音とともにデンジの体が引っ付いた。
「いてぇよぉ……」
次に目が覚めたのは、俺を口ん中に入れていた悪魔がぶっ殺された後だった。
「ありえませんわ……!」
「原理がわからない……」
「言ったじゃろ? このスターターを引けば復活すると!」
「っ、おいパワ子てめぇ! 俺ごと切ったろ!」
「何を言っておるのじゃ? ウヌは俺ごと切れと言ったじゃろ?」
「はぁ?! こんなときに嘘ついてんじゃねぇよ!」
「嘘とはなんじゃ? というか、橋まで行かないといけないのじゃろ?」
「あぁ、そだった。って、服ボロボロ……あぁぁあああ!!」
ズボンの後ろポケットに入れてたエロ本が口ん中に入れられてたせいでぐちゃぐちゃになっちまった。
「ど、どうしたのデンジちゃん!?」
「い、いやぁ、なんでもないっすよ、なんでも」
まじで最悪な気分だ。
「でもまぁ、いっか。めんどくせぇこと考えんのはやめだやめ。さっさと行くっすよ皆さん」
「あ、あぁ……」
(一体デンジくんとパワくんは……何者なんだ……?)
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橋ん中には、想像を軽く超える量のゾンビがいた。
「橋の……床が……ゾンビさんで見えません」
「ちょ……橋から溢れそうじゃねぇか。ゾンビの橋詰ソーセージかよ」
「そかそか、リっちゃんとやちるんも来るのは初めてだっけ」
「やちると私は古参じゃねぇからな……」
クソみてぇにうじゃうじゃいるけど、数だけだ。
「んなのよぉ、俺とパワ子だけで充分だぜぇ〜!」
俺はスターターを引いて、チェンソーマンになる。
「ギャハハァ!! 殺し放題だぜぇ〜!! オラァッ!!」
両手のチェンソーでゾンビの頭を、頭のチェンソーで頭突き代わりに斬撃を食らわせる。
「肉が切り放題じゃぁ!!」
流石に魔人っつーことでマキマさんと戦った時の針いっぱい出す攻撃は出来ねぇみてぇだけど、血で作った刀を持ってゾンビを沢山殺していった。
「ちょ、みんなッ! ぼけっとしてる場合じゃないぜ!」
唖然としたままのメンバーに、アドは檄を飛ばした。
「っと、すまない、呆けてる場合ではなかったなッ」
「わかってるって!」
「デンジくんとパワーくんが討ち損じたゾンビを掃討するんだ!」
「「「OK!」」」
「ふんッ」
橋の淵に立つ礼音が放った矢が寸分違わずゾンビの脳髄を射抜いていく。
「背後の敵は気にするなッ! 皆の背中は、私が預からせてもらうッ!」
「ひゅー。ったく、礼姉の侠気にゃ惚れ惚れするなっ──と」
栗子は、身の丈ほどある大鎌を巧みに扱い、次々とゾンビを薙いでいく。
デンジたちが大部分を食い破っているとはいえ、戦闘班の肩書きは、伊達ではなかった。
「ゲヒャヒャヒャァ!! まだだよなぁ! まだいんだろぉ!?」
「まだじゃぁ! まだ切り足りんぞぉ!」
「ったく、こいつ、必要なかったな」
栗子は、用意された血液パックを指さしながら言った。
「まぁ、まだまだ戦うことにはなりそうだし、デンジちゃんはあの姿でいるだけで血液消耗しちゃうんだから、持ってて損はないよ!」
「そういうもんなのかねぇ……」
「宝の持ち腐れにはならないようにしたいものだな」
「やはりワシが最強じゃぁ!」
「ぷはぁっ、やっぱゾンビの血はまじぃなぁ!!」
抉った傷口に顔を突っ込んで、血を啜るが、クソみてぇに不味い味しかしねぇ。贅沢経験しちまうと、こうなっちまうもんなんだなぁ。
「クソっ!」
背後からのゾンビに気づかず、攻撃を喰らいそうになったところで心臓からチェンソーが飛び出る。
「ポチタ!? お前がやってくれたのか! ありがとな!」
「ポチタ? なんだそりゃ」
「っしゃあ! 次からは後ろも気ィつけるぜぇ〜!」
「────!?」
そんな中、暴れるデンジに、攻撃を加える者がいた。
「あぁ!? 誰だよぉ!」
「人間がいると思って来てみれば、魔人もいるじゃねぇかよぉ!」
「また悪魔かよ……おいパワ子! わからなかったのか!?」
「ゾンビの匂いにかき消されておったのじゃ! 仕方ないであろう!」
「ったくよぉ、さっきもカエルの悪魔にエロ本台無しにされたしよぉ!」
見上げて、悪魔の姿を確認する。ありゃ……何の悪魔だ?
「あの黒いの……もしかしてスマホ?」
すまほ? なんだそりゃ……。
「なんかよくわかんねぇけど、ぶっ殺しゃぁ、いいんだろ!? おいパワ子!」
もう一度チェンソーマンに変身し、悪魔に向かっていった。
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スマホの悪魔は、困惑していた。魔人の頭の中に不特定多数の誹謗中傷を送り込んでいるというのに、なんの意にも介さないのだ。いや、それは魔人だからいい。だが男の方はどうだ、武器系の悪魔の心臓を身体に宿してはいるが心は人間だ。なのに何故、精神攻撃が効かないのか。
「俺はちっせぇ頃にんなこと散々言われてんだよッ! 今更思い出させんじゃねぇ!」
「クソがぁっ!」
囲いの盾を展開させ、自分の身を守る悪魔、だがそれも易易と突破される。
「なんでなんだよぉ!」
次はその囲いを遠隔で操作し、チェンソーマンに向ける。所謂ファンネルである。
「ワシを忘れておったなぁ、すまほ? の悪魔ぁ!!」
「なにぃ!?」
そんなファンネル紛いを次々と撃ち落としていくパワー。
「ウヌらのも借りるぞ!」
「パワーお前それ自分らの血液パックってこと忘れているのか!?」
地面に血をぶち撒け、そこから多数の針を出したのだ。流石に悪魔形態での攻撃に比べると威力も数も格段に少ないが、本体ではなくファンネル紛いを撃ち落とすには充分であった。
「っしゃあ! 死ねぇぇえええええ!!!」
チェンソーが頭に張り付いたスマホの液晶に触れた瞬間先程まで光っていたそれが光をなくし、液晶はバキバキに割れた。
「うぅ……血をくれぇ……もうねぇよ……」
「先程の戦いで血が切れた、血液パックをワシにくれ」
「はぁ!? さっき全部てめぇが地面にぶち撒けただろうが!」
「ワシはやっとらんウヌらが勝手にやったことであろう」
「おいテメェ……そろそろいい加減にしねぇとなぁ……」
「おうおう、やるのか人間!」
「ストーップ! パワーちゃんもりっちゃんも喧嘩はやめよ!」
「とにかく俺に血を……」
「違う! こいつが言いがかりをつけてきたのじゃ!」
「はぁ!? テメェ頭どうかしてんじゃねぇのか?!」
「だから俺に血を……」
「だから人間は嫌いなんじゃ! 嘘をつくからの!」
「はぁ!? 嘘をついてんのはテメェじゃねぇか!」
「さっきから言ってるけど! 俺に! 血を! 与えて! くださいって!」
「「「あ」」」
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結局、礼音さんが隠し持ってた血液パックで俺は復活できた。
「ったく、礼音さんが隠してなきゃどうなってたことか」
「敢えて残したのじゃ! 感謝されるのはワシの方じゃ!」
「怖ぁ……」
まじであんだけ感動の別れしたのによぉ……クソぉ。でもまぁ、
そんなことを思っている中、アドは大声を上げた。
「とぉぉぉぉぉぉぉぉちゃぁぁぁぁぁぁぁぁくッ!!」
スマホの悪魔
能力:対象の脳内に無数の誹謗中傷を送り、精神的に疲弊させる。『囲い』を利用し、盾とすることや、遠隔攻撃をすることが出来る。作中では使用しなかったが、対象の内側から火を発生させる『炎上』の能力等、多種多様な技を使うことが出来る。だが、スマホの悪魔は、戦争の悪魔に対する銃の悪魔、核の悪魔に相当するため、上位種も存在すると思われる。