「第二試合!ボドロ対クラピカ!」
第二試合が開始したけど、第一試合と違ってお互いの実力がそれほどには離れていない上に、おそらく両名ともハンゾーのような裏の存在でもない。純粋な実力比べで決着がつくだろう。
「なんでわざと負けたの?」
そんな感じで第二試合を見学していると、キルアがハンゾーに声をかけた。
「……わざと?」
「あんたなら殺さずまいったと言わせる方法くらい、いくらでもあるはずだろ」
確かにその通りではある。ハンゾーがゴンに行った拷問は試合という事もあってか、かなり手心の加えられたものだった。手段を選ばなければまだまだやれることはあっただろう。
「俺は誰かを拷問するときは、一生恨まれる事を覚悟してやる。その方が確実だし気も楽だ」
「?」
「どんな奴でも痛めつけられた相手を見る目には負の光が宿るもんだ。目に映る憎しみや恨みの光ってのは訓練してもなかなか隠せるもんじゃねー。しかし、ゴンの目にはそれがなかった。信じられるか?腕を折られた直後なのにあいつの目はもうその事忘れちまってるんだぜ」
確かにゴンにはこの試験中で悪意や殺気をむけられても、それを気にした様子もなかった。やはりゴンもズレてはいるな。
「気に入っちまったんだ、あいつが。あえて敗因をあげるならそんなとこだ」
それを聞いたキルアは……動揺してるな。確かに、ゴンの真っすぐさは私達みたいな裏社会の住人にとってまぶしい。キルアは同年代かつ、自分の道に迷いを抱いてる事もあってそのまぶしさにコンプレックスのようなものを抱いているんだろう。
と、そんな事を話してる間に第二試合も終わりか。ボドロ氏が負けを認め、健闘を称える握手をして終了。さっきとは違う健全な試合になった。
……さて。
「第三試合!イチリン対ヒソカ!」
呼ばれて前に出る。同時にヒソカも笑みを浮かべながら出てくる。
「
「そうだね♣君が良ければぜひ♥」
発まで使っての勝負がお望み、か。
「戦いを楽しむって言うのは理解に苦しむね。私にとって戦闘なんてものはリスクでしかない。相手が強ければなおさら」
「ふぅん♦じゃあ、降参するかい?」
「いいや」
正直、それが賢い選択だろう、だが。
「舐められっぱなしは気に食わないんでね」
そう言いながら雲山を纏うと、ヒソカは笑みをますます深くする。
「ああ、やっぱり君もいいね♥さあ、戦ろうか♠」
◆
「それでは、始め!」
ドゴォ!!
開始の合図とともに雲の念獣がまっすぐ拳を振り下ろしてくる。当然、工夫もない真っ向からの攻撃なんて躱すのは造作もないが、相手は気にせず左右の拳で連撃を繰り出してくる。……凝で目にオーラを集めながら。
(なるほど♦そういう狙いか♣)
凝で相手を観察するのは未知の相手との戦闘における常套手段だ。相手の能力の情報があるとないとでは戦闘における
だが、同時にそれは諸刃の剣でもある。目にオーラを集めるという事は、それ以外のオーラは必然薄くなる。つまり、攻撃においても防御においても不利な状況なのだ。その状況で攻撃部位にオーラを集めた凝による攻撃を喰らえば大ダメージを負うことになるだろう。それを防ぐためには自分も凝で防御しなくてはならない。
故に熟練者同士の戦いでは、流での攻防力移動の合間合間に凝での観察をしつつ、いかに相手のその隙をついて発を使うかが重要となる。
だが、彼女の場合は少々話が変わるようだ。雲の性質と対象への物理的な干渉を可能とする質量を併せ持つと思われるあの念獣は格闘戦においてきわめて厄介な存在と言える。雲の性質を持つが故にこちらの物理的な攻撃が通用せず、そして単純に大きい事もだ。
確かに、凝に集中すれば念獣に回すオーラは減るため全力を発揮する事はできないだろう。しかし、その質量が減るわけではない。堅でガードしようとも、拳を受ければ単純な質量差で殴り飛ばされ近づけない。ならばと攻撃を掻い潜ろうにも、やはり相手の大きさが問題となる。大きいという事はそれだけ攻撃範囲も広い。距離を詰め切るまで完全に回避するのは困難だ。
おそらく相当な実力差であっても、肉弾戦のみであの念獣を突破し距離を詰める事は至難。ヒソカの知り合いである肉弾戦においては
持久戦に持ち込んで彼女が凝を切らすのを待つにしても、一方的に攻撃されるのを防ぎながらの持久戦では明らかに不利を強いられる。
故にこそ、この状況を突破するためには凝で相手を観察している彼女に対し発を使う必要があると言うわけだ。発を使えば、どんな能力か知られる。使わないなら相手が圧倒的に有利な状況での戦いになる。どっちに転んでも彼女に損はない。
(なら、リクエストに応えようかな♠)
『
◆
雲山の拳をヒソカが真っ向から受け止める。あれは……凝の防御ではない。オーラに緩衝材のように衝撃を吸収された?
「これは……」
そして、ヒソカのオーラを殴った雲山の拳にそのオーラがひっついて伸びている。オーラを粘着し伸縮する性質に変化させてるのか?
なるほど、こんな物を体にくっつけて引っ張られたらかなり動きが阻害される。だが、雲の性質の雲山には無意味だ。くっつけられた部分をちぎってしまえばどれだけ粘着力があろうと関係ない。
「あらら、残念♠」
よく言う。こうなる事は分かっていて一応試しただけだろうに。しかし、私自身にあれを飛ばしてつけられたら強引に引き寄せられてしまうと思うべきか。凝を切らしたらそのリスクが高まるが、凝をしたままだとヒソカレベルの相手には決め手に欠ける。どうしたものか。
打開策を考えていると、ヒソカが高速で飛んだ。あれは、壁にあのオーラをつけて自分を引っ張ったのか。4次試験で垂雲の鉄槌を躱したのはあれか。しかし、視認性の悪い森の中ならともかく視界を遮るもののない室内で高速移動したところで見失ったりは……いや、これは!
「くっそ!」
「くくく♦」
やられた!ヒソカは高速で部屋の中を飛び回りながら部屋中に例のオーラをくっつけ張り巡らせた。あれに触れれば絡めとられるだろう。私にとっては動きを制限する蜘蛛の糸。ヒソカにとっては立体的な機動を補助するワイヤーだ。
伸縮自在のこの蜘蛛の巣を除去するのは容易ではない。試しに雲山で殴ってみても伸びるだけで切れる気配はなかった。くっついてる壁や床を破壊すれば取れるかもしれないが、そんな事をしてる隙にヒソカに距離を詰められるだろう。
かと言って、このままでもジリ貧だ。ヒソカが飛ばしてくるオーラを雲山で防いではいるが、防ぎきれなければ避ける必要がある。そうして、私が避けて壁や床にくっついたオーラは新たな巣になり、動きがさらに制限される。このままではどんどん追い詰められていくだけだ。ならば……。
「ふっ!」
「♥」
ヒソカが飛ばしてきたオーラを躱すと同時に、雲山を近接戦用の大きさにして堅をしながらこちらからヒソカに肉薄する。やってやるさ。私だって仮にも強化系だ、殴り合いが苦手ってわけじゃない。
それを見たヒソカは笑みを深め、迎え撃つ構え。堅をして正面から激しく殴り合う。互いに打撃を主体とした戦法。私の戦い方は拳打が主な格闘技の技術を
「くく、もしかして流は苦手かい?」
そうだよ、うるせーな!師匠からも強化系なのに勿体ないって散々言われたよ!攻防力移動が間に合わないため堅のみで戦わざるを得ない私と流を的確に使いこなすヒソカ。こっちには雲山による打撃力の上乗せがあるが、向こうもあの伸び縮みするオーラをくっつけてきてるし防御にも使ってる。総じて互角か……?
殴り合いのさなか、お互いの顔面にいい一撃が入り少し距離が開く。ったく、女の顔を遠慮なくなぐりやがって……。
「くく、くっくっく……まいった♣」
「は?」
一息入れて再開かと思いきや突然の宣言に間抜けな声が出てしまった。
「審判、僕の負けだ♥二回戦に行くよ♦」
どうやら、聞き間違いではなかったようだ。なぜこのタイミングで?
「……私じゃ相手として不足だったか?」
「いやいや、むしろ逆さ♥……これ以上やると試合じゃ満足できなくなるからね♠」
次はルールなしでやろうと言い残してヒソカは壁際に下がっていく。勘弁してくれ。
私も壁際に下がろうとしたらレオリオやクラピカを含めた受験生たちが呆然とこっち見てた。皆が見てる中で遠慮なく念を使ってたからね。そうもなるか。
いやー、苦戦した。自分は戦闘描写が苦手なのかもしれない。
……原作が能力バトルの二次創作なのにね。