狩人世界の入道使い   作:N2

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12.試験の後で

 試験終了後、翌日に合格者への簡単な講習を行うのでそれまでは自由に過ごしていて良いとのことで一旦解散となった。

 

「イチリン殿。よろしいか?」

 

「ん……?」

 

 そうして、ホテル内でぶらぶらしていると声をかけられた。

 

「ああ、えーっとボドロさん」

 

「あなたには助けられたのでな。改めて礼を言わせていただきたい」

 

 そう言って、頭を下げてくるボドロ氏。真面目な人だね。

 

「礼は受け取るけど、あまり気になさらず。実際はこちらの都合で介入したようなものなので。今はお互いに合格したことを喜びましょう」

 

「うむ。とは言え、私の場合はどさくさ紛れで合格したようなものだから少々複雑な気持ちではあるが」

 

「合格の仕方に納得がいかないなら、ハンターになってからの活動で自分を納得させればいい。試験合格なんてスタートラインでしかないんだから」

 

「……そうだな。何を言おうと結果は変わらないのだ。問題なのは、これから何を成すか、だな」

 

 ややすっきりした面持ちで、この恩は忘れぬと言って去っていくボドロ氏。義理堅い人だ。そうして、ボドロ氏と別れてからしばらくして……。

 

「げ」

 

「やあ♦」

 

 ヒソカと出くわした。借りはある程度返したので、もう出来れば関わりたくない相手なんだけど。

 

「そうだ、これ渡しておくよ♥僕の携帯番号とホームコード♠」

 

「……もらってどうしろっつーのさ」

 

 連絡したら仕事でも手伝ってくれるっていうのか?だとしても、頼りたい相手じゃないんだけど。

 

「くくく、何か面白そうなことがあったら連絡してよ♣」

 

 言うだけ言って去っていった。えー……まじでどうしよう、これ。

 

「ん?イチリンか」

 

「あ、クラピカ」

 

 困惑していると、今度はクラピカに声をかけられた。……ん?今、クラピカが出てきた通路ってさっきヒソカが出てきた通路だな。

 

「もしかして、ヒソカと話してたの?」

 

「ああ、幻影旅団(クモ)について教えると言われてな。その呼び方は幻影旅団に近しい存在の使う呼称だ。それを知っていたヒソカの話に興味があった」

 

「なるほど。しかし、なんでクラピカの目的を知ってるのかな。まさか、ヒソカに話したわけじゃないでしょ?」

 

「まさか。だが、一次試験でレオリオとその話をしていてな。声を潜めたつもりもないから、そこで聞いたのかもしれない」

 

「なるほど。ヒソカは何て?」

 

「9月にヨークシンで待ってる、と」

 

 9月のヨークシンって言えば、マフィアたち主催の大規模なオークション会場じゃないか。

 

「……オークションを狙って旅団が?」

 

「ああ、なぜヒソカが知っているのかはわからないが、その可能性は十分にある」

 

「まあ、ありえない話ではないね。ただ、そうだとして今のあなたでは何もできないだろうけど」

 

 まさか、幻影旅団のメンバーが念を使えないってことはないだろうし。

 

「……それは、ヒソカとの試合後に君が言っていた技術を旅団も修得しているからか?」

 

「そうだね。(それ)を修得しているか否かの差は大きい。特に、殺し合いでなら勝負にすらならないね」

 

 もっとも、実力差が大きく開いていれば非念能力者が念能力者に勝つことも不可能ではないけど……。ただ、それはあくまで非念能力者側が常人離れした身体能力の持ち主であり、かつ念能力者側が身体能力も念の練度もそれほど高くない場合だけど。幻影旅団の身体能力及び念の練度がそれほど低い可能性は皆無であるため、念を覚えるのが必須なのは間違いない。

 

「おそらくだが、トリックタワーの最後で壁を破壊した時にも()()を使っていたのではないか?思い返せば、あの時の君からはヒソカと相対した時に近い感覚を覚えた気がする。ヒソカのそれよりは、威圧感や不快感がはるかに小さかったため、気づくのが遅れたが……」

 

 へえ、良い勘してるじゃない。

 

「改めて頼みたい。どうかその技術を教えてはくれないか。旅団があれを使えると言うのなら、確かに私も修得しなければ勝負にすらならないだろう。対価はいくらでも支払う。お願いできないだろうか」

 

「別に私が教えてもいいけど、ハンター試験に合格したなら協会から師匠が派遣されると思うよ」

 

「協会から?」

 

「そ、ハンターもそれの修得が必須条件なんだよね。だから、試験に合格した中で未修得者には協会からそれとなく師匠が派遣されて、修業が終わって晴れてハンターとしての活動ができるわけ。だから、試験に合格しただけの現段階ではまだハンターとしての仕事は受けられないんだよ」

 

「そうなのか!?」

 

「うん。いくらでも悪用ができる技術だから軽々しく広めるわけにはいかないため、公に条件として記載することができないからこんな形になってるんだってさ」

 

 もっとも、マフィアや殺し屋等の裏社会に広まってる時点で今更って感もあるけど。まあ、逆にそういう人間だからこそ軽々しく広めないってのもあるんだけど。

 

「話を戻そう。とにかくあなたはその技術に関して一から修業を始めるわけだけど、それで今年の9月までに幻影旅団と渡り合えるレベルにっていうのは、まあ普通は無理だと思うよ。個人の資質の差は大きいけど、基礎を覚えるのに年単位の修業が必要になることも珍しくない。旅団への復讐なんてのはそんな短期的にどうにかできる問題じゃない。もっと、長期的なスパンで考えた方がいい」

 

 ついでに、少しお節介も焼いておこうか。

 

「私から見て、あなたは強迫観念にとらわれているように見える。一刻も早く取り戻したいという気持ちはわからなくもないけど、それで視野狭窄に陥ったら意味がないと思うね」

 

「……君に何がわかる!」

 

「少なくともあなたの気持ちなんてものはあなた以外にはわからないさ。私がわかるのは客観的に見たあなたの無謀さだけだよ」

 

「っ……!!」

 

 そう言うと、クラピカはそのまま立ち去ってしまった。ま、言葉で言われただけで納得できれば誰も苦労はないか。

 

 

 

 ◆   ◇   ◆   ◇   ◆

 

 

 

 翌日。予定通り合格者に対する講習が行われたのだが、そこでレオリオとクラピカがキルアの不合格に対して異議を唱えた。

 

「キルアの様子は自称ギタラクルとの対戦中とその後おいて、明らかに不自然だった。対戦の際に何らかの暗示をかけられて、あのような行為に至ったものと考えられる」

 

 というのが二人の主張なのだが……。

 

「全て推測にすぎんのぉ。証拠は何もないし、催眠をかけたとする根拠が乏しい」

 

 ネテロ会長の言う通り、証拠はなにもない。加えて言えば、仮に本当に催眠をかけていたとしてもおそらく問題にはならない。なにせ殺害以外はなんでもありのルールだったのだから、催眠をかけて降参させたって当然構わないわけだ。

 そんな風に揉めていると扉が開き、左手を三角に吊ったゴンが険しい顔で部屋に入ってきた。

 

「キルアにあやまれ」

 

 入ってきたゴンはまっすぐギタラクルのもとへ向かうと開口一番そう告げた。

 

「あやまる……?何を?」

 

 その言葉に対してゴンは、険しい顔にわずかに悲しそうな色を滲ませる。

 

「そんなこともわからないの?」

 

「うん」

 

「お前に兄貴の資格ないよ」

 

「? 兄弟に資格がいるのかな?」

 

 瞬間、ゴンがギタラクルの腕を掴み、大きく引っぱり上げた。ゴンにくらべ遥かに高身長のギタラクルが、思い切り空中に投げられる。

 

「友達になるのにだって、資格なんていらない!」

 

 ……すごいな。ゴンとギタラクルの実力差は明らかだ。なのに、ゴンに掴まれ投げられるのを避けられなかった。無意識に念を使っている。ゴンの激情が念に影響して100%以上の力を出しているわけだ。

 

「キルアのとこへ行くんだ」

 

 ゴンはイルミの腕を掴んだまま、くるりと踵を返した。

 

「もうあやまらなくたっていいよ。案内してくれるだけでいい」

 

「そしてどうする?」

 

「キルアを連れ戻す」

 

 決まってんじゃん、とゴンは言った。

 

「まるでキルが誘拐でもされた様な口ぶりだな。あいつは自分の足でここを出て行ったんだよ」

 

「でも自分の意思じゃない。お前たちに操られてるんだから、誘拐されたも同然だ!」

 

「──ちょうどそのことで議論していたところじゃ、ゴン」

 

 前に立つネテロが言った。そして受験者各々から言い分が出され、キルアの件についての検証が再度行なわれた。しかしそのどれもが確証のないもので結論は変わらず堂々巡り、ハンゾーがうんざりした溜め息をついた。

 

「……どうだっていいんだ、そんなこと」

 

 絞り出す様なゴンの声に、全員が彼を見た。

 

「人の合格にとやかく言うことなんてない。自分の合格に不満なら、満足するまで精進すればいい。キルアならもう一度受験すれば絶対合格できる。今回落ちたことは残念だけど、仕方ない。──それより」

 

 ギギギ、と、ギタラクルの腕の骨が音を立てる。

 

「もしも今まで望んでいないキルアに、無理矢理人殺しさせていたのならお前を許さない」

 

 ギシ、と、ギタラクルの骨が音を立てた。あれは折れたかな?

 

「許さないか……。で、どうする?」

 

「どうもしないさ。お前達からキルアを連れ戻して、もう会わせないようにするだけだ」

 

 なおも力を込めてくるゴンに流石に少し辛くなってきたのか、手にオーラを纏わせスウとゴンに向けた。オーラ(なにか)を感じ取ったゴンは反射的にギタラクルから離れる。

 

「さて、諸君よろしいかな?」

 

 そこからネテロがハンターライセンスについての説明を再開した。秘書のビーンズが中心となり、ライセンスについてや協会の規約等の講義が行われ、ここに居る九名を新しくハンターとして認定する、という宣言がなされた。

 

「ギタラクル。キルアの行った場所を教えてもらう」

 

 講義が終わりそう言ったゴンに、ギタラクルはちらりと目を寄越した。

 

「やめた方がいいと思うよ」

 

「誰がやめるもんか。キルアはオレの友達だ! 絶対に連れ戻す!」

 

「後ろの二人も同じかい?」

 

 ゴンが振り向くと、後ろにはレオリオとクラピカが立っていた。

 

「……いいだろう。教えたところでどうせたどりつけないし。キルは自宅に戻っているはずだ。ククルーマウンテン、この頂上にオレ達一族の棲み家がある」

 

 ゾルディック家に、か。止めたいところではあるけど……止まらないよねえ、絶対。

 その後、会長から解散の宣言がなされ、各々部屋から出ていく。……私も三人と話しておくか。

 

「やあ」

 

「あ、イチリン」

 

「一応聞くけど、三人とも本当にゾルディック家に行くつもり?」

 

 その言葉に力強くうなずく三人。やっぱ止められないか。

 

「そっか……。ククルーマウンテンがあるのはパドキア共和国。一般観光客でも行ける国だから、このホテルのパソコンからすぐにチケットは取れるはず。気休めでしかないけど、無事を祈るよ」

 

「なんだよ。お前はこねーのか?」

 

「いろいろ忙しいっていうのもあるけど、私は家族の問題に口を出す気はないんだ」

 

 例えば、私は両親に非合法な生き方を教えられた。私が今、マフィアなんてことをやってるのにその影響は大いにあったと言える。一般的な良し悪しで言うなら、両親の教えは間違いなく悪い方になるだろう。だからと言って、そんな両親の下に生まれてマフィアになったなんて気の毒だと言われたら我慢ならない。傍からどう見えたとしても、家族の関係というのは他人が気軽に口をはさむものじゃない。キルアにしても虐待されても親に依存するしかない子供ってわけじゃないんだ。キルア自身から助けを求められない限り、私は何もする気はない。

 

「あと、これは私の携帯番号とホームコードね。約束のこともあるし、無事に済んだら連絡して」

 

「あ、うん」

 

「レオリオとクラピカにも渡しておくよ。何かあったら連絡してね」

 

「おう、じゃあ俺のも渡しとくよ」

 

「私のも」

 

 二人と連絡先を交換する。ちなみに、ゴンはやはりと言うべきか、ホームコードはおろか携帯電話すら持っていなかった。

 

「それじゃあね。あなたたちと受けた試験、楽しかったよ」




と言うわけで、ハンター試験終了です。

原作と運命が変わった人たち

80番スパー
 原作では四次試験でイルミに殺されたが、ターゲットが一輪になったため殺されずに済んだ

86番一流のロッククライマー
 原作では三次試験で死亡したが、生き延びた。しかし、四次試験で失格した

103番バーボン
 原作では四次試験で死亡したが、生き延び更に念の修業先を紹介してもらった

191番ボドロ
 原作では最終試験で死亡したが、生き延び試験に合格した

281番アゴン
 原作では四次試験でヒソカに殺されたが、ヒソカは一輪を襲ったため生き延びた。しかし、レオリオにプレートを奪われ失格した
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