狩人世界の入道使い   作:N2

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18.予想外の大チャンス

 クロロ=ルシルフルの念能力、盗賊の極意(スキルハンター)

 他人の念能力を盗み、自分の能力として使うことができる発。

 それだけ聞けば、相手の能力を封じた上で自分の力を増す、とてつもなく反則じみた凶悪な能力に思えるだろう。

 だが、実のところ戦ってる相手の能力を盗むというのは、まずやらない。と言うか、()()()()

 なぜなら、盗賊の極意(スキルハンター)には強力な能力の性と言うべき重い制約がある。

 

 1.相手の念能力を実際に見る。

 

 2.相手に対象念能力について質問し、相手がそれに答える。

 

 3.本の表紙の手形と相手の手のひらを合わせる。

 

 4.1~3までを1時間以内に行う。

 

 以上の制約をこなして初めて相手の能力を奪えるのだ。

 1は難しくない。戦闘になれば相手は否応なく能力を見せてくるだろう。

 3も無理ではない。多少リスクはあるが、クロロの実力を考えれば不可能ではないだろう。

 だが、2は無理だ。少しでも()()()()()()能力者なら自分の能力に関してペラペラ喋ったりしない。

 さらに、元の能力の使い手が死ぬと盗んだ能力は使えなくなる。と言う事も合わせてクロロが相手の能力を盗む時は、相手を生け捕りにしてアジトなどの邪魔が入らない場所で制約を満たすのが基本であり、例外はネオン=ノストラードのような念能力者の自覚がなく質問すればあっさり答えてくれるような相手くらいだ。

 故に、今回のような生かして帰すわけにいかない相手の場合、どれほど有用で希少(レア)な能力であってもすっぱり諦める。

 そのため、目の前の一輪に関しても欲を出さず、すぐに仕留めるつもりだったのだが……。

 

(ち、やっかいな)

 

 クロロをしてもそう思わずに得ないのは、実力もさることながらその姿勢(スタンス)

 念獣を使って距離を取りながら、こちらのことを凝で観察している。これでは、近づいて仕留めるのは困難だし、念能力で不意をつくのも難しい。ならばと、リスクを負って隙を作り、相手の攻撃に合わせてカウンターで仕留めようとしても、()()()()()()。どうやら、完全に時間稼ぎに徹している。ゾルディックと相対する前に他の殺し屋たちは始末しておきたいのだが、流石にこの能力と実力で完全に守りに徹されてしまっては、そう簡単に仕留められない。

 

 そして、手間取っている間に怪物たちも動き出す。まず感じたのは、上から降りてくる念の圧。

 

「これは……円?このビルは半径100m(メートル)近くあるわよ……」

 

 目の前の女の言う通り、この圧は円だろう。そして、こんな範囲で円を展開できるのはこの場においてはゾルディックくらいだろう

 

(時間切れか……仕方ない)

 

 ゾルディック家以外の殺し屋を始末し、その後はイルミに依頼していた十老頭暗殺が達成されるまで持ちこたえれば、ゾルディック家は依頼人がいなくなったと言う事で撤退する。そしたら、自身の死を偽装してオークションを()()()()開始させ、コルトピの能力でコピーした偽物の競売品をオークションに出す。そして、自分たちは本物の競売品とオークションの売り上げ両方を頂いて悠々と引き上げ。

 そういう作戦だったのだが、この女が生きていてはその作戦は不可能だ。十老頭が殺され、ゾルディック家が撤退したら、その事を他のマフィア達にも伝えるだろう。そうなれば、偽のオークションで金も巻き上げるのは不可能。

 ゾルディックの脅威がなくなったこのビルから競売品だけでも盗んでいくか。ついでにこの女もさらって能力を奪えれば儲けものだ。

 

 

 

 ◆   ◇   ◆   ◇   ◆

 

 

 

 上からの円を感じ取ってから、しばらくして……二人の男が部屋へ入ってくる。顔合わせの時に見た、ゾルディック家の二人だ。

 屋上から円を使って、この地下の広間まで降りてきたらしい。100mクラスの円を平然と維持してるあたり化け物だね。部屋に入った時にちらりと私を見てきたが、壁際まで下がって邪魔するつもりはないことをアピールする。

 ……私もこのまま逃げるわけにはいかないよねえ。ゾルディックが仕留めてくれるとしても、じゃああとよろしく、とは行かない。結果を見届けないとならないし、万一ゾルディックの二人が負けたりしたら今度こそ私がやらなきゃならない。まあ、それは本当に万一の場合だが。

 

「親父気をつけろ。奴は他人の能力を盗む」

 

 シルバさんのその一言の後、会話もなく戦闘は始まった。

 実力に大きな差はない、故に2対1では厳しいだろう。二人がかりの猛攻によりクロロはあっという間にズタボロだった。もっとも、主に傷ついているのは服で本人の肉体はそれほど大きな怪我はなさそうだが。

 クロロの方も無抵抗ではなく、毒ナイフで反撃したりしていたが、効果はほぼないようだ。私なら死んでたかもしれないが、ゾルディック家は幼いころから毒の耐性をつける訓練もしているらしいからね。むしろ、毒ナイフでの威嚇が逆にクロロの余裕のなさをゾルディックの二人に確信させることとなってしまった。

 それにしても……

 

(他人の能力を盗む特質系か……。確かに条件は厳しいんだろうけど、それを差し引いても脅威ね。自身のリソースに関係なく能力を増やし続けられるのだから)

 

 実際、優位にあるゼノさんもシルバさんもまったく油断していない。ただでさえ、二人の相手をしながら私にも最低限の警戒を割いて、それでも渡り合うほどの実力者。加えて、所持している能力も未知数とくれば油断などできるはずもないか。

 

「シルバ、サポートせい。ワシが奴の動きを止めたら、ワシもろともで構わん。殺れ」

 

「了解」

 

 それでも、殺しのために命を賭すというのは私には理解できない感覚だ。死んでしまったらどんな報酬も無意味だろうに。やはり、ゾルディック家は余人には理解できない価値観があるのだろう。

 ……それはそれとして、クラピカどうしたんだろう?来ないってことは私より先にクロロに殺されちゃったのかな?生きてたらあの円に気づかないってことは……うーん、たまたまそのタイミングでビルの外にいたとか?ビルの外でも幻影旅団のメンバーが大暴れしてるっぽいし。

 と、そんなこと考えてる間に状況が進展。ゼノさんが手にオーラを集中させたことで防ぎきれないと判断したクロロが発を使用。本を具現化したかと思えば、そのページを開き続けてマントを具現化。……確か、陰獣の一人が特殊なマントを具現化する能力を持ってると聞いたような。盗んだ能力を本の形で保管してるのかな。

 そして、マントをひらめかせじりじりと距離を詰めようとするクロロ。それを察して距離をとるゼノさん、右手に集めていたオーラを龍の形状にして飛ばし離れたまま攻撃。ゼノさん放出系かな。

 クロロの具現化したマントは距離を詰めなければ使えない類の能力だったらしい。オーラの龍を紙一重で躱している。それでいながらシルバさんへの警戒は全く怠っていないし、なんなら私へも最低限の警戒は残したままだ。

 しかし、やはり達人二人相手は無理があったようだ。シルバさんの高めたオーラに気を取られた一瞬の隙にオーラの龍に捕らえられ、そのままゼノさんが距離を詰め拳打の連撃で動きを封じる。あとは、シルバさんがもろとも、か。

 両手に極大のオーラを纏ったシルバさん。その一撃により、ビルが大きく揺れた。

 

 

 

 ◆   ◇   ◆   ◇   ◆

 

 

 

 ピピピピ、ピピピピ、と砂埃のなか電子音が響く。

 イルミからの十老頭暗殺完了の連絡。本当に間一髪だった。

 

「どっこいしょ………と。やれやれ、お互い命拾いしたのォ」

 

「殺らなくていいの?」

 

「ワシらの依頼人は十老頭…その依頼人が死んでしまった以上、おぬしはもうターゲットではないのでな」

 

「そう?意外だな。もうないよ、こんなチャンス」

 

「おぬし、ワシらを快楽殺人者とカンちがいしとらんか?好きでやっとるわけじゃなし、ワシゃタダ働きもタダ死にもまっぴらじゃわい」

 

 どうやらゾルディック家は完全にオレからは手を引くようだ。で、あの女は……なんで笑ってるんだ?どっかに連絡取る様子もないし。

 

「1つ聞いていいかい?」

 

「む?」

 

一対一(サシ)で闘ったらオレとあんたどっちが勝つ?」

 

「…………ふん、そりゃ十中八九ワシじゃろ。おぬしが本気でワシを殺ろうと思えば話は別だがな。全くなめたガキじゃ」

 

(やっぱバレてた)

 

 そのままゾルディックの二人は部屋を出て……

 

「あ、ちょっと待った!ゼノさん、シルバさん!」

 

 行く前に、あの女に呼び止められた。

 

「……なんじゃ?言っとくが、依頼人が死んだ以上仕事を続けるつもりはないぞ」

 

「うん、それは別に良くて。私からあなたたちに仕事を依頼したいんだ」

 

「おぬしから?十老頭の代わりにおぬしが金を出すのか?」

 

 ……それはまずいな。仮に二人がそれを受けてしまった場合、二人の相手をしながらあの女を殺すしかなくなるが……できるか?

 

「あ、それとは全然別件の依頼。ターゲットの数が多くてさ、後でリストかなにかにして送りたいんだけど」

 

 この状況で、別件の依頼?……何を企んでる?

 

「ふむ、まあ仕事を請け負うのは構わんが報酬は人数分もらうぞ」

 

「もちろん、人数分支払うよ。約束通り3割引きで」

 

「……ああ、そう言えばワシが3割引きで請けおうと言ったな。余計な事言うもんじゃないわい。まあいい、依頼内容は渡した名刺のアドレスに送ってくれ。ではな」

 

 そう言い残すと、今度こそゾルディックの二人は部屋を出て行った。

 

「……どういうつもりだ?」

 

「ああ、今となってはあなたを殺す理由もないんだ。他のマフィアにも伝えてないから予定通りやってくれていい」

 

「なに?」

 

「十老頭が死んだ以上、私にとってもその方が都合がいいんだ」

 

 そう言って、にやりと笑う。なにか企んでいるようだが、オレ達の邪魔にならないならまあ好きにすればいい。

 だが、それはそれとして

 

「オレとしてはお前を見逃す理由もないんだがな。確実に安全を確保するためにも」

 

 見逃してもいいと言っても、得られるものは得ておこうか。こいつが何も出さないなら、さらって能力を頂こう。

 

「えー、そういうのやめにしない?お互い、困らないんだからさ」

 

 そう言いつつ、懐に手を伸ばし……投げてきたのは、名刺?

 

「私の()()()()()()()()名刺。一回だけタダで仕事請けおうからそれで勘弁してよ」

 

 そう言って、部屋を出ていく。それをオレは止めなかった。

 

「……プロハンター、イチリン=クモイか。意外と良い物もらえたな」

 

 

 

 ◆   ◇   ◆   ◇   ◆

 

 

 

「私だ、一輪だ!……ああ、予定変更だ!私たちは今からすぐ帰る!お前たちは抗争の準備を進めておいてくれ!ああ、すぐだ!」

 

 十老頭が死んで、競売品も全て盗まれる。そして、十老頭の後継者候補を始末するアテもできた。これからマフィアン・コミュニティーはガタガタになる。

 つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う事だ。

 

「取りに行くぞ!ヨルビアン(この)大陸を!」




ゼノ「数にもよるがあまり多いと二人じゃ面倒じゃな」

シルバ「ミルキに150億貸す代わりに15人殺るという取引をした。場合によっては振ってもいいだろう」

クロロ「後は手筈通りに…!!」

クラピカ「信じない!!この眼で確かめるまで!!」
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