「えーと、ここだね」
情報を頼りにたどり着いたのは一見するとただの定食屋。
特にためらいもなく扉をくぐる。
「いらっしぇーい!ご注文は?」
いかにも定食屋のおっちゃんと言う感じの店主が声をかけてくるがこれが合言葉らしい。
「ステーキ定食」
「焼き方は?」
「弱火でじっくり」
しかし、これ何もしらない客がうっかり真似したらどうするんだ?
「我々も同じものを」
と、背後からそんな声が聞こえた。
振り返ると狐目の男を先頭にした四人組。
どうやら、先頭の男がナビゲーターだな。
「あいよー」
「お客さん奥の部屋どうぞー」
という事で一緒くたに奥の部屋に通される。そこではちゃんとステーキが焼かれていた。
そして、狐目の男は激励の言葉を残して去り、残されたのは私たち四人。
「おねーさん!おねーさんもハンター試験の受験者なんだよね?」
「ああ、そうだよ。ちなみに私の名前は一輪」
「俺はゴン!よろしく」
「俺はレオリオっつーものだ」
「私はクラピカ」
三人の中で一番年少であろう少年が物おじせずに声をかけてくる。
それをきっかけに自己紹介を済ませ、会話が始まる。
そして、会話の中でレオリオとクラピカによるハンター論が対立し始めた。
レオリオ曰くハンターはもうかる仕事、クラピカ曰くハンターは気高い仕事、との意見をぶつけあわせる。
「ゴン!イチリン!」
「お前たちはどっちのハンターを目指すんだ!?」
と、こっちにまで飛び火してきたな。ゴンは迷っている……と言うか、戸惑っているようだ。
「別に何を目的にするかなんて人それぞれの価値観でしょ。私は私のやりたい事のためにハンター資格があれば便利だから来てるだけだし」
別に当人同士がそれぞれ何を目的とするかは自由だが、価値観を押し付けられるつもりはない。
そんな事をしてるうちに目的地についたらしい。
レオリオとクラピカもいざ試験になってまで言い争いを続けるつもりはないようだ。
そして、エレベーターを降りた私たちを迎えたのは多数の視線。
新たな参加者を値踏みするようにしばし見つめ……ふと、興味をなくしたかのようにそらされる。
三人も一瞬雰囲気に飲まれかけたみたいだが、すぐに持ち直した。
「それにしてもうす暗い所だな」
「地下道みたいだね」
「これ、本来は何のための道なんだろ?まさか、試験のために掘ったわけじゃあるまいし」
流石にこの規模の通路を今年の試験のためだけに用意するって事はないだろう。
「一体、何人くらいいるんだろうね?」
「君達で406人目だよ」
と、ゴンが何気なくこぼした言葉に横から返事があった。
トンパと名乗った男は人当たり良さそうな態度を演じているが……表面上だけだな。悪意が見える。まあ、とは言え仕掛けてくるまではこっちから何かする必要もない。
その後、トンパから試験の常連連中が紹介されたが、大した奴はいないな。
一応、
で、他に注目すべき奴は、と……。
「ぎゃあぁ~~っ」
突如上がった悲鳴に周りの視線がそちらに向く。
そこには腕を切り落とされた男と、加害者と思しき男。
加害者の名はヒソカ。去年、合格確実と言われながら試験官を半殺しにして失格したヤバい奴との事。
加えて、他の受験者も20人ほど再起不能にしてるとか。
あいつはやばいな。念を使えるだけじゃなく練度も相当高い。おまけに、好戦的ときた。で、ざっと周りを見回した感じ他には301番が危険だな。纏を見るだけで練度が分かる。
この二人には関わらないでおこ。くわばらくわばら。
その後、トンパがジュースを差し出して来た。うん、仕掛けて来たな。消しとくか。ジュースを受け取り蓋を開けると、そのままトンパを抱え込み口内にジュースを流し込む。
「むぐっ!?」
「イチリン!?急に何を……」
と、クラピカが問い詰めてくるが、その言葉もすぐに止まった。なぜなら……。
「う、ぐおおお……」
お腹からゴロゴロと異音を鳴らしながらトンパが走り去ったからだ。
「しびれ薬あたりかと思ったら下剤とは。趣味の悪い奴」
「なっ!?あいつ、俺らに一服盛ろうとしやがったのか!?」
「……ベテラン受験者による新人つぶしか。油断していたな」
「まあ、あいつは最初から悪意が見えてたからね。詐欺師には向いてないな」
「へー、イチリンそういうの分かるの?」
「慣れればね。もっとも、プロの詐欺師とか相手だと通用しないけど」
三人の様子は……憤ってるレオリオに自分を律してるクラピカ。そして、こちらに好奇心を向けてくるゴン。
レオリオの反応は良くも悪くも普通、だな。クラピカはハンター論でも察したけど、自分なりの美学やらにこだわるタイプと見た。
で、ゴンは……なんだろうね?ハメられかけた直後にこの屈託のない笑顔は。判断保留で。
そんなこんなをしていると、突如空間内にベルの音が響き渡る。
そちらに視線をやると……あら紳士的な風貌の男性。
「ただ今をもって、受付け時間を終了いたします。では、これよりハンター試験を開始いたします」
その言葉と共に、空気が張り詰める。
その後、試験官と思しき男性からハンター試験の危険性に対する確認が行われるが、当然その程度で帰る奴は無し。
レオリオが誰か帰らないかちょっとだけ期待したと言ってたけど、それで帰るような奴じゃそもそもここまでたどり着けないだろう。
そのまま、男性の先導に従って歩いていくのだが……。
「おいおい何だ?やけにみんな急いでねーか?」
レオリオの言う通り間違いなく速度が上がっている。既に受験者はほとんど走り出していた。
そして、その辺りで試験内容が告げられる。試験官サトツに二次試験会場までついて行くこと。それが一次試験だと。
「なるほどな……」
「変なテストだね」
「さしずめ持久力試験ってとこか」
「それだけで済めばいいけどね」
と、すぐ横を一人の少年がスケボーで通り過ぎる。
「おい、ガキ汚ねーぞ!そりゃ反則じゃねーかオイ!!」
とレオリオが声をかけるも特に気にした様子はない。まあ、ハンター試験は原則持ち込み自由だしね。
ただ、少年はレオリオの言葉を気にした様子はなかったが、同い年のゴンが走ってるのを見て走る事にしたようだ。
「俺キルア」
「俺はゴン!」
「オッサンの名前は?」
「オッサ…これでもお前らと同じ10代なんだぞ俺はよ!!」
「「ウソォ!?」」
「年下!?」
いや、これはマジで驚いた。成人はしている物かと。
「年下……ってイチリン何歳だよ?」
「女性に年を聞くものじゃない……って言いたいけど今回はこっちからか。20歳だよ」
「マジで!?10代だと思ってたぜ」
「誉め言葉と受け取っておくよ」
さて、四方山話はここまでにしよう。無駄に体力を使うだけだからね。
バーボンが念能力者ってのはオリ設定ですが、念能力者じゃないと洞窟を埋め尽くすほどの蛇がどこから来たのかの説明がつかないんですよね。
もし、マントとターバンの中に隠してたとしたらもはや念能力より凄いです。