二次試験の内容はまさかの料理だった。
まず、世界一凶暴な豚グレイトスタンプを仕留め丸焼きにする前半戦。
そして、試験官から与えられるヒントを頼りに世界的にはマイナーな料理である寿司を作るのに挑戦する後半戦。
まあ、私は寿司の発祥である小さな島国の出身であるため当然ながら知っていたわけだが。
しかし、後半戦にとある受験生が寿司の詳細を全受験生にばらしてしまうアクシデントが発生。
すると、試験官はなんと味だけで審査すると言い出した。
流石に無茶である。これは老舗寿司屋の跡継ぎを決める試験ではなく、ハンター試験だ。
寿司で美食ハンターの舌を満足させろと言うのはいくらなんでも試験として不適切である。
結果、審査委員会が出張ってくる事態になり、試験のやり直し。
試験官も実演として参加するという形で断崖絶壁で採取するクモワシの卵を使ったゆで卵を作ると言う試験になった。
そして、後半戦もなんとか滞りなく済み、残った42人が審査委員会の飛行船で第三試験会場へ向かうことになったのだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「残った42名の諸君にあらためて挨拶しとこうかの。わしが今回のハンター試験審査委員会代表責任者のネテロである」
「次の目的地へは明日の朝8時到着予定です。こちらから連絡するまで各自、自由に時間をお使い下さい」
二次試験のアクシデントを収めた審査委員会もどうやらこのまま同行するらしい。
とは言え、だからと言って何があるわけでもないだろうけど。
「ゴン!!飛行船の中探検しようぜ」
「うん!!」
「元気なやつら……俺はとにかくぐっすり寝てーぜ」
「私もだ。恐ろしく長い一日だった」
「まあ、昨日から徹夜で試験だったからね。私もそろそろ眠いわ」
まあ、その前にシャワーと食事くらいはすませておきたいけど。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
その頃、同じ飛行船内では今までの試験官が集まって食事をしていた。
「ねェ、今年は何人くらい残ると思う?」
「合格者ってこと?」
「そ、一度全員落としといてなんだけどなかなかの粒ぞろいだと思うのよね」
「でも、それはこれからの試験内容次第じゃない?」
「そりゃま、そーだけどさ。試験してて気付かなかった?結構いいオーラ出してたやつ居たじゃない。念って意味じゃなくてさ。サトツさんどう思う?」
「ふむ、そうですね。ルーキーがいいですね。今年は」
「あ、やっぱりそう思う?あたしは294番が良いと思うのよね、ハゲだけど。あと、406番も面白いわね。ライスをサフランで味付けして茹でた川エビを乗せたパエリア寿司は面白い発想だったわ」
「結局、落としてたけどね……406番は念も習得してるし練度も高い。現時点での実力はルーキーの中では断トツでしょ」
「そうよねー。練度を見るに私達より強いかもよ」
「私は断然99番ですな。彼はいい」
「あいつきっとわがままで生意気よ。絶対B型!一緒に住めないわ!」
「そういう問題じゃなくない?」
その後、受験生の話題で盛り上がりながら
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『皆様、大変お待たせいたしました。目的地に到着です』
着いたか。予定より遅れてたみたいだけど何かあったかな?
起きて来たレオリオやクラピカと一緒に窓の外をのぞくと高い塔のようなものが見えた。
どうやらそこの頂上へ向かっているようだ。
「何にもねーし誰もいねーな」
「一体、ここで何をさせる気だ?」
トリックタワーと呼ばれる塔の頂上に降ろされた受験生たちは不思議そうに周囲を見回している。
確かにだだっ広いだけで何もないな。
「さて試験内容ですが、試験官からの伝言です。生きて下まで降りてくること。制限時間は72時間」
それだけ言うとハンター協会の職員は飛行船に戻っていった。
下に降りる方法などは各自で考えろという事だろう。
『それではスタート!!頑張ってくださいね』
「さて、まずは下に降りる方法を探すとこからか」
「ひとまず塔の側面見に行ってみよーぜ」
「そうだな」
そして、塔の淵まで来てみたけれど……。
「窓一つないただの壁だな」
「ここから降りるのは自殺行為か……」
まあ、私は雲山に乗れば飛べるから行けるっちゃ行けるけど人が飛んだりしたら目立つしなあ。
「普通の人間なら無理だろうな。だが、俺のような一流のロッククライマーならこの程度の壁を降りるのはわけもない」
と、一人の男が壁から降りようと試みているけど。
「やめた方が良いと思うね」
「なに?」
「あの辺やあの辺あたりよく見てみなさい」
と、私の指さした辺りを観察して男の顔色が変わる。
「見ての通りこの辺は怪鳥の巣がそれなりの数あるみたいよ。降り切る前に見つかったら対処できる?」
「い、いや。止めておこう。忠告感謝する」
「しかし、外壁を降りるのが無理ならばきっとどこかに下に通じる隠し扉があるはずだ」
クラピカの意見に特に反論はなく受験生は各々隠し扉を探し始めた。
そうしてしばらく歩き回っていると……。
「よ」
「キルアじゃない。どうしたの?」
「隠し扉見つけたんだよ。でも五つもあってさ。ゴンはクラピカとレオリオを呼んできてる」
「へえ、私も誘ってくれるんだ。ありがとうね」
「別に。あんたを呼ぶのはゴンが言った事だし」
照れ隠し……ってわけじゃないな。本当にどっちでも良かったんだろう。
まあ、私からすればありがたいことは変わらないので大人しくキルアについて行く。
「やあ、ゴン。隠し扉見つけたって?」
「うん、こことここ。あと、こっちにも3つ」
加えてこの隠し扉は一回作動するとロックされてしまうらしい。全員が同じ扉から行くのは無理って事だ。
「こんな近くに密集してるのがいかにもうさん臭いぜ」
「おそらくこのうちのいくつかは罠……」
レオリオとクラピカは扉の密集具合から罠を疑ってるようだけど。
「ルート毎に多少難易度の差はあれど流石に運だけで合否が決まるようにはなってないんじゃないかな」
そんなくじ引き感覚で合格者と失格者を決めたりはしないだろう。
「近くにある理由も……例えば、同じ部屋に繋がってるとか」
「なるほど、その可能性もあるな。その場合、同じ部屋の受験生同士で協力するか、あるいは……」
「対立するか、でしょうね」
その言葉に一瞬沈黙が落ちる。
「俺とゴンはこの中の1つをそれぞれ選ぶことに決めた」
「何があっても恨みっこなし。レオリオとクラピカとイチリンはどうする?」
キルアとゴンは既にここから行くと決めたらしい。
「私もそれでいいよ。どうせ考えたって何が正解かなんてわからないんだし」
「俺もいいぜ。運も実力のうちってな」
「誰が最初に選ぶ?」
私も異論はない。レオリオとクラピカも同じ意見のようだ。
各々5つある扉をそれぞれ選び、1・2の3で同時にくぐる事になった。
「んじゃ、行くぜ」
「ああ」
「1」
「2の」
「3!」
で、くぐった扉の先は……。
「同じ部屋のパターンだったみたいね」
「ああ、ならば後は協力か、対立か、だな……」
やや張り詰めた空気が流れる。後者ならばこの場にいるのは全員敵同士という事になる。
「ん?あれは……」
「何かあった?」
部屋を見回していたゴンが気づいたのは一枚の張り紙。内容は……。
【多数決の道 君達5人はここからゴールまでの道のりを、多数決で乗り越えなければならない】
「……か。どうやら、5人で今すぐ戦えって事はないみたいね」
「そりゃ良かったぜ。タイマーも5つ用意してあるな」
「〇と×のボタンがついてるな」
「これを全員が付ければいいのかな?」
『その通り』
と、部屋にあったスピーカーから声が流れてくる。
『このタワーにも幾通りものルートが用意されており、それぞれクリア条件が異なるのだ。そこは多数決の道。たった一人のわがままは決して通らない。互いの協力が不可欠の難コースである。それでは健闘を祈る』
なるほど……意外と厄介なルートを引いちゃったかもなあ。
二次試験は原作と同じ流れにしかならないのでダイジェストで。
そして、多数決の道はオリ主含めた五人で進みます。