「さて、こっちのいらないプレートはっと」
そう言って思いっきり遠くへと投げる。投げられたプレートはすぐに見えなくなった。
「今度はあっち!」
もう1枚。別の方向にプレートを投げる。やはりそれもすぐに見えなくなった。
「あと4日あるし、がんばって探しなよ。じゃねー」
それだけ言い残してプレートを投げた少年、キルアは森に消えていった。
「くそぉ!」
そうして、悔しさに歯噛みするのはアモリ三兄弟。コンビプレイで常に好成績を残している常連受験生だが、キルアの相手にはならず三人ともプレートを奪われてしまう。その中で次男のウモリがキルアのターゲットだったため、他2枚のプレートが不要になったキルアが投げ捨てたという流れだった。
上には上が居る。無常だが、それだけの話だった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「よっと」
勢いを落とし、落ちて来たプレートを受け止める。楽にプレートゲットできてラッキーだったね。これであと1枚。出来ればもう片方も欲しかったな。けど別の受験生が追って行ったし、それに別方向に投げられたんだからどの道、無理か。
まあ、あと4日ある。円を広げながら探索すれば誰かしら見つかるだろう。
そうして、島内を駆け巡っていると受験生が他の受験生を襲ってプレート奪うところを発見した、んだけど……。
あれ、襲ってる側ってキルアの投げたプレート追って行った奴じゃない?なのに、他の受験生を襲ってるって事は、二択を外したか。
「よっしゃ、これであと1点だぜ!」
勝ったのはキルアの投げたプレートを追って行った方。これなら、上手くすれば交渉で片付くかも。
「やあ、良い腕だね」
背後から声をかけると相手もゆっくり振り向く。
「そっちから声かけて来たか。油断したところを不意打ちできれば楽だったんだが」
私にも気づいてたらしい。まあ、私の隠れ方とか絶を使わなければ大したことないしね。
「さて、一応聞くがプレート1枚くれないか?」
「いいよ」
「だろうな。なら、力ずくで……ん?」
ピピピ…チチチ…
「いやいや、待て待て。え、良いのか?」
一瞬呆然とした空気が流れ、鳥の鳴き声が響いたが、気を取り直して問い詰めてくる。相手の感情は困惑と警戒。まあ、同じこと言われたら私も警戒するけど。
「あなたの欲しい番号って
「それは……!あんたが拾ったのか」
「拾ったって言うか、私もあの場にいたんだよね。あなたが追わなかった方を私が追ったの。それであなたがまだ他のプレートを集めてたから二択を外したんだなって」
「あんたもあの場にいたのか…」
あの時は絶を使ってたからね。そう簡単には気付かれないさ。
「さて、話を戻そう。私はあなたに197番のプレートを渡す。あなたはいらなくなった1点のプレート2枚を私に渡す。どう?」
「なるほど、俺は2点が3点になりあんたは1点が2点になるわけだ」
「そういう事。悪い話じゃないでしょ?」
「確かにな。だが、ここで俺がライバルを減らそうと考える可能性もあるぜ?」
「その場合はしょうがない。約束通り1枚はあげるけどそれ以外のプレートは全部もらっていくよ。力ずくでね」
今度はピリピリとした空気が流れる。気を抜く事はできない。念能力者ではないから戦闘だけなら流石に負けないけど、かなりできそうだしプレートの奪い合いというルールでは負けかねない相手だ。
「……OK、交渉成立だ。プレート2枚ここに置く。あんたは197番のプレートを置いて同時に離れよう」
が、どうやら交渉ですみそうだ。プレートの交換は問題なく済み、これでゴンの分の点数も集まった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「よっ、ほっ」
ゴンを隠した場所に戻ってきたら逆立ちで運動していた。いや、毒は?
「ゴン、体はもういいの?」
「あ、イチリン!うん、もうばっちり元通りだよ!」
……こいつ、回復に10日はかかるはずの毒を喰らって、1日で完治させやがった!
「あなた、どういう身体してんのさ……」
「えー?そんなにおかしいかな?」
少なくとも普通ではない。
「とりあえず、2点分のプレート集めて来たよ。これでゴンも6点分になった」
「……うん、ありがとう。このお礼はいつかするから」
「気にしなくていいのに」
ま、そうは言ってもゴンなら気にするか。
「さて、あとは期日までプレートを守ればお互い合格だけど、これからどうする?」
「あ、そう言えばひとつ気になる事があるんだけどさ」
「?」
「イチリンとヒソカが戦ってた時、なんか不思議な事が起きてたけどあれって何?」
ああ、その事か。非念能力者のゴンに念獣の雲山は見えてなかったはずだけど、だからこそ雲山の拳が落とされた時の衝撃と痕跡が不思議なんだろう。
「あれはトリックタワーの最後に見せた一撃とも同質の技術でね。念って言うんだけど。教えるのは良いけどあと4日……もうすぐ3日か。それだけじゃ身につけるのは無理だね」
ゴンには才能はあるだろうけど、3日で精孔を開けるかと言うと流石に無理だろう。半端に教えるわけにはいかないし。
「ネン?それってトリックタワーで教えてもらった?」
「あー、いや。
「ほんと?」
「ええ、約束」
どうせハンターになったら念能力は必須の技能だしね。
その後は、お互いの生い立ちなんかを話しながら時間を潰し、残り1日になった時点でスタート地点付近まで戻ってみる事になった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
スタート地点付近。海上に審査委員会の船が浮かんでいるのが見えるが流石に堂々と姿をさらして待ってる奴はいないか。円で探してみても良いんだけど、ヒソカなんかが寄って来ても困るし。
「イチリン」
「ん?何かあった?」
木の上に登って周囲を見てたゴンが降りて来た。
「向こうにレオリオとクラピカがいたんだ。俺はちょっと行ってみるけど」
「あの二人か。じゃあ私も行こう」
こっそり近づいてみると、なるほどレオリオとクラピカだ。けど、期日を待ってるんじゃなく他の受験生を探してるみたいだ。まだプレート集まってないのかな。
「おちあう場所と時間を決めて、2人バラバラに探した方が効率がいいな」
「4人ならもっといいでしょ」
「ゴン!イチリンも!」
なんか自然に私も協力することになってるな。別に良いけど。
「私とゴンはプレート集めたけど、レオリオとクラピカは?」
「私はもう集めた」
「くそぉ、集めてねえのは俺だけかよ。俺たちが探してるのは246番のポンズって女だ」
ん?女の受験生?えーと、私の持ってるプレートは80番、103番と……246番。
「ごめん、その子なら私が狩った」
「え?」
246番のプレートを見せると沈黙が降りる。
「そのプレートをもらうわけには……」
「いかないねえ。私、これ込みで6点だから」
私たちの間に緊張感が走る。このままだと、レオリオと私は戦わざるを得ない。ので、代案を出そうか。
「と言っても、私にとっては1点のプレートだからね。番号にこだわりはない。他のプレートとの交換なら受け入れよう」
「他のプレートか……くそぉ、ヒソカに渡しちまったプレートがここに来て響くとはな」
ヒソカから貰ったプレートって二人から奪ったのか。
「だが、特定の相手を探さないといけない状況よりは、誰でも良いから見つけてプレートを奪えば良い現状の方が良い」
「そうだね。誰か探しに行こうか」
そうして、円を広げながら4人でしばらく歩く。そうすると、円に誰かが引っ掛かった。
「向こうに誰かいる」
「なに?」
「こっち」
隠れながら先導した先には受験生が一人。あせっている様子はあるけど、誰かに襲われたような痕跡はない。プレートを持ってる可能性は高そうだ。
「本当にいたな。なぜわかったんだ?」
「企業秘密って事で。で、どうする?」
「俺の試験だ。俺が行く。手を出さないでくれ」
そう言って、レオリオは一人隠れてた茂みの中から飛び出していった。レオリオを確認した相手も剣を抜いて迎え撃つつもりのようだ。
「実力差はそれほどないな……どっちが勝つかは微妙なところか」
その言葉にゴンとクラピカは表情を引き締めるが、手を出すつもりはないようだ。レオリオの意思を尊重するつもりだろう。その結果は……。
「はぁ、はぁ……なんとか、プレートゲットしたぜ」
レオリオはどうにか勝ちを拾った。
「お見事、じゃあ246番とその281番を交換ね」
「ああ、これでなんとか俺もクリアだぜ」
多分キルアもプレートを守り切れてるだろうし、3次試験での5人はこれで全員合格かな。
キルアとアモリ三兄弟の話ってゴンとヒソカの後に書かれてたので作中の時系列もそうかと思ってたんですが、ヒソカがゴンに対してあと4日って言っててキルアがあと5日って言ってるのでキルアの方が先だったんですね。
でも、そうすると前話まで直さなきゃいけなくなるので、この話ではゴンとヒソカの件の翌日にキルアとアモリ三兄弟の件があったって事で。
レオリオ・クラピカ組の方はトンパが一流ロッククライマーに変わったこと以外は原作通りでした。