『これより会長が面談を行います。番号を呼ばれた方は2階の第1応接室までおこし下さい。受験番号44番の方、44番の方お越し下さい』
「面談……?」
4次試験合格者10人が乗せられた飛行船にて、そんな船内放送が響き渡った。流石に面談が最終試験って事はないだろうけど、最終試験における何かを決めるためって可能性は高いな。
『受験番号406番の方、406番の方お越し下さい』
「ん、私か」
まあ、気負う事はないだろう。相手の顔色を窺って問答するなんて疲れる事する気もないし。
「失礼しまーす」
ノックしてもしもーし。
「おう、来たか。入りなされ」
入室許可が出たので室内へ。
「まあ、座りなさい。これからいくつか質問するんで気負わずに応えなされ」
「はーい」
「まず、なぜハンターになりたいのかな?」
「昔ながらの手法の物作りとかってあるでしょ?効率生産より品質が良い物も多いんだけどさ。そういう種類のストイックさって
「ふむふむ」
「で、資金繰りが上手く行ってない場所も多いわけ。でもさ、それで品質の良い品物がもう手に入らなくなるなんて惜しいじゃない。だから私が気に入った品物を作る場所に私自身で援助しようかと思って。かっこつけて言うなら
「そのためにハンターに?」
「まあ、そうね。応募カードに書いたから知ってると思うけど、私ってマフィアのボスじゃない?援助するって言っても警戒されるのよねえ。だから、表向きの肩書としてハンターになりたいのよ」
「なるほど。では、お主以外の9人の中で注目しておるのは?」
「警戒って意味で44番と301番。
「ほう、普通だからとな?」
「そう。ある程度以上の実力を持ってる奴ってさ。その過程でどっかズレるのよね。でも、レオリオにはそれがない。普通のままこんな場所まで来てるのが面白いと思うね」
「ふむ、では最後の質問じゃ。9人の中で今、一番戦いたくないのは?」
「301番と405番。前者は単純に脅威から。後者は友人だから。44番は……まあ、4次試験でちょっとあってね。少し吠え面をかかせたい気持ちがある」
「うむ、ご苦労じゃった。さがってよいぞよ」
「んじゃ、失礼しますっと」
しかし、好々爺っぽく振る舞ってるけど、どうにも食えない感じのする爺さんだったな。最終試験、厄介なことになるかもしれないな。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
4次試験終了から3日後。
「さて、諸君。ゆっくり休めたかな?ここは委員会が経営するホテルじゃが、決勝が終了するまで君たちの貸し切りとなっておる」
ホテルの中の大広間に受験生たちは集められていた。広間には今までの試験官も揃っており、ネテロの横には布が被せられたボードのようなものが置かれている。
「最終試験は1対1のトーナメントで行う。組み合わせはこうじゃ」
その言葉と共にネテロが布を取り払う。
「へえ」
「ふぅん♥」
いきなりヒソカとか。まあ、望むところと言っておこうか。
「さて、最終試験のクリア条件だが、たった1勝で合格である!」
ネテロの言葉に全員がこのトーナメント表の意味を理解する。
「ってことは……」
「つまりこのトーナメントは勝った者から順に抜けていき、敗けた者が上に登っていくシステム。この表の頂点は不合格を意味するわけじゃ」
「この中から不合格者はたった1人ってことか?」
「さよう。しかも、誰にでも2回以上の勝つチャンスが与えられている。何か質問は?」
「組み合わせが公平でない理由は?」
「うむ。当然の質問じゃな」
ボドロの質問にネテロは頷く。
「この取り組みは今まで行われた試験の成績をもとに決められている。簡単に言えば成績のいい者はたくさんチャンスが与えられているということ」
その言葉にキルアがピクリと反応する。
「それって納得出来ないな。もっと詳しく点数の付け方とか教えてよ」
「ダメじゃ」
「なんでだよ!」
「採点内容は極秘事項でな。すべてを言うわけにはいかん。まあ、やり方くらいは教えてやろう」
ネテロ曰く審査基準は大きく分けて3つ。
1.身体能力値
2.精神能力値
3.印象値
この3つだが、1と2は参考程度のもの。重要なのは印象値。言わば、数値ではかれない何か。それを試験官が感じたかという事らしい。
キルアはまだ納得がいってないみたいだけど、これ以上説明する気はないようだ。
「さて、試験じゃが戦い方は単純明快。武器OK、反則なし、相手に『まいった』と言わせれば勝ち! ただし、相手を死に至らせてしまった者は即失格!! その時点で残りの者が合格となり、試験は終了じゃ」
まあ、殺し無しはありがたい。望むところとは言ったけど、殺し合いが好きなわけじゃない。私は快楽殺人者じゃないしね。
……ただ、想像していたより遥かにえげつない試験には違いないが。
「第一試合!ハンゾー対ゴン!」
その言葉にハンゾーとゴンが前に出る。
「それでは、始め!」
その言葉とともにゴンがダッシュ。足でかき回すつもりだろうけど……。
「おおかた足に自信ありってとこか。認めるぜ。子供にしちゃ上出来だ」
あっさり追いついたハンゾーの手刀によって意識を飛ばされかける。普通の決闘ならここで終わりだが……。
「気分最悪だろ? 脳みそがグルングルン揺れるように打ったからな。分かったろ? 差は歴然だ。早いとこギブアップしちまいな」
「いやだ!」
やはりそうなるか。ならこの後に起こる事は考えるまでもない。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「もう……3時間だぜ。もはや血反吐も出なくなってるぞ」
そう、相手を降参させるためにハンゾーによるゴンの拷問だ。3時間の間、ひたすらゴンが痛めつけられていた。
「いい加減にしやがれ!ぶっ殺すぞてめぇ!俺が代わりに相手してやるぜ!」
「……見るに耐えないなら消えろよ。これからもっとひどくなるぜ」
そして、レオリオが一歩踏み込もうとすると試験官たちが立ちふさがる。
「1対1の勝負に他者は入れません。仮にこの状況であなたが手を出せば、失格になるのはゴン選手ですよ」
「……!!」
怒りに震えるレオリオだが、ハンゾーは何一つ間違った事はしていない。このルールにおける最適な行動をとっているだけだ。
「大丈夫だよレオリオ……。こん……なの全然平気さ。ま……だまだやれる」
立ち上がりそういうゴンだが、明らかに戦う力など残っていない。しかし、まったく心が折れていないのを見てハンゾーも少し余裕がなくなったか。
「腕を折る」
ゴンをうつぶせに倒し、左腕を掴んだ。
「本気だぜ。言っちまえ!」
「……い、いやだ!」
ボキッ
会場に鈍い音が響く。ゴンは左腕を押さえて歯を食いしばっていた。
「さあ、これで左腕は使い物にならねえ」
そして、そんなゴンを見下ろしハンゾーが告げる。そして、レオリオはもはや怒りを抑えきれなくなっていた。
「クラピカ止めるなよ。あの野郎がこれ以上何かしやがったら、ゴンにゃ悪いが抑えきれねえ」
「……我慢できないって言うならあなたが棄権したらどう?」
私の言葉にこっちを見るレオリオとクラピカ。
「失格者が一人だけって言うならあなたが棄権して失格すれば試験は終わり。当然、この試合も終わるわ」
「イチリン……!お前はあれを見て何も感じねえのか!!」
「まさか」
ハンゾーは何も悪い事はしていない。だからと言って、友人が痛めつけられているのを見て何も感じないわけがない。
「だけどね。ここから先はそういう世界なんだよ。仮にゴンがハンターになったとしてハンゾーがゴンの活動に対立する犯罪者だったとしたら……この状況でわめいてどうにかなると思うの?」
「それは……!」
「2次試験の試験官も言ってたけどハンターなら誰だって武術の心得があって当然。それはつまり、それが必要になるような危険にさらされる仕事って意味でもある。いざ、その時になって実力が足りないなんてなんの言い訳にもなりゃしないんだ」
私の言葉に反論できずに黙り込むレオリオ。
「力がない奴は何をされても仕方がない世界。ここから先はそういう場所なんだよ。ましてや、私たちは自分からそんな場所に足を踏み入れようとしてる。言い訳の余地なんてない」
そこまで言ってレオリオを見据える。
「だから……そんな覚悟もなしにこんな場所まで来てしまったと言うなら、棄権しておきなさい。その方があなたのためだから。医者になりたいだけならハンターになる他にも道はいくらでもある。なんなら、私が今回の縁で資金援助したって良い」
「……っ!!」
私の言葉に対してとうとう何も言えなくなるレオリオ。ただ、棄権する気はないようだ。割と本音の忠告だったんだけど。
それで、試合の方は……ハンゾーが自分の生い立ちを語りゴンに勝ち目がない事を諭して降参を促していた、が。
ドゴッ
ゴンに顔面を蹴り飛ばされていた。完全に油断してたな、ありゃ。
「この対決はどっちが強いかじゃない。最後にまいったって言うか、言わないかだもんね」
その言葉にハンゾーは即座に起き上がる。
「わざと蹴られてやったわけだが…」
「うそつけー!!」
鼻血と涙を流しながらの強がりにレオリオからツッコミが入る。とは言え、痛みはあってもダメージはほとんどないだろうが。
「わかってねーぜ、お前。俺は忠告してるんじゃない、命令してるんだぜ。俺の命令は分かりにくかったか?もう少し分かりやすく言ってやろう」
そう言うとハンゾーは左腕の袖に仕込んでいた刃物を抜き放つ。
「脚を切り落とす。二度とつかないように。とりかえしのつかない傷口を見ればお前も分かるだろう。だが、その前に最後の頼みだ。まいったと言ってくれ」
刃物を振りかざしながら言う。頼みと言っているが、内容は脅し。それに対して……。
「それは困る!!」
ゴンの返事はこれだった。一瞬、全員内容が理解できず間が空く。
「脚を切られちゃうのは嫌だ! でも、降参するのも嫌だ! だから、もっと別のやり方で戦おう!」
「な…っ、てめー自分の立場分かってんのか!?」
「ふっ…あっはっは」
「くっくっく」
「くく…失礼」
当然ながらキレるハンゾーだが、私も含めて周りからは笑いが零れ先ほどまでの殺伐とした空気は霧散していた。
「勝手に進行すんじゃねーよ、なめてんのか!!その脚マジでたたっ切るぞコラ!!」
「それでも俺はまいったとは言わない!そしたら血がいっぱい出て俺は死んじゃうよ」
「む……」
「その場合、失格するのはあっちの方だよね?」
「あ、はい」
「ほらね。それじゃお互い困るでしょ。だから、考えようよ」
ゴンの暴論に対してハンゾーの方が追い詰められていた。
「もう大丈夫だ。完全にゴンのペースだよ」
「なんちゅーワガママな…」
「まあ、あくまで今回のルールありきだけどね。実戦でやったら相手を怒らせるだけだし」
とは言え、今回に関しては場の空気を一変させたのも確かだ。
しかし、流石に対戦相手のハンゾーはこの空気に飲まれっぱなしでいるわけにはいかない。ゴンの額に剣を突きつけ、再び空気を戻そうとする。
「やっぱりお前は何にも分かっちゃいねえ。死んだら次もくそもねーんだぜ。かたや俺はここでお前を死なせちまっても、来年またチャレンジすればいいだけの話。俺とお前は対等じゃねーんだ!」
……ゴンの勝ちだ。
ハンゾーの言葉は事実だ。不利な立場なのはゴンで有利なのはハンゾーだろう。しかし、追い詰められているのは間違いなくハンゾーだった。
「なぜだ。たった一言だぞ……?それで来年また挑戦すればいいじゃねーか。命よりも意地が大切だってのか!?そんなことでくたばって本当に満足か!?」
「親父に会いに行くんだ。親父はハンターをしてる。今は凄く遠いところにいるけど。いつか会えると信じてる。でも、もし俺がここで諦めたら一生会えない気がする。だから退かない」
「退かなきゃ……死ぬんだぜ?」
ゴンの額に剣を突き立て、告げるハンゾー。それでも、ゴンは退かない。
「まいった。俺の負けだ」
それを悟ったハンゾーは負けを宣言した。
「俺にはお前は殺せねぇ。かと言ってお前にまいったと言わせる術も思い浮かばねぇ。俺は負け上がりで次に賭ける」
しかしここで待ったがかかった。
「そんなのダメだよ、ずるい!ちゃんと2人でどうやって勝負するか決めようよ!」
その言葉に対し、青筋を浮かべるハンゾー。
「言うと思ったぜ。バカかこの!てめーはどんな勝負しようがまいったなんて言わねーよ!」
「だからってこんな風に勝っても全然嬉しくないよ!」
「じゃ、どーすんだよ!?」
「それを一緒に考えよーよ!」
「要するにだ。俺はもう負ける気満々だが、もう一度勝つつもりで真剣に勝負をしろと。その上でお前が気持ちよく勝てる方法を一緒に考えろと。こーゆーことか?」
「うん!!」
「アホかー!!!」
無茶苦茶な理屈を展開するゴンに対して、ハンゾーの怒りの一撃が炸裂。もはや、手加減無用の一撃によってゴンは気絶させられた。
「くくっ、まったく……」
私の新しい友人は思った以上にしょーのない奴のようだ。
一輪の職業公開。別に隠してたわけじゃないけどなんか言うタイミングがなかった。