第1話:衝撃、俺がダンスコーチ!?③
× × ×
「よし、配達も無事終わったし・・・どうしようかな」
無事配達をやり遂げた俺はロックビークルを停めていた駐車場に向かっていた。
「うーん、すぐ店に戻ったら阪東さんや舞になんか言われそうだしな・・・」
考えた結果、そこら辺を適当にブラブラすることにした。夕方に戻れば2人も文句は言わないだろう。
駐車場に着いた俺はヘルメットを被りエンジンを掛けバイクを走らせようとしたその時、
「待ってくださーーーい!!!」
ヘルメット越しでも耳に響く大声にビックリした俺は慌てて後ろを振り向いた。
50m先から3人の女の子が、こっちに向かってくるのが見えた。3人共見覚えがあった。
俺の所に来た3人は急いで来たのか息を切らしていた。黒髪の子は直ぐに呼吸を整えたが残りの2人はなかなか息が整わない。
「あ、あの・・・・ゼェ・・・・ゼェ・・・・」
短髪サイドテールの子が必死に話そうとするが、息が切れてうまく話せないようだ。
「あぁ、落ち着いたらでいいから」
「はい・・・・・ふぅ、あの!私たちのダンスコーチになってください!!!」
いきなりの言葉に一瞬頭がフリーズしてしまった。
「穂乃果、いきなり言ってもわかりませんよ。ちゃんと説明をしなければ」
「そうだよ、穂乃果ちゃん」
「そ・・・そうだね」
「全く穂乃果は、・・・申し訳ございません。説明もなしに突然この様なことをお願いしてしまって」
ようやくフリーズから解除された。俺は慌てて話す。
「い、良いって良いって少し驚いたけど・・・それよりどういうことか説明してくれないか?」
黒髪の子、園田 海未は自分たちの名前と音ノ木坂学院の今の現状と自分たちがこれからしようとすることを丁寧に説明してくれた。
「大体のことはわかったけど・・・・・なんでダンスコーチが俺なんだ?」
「さっき、ケータイでダンス動画を見ていたら、葛葉さんが映っていたので」
ロングヘアでサイドテールの子、南 ことりがケータイを俺に見せた。
確かに、これは去年チームのみんなと踊った時のだ。その日は新しいゲームと表し駆紋 戒斗(くもん かいと)の居るチームバロンと初瀬 亮二(はせ りょうじ)と城乃内 秀保(じょうのうち ひでやす)のチームレイドワイルドとチームインヴィット、更にはチームでもない洋菓子店「シャルモン」の店長、凰蓮・ピエール・アルフォンゾ(おうれん・ピエール・アルフォンゾ) (通称シャルモンのおっさん)たちと初めてヘルヘイムの森に行き、そこで俺はユグドラシルの計画を初めて知った日でもある。
「悪いけど俺にはダンスコーチなんて出来ない、他を当たってくれ」
そう、今の俺には出来ない、この子たちが大好きな学院を守ろうとする様に、俺も大切な人たちが居る沢芽市を守らなければならない。
「無理を言っているのはわかっています。でも、せめて新入生歓迎会まででもお願いします!」
短髪サイドテールの子、高坂 穂乃果は真っ直ぐ俺の目を見つめていた。
この子たちは真剣だ。本気で学院を守ろうとしている。
「・・・・・考えとくよ」
そう言い残し、俺はバイク走らせた。
サイドミラー越しから見た彼女たちは少し寂しそうだった。
× × ×
バイクを停めたところはとある神社の近くだった。
近くに駐車場がないのでロックビークルを通常のロックシードと同じ大きさ「ロックモード」にしポケットに入れ、神社の階段を上り始めた。
階段を上っている時、あの3人の顔がちらついた。初めて会ったにも関わらず、あんなに必死に・・・いや必死なんだ。それだけあの学院が好きなんだ。もし、仮にあそこでOKを出していても必死練習をしている時、俺は沢芽市のことを考えてしまうのは彼女たちに失礼だ。だから、あの時に言った言葉はきっと正しい判断だったはずだ。なのに・・・
「何で頭から離れないんだ・・・」
色々な事を考えていたらいつの間にか階段を上り下りていた。
「うぉぉ、すっげーきれーな場所だな」
沢芽市にも昔はここに負けないくらい綺麗な神社が在ったのだが今はユグドラシル再開発で神社が空き地にされたためもう二度と見ることがない。
「お参りですか?」
後ろから女性の声がした。今日はやけに後ろから声を掛けられやすいな。
後ろを振り返るとこれまた女の子だった。巫女装束なので多分この神社の人なのだろう。しかも、イントネーションからして関西の人かな。
「え、えぇ、そんな感じです。」
「そんなかしこまらんでええよ、ウチよりアンタの方が年上やから。アンタさっき音ノ木坂学院にいたやろ?」
この子、まさかエスパ
「ウチも学院の生徒やから、下校中にアンタを見かけたんや。で、なんであの子たちのダンスコーチ断ったんや?」
突然の言葉に驚いた。
「今の俺がダンスコーチをしても他のことを考えてあの子たちに迷惑をかけてしまうから・・・」
「ふーん、でも、あの子たちには今アンタの力が必要なんや」
「・・・なんでそんなことわかるんだよ」
そう尋ねると巫女さんは1枚のタロットカードを取り出した。
「カードがな、ウチにそう告げるんや。あんたはあの子たちと学院の『最後の希望』になるって」
(・・・・・最後の希望か)
俺は、何も言わずその場を後にした。
なんだか急いだ感じですいません。