鉄騎中隊の亡霊【完結】   作:呼び水の主

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キング・オブ・キャノン

『か、艦隊が……!?』

『そんな、コンスコン艦長!』

『狼狽えるな!シャア少佐のファルメルに拾って貰えばよい!少将の死を無駄にするな!』

 

 ──コンスコン艦隊、旗艦を含め撃沈。帰る母艦を失ったザク達は冷静さを失いつつあった。

 

 死と隣り合わせの大気圏間近での戦闘、母隊の喪失による指揮系統の乱れ、やたら強い敵モビルスーツ、謎の電気鉄球……。並のパイロットが一度に受け入れられる許容量を遥かに超えている。

 

 故に判断が遅れた。ホワイトベースを追撃するか、ファルメルの下へ集合するか。ファルメルの下へすぐに集合していれば、あるいは彼らも生き残れたかもしれない。しかし戦場は常に血を求める。

 

『軍曹!れ、連邦艦隊が!』

 

『馬鹿な……!?反転、してきただとっ!?』

 

 ホワイトベースを見捨てるようにして離脱したはずのサラミス級3隻からなるルナツー艦隊が、敵艦隊撃破の光を確認し作戦通りファルメルめがけて反転突撃を開始した。

 

 ホワイトベースが地球降下に見せかけて地球の大気を利用して加速。敵艦隊を直接叩き、分断されたファルメルをルナツー艦隊が叩く。

 

 ザクの真横、射程の届かないいやらしい距離を最高巡航速度で3隻のサラミス級が駆け抜けていく。

 

「ド、ドレン少尉!敵艦隊が!」

 

「対空砲火ァ!ザクを呼び戻せ!艦の傾斜角を敵艦に合わせろ!」

 

 油断はしてないつもりだった。しかし狩る側だと思っていた自分たちが、まんまと敵の作戦に嵌められ、いつの間にか狩られる側になっている。このファルメルはムサイ級の中でも速度に優れた新造艦だが……。

 

「間に合わんか……」

 

 サラミスの砲塔からハリネズミのように放たれた粒子ビームがファルメルに突き刺さり、緑色の船体が弾けて宇宙に綺麗な華を咲かせた。

 

@デデデン デデデデン シャーゥ!@

 

 敵艦隊は全滅、ホワイトベースも無事、ルナツー艦隊は……確認できんが、こっちが敵を引きつけたんだしまあ大丈夫だろ。

 

 ガンキャノン・デュラハンの眼下、青い星・地球をバックにホワイトベースの白亜の船体が近づいてくる。そろそろ限界高度だ。デュラハンが両脚を踏ん張りホワイトベースの甲板上に着艦した。接触回線でブライト艦長の声が聞こえる。

 

『バルメア少尉!ヤザン軍曹がガンダムとザクの足止めに1人で突撃した!』

「エー!?あのバカ、なにやってんだ!?」

 

 ひと段落したと思ったらこれだよ!シャアのガンダムとザクの部隊に単騎がけとか。まさか、逃げきれないと感じて囮に?ヤザンのヤロー、カッコいいことしやがって……!って言ってる場合じゃねー!はやく助けにいかんとアイツ死ぬぞ!

 

「救援に向かいます!方角は!?」

『無茶を言うな少尉!ザク10機にシャアなんだぞ!それに限界高度だ!これ以上は……』

「しかし……!」

『少尉!私はこの艦の艦長だ!ホワイトベースを無事、ジャブローまで送り届ける責務がある!軍曹1人の為に、艦を危険に晒すことはできない』

「つまり軍曹は見殺しですか!?あの腕前だ、まだ生きてるに決まってる!今からでも救援に行けば助けられるかもしれないのに!」

『くどいぞ少尉!これは命令だ!それ以上の私語は慎め!従えないなら機体から降りてもらう!リュウ!彼の機体を拘束しろ』

 

 リュウのガンキャノンが戸惑うようにこちらを伺う。くそ!俺だってわかってるんだよ。ブライト艦長の言ってることが正しいってことは。けど理屈じゃねーんだわ。俺は俺の仲間がこれ以上死ぬのは嫌だ。まだ助かる可能性が1ミリでもあるなら、俺はその可能性を否定したくねぇ。

 

 けど、ここでヤザンを助けに行った隙にホワイトベースが撃沈されたら?1人の命と大勢の命。どっち守るのが軍人として正しいのかなんて、わかりきってるだろうが……!あークソ、やっぱ戦争ってやつはサイテーだぜ。

 

 デュラハンがバーニアを噴射してホワイトベースから離脱した。

 

『少尉!』

 

 ブライト艦長の怒声を無視して、デュラハンのシールドを展開させる。安心してくれブライトさん。命令は守る。ヤザンがその身を捨ててまで守ってくれたホワイトベースをやらせはしない!

 

「インコムシールドで!」

 

 2枚重なったシールドをインコムで操作し、ホワイトベースへ直撃コースのビームを防ぐ。たった1発で1枚目のシールドがおじゃんになった。ビームライフル!こいつがここに居るってことは、ヤザンは……。

 

 モニター正面に煌めくバーニアの噴射光。白い機体。ガンダムがビームライフルを連射する。

 

「ハロ!」

『シールドテンカイ!』

 

 俺も負けじとインコムシールドを展開するが、ライフルの直撃を受けるたび一枚、また一枚と剥がされていく。ジリ貧だな。俺はスラスターを全開にして腰のラックからビームサーベルを抜き放ちガンダムへと肉薄する。ヤツも呼応するかのようにサーベルを抜き放つ。粒子と粒子が激突し、バチバチと火花をあげる。

 

『ようやく会えたな月の亡霊(ゴースト)!』

「俺は会いたくねぇんだよこのピンク野郎!」

 

 今は白だけど!お前ちゃんとガンダムもピンクに塗れや!いややっぱ塗らせねーわだってここで俺が倒すもん。二つ名が赤い彗星なのにピンクなのって、製作当時東映にピンクの塗料が余ってたからって説、あれどこまで本当なんだろうな?

 

「いい加減しつこいんだよアンタは!いつまで付き纏ってくる気だよ!」

『無論!君に勝つまでだ!』

「いつもいつも!俺から仲間を奪いやがって!」

『ならば私を倒して仇討ちをしてみせろ!!』

 

 鍔迫り合いから一転、デュラハンのシールドを蹴り付けてガンダムが距離を取る。ビームライフルの銃口が向けられる。残りのシールドは2枚。受けた角度が悪かったのか、ライフルの直撃を受けたシールドは2枚とも貫通され藻屑と消えた。

 

 この時点でデュラハンの装備は両肩のキャノン砲とビームサーベル2本、左手に持った実弾ライフルに予備のマガジンひとつ、頭部のバルカン砲……。ガンダムの装甲を抜ける装備がサーベルしかないの、よくよく考えたら詰んでるな?ってことで博士が用意してくれた『とっておき』が、デュラハンには仕込んである訳だが。

 

 シャアのやつ、全然隙がない。やっぱ強い。しかもガンダム乗ってるし。鬼に金棒ってやつだな。それと今気付いたんだけど、俺シャアと戦ってるとトラウマが刺激されてるっぽい。過呼吸と手の震えが止まりません……。コレ、ヤザン死んだことで悪化して自覚症状出始めてるな?そんな事を考えてたらコックピットに強い衝撃を受けた。被弾を知らせる警告音がうるさいくらいにがなりたてる。

 

「マジでか!?』

『動きが固いな!口惜しいが、これで!』

 

 高速起動で切り結んでいた刹那、すれ違いざまにデュラハンのサーベルを握る右手を二の腕から切り落としたガンダムが、サーベルを突き刺すように腰ダメに構えて突進してくる。その様子がスローモーションで再生される。瞬間俺の脳内に溢れ出した仲間たちとの記憶。鉄騎中隊のみんな……。

 

『バルメアがシュミレーターから出てこない?気にするなここに住んでる』

『お前のガンキャノンだけぬるぬる動くの何?モーションデータ1000時間分?アッハイ』

『戦闘機を狙撃とかイッちまってるよ』

『頭おかしいんじゃないのか』

『こえーよ俺』

 

 いやほとんど罵倒じゃねーか!?もっとマシな記憶あったろ俺!?走馬灯でコレはねーだろ!これじゃ死んでも死にきれねーよ!はいタンマ!もっといい記憶選ぶから今のなしね!なし!

 

 つーわけだからよぉ……。

 

「ここで死ぬわけにはいかねーんだよぉぉ!!」

『よく言ったバルメアぁぁぁ!!』

「エー!?ヤザン!?」

『えぇい!なんだ!?』

 

 生きとったんかワレェ!突撃してくるガンダムの横っ腹にタックルするヤザンのガンキャノン。二機はもつれ合って身動きが取れないでいる。ヤザンが作ってくれた絶好の機会!よぉぉぉぉし、今なら!精神コマンド、気合!集中!熱血!

 

「ハロ!奥の手だぁぁ!!」

『俺の拳が光って唸る!お前を倒せと輝き叫ぶ!!』

 

 デュラハンの頭部バイザーが光り輝き、左手のひらに隠された銃口から粒子が迸る。

 

『ええい!離せ!』

 

 武装も使い切り既に推進剤も切れていたヤザンのガンキャノンを蹴り飛ばしたガンダムが、ふたたびこちらへビームサーベルを振りかぶるがもう遅い。ここは俺の距離だ!

 

「『必殺!シャァァァァイニングッ!フィンガァァァァァァァ!!!』」

 

 ガンダムの懐へ飛び込み頭部を鷲掴みにする。それと同時に放たれるパルマフィオキーナ掌部ビーム砲(シャイニングフィンガー)。泥臭い格闘戦を得意とするガンキャノンに、ゼロ距離ブッパできるビーム砲を内蔵して弱いと思ってる奴いる?いねえよなぁ!!?

 

 同時に爆発するガンダムとデュラハン。ジュネレーター直結のビーム兵器なんだが、出力加減が難しい上にゼロ距離射撃だから対象は目の前で爆発するしでやっぱ欠陥兵器だわパルマフィオキーナ掌部ビーム砲。でもシャイニングフィンガーみたいでカッコいいからちゅき……。などとくだらない事を考えながら、俺の意識は闇へ吸い込まれていった。

 

 

 

 

 みんな、仇は討ったよ。

 

 




終わりにするか、続けるか
ひとまず完結。
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