鉄騎中隊の亡霊【完結】   作:呼び水の主

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シャアの思想が原作乖離していきます。(戦闘民族化)
一応ご注意ください。


お前を殺す男の名だ

 シャア・アズナブル。後に赤い彗星と呼ばれるジオン公国のエースパイロットである。彼にも複雑な背景があるが、簡潔に言えばジオンで一番偉い人ジオン・ズム・ダイクンの遺児で長男で、父と母を虐め抜いた挙句実権を掠め取ったザビ家の事を恨みまくっている復讐の人で、要約するとマザコンである。(この説明で各方面大丈夫!?)

 

 モビルスーツパイロットとしてのセンスはガンダム世界でも主人公の次、いやララァの次かな……次作以降ならカミーユとかハマーン、シロッコの次……、いやでも話の展開の都合とかもあるしな……、ってなくらい上位に食い込むほどの主人公アムロの長年にして積年のライバルキャラである。つまり強い(Q.E.D.証明終了)

 

 そして今現在のシャアだが、彼はモビルスーツパイロットとしてはまだ数ヶ月。モビルスーツそのものも、アニメで搭乗していたザクⅡのその更に一世代前のザクⅠである。彼にとってもモビルスーツとは慣れ親しみのない新兵器なのだった。そんな彼でも、目の前で足掻く頭部を失った連邦軍のモビルスーツには驚きを隠せないでいた。

 

 鈍重な運動性、モビルスーツの原型としてほぼ完成されたザクⅠとは比べるまでもないモビルスーツの『できそこない』。優っているのは武装と装甲くらいのもので、敵にもならない相手。事実、シャアの攻撃を受けて呆気なく頭部と武装を失った手負の相手である。

 

 であるにも関わらず、仕留めきれずにいる。

 

「ほぅ……?」

 

 振り下ろしたヒートトマホークを掻い潜って、敵機が組みつこうと突撃してくる。装甲をアテにした馬鹿の一つ覚え、しかし有効な戦術だ。その鈍重なモビルスーツでは、格闘戦は不可能だろう。質量を活かした体当たりで、こちらの動きを封じる腹積りらしい。運動性を殺されれば、至近距離からのキャノン砲は脅威になる。

 

「連邦軍には惜しいパイロットだ!」

 

 シャアのザクⅠが敵機の肩を蹴り上げる。肩のキャノン砲が弾け飛んだ。たまらず後退するかと思えた敵機は、しかしひしゃげた肩を向けてショルダータックルを繰り出してくる。シャアの巧みな操作でタックルから逃れたザクⅠだったが、キャノン持ちのパイロットはシャアの予想を瞬間上回った。

 

 ドム!

 

「なんだと!?」

 

 ザクⅠとのすれ違いざま、ガンキャノンが残った左のキャノン砲を月面に発砲した。凄まじい衝撃がシャアを襲い、一瞬の隙が生まれた。もうもうと立ち込めるレゴリスを突き破り、左腕を大きく振りかぶった灰色の巨体が吶喊してくる。

 

『チェストォォォォォ!!!』

 

 まるで本物の人間のような動きで繰り出された拳と、咄嗟に打ち払うように繰り出されたザクⅠのヒートホークが交差した。ヒートホークがガンキャノンの肘上までめり込んで、しかし止まらずザクⅠの頭部を強打した。

 

「ぬぅ!?」

 

 体勢を立て直したザクⅠに、肘から抜き放ったヒートホークを我が物にしてデュラハン(首無しの機体)が襲いかかった。

 

「やるな、連邦のパイロット!!」

 

 シャアは知れず笑っていた。

 テアボロ・マスの庇護を離れ、身分を偽って軍に入ったのは、ザビ家に近づき己の復讐を果たす為。それ以外の目的など、考えられもしなかった。だがしかし、ここに来て自分を楽しませる人間がいる。あるいはモビルスーツのパイロットこそ、自分の天職だったのかも知れなかった。

 

 ザクⅠのマシンガンが火を吹いて、ヒートホークを空振ったガンキャノンの装甲を叩く。遂に耐えきれなくなったのだろう、全身から黒煙を吐き出しながら、それでも鉄の騎士は倒れなかった。モニターが完全に死んだのだろう。コックピットハッチが中から吹き飛んで、パイロットの姿があらわになる。

 

『貴官の名をきいておこう!』

 

『バルメア・エレクトリーガー。お前を殺す男の名だ』

 

 シャアは全身が震えた。自分は、浅ましくもこの男との戦いに悦びを感じている。闘いの熱に呑まれるとは、所詮己も人類の愚かしさから逃れられん只人だと言うことか。

 

 しかしそれがなんだと言うのか。父の語った人の革新、ニュータイプ。人類が宇宙に出て進化したとして、果たして闘争本能を捨てることができるだろうか。そんなものわかりはしない。ただ一つわかるのは、今の自分はそんなモノ(ニュータイプ)になど興味がなくなったと言うことだ。

 

「勝負だ、バルメア・エレクトリーガー!」

 

 この男との決闘こそが、今の己を支配する熱なのだ。




ワッ!ワッ!……お前を殺す男の名だ!(半泣きヤケクソ)
シャアさん、ジオンの呪縛から逃れる
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