「おー、生きてる……?」
目が覚めたら知らない天井でした。いやここ半年はずっとシミュレーターの天井眺めてたから、ほぼ知らない天井しかないんだが?
「目が覚めたかね。エレクトリーガー少尉」
「テム博士……?」
病室の枕元に座っていたのは、テム・レイ博士だった。メガネをかけた如何にも技術屋ですといった風貌の男性だ。主役機ガンダムの開発者で、主人公アムロ・レイの父親でもある。
こうしてつらつらと原作知識が出てくるあたり、やっぱり俺には前世の知識があるんだなぁ。あまり混乱も悲観もないのは、俺がバルメア・エレクトリーガーとして生きてきた25年間がしっかりと芯にある故だろう。大人になって、分別がつくようになってから、前世の記憶を思い出した恩恵だな。
「少尉、君に伝えなければならないことがある」
「あー、はい。なんでしょうか?」
益体も無いことを考えていると、テム博士が重苦しい表情で切り出してきた。続きを促すも、彼の口は依然として重たい。
「その、目が覚めたばかりで伝えにくいことだが。君の部隊『鉄騎中隊』は、君一人を残して全滅した」
「……そう、ですか」
原作、この場合はオリジンの方だな。ガンダムオリジンの漫画で登場した連邦軍初のモビルスーツ部隊『鉄騎中隊』は、ジオンのモビルスーツ開発の立役者にして、ミノフスキー粒子を発見したある意味ガンダムの戦争の引き金となったミノフスキー博士が連邦軍に亡命してきたのを保護する為に出撃し、人類史上初のモビルスーツ戦を演じ、そして全滅した。
戦いは一方的だったと記憶している。なにせ、相手の5機のパイロット全員が後のジオンのエースパイロットである。機体性能すら負けている中で、数のアドバンテージなど役に立つはずもなく。その漫画の内容と、ほぼおんなじ結末になっちゃったわけか。生真面目なミフネ隊長、酒と女好きのラリー、ノッポのブルーノ、オペレーターのカレンちゃん。知ってる顔がいなくなるってのは、ツラいなぁ……。
「ッ、ハァ〜〜〜〜〜……」
「すまない、私もやる事があるので失礼する。その、なんだ……」
テム博士が席を立ち、ドアに手をかけたところで振り返った。
「君達の残したデータで、ジオンのモビルスーツにも負けない機体を、必ず作ると約束する」
失礼する。そう残してテム博士は病室を去った。不器用なあの人なりの励ましの言葉だったんだろうな。いやいくらなんでも不器用すぎる……。唯一の生き残りにかける言葉じゃねーよ博士。それがなんだかむず痒くって、おかしくって、俺は笑った。
「はは、ハハハ!ハハハハ……ッ」
静かな病室に俺の声だけがこだまする。ひととおり笑って、俺は拳をベッドに思い切り叩きつけた。次は負けねーからな、チクショウ!
@デデデン!デデデデン!シャーゥ!@
宇宙世紀0079。1月3日。俺はベッドの上で連邦とジオンの開戦を迎えた。
続くブリティッシュ作戦で、ジオン公国はサイド1、2、4にある人類の宇宙の住処であるスペースコロニーに対し、核攻撃や毒ガス攻撃を実行。そしてそのコロニーを質量兵器として、地球連邦軍の本拠地であるジャブローに対し落下させるというコロニー落としを実行した。
コロニーは連邦軍の必死の抵抗により軌道が逸れたが、地球のシドニーに落下。甚大な被害をもたらした。
そして1月15日。後にルウム戦役と呼ばれる大決戦により、連邦軍は実に8割もの艦隊を喪失し大敗。国力が大きく劣るジオンの勝利には、モビルスーツと呼ばれる巨大人型兵器とそれを支えるエースパイロット達の活躍があった。たった一人で5隻の戦艦を沈めたパイロット。赤い彗星の名が連邦軍に知れ渡ることになったのも、この頃のことである。
そして月日は流れ、9月。全治三ヶ月の怪我から復帰し退院した俺は、再びテム博士の元でモビルスーツのテストパイロットとして軍務に従事していた。
時系列はうろ覚えだが、原作知識があった俺には色んな選択肢があった。中立を謳う安全なサイド6に逃げ込んでもいいし、成り上がりを目指して原作知識無双を将官相手に繰り広げるのもいいかもな。
けど、今俺はこうしてサイド7にいる。後ろに鎮座するホワイトベースを振り返り、その格納庫に搬入されていく新しい俺の機体『ガンキャノン・デュラハン』を見上げた。
「来いよ、赤い彗星。リベンジマッチだ」
俺の望みはたった一つ。
エンブレムは首無し騎士(デュラハン)です。対戦よろしくお願いします。