鉄騎中隊の亡霊【完結】   作:呼び水の主

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バルメアという男

Side:リュウ・ホセイ

 

 「では、作戦の説明は以上だ。リュウ、ジョン、やれるな?」

 

 エレクトリーガー少尉がジョンと俺を見回してブリーフィング内容の確認を終えた。これからあの赤い彗星相手に戦うんだっていうのに、軍の中ではかなり年齢の低い俺たちとそう歳の変わらないはずの彼の顔には、凪いだ海のようになんの気負いも見られなかった。俺はこの時、やはりこの人は只者じゃないんだと改めて思い知らされていた。

 

 バルメア・エレクトリーガー少尉。25歳。モビルスーツ開発当初からテストパイロットとして参加。あの赤い彗星相手に2回も生き残ってみせた凄腕の持ち主。噂によれば、軍務のない間は自室にも帰らずずっとモビルスーツシミュレーターの中で過ごしているらしい……。いや、らしいというかホワイトベースでの生活中に何度か彼と遭遇した事があったが(というか自主訓練でシミュレーション室に行くと必ずいる)、シミュレーターに住んでるって話は本当だった。正直怖かった。

 

 何度か対戦させてもらったが、あの人が乗ってるのホントに俺たちと同じガンキャノンなのか?ガンキャノンのスペックじゃザクには勝てないっていうのは、連邦軍内のモビルスーツ促進派閥で細々と少数生産されてきた実機が悲しくも証明してしまっている。だっていうのに、あの人は俺とジョンが乗った仮想ザクの弾幕を「ここ隙間あるな……」とか言って肉薄して近接戦をしかけてくるし、格闘戦は無駄に人間臭い動きで殴ったり蹴ったりしてくるし……。実は中身は新型のガンダムですって俺は言われても驚かないぞ。

 

 強さの秘訣を聞いてみれば、「負けなくなるまで練習しろ」って。そりゃ真理だが、流石にシミュレーターに住むのを他人に勧めるのはどうかと思う……。

 

 そんなすごい人(やべーヤツ)が俺たちの隊長なんだ。こりゃ、あの赤い彗星相手に生き残れるかもしれないな。

 

 

 

Side:ジョブ・ジョン

 

 なんか僕らが渡されたガンキャノン、ヤバい。これまで乗ってたのはなんだったんだ?本当に同じガンキャノンなのか?そう考えてしまったレベルで機体が別物なんだ。まず操作のし易さが桁違いだ。正直、これまでのガンキャノンの操作性は最悪だった。機体が重いから急な加減速をかけるだけで機体が振り回されて思い通りの位置に止まれないし、歩行も地面の凹凸をよく確認しないと転げてしまう。モビルスーツは人型だから、巨大かつ人体であることのデメリットはどうしても無視できないんだと僕は半ば諦めていた。

 

 けどサイド7で新造されたこのガンキャノンは違う。例えるなら、そう。コイツはまるでもう一つの僕の身体だ。僕の思ったところにピタッと止まれるし、地面の凹凸にもこちらの操作不要でしっかり接地してくれる。一つ一つの動作もとてもスムーズだ。たぶん、細かい操作を格段に進化させたOSで自動補助させているんだな。これはすごいぞ。パイロットの負担がグッと減るから、モビルスーツの操作に慣れてない人でもすぐに操縦できるようになる。モビルスーツ分野においてジオンに対して大きく遅れをとっている連邦軍にとって、大いに助けになるだろうな。

 

 流石はテム博士!と言いたいところだけど、実はテム博士曰く、「モビルスーツの操作OSの開発は私だが、完成させたのは私ではない」らしい。そうか、これだけの機体の動作補助性能、基となる膨大なデータがあるに違いない。しかし、巨大な機械の身体をまるで本当の人体のように操るモーションデータを、半年足らずでどうやって用意したのか。元々少ない実機のデータ(しかもどの機体もザクには惨敗している)を集めたとは思えない。

 

 ではどうやってテム博士は短期間でこれほどの動きをガンキャノンに与える事ができたのか。その答えを僕はホワイトベースのシミュレーション室で知ることになった。

 

 その男はシミュレーション室のヌシだった。なんなら住んでた。なんと非番の日はずっとシミュレーターを触り続けているらしい。なるほど勤勉な軍人なのだなと感心した。気になったのでシミュレーション内容を見せてもらったところ……

 

●ガンキャノンのマニピュレーターで針に糸を通す訓練:試行回数264,973回。

 

●ガンキャノンで行軍訓練1000キロ:試行回数897,643回

 

●ガンキャノン感謝の正拳突き訓練:試行回数10,000回。

 

●ラクロア流二刀流術:試行回数508,497回

 

●プリティス真拳:試行回数9,784,976回

 

●戦闘訓練:0(たぶん上限カンスト)

エトセトラエトセトラ…

 

 意味がわからない。なんだこの訓練は。まず半分くらい訓練のタイトルが理解できない。後頭部に視線を感じて、僕はおそるおそる振り返った。目が合った。合ってしまった。薄暗いシミュレーターの中から、爛々と光る一対の目が覗いている。

 

「ガンキャノンはいいぞ」

 

「え、コワ……」

 

 その後めちゃくちゃシミュレーターでボコられた。あの人はおかしい。僕はそう思った。

 

 

@デデデン デデデデン シャーゥ!@

 

 

 なんかリュウとジョンが俺を見る目ぇコワ!なんだコイツら?俺隊長ぞ?あんま舐めてっと後ろから誤射しちまうかもなァ!背中に目ぇつけぇよ……。

 

 まあいいや。二人ともモビルスーツでの実戦は初めてだってのにいい感じにリラックスできてるな。まあジョンについてはシミュレーターで何度か一緒に訓練したこともあるし、リュウは実戦経験は積んでるからな。これならなんとかなるかも……なるかなぁ。やっぱ無理かも。

 

 今回サイド7製「ガンキャノン正式配備型」も、フルで性能が発揮できる状態までシモンズじいさんたち整備の人らが頑張ってくれている。なので、緊急モードで立ち上げたデュラハンでは使えなかったいくつかの機能が解禁される。

 

 まずは操作OS。こいつは俺の努力(と趣味)の結晶・シミュレーション3000時間の膨大なデータをテム博士の学習型コンピュータに反映させたものだ。原作で言うとジムに反映させたアムロのガンダムの実戦データみたいなものね。あれのおかげでモビルスーツ素人ばかりのパイロットでもジオンのベテランと戦えたらしいから、恩恵はデカいと思う。俺も頑張って色んなデータぶち込んだから、リュウとジョンの操作負担もだいぶ減るだろう。テム博士はシステムが汚染される!とか言ってた。失礼な!貴重なデータやぞ!

 

 お次はサブアーム。武装とかシールドを装備可能。ガンダムサンダーボルトのやつを想像してもらえたらわかりやすいな。単純に手数と継戦能力がアップだ。シンプルに強い。ただマニュアルなのでその分操作が増えて複雑になっているのがデメリットといえばデメリットか。この辺は俺も初めて触るからまだデータは少ない。データ集めは継続するし、ここは今後改善されていくと思う。

 

 最後にシステム周りとは別で、従来のガンキャノンとは設計から違う点を説明しておこう。それは装甲だ。まあ前にもテム博士がちょろっと説明したけど、ザクの武装全般に関しては、当たりどころが悪くなければ一撃は必ず耐える。少量のルナチタニウムを芯材にして、その上からジムなんかに採用されたチタン合金で装甲を重ねてるわけね。イメージはEz-8だな。今後の量産も視野に入れるとルナチタニウムの乱用はできないからこのようになった。

 

 ジムではなくガンキャノンが量産されそうなこの世界では、モビルスーツの配備数自体は減りそうだ。その分質が向上してるから、パイロット含めて生還性は上がるだろうと思う。命大事に。

 

 さて、シン・ガンキャノンのスペックを思い出している間に出撃準備が整ったらしい。コックピット内のモニターの一角にパオロ艦長が表示される。

 

『これより本艦はサイド7を脱出し、連邦軍宇宙要塞ルナツーへと進路をとる。コロニーを出ればすぐに戦闘になるだろう。敵は恐ろしく強大だが、我々には連邦の誇るモビルスーツがついている!赤い彗星なにするものぞ!各員の奮戦を機体する!』

 

 連邦の誇る最大のモビルスーツは盗まれたけどな。まあそれを言うのは野暮だろう。それに、シャアのガンダムに勝てば最強の座はガンキャノン。なんだそれ最高だな!やってみる価値はありますぜ!

 

「ガンキャノン隊は先行してホワイトベースを守る盾になる!」

 

『『了解!』』

 

 二人の威勢のいい返事に背を押されつつ、機体の両足をカタパルトへ固定する。格納庫内では慌ただしく整備兵らが駆けずり回っていた。

 

『ぶぁっかやろう!固定確認したらサッサと離れろィ!ミンチになりてぇか!』

 

『ガンキャノン出ます!ガンキャノン発進!』

 

「ガンキャノン、バルメア・エレクトリーガー。出撃する!」




オリ主はここ隙間あるなとかどっかの天パみたいなことしていますが、ニュータイプではないです。ただただ訓練しすぎて視えるようになっちゃっただけです。リコリスリコイルの千束の能力を後天的に手に入れたイメージ。(なおそれでもシャアには勝てん模様)

お前もシュミレーターに住まないか?
リュウ「住まない」
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