鉄騎中隊の亡霊【完結】   作:呼び水の主

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次話は12月13日の17時投稿です


サイド7脱出

 ホワイトベースから先行してサイド7の外へ飛び出した俺たちガンキャノン隊は真っ暗な宇宙へとスラスターの残光を引きながら突き進んでいた。

 

『こちらパオロだ。聞こえるかバルメア少尉』

 

「聞こえます艦長。敵の動きはどうなっていますか」

 

『ムサイがモビルスーツを出したようだ。数は4機。ガンダムを持ち帰る為に離脱してくれないかと思っていたが……。どうやら赤い彗星は我々を生かして帰すつもりはないようだな』

 

 ホワイトベースのレーダーによると、俺たちの進行方向に立ち塞がるようにして展開しているシャアのムサイ『ファルメル』からモビルスーツらしき反応が向かってきているらしい。

 数は4。ムサイのモビルスーツ搭載数は格納庫内に4、コムサイに2の6機だったかな。

 サイド7の中で2機撃破しているから、残りのザクは多くて4。奪われたガンダムを入れて5だ。

 野郎、ガンダムを含めた戦力をほぼ全て投入してきやがった。

 現状こちらの戦力はガンキャノン3機。しかも乗ってるのはひよっこパイロットだ。キツイぜ。

 

「やはりセイバーフィッシュの援護は受けられないのですか?」

 

『ああ、先の爆破工作でサラミスともどもやられたそうだ。すまんが、少尉たちだけが頼りだ』

 

「了解。作戦通りシャアとザクはガンキャノン隊が抑えます。その間にホワイトベースは離脱してください」

 

『了解した。これよりホワイトベースは30秒間だけ援護射撃を行う。各員の健闘を祈る」

 

 ホワイトベースがメガ粒子砲とミサイルの斉射を始めた。それにやや遅れて、ガンキャノンの望遠カメラがギリギリ敵モビルスーツの編隊を補足する。

 ガンダムを正面にして、扇状にザクが展開している。ホワイトベースの攻撃を受けて、4つの機影がパッと散開した。

 

「リュウ、ジョン!こちらも狙撃開始だ!少しでも敵の数を減らすぞ!」

 

『しかし少尉!この距離だと当たりませんよ!』

 

「威嚇でいい!やれ!」

 

 ジョンの悲鳴に被せるように操縦桿のトリガーを引いた。

 接敵までの僅かな間に敵のアウトレンジから狙撃して少しでも消耗させる。数と経験で劣る我々は機体の性能差を押し付けて勝ちを拾いに行くしかない。

 ザクの攻撃を無効化する装甲に、当たれば一撃で致命傷になる新武装。機体アドバンテージは大きくこちらにある。

 

「よし、敵の足並みが乱れた。各機、右端のザクを集中攻撃」

 

 ガンキャノンの両肩部のキャノン砲2門、ビームライフル一門。3機分の計9門から放たれた火線がこちらの弾幕を恐れふらついたザクに集中する。

 一方的に殴られる痛さと怖さを教えてやる!

 

「狙い撃つぜ」

 

 右端のザクに照準を合わせ、立て続けに3回トリガーを引いた。

 1発目がザクの頭部を射抜き、反動で仰け反ったガラ空きのボディに2発目、3発目が突き刺さりコックピットを破壊されたザクが爆散した。宇宙に鉄の華が咲く。

 これで数の上なら互角だな、シャア。

 しかし、やはりビームライフルは強力だ。射程も威力も実弾とは桁外れだ。こいつがシャアに奪われなくてよかった……。

 ザクの眩い爆発光をモニターが遮断するも、減衰しきれなかった閃光が一時的に視界を眩ませる。

 

「各機狙撃やめ!ザクの有効射程内だ。ブリーフィング通り2人はお互いをカバーしろ」

 

 既に彼我の距離はザクの有効射程圏内まで縮まっていた。

 これまで回避に徹していたザクからマシンガンの弾が雨の様に降り注ぐ。

 それらを小刻みに避けながら、俺は先陣を切って突撃してきたはずのシャアの姿を探した。

 

「ガンダムは、シャアがいない……!?」

 

 ザクの爆発とザクマシンガンに気を取られて見逃した!?どれだけ意識をお前に向けたと思ってるんだ……!?

P!P!P!P!

 

「接近警報!?後ろかっ!」

 

 振り返ってたら間に合わないと直感した俺は、背後に向かって機体を倒し体当たりをしかけた。

 ゴツン!という鈍い音が響き、コックピットが衝撃に揺れる。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 ガンキャノンの振り向きざまの裏拳を頭部を引くことで避けたガンダムが、ビームサーベルを内から外へ振り抜こうとする。

 

「まだまだぁ!」

 

 考えるより早く、反射でフットペダルをベタ踏みしていた。スラスターを噴射させてガンキャノンが振るわれる前のガンダムの腕を押さえ込み、全身で体当たりする。

 ガンキャノンとガンダムが吐息がかかりそうなほどの至近距離で睨み合う。

 

『会心の一撃だったのだがな!』

 

「シャア!」

 

『以前よりは楽しめそうだな、バルメア・エレクトリーガー!』

 

「その機体は連邦軍が開発したものなんだぞ!」

 

『ハハハハ!』

 

 ガンダムの頭部が火を吹いた。至近距離で連射されたバルカンを左腕の装甲で弾きながら距離を取りつつ、こちらもバルカンでガンダムの持つビームサーベルを狙う。

 こちらに取ってビームサーベルは脅威。破壊すれば幾分楽だが……。野郎、巧みに避けやがる!

 だがその機動は月でも一度見てるんだよ!

 かつて見たシャアの動きを、何度もシミュレーターで再現し攻略法を磨いてきた今の俺なら!

 

「いっちゃえよッ!」

 

 両肩のキャノン砲が爆炎を吹き、240mmの砲弾がガンダムが今まさに移動しようとした先へ叩き込まれた。

 偏差射撃。ザクマシンガンの倍の口径であるキャノン砲を受ければガンダムだってタダではすまない。

 だがしかし、ガンダムはスラスターだけでなく全身を仰け反らせるように振ることで機体の方向を無理やり変更、2発のキャノン砲の間を抜けてそれらを回避した。

 

「避けた!避けた!?」

 

『素晴らしいな!連邦軍の新しいモビルスーツの性能は!』

 

 回避機動の勢いを利用してガンダムが前へと飛び出す。

 

「早ッ、クゥ!?」

 

 完全に意表を突かれた俺はサブアームのシールドを全面に押し出した。

 ザンッ!シールドがサーベルを受け止めきれず溶断され、ガンダムの視界を瞬間塞いだ。しかし叩き斬ったシールドの先に、ガンキャノンの姿はなかった。

 

『なんとっ!?』

 

「この距離なら避けられまい!」

 

 俺は咄嗟の判断でシールドを囮に、ガンダムの真下へ潜り込んでいた。一年戦争時のモニターならこの角度は死角になる。

 立て続けに撃ちだされるキャノン砲とビームライフルとバルカン砲がガンダムを滅多撃ちにせんと宇宙空間を奔る。

 

『ぬぅぅぅ!やるな、バルメア!』

 

 しかしなんということか、ガンダムは手首を高速回転させビームサーベルを盾のようにして攻撃を防いでみせた。

 

「ビームサーベルを盾にして防ぐのか!?」

 

 天才的な機転で致命傷を免れたシャアだったが、流石のビームサーベルもビームライフルとキャノン砲の余波に耐えきれず火花を噴き上げた。

 

『えぇい!ここまでか!』

 

「チィ!?」

 

 火花をあげるビームサーベルがガンキャノンへと投擲され、ビームが左腕を貫通する。そのまま爆発したサーベルを目眩しにして、ガンダムは見事な反転で一気に戦線を離脱した。

 

「逃げた……?いや、こちらもギリギリだったか……」

 

 見れば、リュウとジョンのガンキャノンはどちらも傷だらけで、2人でカバーし合ってザクに接近戦をさせなかったから生き残ったと思える有様だった。

 トマホークでの近接攻撃を受け止めきれないほどに、どちらの装甲も疲弊していた。

 彼らを押していたであろうザクは、ガンダムと共に既に戦線を離脱していた。

 俺はコックピットシートにヘルメットを押し付けて目をギュッとつぶった。

 ようやく戻ってきた手指の感覚が、自分が生きていると実感させてくれた。

 

「ハァ……、ハァ……。今度は、全員生き残ってやったぞ、このヤロー!」

 

 宇宙世紀0079。人類が、増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、すでに半世紀。

 地球から最も遠い宇宙都市サイド3は、ジオン公国を名乗り地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。1ヶ月余りの戦いでジオン公国と連邦軍は、総人口の半分を死に至らしめ、連邦軍劣勢のまま戦争は膠着状態に陥る。

 連邦軍人バルメア・エレクトリーガーは、かつての同胞達の仇を討つ為、愛機ガンキャノンを駆使し戦いへと身を投じていく。

 そんな彼が連邦のエースパイロット“首なし”として名を馳せるのは、そう遠くない未来の話である。

 




かなりイイ勝負をしてビームサーベル一本消費させたオリ主。
ここにきて訓練時間3000時間が伊達じゃないことを示す。
なんか最後完結みたいな文になりましたが続きます。
次回はルナツー編。次回以降はテム博士のとんでもないカミングアウトとか、ホワイトベースへの強力な助っ人とか、サーベル失ったシャアへの強化とか予定しておりますのでお楽しみに。

※感想欄をログインユーザー限定にしていた不覚……。
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