「バルメアァァァァァァァ!!」
「げぇっ!?シモンズじいさん」
ホワイトベースへ着艦後、ガンキャノンから這い出した俺たちを待ち受けていたのは、地獄だった──、というのは冗談として。
ものすごい剣幕のシモンズじいさんに呼び止められて、俺は思わず竦み上がった。
シャアのぶん投げてきたビームサーベルのせいで肘から下が無いガンキャノンの左腕をチラリと見上げる。やっぱこれかなぁ……。これしかないよなぁ……。
「あとリュウ!ジョン!テメェらも!」
「は、はい!」
「うひぃぃぃ……なんですかぁ」
ついでに疲労困憊な様子でゾンビみたいにコックピットから這い出してきた2人の肩をガッチリと掴んで、じいさんは俺の前で立ち止まった。
すわ3人揃ってお説教かと身構えた俺たちだったが……。
「おめぇら、よく戻った……」
じいさんのその言葉に柄にもなくウルッときちまった。
いやな、なんつーか……、な。
かつて、1人生き残ってしばらく寝たきりの俺の枕元で、ずっと悔恨の言葉を呟いて意気消沈してたじいさんの姿を思い出す。
あれからすっかり元気になったように見えたが、自分の整備して送り出した部隊が全滅するってのは、じいさんたち整備兵にとってはやはり相当堪えていたのだろう。
それを今、思い知ったのだった。
「整備長!ガンキャノン隊、全員帰還しました!」
俺はそう告げてピシリと敬礼した。
慌ててリュウとジョンもその場で敬礼する。
俺たち3人を見て、周りで様子を伺っていた整備士たちが歓声を上げた。
「いいぞー!ガンキャノン隊!」
「おかえりー!」
「あの赤い彗星を撃退だぜ!?」
「俺たち生きてんのはお前らのおかげだー!」
「ありがとー!」
「よくこいつらを連れ帰ったな、バルメア。あんがとよ」
シモンズじいさんがリュウとジョンと、それからガンキャノンを見上げてニィと口角をあげた。
なんだよ、そう真正面から言われちゃなんだか照れ臭いじゃん?
まあ、俺もけっこー頑張ったからさ。悪い気はしないね、うん。こういうの、なんかイイな。へへっ。
俺が鼻の下を擦っているとじいさんが笑顔のまま俺に尋ねてきた。
「それはそれとして左腕がないようだが……?」
「あんなの飾りです!偉い人にはそれがわからんのですよ」
それを聞いてじいさんは仏の顔のまま青筋を立てるという器用な技を見せた。
怒りが限界が超えて表情筋が固まってしまったのかな?
ちなみに、じいさんの仏の顔と残弾数は1、あるいは0である。今?0だよ!
「歯ぁくいしばれ?」
「すいませんでしたハイ!」
ちなみにこの後普通にぶん殴られた。せっかく無傷で生還したのにひどい!
まあ普段より随分優しいどつきだったけどな。
じいさんも素直じゃないよ、まったく。
その後パオロ艦長へ戦闘報告する為にブリッジに上がった。艦長にはなんかもうすごい勢いで褒められた。
君がいなければ我々はここで死んでいた。あの赤い彗星に狙われて生きているのは君たちガンキャノン隊のおかげだ、とめっちゃ感謝された。
本当はリュウとジョンもこの場で褒めてもらえたら良かったんだが、アイツらモビルスーツ初戦闘ですっかりダウンしてたからな。今は仮眠室でぐっすりだろう。
2人にも艦長のお言葉しっかり伝えます!と退室してから、俺はガンキャノンの修理具合を確認しに格納庫への通路を移動していた。
「おや、バルメア少尉。戻っていたのかね。それでガンダムは取り戻せたか?」
「テム博士。こんなところでなにしてるんです?あとアムロちゃんも」
で、その道中でテム博士に声をかけられたんだが、第一声がこれだもんな。
この博士、自分の興味の無いことにはすげぇ無頓着である。
あのあの、俺たちの成否如何であなたの生命もピンチだったのですが?まず気にするとこそこぉ〜?
「ごめんなさいバルメアさん。お父さんったら目の前のことにすぐ夢中になっちゃうから……」
「あーうん。慣れてるから大丈夫大丈夫。で、博士が夢中になってるものって?」
博士たちが出てきた通路はホワイトベース中央部の第三デッキである。アニメだとガンペリーとかが格納されてたあんまり出番のない格納庫だ。
「おおっ!そうだ!少尉も見ていきたまえ!実はサイド7で極秘で開発していたものだがね!何を隠そうコイツがガンダムに次ぐV作戦の要と言っても過言では無い最重要案件だったのだが、いやぁ〜ドサクサに紛れてキチンと回収できてなによりだ!ふむ?要領を得ないといった様子だな。まあ百聞は一件にしかず!こっちに来たまえ!さあさあ!」
博士のテンションが過去一でやばい。
この人がこういう三徹くらいかました時のハイテンションになってる時は大体変なモノを弄くり回していると相場が決まっている。
今回は何をやらかしたのやら(やらかす前提)
「どうだ!見たまえ!これがホワイトベースをただの輸送戦艦から最強のモビルスーツ母艦にする為の装置だァァァァァァァ!!」
バァァァァァァァンッ!と効果音でもつきそうな大仰な仕草で博士が指し示した先に鎮座していたのは、第三デッキのスペースをほぼ全て占拠する巨大な白い卵のような装置だった。
ンンッ!?まてよ、なんか既視感が……。
ってオイオイオイオイ!博士お前まじか!
これAGEビルダーじゃねぇかァァァァァァァ!!!!
「360度どこから見てもAGEビルダーだよコレ!!」
「AGE?違うぞ少尉。これはGベース!私が一から設計した全く新しい創造のカタチ!これそのものが設計・開発・生産できる、まさに戦艦に携帯できる工場!まあ一言で言えば賢くてデカい3Dプリンターみたいなモノだと思ってくれたらいい!このGベースをホワイトベースに取り付けた暁には、様々な新兵器を前線にいながらにして即座に調達可能になる!戦争が変わるぞ!それもこれも少尉!アイデアをくれた君のおかげだ!もちろん作った私が一番すごいのだが!」
「Oh……」
原因、俺かぁぁぁぁぁぁ……。
いやね、前世の記憶を思い出してから色んなガンダム作品知識を思い出しながら、忘れないようにノートに走り書きしていった時期があったのよ。
で、まあそのノートをうっかりテム博士が見ちゃったわけね。いや、不慮の事故だから!
仲間の復讐の為に、連邦軍の強化をいわゆる知識チートってやつでしようとは思ってたよ。
その為に役立ちそうな知識は思いつく限りぜーんぶ書いてたわけ。そのノートに。
でさ、それ読んだ博士が目の色変えて詰め寄ってきたの。これを思い付いたのはキミか!?って。
すごい剣幕でさ。俺も焦って、いやでもただの素人の妄想の産物ですよってノート奪い返そうとしたのね。
けど離れないの、手が。博士がめっちゃノート握りしめててさ。手に青筋立ててんの。
そんで博士の剣幕に飲まれちゃって、ノート博士にあげちゃった。もうね、一見冷静なんだけど、目がちょうだいちょうだいって言ってんの。恐怖のあまりちびりそうだった。無言で青筋立ってるイイ年したおっさんと正面からノート取り合いすんのこぇぇよ……。
んで書いてた、書いてたわ〜……。
ノートにAGEビルダー的なもんメモしてたわ〜……。
性能的なもんはわからんけど、ノート渡してたった半年ちょいでこんなもん用意できんだろ普通……。フワッとしたイメージ渡してこんな短期間で作るとか博士人間やめてるわ。まあ短期間で新型ポンポン開発するジオンを見てると、案外この世界ではこれくらいは普通なのかもしれないが。
「ってか博士、コレ予算はどうしたんです?」
「む?無論V作戦の予算だが?」
「いやV作戦の予算降りたの俺のノート渡す前でしょ。申請は……?」
「あぁ、ジャブローからの要求はガンダム10機だったからな。なんとか7機分の予算で組み上げたよ。ガンダム7機分と同価値だから実質予算内だろう」
あ、あかーーーーーーん!普通に予算不正利用しとるゥーーーーーーーー!!!!
誇らしげに眼鏡をクイっとする博士。
あんたバレたら銃殺だぞ!なにやってるだァ!
「ちなみにGベース栄誉ある1番目の完成品はこちらだ」
マイペース過ぎる博士に胡乱な目で見つめながら、俺は博士が指し示した方を向いた。
ゴゥンゴゥンとGベースの正面のハッチが開閉し、白煙が床を滑るように吐き出されていく。
物々しい空気の中、卵から現れたのは俺の愛機、ガンキャノン・デュラハンだった。
「デュラハン?けど頭があるな」
外見は確かに俺のデュラハンなんだが、改造して胴体にめり込んでいたはずの頭がボディの上に乗っかっている。
一見灰色の普通のガンキャノンだった。
「間違いなくデュラハンだとも。この間の戦闘で色々と問題点も見えたからな。まずは私の手掛けた最初のモビルスーツを改良しようと思ったのさ」
「なるほど犯行動機はわかりましたが、犯行内容は?」
「君その言い方は普通に失礼だぞ?まあ言い!よくぞ聞いてくれた!刮目せよ!これが新生デュラハンの機能だ!!!」
テム博士が手に持っていたタブレットを渡してきたのでザッと目を通す。
パッと目に付いた項目は一見に普通に思えたが、いやよく読んだらなんかとんでもないことが書いてあるような……。
・サブアーム基部へのビームサーベル増設
・ハロによる操縦補助システムの搭載
・サブアームおよび頭部の遠隔操作の実装
・全身の相転移装甲化
・機体の分離合体機能の強化
・頭部脱出機能の搭載
( ᷇࿀ ᷆ )ナァニコレェ
戦争なんて真面目にやってられないのでテム博士にすべてを破壊してもらいます
今度こそ次回ルナツー到着
サクッといきます