個性。それは現代における超常社会の根幹であり問題を起こす厄介な能力。
全人類の8割がその身に宿す、異能。
ある者は身体能力の強化を、ある者は手の汗の爆破を、ある者は知識にあるものの創造を、またある者は炎と氷を。
1つ間違えれば社会を崩壊させかねない個性。それを悪用するヴィランを打倒する者たち。
人々は彼らをヒーローと呼んだ。
「さて、個性違法使用による強盗か…」
そんなヒーローの中でも異色を放つ者が、ここに1人。
「汝ら、覚悟はできているか?」
黄金の鎧。否、身体そのものが黄金で出来ている男。マントをたなびかせ、犯罪者を睨み付けるその瞳は紅い。
「征服の時だ。エル・ドラド・ウィップ」
その手から放たれた黄金の鞭は物理的にあり得ない挙動によって犯罪者を瞬時に捕縛。暴れようとすれば頭部をその黄金という質量の塊によって叩き意識を奪う。
「ふむ、まあ被害は少ないか。エル・ドラド・コクーン」
鞭がどろりと形を変え、犯罪者たちの身体に纏わりつく。抵抗しようと犯罪者の1人が隠していた銃を撃とうとしたが
「無駄だ」
黄金の男の胸元にある紅く光るアンモナイトが光り、銃のあらゆるパーツが純金に変化する。
もともと重い銃を、更に質量の高い黄金に変えられた犯罪者は片手では持ちきれず取り落としてしまう。
「大人しくしていれば苦痛を与えることはない。そこで罪を悔いながら警察の到着を待て」
男のヒーローネームは錬金ヒーロー:黄金卿エルドリッチ。
あらゆる黄金を操り、物質を黄金に変化させる個性を持つ強力なヒーローだ。
「ご主人様!終わりましたか?」
「ラドリー。警察への連絡は?」
「もうそろそろ来るそうです!」
その男に寄り添うのは子供にしか見えない水色の髪と爬虫類のような尻尾を持つエルドリッチのサイドキックの1人、メイドヒーロー:ラドリー・フルス。
正確には、メイドヒーロー一族からの出向ではあるものの、もはやエルドリッチのサイドキックとしての時間が長いため世間もエルドリッチのサイドキックとして見ている。
「エルドのおっちゃんありがとうなぁ!」
「おっちゃん……我はまだ28なのだが……」
休日に事務所の備品を買い足すために立ち寄った店の向かいで強盗が発生。もともとその身体ゆえにコスチュームも持たないエルドリッチはすぐに対応したために被害にあった店の子供に礼を言われていた。
おっちゃんと言われて内心引き攣った笑顔ではあったが。
「エルドリッチさんありがとうございます」
「いえ、これもヒーローとしての務め。それにご近所ですので」
ヒーロー事務所の近くでの事件とは、犯罪者は度胸があるのか。
そんな感じの目が拘束されている犯罪者たちに向けられている。何せ、黄金卿エルドリッチはギャング・オルカに次ぐ悪人面ヒーローとして有名であり、ヒーロービルボードチャートでも事務所を立ち上げてから5年経つ現在ではトップ20に入るような人気と実力を兼ね備えた新進気鋭のヒーロー。
「エルドリッチさん、今回も協力感謝します」
「当然の責任を果たしたまでです」
「ご主人様が外出すると半分の確率で事件起こりません?」
「それは…そうかもしれんが…」
ホークスには及ばない理由は見た目で損しているというのが事務所近くの人たちの考えだが…。
「ああそうだ、今回は銃を向けられたので咄嗟に黄金に変えてしまいました。回収しますか?」
「あー…拳銃ですか?」
「拳銃ですね」
「なら大丈夫だと思います。念のため重さを計ってそちらにお渡しします」
他に、物質を黄金に変える個性という性質故に、経済を破壊しかねないとされ各国から密かに警戒されているという側面も影響しているのだろう。
そこら辺の砂を砂金に変えることで母子家庭であったエルドリッチが家計の手助けをしていたという過去があるが…まあ、普通に個性の違法使用にあたる。
とはいえ子供だったのと、換金の頻度は低かったため注意に終わった。
「そういえばそろそろ3月だのうエルドリッチさん」
「餅屋のご老公か」
「ひょひょ。ご老公はやめいと言っておろう」
「花見の時は団子の注文をしよう。また大規模になりそうゆえ」
「雄英の教師やOBが集まっての花見じゃの?」
雄英高校出身のエルドリッチは、恩師や先輩後輩を集めてときどき宴会を企画する。必ず根津校長に話を通して、同級生の伝手などを使うことでさまざまなヒーローを集めての花見は1種の風物詩になりかけている。
「何日じゃ?1日2日くらいの長さではないのであろ?」
「1週間だ。ヒーローが一気に消えるのはマズイだろう?」
遠くても誘うのがエルドリッチの宴会。交通費は出すし、宿泊費も出す。その金がどこから来ているかと言えば、金の産出が減った現代ではエルドリッチの活躍はヒーローのみならず不足した金を賄うために国が命令することもある。その報酬があるために、かなりトップヒーローとしても裕福な層と言える。エンデヴァー、ホークス、オールマイトよりも場合によっては稼いでいるとまで言われる。
もちろん日本のみならずアメリカや中国など世界中から依頼が来ている。警戒対象でありながら居なくてはならない存在としても思われているため、複雑だろう。
「入学試験の映像を見ながら、駄弁る会とも言うがな」
「まあ、そこらへんはワシにはどうでもええよ。注文内容は電話での?」
「わかっている。人数が人数ゆえに知り合いにも声をかけよう」
メイドヒーロー(ハスキー、チェイムなど)に花見の料理を頼むのが恒例だ。もちろん報酬も与える。
「今年の雄英の入学試験は、気になる者が多くいた」
「先に見ちゃったんですか!?」
「すまん」
「楽しみにしてたのに~…」
雄英入学試験の結果はすでに出ているため、一部のヒーローには映像データが送られていたりする。もちろん信頼できるヒーローであったり入学試験を受けた子供の親族のヒーローであったりだが。
「何はともあれ、ハスキーたちを誘って一足早い鑑賞会を行おうか」
「やった!ポップコーン買ってあったのそれ考えてたからですね!」
「うむ。キャラメルと塩バターとチョコがあるぞ」
エルドリッチは甘党だったりする。チョコはかなり多めに買ってあるというのは、まあこの際自分の金なので文句は言われないだろう。
「ちょ、お客さ~ん!?買ったもの忘れてますよ~!」
「「あっ」」
帰ろうとしたが買い物の途中だったのを思い出したため、帰るのは結局2時間後になる2人だった。
遊戯王のエルドリッチよりも若干強化されてます。