ヴィランみてえな卿のヒーロー活動記   作:蓮山

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いい加減どのくらい強いかはやっておきたいのでヴィランとの戦闘です。


花見会未遂な黄金卿

「何故花見会の時に限ってヴィランが沸くのだ…」

 

花見会を開催して3日連続でヴィランの通報が届いた。エルドリッチとしては邪魔をしてくれやがって、というのが内心だがヒーローである以上は出動して捕縛しなければならない。

 

「なんだか呪われてるみたいですねぇ~」

「やめよ。それはお前が言うと洒落にならない」

 

サイドキックを1人伴っての出動。エルドリッチはトップ層のヒーローのためラドリー以外にも当然サイドキックは所属している。

ゆらゆらと存在が怪しい炎を纏ってエルドリッチの脇を浮いているのは幽炎ヒーロー:灰流うらら。屍界ヒーロー:バンシーと共に姉妹でエルドリッチの下、独立を目指す若手である。バンシーはエルドリッチの事務所では古参の部類でもあり、コネで入社したと言われていたが実力を見せつけ重宝されるサイドキックとして成長した。

 

「今回のヴィランはデータベースにはない」

「つまり新規の犯罪者ってことですかぁ~?」

 

警察側からはヒーローはヴィランに対する情報を得られる。これは昔、通報があったヴィランに対して速攻で対処しようとして最も近くのヒーローを向かわせた際、情報を与えなかった結果個性の相性が悪くヒーローや一般市民に多数の死人が出たことから制度として個性黎明期に警察側に産まれたものだ。

 

「画像が送られてきたが…不気味なヴィランだ」

「見せてもらえます?」

「落とすなよ」

 

エルドリッチがタブレットを投げ渡す。互いに車よりも速い速度で移動しているが手慣れたモノだ。

エルドリッチの身体は自由が効く故に、下半身をキャタピラーに変えて走行することも触手のように伸縮させることで壁面を登ることも可能だ。

 

「なんで脳が丸出しなんですかこのヴィラン」

「肌が黒いがそれも個性かもしれん。移動に便利な個性を持っているようでそれ以外の画像はすべてブレていた」

「え、警察のネットワークカメラですよねぇ?」

「つまり時速200kmは超えている」

「そうでしたね…じゃあこれじゃ追いつけないのではぁ~?」

「それが一定の場所をグルグルと周っているだけのようだ。道中にある車を撥ね飛ばして進んでいるようで警察が規制線を張っている。幸い死者は出ていないが重傷者が数名」

 

警察は数名が発砲したがすべて避けられたとも付け加える。灰流うららは心底嫌そうな顔を浮かべたがすぐに打ち消した。ヒーローが嫌な顔をするのはご法度だとエルドリッチに叩き込まれている。

 

「それで、どうするんです?」

「捕らえる。子供も重傷にしているらしいが故に、多少痛い目にあってもらうが」

 

子供の重傷者は2名。エルドリッチとしては半殺しとまではいかなくても3割殺し程度にするには充分な理由である。子供の味方であろうとするのはいいがサイドキックの半分が幼い少女の見た目をしているため少々厳しい目で見られたりしていることをエルドリッチは知らない。

そんな話をしている内に規制線の前に到着した。既に人だかりと緊急車両が規制線までの道を塞いでいるが

 

「エルドリッチだ」

「黄金卿だ」「やべえ金ピカヒーローだ」

「悪人面ヒーローだ」「うおっまぶしっ」

「グラサン持ってないか?」「持ってねえよ」

 

エルドリッチが現れた途端人だかりが割れ始める。ヒーローの通る道を邪魔しないというのは小学生時代からマナーとして教えられる。

 

「現着した。責任者は?」

「私です」

「そうか。とりあえずヴィランの確保に動く。それまで人が侵入しないようにしておいてもらう」

「はあ、まあいつも通りですね」

「そういうことだ。何、我に任せておけ」

 

「征服の時間だ」

 

意識を切り替えるルーチン。直感が囁く。エルドリッチにとっても、このヴィランは強敵だと。

 

「今回は、かなりキツい仕事になりそうだ」

 

人の居ない街を歩く。途中にあったベンチを黄金に変えて形を変えながらヴィランを探す。

 

「いきなり本気モードですか?」

「そうすべきだと、直感が囁いている。こういうときは本当に強いヴィランがいる」

 

ベンチの体積をそのまま黄金に変えたために総重量は3t。それをハンマーの形に整え肩に担ぐ。エルドリッチ自体が6tもの重量を誇るが長物の武器は必要だと判断した。

轟音が目の前のビルから響いてくる。ヒビが入っていく。ビルが崩れ、中からは脳が剥き出しの黒い肌の怪人が現れた。エルドリッチは出会ったことがないためにわからないがこれは改人:脳無。それも準ハイエンドクラスのモノだ。試験運転を兼ねてヒーローが多数集まる花見会を狙って解き放たれた、凶悪な改造人間だ。

 

「ぬぅん!」

 

「AAAAAAHHHHHHHHHHHHHHHH!?」

 

しかし、エルドリッチに向かって突進してきた脳無はエルドリッチが作り出したハンマーによって全身の骨を砕かれた。確かに、準ハイエンドクラスの脳無ともなれば凄まじい耐久性と再生能力を持つ。だが、エルドリッチの持つハンマーの重量、自身の加速個性によって到達した時速500kmという速度、なによりエルドリッチの腕力によって半ば自爆に近しい形で反撃を食らってしまった。

更に追い討ちをかけるように灰流うららの個性によって焼かれていく。灰流うららの個性:春幽炎は物質を焼くことはない。しかし生物の持つ魂とでも言うべきものを焼く炎によって焼かれた魂。それによって身体側にフィードバックされた火傷は、どれだけ優れた肉体再生能力を持っていても再生した側から元に戻ってしまう。

結果、複数個性持ちであることを活かすことすらできずにエルドリッチにより身体を固められ脳無は再生のためにエネルギーを使い続けることとなり、動けなくなっていった。個性による再生でもエネルギーを使うのは当たり前だが、見落としがちな部分だ。

 

「危機感に従って振り抜いたが、なんという速度だ」

「まああんな速度でエルドリッチさんに突っ込んだら死んでたんじゃないですかねぇ~」

「脳が剥き出しだからそうだろうな」

 

少しずつ、肉体の再生のために筋肉を分解してエネルギーを取り出していく脳無。しかし全く意味がなく、萎んでいくのが警察の管理下に置かれたあとに映像記録として残されている。1ヶ月は焼けたままの状態だったという。

 

『はっ!?えっ!?準ハイエンドが数分で!?』

『これは予想外だね。錬金ヒーロー:エルドリッチ。彼もまた良い個性を持っている。長年の研鑽がないとまともに使えない個性なのが惜しいところだ』

 

そして、脳無を解き放った黒幕たちにもエルドリッチの活躍は観察されていた。




この準ハイエンドはUSJ脳無と九州エンデヴァー襲撃の間くらいの強さです。
超回復、武器生成、発射、筋肉増強、ジェット×3、空気圧縮、空気噴射、ガス精製、発火、噴射方向固定化なんかの個性を積んでいました。
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